モモンガさま漫遊記   作:ryu-

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最終話

―――何事にも終わりはある。

生には死があり、朝には夜があり、ゲームにはクリアがある。

では、旅の終わりとは一体なんだろうか?

 

 

 

 

 

 

「―――モモン、依頼がきた」

「ん? アルシェに直接とは珍しいな。俺たちが組んでからそろそろ一月にもなるし、世の中ではモモンの仲間と判定されたかな」

「―――どう評価されているかは分からないけど、今回のは別件だと思う」

「ふむ、どういう事だ?」

「―――依頼されているのは〝フォーサイト〟。他にも多数のワーカーが集められている」

 

 少し前に聞いた名に、モモンガは多少の驚きを覚える。

 

「何故解散したチームに声が掛かるんだ?」

「―――ワーカーは別にギルドに登録している訳じゃない。解散を大声で表明したわけでもないなら、こういうことも偶にある。一度、今回みたいに多数のワーカーが集められたと思ったら半数が解散してたなんて事もあった」

「それは……成る程、ワーカー(ならず者)らしい話だな」

 

 余り笑えない話だと、モモンガは複雑な心境を声に出す。アルシェにとってはソレは常に隣り合わせ、今更悲しむことも恐れることもない胆力は備えていた。

 

「それで、その依頼はどうするつもりだ?」

「―――報酬が破格。少し胡散臭くはあるけど、貴方が良ければ受けたいと思っている」

「ふむ、ではまず内容を聞いてみようか」

「―――今回の依頼者はフェメール伯爵。依頼内容は王国国土にある遺跡の調査……ワーカーに依頼するという事は実質強行偵察と思われる。報酬は前金で200、後で150。仕事次第では追加報酬があり、見つけた魔法のアイテムは伯爵に全て権利があるものの、発見者には市場の半額で購入権をあたえられる。

 裏を取った限りでは、フェメール伯爵は鮮血帝の憶えは良くないものの、金銭に余裕はある。冒険者ギルドではなくワーカーに依頼がきた点も、王国国土内の調査という時点で納得はできる。ただ、問題はその遺跡そのもの。今まで未発見の遺跡ということだけど、調べた限りではそんな所に都市があった記録はなく、噂もない。情報の出所も不明、そのわりには報酬が高すぎるという点」

「確かに妙な話だな、だが罠というには少し回りくどい。例えばその遺跡が危険な場所にあるということは?」

「―――安全ではないけど、裏付けというには弱い。遺跡の場所はここ。トブの大森林付近ではあるけど、近くに小さな村がある。この村は昔からあるようだし、そう危険な場所だとは思えない」

 

 アルシェが地図を広げて指差した場所には、何もない平地が広がっている。だが、モモンガにはそこに少しばかりの縁がある。近くの村の名は『カルネ村』だったのだ。

 

(とするとここは俺がこの世界に降り立った場所じゃないのか? だが、あんな場所に遺跡なんて無かったが……)

 

「遺跡の情報は少しもないのか? 例えば常時霧に覆われているとか、草に覆われた中に地下への階段が紛れていたとか」

「―――特にそういった情報はなかった。何故いままで見つからなかったのか分からないぐらい、堂々と大きな遺跡がいつの間にかそこにあったらしい。遺跡というのは少し表現が違うかもしれない。発見者はこの遺跡をこう表現した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――大墳墓」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モモンガ様漫遊記<最終話>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まさかな」

 

 モモンガは宿の一室で独りごちる。

 思い出されるのは先日アルシェとした依頼の事。知らないのに心当たりがある、奇妙な感覚のそれだ。

 

「そんな筈がない」

 

 今日は依頼当日であり、集合時間までそう余裕はない。だが、モモンガは未だ自らの部屋を一歩も出ることなく、まとまらない思考を持て余していた。

 

「……上位道具破壊(グレーター・ブレイク・アイテム)

 

 モモンガがそう呟くと、身にまとっていた全身鎧が霞の様に消える。そして数秒とすることなく、彼の身は本来の魔法詠唱者の姿へと変わっていた。

 

(確かめてみるしかない)

 

 肉のない骨だけの顔に影が深まると、彼の手が突如開いた虚空の闇の中へ突っ込まれる。そこから引き出されたマジックスクロールは、情報探査魔法が込められた品だ。

 同じ動作を十数回と繰り返すと、机の上には多数のマジックスクロールで埋め尽くされていた。

 

探知対策(カウンター・ディテクト)

 

 並べた探知魔法を一つ一つ丁寧に使っていき、そのたびに効果を発揮したスクロールが消えていく。

 

(もし……いや、万が一“アレ”があるのだとしたら、表層とはいえ覗き込むのは危険だ)

 

 数々の魔法を発動させているモモンガの手は震えている。それは恐怖なのか、期待に浮足立っているのか、本人にすら判らない複雑な感情があった。

 並べた全てのスクロールを使い終わるまでそう時間はかからない。最後に発動した遠くの景色を見る魔法を発動し、モモンガは今日ワーカー達が集合する場所、つまりは依頼主に関わりがあるだろう者たちの姿を探し、そして―――

 

「……嘘、だろ?」

 

 見覚えのある執事(・・・・・・・・)の姿を見て、しばしの間唖然として立ち尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルシェ」

 

 聞き覚えのある声に振り向いたアルシェは、掛けるべき声を飲み込んで硬直した。

 

「……モモン?」

「今の俺はヘッケランだ、間違えるな」

「―――そうだった、ごめん」

 

 本日の依頼集合場所にモモンガの指示で先に来ていたアルシェは、近づいてくる男の姿に何とも複雑そうな表情を向けた。

 

「どうした?」

「―――軽装にフルフェイスは余り合わないかも」

 

それもそうだな、と2人して苦笑する。

 

「よう、アルシェ」

「―――グリンガム」

 

そこに現れた無骨な男。この場にいるということは、彼もまたワーカーなのだろう。彼は顔見知りの少女に話しかけた後、どこか見覚えのある鎧を着た見知らぬ男へと目を向けた。

 

「それで貴殿は?」

「初めまして。いや、久しぶりだなグリンガムさん。俺は〝フォーサイト〟のヘッケラン。よろしく頼む」

 

 不思議な挨拶を返すモモンガ。訝しんだ表情をしたグリンガムだったが、何かを思い出したのか、その顔を笑みへと変えた。

 

「成る程、よくわかった。久しぶりだなヘッケラン、我は〝ヘビーマッシャー〟のグリンガム。14人からなるワーカーのリーダーを努めている。今回はよろしく頼む」

「ああ、よろしく」

 

 真意が伝わったおかげか、互いに固い握手をする。

 

「〝フォーサイト〟の話とアルシェの噂は聞いていたが、こんな形で会えるとは思わなかった」

「色々と事情があってな。普段はこんな事をしていないから安心してくれ」

「む、そうか。まあ同じワーカーでも汝と仕事がかぶる事はなさそうだが」

 

 変にライバル視されても困る為にモモンガは正直に答えたが、グリンガムは気楽に答えた。彼は力の差がありすぎて同じような仕事でかち合うことはないだろう、そう言いながら苦笑する。

 

「……それにしても不思議なものだな」

「―――私もそう思う」

「何がだ?」

 

 顎に手を当て唸るグリンガム。アルシェも同様の疑問を覚えたようだ。

 

「その、なんだ。強者の風格というか……目の前にすればもっと圧倒されると思っていたのだが、何も感じないな」

「―――普段のモ、ヘッケランもそう存在感があるってわけじゃないけど、今日はいつも以上。こうして視界にいれていないと、気配も分かりづらい」

「ああ……今回はわざとそうしている(・・・・・・)からな。訳あって正体をバレたくない、すまないが協力してほしい」

「ほう、そういう武技かタレントか……はたまた噂のマジックアイテムか」

 

 感心した様子を見せたグリンガムは、改めて敬意を現すように頭を下げると、自分たちのチームへと戻っていった。

 

「―――私にも内緒?」

「ああ、付き合わせて悪いが協力してくれ」

 

 聞きたそうにしているアルシェをその言葉だけで制し、話は終わりだと言わんばかりに周りへ視線を向ける。そこには既に多数のワーカーチームが揃っているが、彼等がいくら猛者だとしてもモモンガの目に止まる事はない。

 モモンガの視線の先には、ただ一人だけが映る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆様、この度はお集まりいただき誠にありがとうございます」

 

 数々のワーカーを前にして物怖じせず、その老執事は姿勢良く礼をする。

 

「私達が今回の依頼場所へ案内致します。御用意がよろしければ、馬車へとお乗りください。すぐにでも出させていただきますので」

「ちーとよいかの」

 

 ワーカーの一人、〝緑葉(グリンリーフ)〟のパルパトラが声を上げる。

 

(ぬし)等を除いて他に誰も居ないようしゃが、まさか儂等に御者と護衛までやらせようというんかのぉ?」

 

 彼の疑問はもっともだ。ワーカーを除いて、老執事の他には黒髪に眼鏡の女性一人。しかも何故か彼等の服装は執事服とメイド服(・・・・・・・・)。彼等が同行者ではないとしたら、今回の依頼はワーカーだけで全てをこなすことになる。

 

「いえ、私達が御者と護衛を担当致します。現地までの安全と、野営地の確保は確実に保証いたしますので」

 

 だが老執事はそれら全てを担うとのたまった。これにはワーカー達も困惑を強くする。

 何しろ彼等は無手だ。メイドの方はなんだか凶悪なガントレットこそしているが、他に武器らしい武器を携帯していない。これに安心しろと言われても難しい話だ。

 

「ご安心ください。こう見えても護衛として十分な力を備えていると自負しております」

 

 そう言って朗らかに笑い、再び姿勢の良く深い礼をする老執事。

 そこに突然小さな風切り音が鳴り―――直後老執事の指には鈍い銀光、ナイフが収められていた。

 

「成る程、確かに最低限の力はお持ちのようだ」

「〝天武(てんぶ)〟!」

 

 グリンガムの糾弾する様な声色に晒されたのは、涼やかな声色の男だ。

 彼の名はエルヤー・ウズルス。その伸び切った腕が、老執事の指に収まったナイフの主を物語っている。

 

「さて、これでご信用頂けましたでしょうか」

 

 ナイフを投擲されたというのにあくまで老執事は冷静で、朗らかな笑みさえ浮かべている。その余裕にワーカー達もある程度の安心を得たのか、これ以上の追及を止めた。

 

「では他にご質問がなければ出発致しますが」

「私からも、一つ」

 

 モモンガが声を上げる。視界内に居たはずなのに何故か認識できていなかったのか、そこで初めて気づいたかの様に彼に目を向ける老執事は、今まで崩さなかった余裕に小さな亀裂を作り、少し遅れてから了承を返す。

 

「あなた方は今回の依頼主、伯爵に仕えている者なのでしょうか」

「……何故、そのような質問を?」

「いえ、ただ少し疑問に思っただけです。あなた達の様な達人を同行させるというのなら、伯爵の本気度にも繋がるかな、と」

「……」

 

 老執事は押し黙る。だが隠すまでもないと判断したのか、その重そうな口を開いた。

 

「いえ、私達は伯爵に仕えている者ではありません。今回の依頼を遂行する為に命を受けただけの雇われ者で御座います」

「そうか……ちなみにあなた達の本来の主については」

「―――申し訳ございませんがお答えできません」

 

 冒険者組合を通した仕事ならともかく、ワーカーなら依頼人の情報が隠されていることなど珍しいことでもない。というよりも普通の仕事を依頼したいのならそれこそ冒険者を雇えばいいのであり、後ろめたいことがあるからワーカーなどを雇うのだ。

 つまりはモモンガの質問は依頼人の腹を探るような本来忌避される行為であり、誰も得のしない行為となる。

 だが、少なくともモモンガと老執事にとっては何か大事な意味があったようで、二人の間に困惑や不快な感情は見られなかった。

 

「それでは皆様馬車にお乗りください、早速出発致しましょう」

 

 再び朗らかに笑い彼等を促そうとした老執事が、何かを思い出したように振り向き直す。

 

「これはこれは、私としたことが自己紹介を忘れておりました。

 ―――私、セバス・チャンと申します。以後、お見知りおきを」

 

 そう言って、まるで別れの挨拶であるかのように、深い礼をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目的地は王国の領地内にある。その為、移動に大きな街道を利用できず、馬を休ませるためにも何度か休憩を挟むことになった。

 休憩地ではメイドがせわしなく歩き回り、献身的に給仕を行なっている。各チームはその待遇を喜んで受け、和かな空気に包まれていた。

 モモンは一人、その輪から離れて何かを考え込んでいる。

 

「少し、よろしいでしょうか」

 

 他人を拒絶する姿勢を見せていたモモンガに話しかける者がいる。老執事セバス。彼は強面ながら人の良い表情を見せ、近づいてきた。

 

「……何か御用ですか?」

「用、というわけではないのですが」

 

 セバスは何をするでもなく、ただじっとモモンガを見る。確かめるように、何かを懐かしむように。そして幾ばくかの困惑を見せながら。

 

「……」

「あ、いえ、不躾でしたな。これは申し訳ございません」

「やはり私に何かお話でも?」

「いえ、本当にこれといった用事があるわけではないのです。ただ……」

「ただ……?」

「何故か、貴方と話してみたかった、と言ったらおかしいでしょうか」

 

 モモンガは追及されるような言葉に少し身構えたが、すぐに力を抜いた。セバスの視線には言葉とは裏腹に値踏みしているようなものは感じられず、そこにはやはり困惑と―――どうしてか懇願するような意思が感じられたからだ。

 

「少し、質問してもよろしいでしょうか」

「……答えられる範囲なら」

「ありがとうございます。では、貴方は何故ワーカーになられたのでしょうか?」

「必要にかられて、ですね。人間生きていれば自分の意志に関係ない選択も迫られます」

「申し訳ございません、込み入った事情がお有りなのですね」

「気にしないでください、そう重い理由ではないので」

「左様でございますか」

 

 淡々として、それでいて妙に進む会話。少なくともモモンガは誰かと気楽に話す余裕など無い筈なのに、どうしてか彼をおざなりにすることはなかった。

 ひとつ、ふたつと問いかけは続いていき、互いの時間は素早く過ぎ去って行く。

 

「―――成る程、とても参考になりました」

「大したことではありませんよ、私の話など退屈でしたでしょう」

「いえいえ、普段は拠点の管理で外へ出ることが少ないものでして。外界の話はとても刺激的で面白いものです」

「それは良かった」

「……ああ、質問ばかりして申し訳ございません。

 失礼を承知で申し上げるのですが、最後にもう一つだけお聞きしてもよろしいでしょうか」

「ええ、先程も言いましたが答えられる範囲なら」

 

 そこまで和らいでいた雰囲気が引き締まり、セバスの眼光が鋭く輝く。

 

「何故、今回の依頼を受けられたのでしょうか」

「何故、とは?」

「私がこう言ってはなんですが、この依頼は少々得体が知れないとは思われませんか? 王国領土内の遺跡に、帝国のワーカーが雇われる。謎が多く、得られるものが不明だというわりには報酬は破格です。

 こうしてお話させて頂きましたが、貴方は聡明な方のようだ。だというのに、何故このような話をうけられたのですか?」

「……」

 

 それは、本人が言うように依頼者側の人間が言ってはいけない事だろう。

 まるで今からでも遅くないから、帰れとでも言わんばかりである。

 

「報酬が目当てなのでしょうか」

「いえ」

「では人跡未踏の地を踏む、冒険心から?」

「いえ、それも違います」

「それでは、何故?」

 

 何故。そう問われてもモモンガの中に明確な答えは無い。

 多分ここにいる誰よりも、それこそ『その地』で何が起きているかを知っている筈のセバスよりも、モモンガはそこの危険性を知っている。報酬だって無理にこの依頼で稼ぐ必要はない。他にいくらでもやりようはある。

 ならば、何故?

 

「確認、したい事があるから、です」

「確認、でございますか」

「私―――いや、俺にとってそこが何であるか(・・・・・・・・・・・・・)、それを確かめる為に」

 

 何がそこにあるか、そんな事は知っている。どんな場所であるか、きっとこの世界の誰よりも詳しい。

 だが、ああ、だが―――そこがモモンガにとってどんな場所であるかは……

 

「……あなた、様は……一体―――」

「―――ヘッケラン、そろそろ出発するみたいだから準備を……」

「!」

 

 曖昧すぎて理解できないはずの回答に、何故か大きく動揺してたセバスの後ろからアルシェが現れる。間近まで接近されていたにも拘らず気づかない程、セバスは強く心を揺さぶられていたらしい。

 

「―――お邪魔、した?」

「い、いえいえ。これは申し訳ございませんアルシェ様。おもてなしするべき私がこのように話し込んでいるなど、執事失格でございますな。

 それではヘッケラン様、私も準備が御座いますので失礼致します。私めの様な者にお付き合い頂き、ありがとうございました」

 

 深々と、誠実に礼をしたセバスは馬車へと戻っていく。

 

「―――やっぱり、邪魔した?」

「いや……どうだかな、俺にも判らん」

 

 モモンガの声は、絞り出される様に弱かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旅路は実に快適なものだった。

 

 ワーカーの為に用意したと思えないほどにしっかりとした馬車は、彼等の足腰にダメージを与えることなく順調に悪路を駆け抜ける。目的地は王国領内ということもあり、あまり安全ではない道を選んでいたにも拘らず、何故か一度もモンスターに合うことすらなかった。

 その快適とも言える旅路に対して、モモンガはほぼ上の空で過ごしていた。アルシェが話しかければ反応こそ返すものの、殆ど会話らしい会話が成り立たない。別のチームに話しかけられることもあったが、ほぼ無反応だ。

 何故かモモンガを気にかけるセバスという執事にだけは少し反応をしたことはしたが、その間には妙な緊張感が流れていた。

 

 結果、短いとも長いとも言えない時間を気まずい空気を纏ったまま進む集団は、あっさりと目的地へとたどり着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――」

 

 モモンガは、その『大墳墓』を見上げていた。

 身動き一つすることなく、絶句したままに。

 

「―――凄い」

 

 隣にいたアルシェの声にも驚愕の色が宿っている。

 だが、モモンガの驚きはその比ではない。なにしろ正しく言葉もないのだ。

 

「―――ヘッケラン?」

「……あ、ああ、何だ?」

 

 何度目かの呼びかけに、ようやく反応を返すモモンガ。だがやはりその声には力はなく、どこか上の空である事に変わりない。

 

「―――各チームのリーダーで打ち合わせをするみたい。調子が悪いみたいだし、私が代わりに出る?」

「いや、俺が出よう。気を遣わせてすまない」

 

 そう言って墳墓から目を離し、野営地へ歩き出す。

 ふと見直した場所には、大きな石の構造物。不自然に積み上がった大岩はそれだけで奇妙だが、モモンガが注視していたのはそこではない。

 大岩の根元、草原を踏み潰すように立っているそこには、何故か焼け焦げ枯れ果てた地肌が見えている。他の大岩の全てがそうというわけではなく、その場だけが『まるで魔法で焼き払われた』ように……

 

(ありえるのか)

 

 何もないこの場所、人もモンスターもいないこの場所で、魔法を放つ理由。そしてその後から生えてきた様に存在する墳墓。

 誰も解けない難問を前に、モモンガだけが正解を導き出せた。

 

(そんなことがありえるのか?)

 

 ただ、それを受け止められない。信じきれない。だが、肯定する証拠だけは十分に手に入ってしまっている。

 ツアーに聞いた拠点と共に現れたプレイヤー達、見知った姿形の老執事とメイド、焼け焦げた大地、そして毒沼も石化の魔物もいないが、酷く見覚えのある拠点。

 

(後になって……遅れてアレは現れた……?)

 

 もはや推理でもなんでもない、答えの揃った真実。それが、モモンガの心を激しく揺さぶる。

 

「―――モモン」

 

 ふいに呼び止められ、ぐるぐると廻っていた思考が止まる。隣を歩いていたアルシェはいつの間にかこちらを追い抜いていたようで、足を止めてこちらを向いている。

 

「どうした、アルシェ。それとその名前で呼ばないでくれと何度も―――」

「帰ろう」

 

 突然、彼女は今まで見せたこともないような強い口調でそう言った。

 

「いきなりどうしたんだ?」

「貴方は今回の依頼を受けてからずっとおかしかった。今、それは最高潮になったと思う。その状態でこの仕事は危険。だから、帰ろう」

「……だが今回の報酬は高額だ。お前の目標金額を達成して余りあるほどに。それを目の前にして、帰れるのか?」

「確かに惜しい。でもそれ以上に今の貴方を見ていられない。貴方に意見できる程に私は強くない、けど心配ぐらいはさせて欲しい」

「前金のある仕事だ。違約金があってもおかしくはない。それでも帰るのか?」

「帰る。貴方には沢山の恩がある。ここでチームを解散するなら、それでもいい。だから、私の説得に乗って欲しい」

 

 アルシェの言葉に偽りはない。心底からモモンガに気を使っているのが伝わってくる。

 

(これだから、人間というやつは……)

 

 困惑と焦りのような感情にジリジリと身を焼かれていたモモンガに、幾ばくかの余裕が戻る。

 

「わかった、ならば解散だな」

 

悲痛な顔をしたアルシェの手に、袋を無理やり手渡す。

 

「―――なに?」

「王都にある俺の家の鍵と、白金貨がいくらか、それとアダマンタイトプレートが入っている」

「!? なっ、なんで!」

「お前は帰れ。そして妹を連れて王都に行け。家は好きに使ってもいい。一度ガゼフに、王国戦士長に会っておけ、俺の名を出せば悪くはされないだろう」

「だから、なんで!」

「なあアルシェ、俺の旅に目的地は無かった。だがそれも今日まで、いやここまで。俺には確かめるべきことが、やらなくちゃいけないことができた」

「それは、何? 私も手伝う」

「いや、いい。これは冒険者ではなく、ましてやワーカーでもない。俺だけの用事だ。俺ひとりだけの……」

 

 

 

 

 

 

 

 深夜、モモンガは一人大墳墓へと足を踏み入れる。

 アルシェは野営地に残し、もし朝までに戻らなかったのならば帰るように言い含めた。納得しきってなかったが、無駄死にしたいのならついて来い、とまで言ったおかげか最後には頷いてくれた。

 他のワーカー達は好き勝手に浸入しようとしている。『あそこは危険だから帰れ』と教えてやったが、反応こそ一人一人違うものの全員聞き入れはしなかった。それはまあ、モモンガにはどうでも良いことだが。

 

 堂々と隠れることなく、モモンガは歩き続ける。

 敵も、罠もいくらかあったが真正面から食い破る。何故かモモンガが想定していたものより規模が小さい。警戒と対策をしていたぶん拍子抜けではあるが、そこに共通性を見出して納得した。コストを極力抑えた罠やモンスターのみが動いているのだ。それでもこの世界にとっては過剰な力だが、よく工夫され練られているとモモンガは感じた。

 

 地下三階。会えるはずの強敵もそこには居らず、だがある罠が隠されていることを看破した。このまま進めば確実に発動する。解除のアイテムはもっているし、避けて進む道も知っている。だが、モモンガは敢えてその罠を踏み抜き、視界が光と闇に包まれていくのを享受した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何だこれは」

 

 転移の罠で辿り着いた先には地下とは思えぬ広い空間、空に描かれた人口の夜空、古代ローマを思わせる円形闘技場があった。

 とはいえこの空間自体には驚きは無い。何しろそこは他でもないモモンガ自身がギルドの仲間達とで創り上げた場所だからだ。

 驚くべき事は他にある。

 普段その闘技場……第六階層は本来2人の守護者と配下である魔獣だけが配置されていた。が、今この場には多数の観客がひしめき、異様な熱気を感じさせる異空間と化している。

 観客は人では無い。不死者、悪魔、魔獣……多数の異形種がひしめきあい、奇妙な興奮が場を満たしていた。

 

「とうっ!」

 

 上から幼い声が響き渡り、その小柄な体躯を小さく纏めて華麗に着地する。

 

「アウラ……」

 

 口の中で小さく呟いた声は、この場の誰にも届く事は無い。

 

「皆さん! お待たせいたしました! まずは挑戦者の登場です!」

 

 少年のような少女が拡声アイテムで声を上げると、観客席から歓声が上がり、ゴーレム達が足を踏みならす。

 

「愚かにもナザリック地下大墳墓に侵入してきた者たちの中、あっさりとシモベ達や罠で命を落としていく雑魚達とは違って第三階層まで無傷でたどり着いた侵入者! 果たしてこの場でも少しは手応えの一つでも見せてくれるのでしょうか!?」

 

 彼女はアナウンスなのだろうか、リングインする選手を迎えるように紹介を続けた。だが、観客席から感じる視線には挑戦者を暖かく迎えるような感情は見られない。あるのは敵意と、嗜虐的な意思だけだ。

 

「これに対するのはこの女だぁ!」

 

 割れんばかりの歓声が響き渡る。物理的な衝撃さえ感じるその中に、華麗に舞い降りる1つの影。ある鳥人が創造した、美しき吸血鬼。

 

「お初にお目にかかるでありんす。わらわは第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン。どうせ一瞬だけのお付き合い、覚えていただかなくても結構でありんす」

 

 そう言って残酷に、そして美しく笑う吸血鬼。

 その美しき顔に思い浮かぶ。友の鳥人が夢見た理想、それが夢のままに動いている。

 彼が理想を追い求め、突き詰めた少女。時に設定を語り聞き、装備の為にと共に駆けずり回った。自分が作ったアレの次に詳しいであろう、彼女が。

 それでようやく理解できた。納得できた。

 

(俺の、俺たちの作ったNPC達が、動いて、喋ってる)

 

 困惑と感動が溢れ出る。何度も何度も、振り切った感情が強制的に抑制させられる。

 そして冷静になるに従い浮かび上がる疑問。ここが在ると聞いたときから、ずっと懸念していたこと。

 

(果たして俺は、『俺たち』は彼等の何なのだろうか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだか反応の薄い侵入者でありんすねえ」

 

 シャルティアはサディスティックに浮かべていた笑みをつまらなそうに歪ませる。ちなみに彼女は武器どころか鎧すら装着していない。己が身体能力だけで十分だと、侵入者を見下しているのだろう。

 まあ彼女が日常的に来ているドレスですらモモンガの作った鎧を軽く上廻っているので、間違っているわけではないのだが。

 

「申し訳ありません、あまりの光景に呆けていました。

 侵入、との事でしたがそのつもりはありませんでした。可能ならば謝罪を受け―――あの、何か?」

 

 モモンガの声を聞いたシャルティアは、元から大きな目をさらに見開き、何故か呆けた表情をして反応を返さない。

 

「……不思議な声をする男でありんすね。妙だわ……なんだか、安らぐというか……体が熱くなるというか……いえ、気のせいね。ニンゲン如き、ただこれからの虐殺が楽しみなだけよ……」

 

 ボソボソと一人呟くシャルティアの声は、モモンガの耳にだけ届いていた。シャルティアといい、セバスといい、彼等の反応が何を意味しているかは判らないが、バレていないのならば問題はない。

 

「謝罪を受けてはもらえないでしょうか。繰り返しますが、私はここが誰かの所有地だという認識はなかったのです。もちろん、謝罪だけでなく可能な限りの賠償も用意いたします」

「ふん、ニンゲン如きの謝罪や賠償などでナザリックに踏み込んだ罪は拭えないでありんす。ここは至高の四十一人である御方々が住む最も尊き城。ぬし一人の命程度でどうこうできることではありんせん」

 

 至高の四十一人。モモンガにとって始めて聞く言葉であり、あまりに心当たりのある言葉。

 

「ならば―――」

「もうだまりなんし」

 

 問答無用、とばかりにシャルティアの爪がビキリと伸びると、今度は表情を不機嫌に染める。

 

「ぬしは許されないことをしたでありんす。ここで我らの知識のため、我らの憂さ晴らしのため、醜く派手に飛び散るのが運命」

 

 小さな体から重圧感が生まれ、矢のように引き絞られた力が少しずつ溜まっていく。

 

「せいぜいわらわ達を楽しませるでありんす。ぬし達はその為に集められた贄なのだから」

 

 モモンガも剣を構え、まさに一触即発。といった所で頭上から新たな気配―――強い冷気が舞い降りた。

 アウラの身体能力を活かして衝撃を殺した着地や、シャルティアの魔法で舞い降りる方法とは異なり、頑丈さに任せた重量を感じさせる着地だ。

 

「待テ、シャルティア」

 

 現れたのはライトブルーの異形。昆虫を思わせる二足歩行の戦士だ。

 

「何故止めるでありんすか、コキュートス」

「約束シテイタ筈ダゾ。侵入者ガソレナリノ腕ヲ持ッタ戦士ナラバ、私ガ戦ウト決メテイタ筈ダ」

「この男が『それなり』には見えなかったでありんすが」

「我々ノ基準デ言エバソウダロウ。ダガ、侵入者達ノ中デハ頭一ツ抜ケ出テイタ事ハ確カダ」

「……」

 

 不快そうに表情を歪めていたシャルティアの爪が、文字通りに引っ込む。

 

「はあ、分かりんした。わらわも何故だかこの男とはやり辛かったもの。あとはぬしの好きにするでありんす」

「礼ヲ言ウ」

 

 客席へ戻るシャルティアに対して、通り過ぎてモモンガへと歩を進めるコキュートス。

 

「シャルティアハアア言ッテイタガ、私ハ逆ダ。何故カ、オ前トノ戦イヲ思ウト高揚ヲ覚エル」

「……それは、光栄な事ですね」

「ドウイウ意味ダ?」

「先程の会話を聞くに、貴方は『武人』のようだ。戦士として遥かに上を行くだろう貴方に認めて貰えたのならば、私にとっては光栄なことなのです」

 

 入れ替わるように入ってきたコキュートスに、モモンガは言葉で揺さぶりをかける。彼等に自分たちが決めた設定が生きているのか、そして自分たちがどう思われているのか、見極める為に。

 

「私ガ、『武人』カ……確カニ私ハ主ニソウアルベキト定メラレテイルガ、ソウ名乗ルノハ分不相応ダロウ」

「そうは見えませんが」

「私ハ、私達ハ……イヤ、オ前ニ言ッテドウナル事デモアルマイ。剣ヲ抜ケ侵入者」

 

 コキュートスが構える。その手にしている武器は『斬神刀皇』ではなく、神器級(ゴッズ)どころか伝説級(レジェンド)にも届かない代物だ。つまり彼は本気を出すつもりはなく、この状況はシャルティアの言葉を思うにあくまで侵入者を追い詰めるショーでしかないのだろう。

 だが、そんな物ですらこの世界で見たどの武器よりも強く、鋭い。モモンガが魔法で作り出した武器など、あれに比べればガラスのオモチャだ。

 

「話し合いで済ますわけには……」

「クドイ。セメテモノ情ケダ、戦士トシテノ最後ヲ約束シヨウ。イクゾ!」

 

 まさに問答無用。コキュートスの抱えた薙刀が掲げられ、その突進と同じく恐ろしき速度で振るわれた。

 

 

 

 

 

 この世界に来て始めて味わう、死の気配。断頭の刃が如く、首元へと振り下ろされる斧槍。モモンガはとっさに盾を掲げて防ごうとし、すんでのところで受け流しへ変えた。

 嫌な音とともに鋼鉄が滑り落ちる感覚。受け流しは成功したにも拘らず、深く傷ついた盾。それはモモンガの技量だけに問題があるわけではなく、単純に武具性能の差が大きい。まともに受ければ、モモンガは全ての武具ごとバターのように切り裂かれるだろう。

 

 だが、それでも受け流しは成功している。

 モモンガの剣技とは、すなわちガゼフの剣技だ。ガゼフの剣技は対人、そして戦争で鍛えられた一対多数が当然のもの。つまりは、受けから必ず攻めへと繋がる攻防一体の剣技だ。

 盾で受け流した反動を利用し、モモンガの剣がコキュートスへと迫る。先程のお返しとばかりに振るわれた剣先にはコキュートスの首がある。

 

 激しい硬質音。モモンガの剣はコキュートスの手甲めいた甲殻装甲によって防がれる。もちろん彼の装甲には傷一つもつかない。彼の甲殻装甲は上位の防具にこそ劣るものの、相当な防御力を誇る。今のモモンガの武器では数十、いや数百と攻撃を重ねた所で数ミリの傷が精一杯だろう。

 

 振り下ろされていたコキュートスの斧槍が、返す刀ですくい上げられる。先程ギリギリで受け流してしまった事もあり、今度は盾受けできるほどの猶予がない。モモンガは目の前にあるコキュートスの体を蹴り飛ばすように足を掛け、反動で斧槍の軌道から逃れる。なんとかダメージを負うことはなかったが、背中の外套はバッサリと切り裂かれた。

 

 着地と同時に、モモンガは大きく踏み出し大上段で剣を振り下ろす。対してコキュートスは焦ることなく斧槍を横に構え、剣を受け止めるつもりだ。

 その素直ともいえるコキュートスの防御に、モモンガは腋を締めて剣の振り幅を小さくまとめる。斧槍に触れる筈だった剣はすり抜けるように振るわれ、途中で強引に突き出されて突きへと変化した。

 

 くるり、と斧槍が回る。無駄なく振るわれた90度の回転は、その柄でモモンガの変則的な突きをあっさりと弾いた。そして今度はコキュートスが大上段の構えを得る。

 

 同じ蹴りでの脱出は望めない。だが後ろに下がれないなら前へと避ければよい。

 突きの勢いをそのまま、そして弾かれた力に逆らわず、モモンガはコキュートスの体を通り過ぎるようにすり抜けた。

 

 すり抜けざまに一太刀見舞ったが、まるで後ろに目が付いているように……コキュートスは複眼なので本当に見えているかも知れないが……当然のようにその一閃も受けられた。

 

 再び離れる距離。

 数秒にも満たない一瞬にして濃厚な攻防。

 殺意のない、どこかちぐはぐな命のやりとりはまだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 我々がこの世界へ来たのは、一月前程の事だったと思われる。

 

 

 

 

 

 

 ある日、いつものように侵入者のない平和な地獄絵図を見守っていた私へ彼女からの連絡があった。それは至急話したい事があるから来て欲しい、というシンプルなものだ。

 最初こそ至高の御方々に命じられた階層の守護を放棄するなどありえないと拒否したが、彼女の聞いたことのない懇願するような声色に折れることになる。

 集合場所へ来てみると、そこには各階層守護者達が勢揃いしていた。もちろん、特殊な立場である第四、第八階層守護者は抜いて、だが。

 

『あの方がお隠れになられた』

 

 それは信じがたい、まったくもって信憑性のない―――そう思いたい、言葉だった。

 その時に私が感じたことは、『そんな筈はない』だったか。『ああ、やはりか』だっただろうか。その時の私は混乱の最中にあり、詳しい事はどうだったか憶えていないし、思い出したくもないことだ。

 

『外へと御出になられただけでは?』

『いつものように「りある」へ一時的に行かれただけでは』

『数日帰られないことは今までもあったことだ』

 

 私達の質問、責めるような反論がいくつも彼女へ投げられたが、当の彼女はそれ以上は話そうとしない。

 

『ここからは私から説明いたします』

 

 ついにはその金の瞳から雫を流し始めた彼女へと代わり、あの男が話し始める。

 彼もまた、あの御方と最後に立ち会ったのだと言う。

 

『あの御方は、普段持ち出されなかったギルドの象徴を手にし、私達を共連れになさって王座の間へと訪れました』

 

 その日の御方は深く影を負っていたという。

 他の至高の方々が一人一人とお隠れになるに従い、覇気をなくされていたことは我々も知っている。だがその日、その時のあの方は、まるで消えてしまいそうな程に深い虚脱感を見せていたと、彼は感じたという。

 

『王の間へと参られたあの御方は、ひとつひとつ至高の方々のエンブレムを懐かしむように』

 

 過ぎ去った思い出を確かめるように、それらひとつひとつを指差し、

 

 

 

 

 ――――忽然と、姿を消した。

 

 

 

 

 その時の私達は、まともに会話できる状態ではなかった。

 あるものは泣き、あるものは打ちひしがれ、あるものは自傷した。

 だが、まだ本当にあの御方がお隠れになったと確定した訳ではない。私はそう言ってその場を収め、皆は一度各階層へ戻ることにした。数刻後にもう一度集まることを約束し。

 その数刻に果たして意味があったのか。あるいは、私自身も時間が欲しかったのかもしれない。落ち着くための時間か、それとも自分を誤魔化すための時間か。

 

 そして時間通りに再び集合した我々の中で、第一から第三階層守護者であり最も地表に近い彼女が慌てた様子でまくし立てた。

 

『外の光景が見たこともない平原になっていた』

 

 混乱に拍車を掛けた我々は、みな揃って地表へと出る。我々を迎えたのは幻術でも偽装でもない、確かに知らない景色だった。

 呆然として立ち尽くした我々の中で、いつもの気弱な様子で彼が言った。

 

『もしかして移動したのは僕達かもしれない』

 

 それはまさに闇の中で見た一筋の光だった。

 そう、もしこれが敵対組織の転移魔術や罠であったのだとしたら、全能たるあの御方を除いて我々だけが移動させられた可能性はありえる。

 情報無しでの決めつけは愚策だ。だが、あの方が自らの意思で御隠れになられたのではない、その可能性は我々に活力を与えた。

 

 それからの我々の動きは早かった。

 拠点内の再確認。収支を抑えた防衛機構の再構築。情報収集を行う隠密部隊編制。

 弾丸のような速度で指示を送り、ありとあらゆる想定をもって活動の幅を広げる。

 我々は協力しあった。普段は戦闘に偏重した彼や、色ごとや嗜虐心ばかり考えている彼女ですら、慣れないといいながらも頭を使って協力してくれた。その為に想定の数倍の速度で事を成せたのは、創造主たる御方々に胸を張れることだろうと思う。

 

 ―――ただ、本来我ら守護者の統括たる彼女だけは悲嘆に暮れ、日々を泣き崩れていた。それを責めるつもりはない。気持ちは痛い程に理解できたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしコキュートスには困ったものだね」

 

 眼下で行われている激戦―――魔法もスキルも使われていない以上、結局は遊びの範疇でしかないだろうが―――それを眺めながら、ため息をこぼす。

 

「これでも息抜きにはなっているのではないの? まあ、コキュートス以外はどうか判らないでありんすが」

「それが問題だよ。もちろん情報収集としては意味はあるが、これではショーたり得ない」

 

 思い通りにならないものだ、そう再びため息をつく。

 

 この『イベント』は現地人の戦力調査という側面をもっているが、本質的には我々の『息抜き』が目的だ。

 この地へ来てから数カ月、目的を同じく邁進してきた我々だが少しずつ足並みが乱れてきていた。あやふやな希望を目標にしているのだから、それもしょうがない事だとは思う。

 

 その為の『イベント』だ。

 

 現地人達の無様で滑稽な死にざまを楽しむ事で、これを明日への活力にしようと一考したのだ。もちろん、ただ楽しむだけではなく集める人間を現地の傭兵達にすることで、構築した防衛機構や彼らの戦力調査も行える。多数のメリットを見込める作戦である。

 ちなみにこういう事を楽しめない彼らには外の仕事を任せている。私がこういう気遣いをしても彼は訝しむだろうが、趣味こそ合わないが彼も仲間だ。気遣いの一つはしよう。

 だが、上手く行っていたのは途中までだ。侵入者のほぼ全ては新しい防衛機構テストとして役立ち、その無様な死に様は我々を大いに楽しませた。だが、こうしてメインイベントである闘技場での虐殺ショーは既に別物と化している。いつも武人然とした彼からすればこの催しを楽しめないとは思っていたが、自身が真正面から楽しみにいくとは思ってもいなかった。

 

 ……きっとあの御方であれば、私なぞよりも上手く事を進められたのだろう。

 

「それにしても君はあっさりと退いたね」

「……ただの気まぐれでありんす」

 

 彼女の妙な反応に首をひねる。彼女もこのイベントを楽しみにしていた一人だ。ショーのメインを任せた時の笑顔は遠慮などではなかったと思う。それが変わったのは、あの侵入者を目にした時だろうか。

 

「武具に詳しい方ではありませんが、見たところ大した武器ではなさそうだ。あれでは彼の防御は貫けない」

 

 近接ならば我らの中で一二を争う彼と戦いになっているだけで評価すべきことだ。だが、ダメージがない以上なんの緊張感もない、ただのお遊びだ。

 

「全く、君達はあのような傭兵に何を感じたのだか」

 

 裏腹に、自身のうちにもあるざわつきを振り払うように言葉を放つ。らしくない。全くもって今の私はらしくない。

 

「貴方もそう思いませんか? アル―――」

 

 不意に目をやった彼女の姿を見て、息を呑む。

 ……今日までみじろき一つせず、ただ失意に沈む日々を過ごしていた女は、その金の眼を大きく見開き―――

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

「くっ!」

 

 衝撃を受けた剣でなんとか殺し、逃しきれなかった分を大きく後退した体で受け止める。もはやモモンガの体は、正確には鎧だけなのだが、立派だった武具は傷だらけで見る目もない。辛うじて形を保っているだけの存在だ。後一度でも大きな衝撃を受ければ容易く崩れ落ちるだろう。

 だが、まだ彼は正体を晒すわけには行かない。

 

 彼等が自己の意志で生きている事は分かった。

 彼等の中に息づく『仲間達』を感じることはできた。

 しかしまだ彼等が味方であるのか、敵ではないのか、モモンガは確信を持てていなかった。

 

 逃げる手段はある。何しろモモンガにはあの指輪がある、撤退するだけならば実に容易だ。

 だからこそ、こうして彼等と対することができる今、何の関わりのない第三者として相対できる今、確かめる必要があるのだ。

 

「妙ダナ」

「何だと?」

 

 突然、コキュートスが構えを解いて話しかけてくる。いつの間にかどこか高揚していたように見えていた彼の戦意は霧のように消え去っていた。

 

「筋力、体力、精神力、ドレモ一級品ダ。反射神経モ悪クハナイ。武具コソ貧弱ダガ、調査シテイタヨリ強力ナ物ノヨウダ」

「褒めていただいているんですかね?」

「ソウ思ッテ貰ッテモ構ワン。ダガ、一ツダケ気ニナル事ガアル」

「何でしょうか」

「……オ前ハ剣士デハナイナ」

 

 躊躇いつつも、確信に満ちた声。

 

「何故、そう思われたんですか?」

「ソノ剣技、戦場デ鍛エラレタ実ニ合理的ナ物ダ。ダガ、ソレハオ前ノ物デハナク、借リ物ニ過ギナイノダロウ」

 

 モモンガは息を呑む。

 

「……凄いですね。今まで誰一人として見破れなかったのですが。何故分かったんですか?」

「妙ダト思ッタノハオ前ガ受ケニ廻ッタ時ダ。ソレダケ完成サレタ剣技ニモ拘ラズ、勘ヤ経験デハナク反射神経ニ頼リ考エテカラ行動ヲ決メテイル。ソノスタイルガ有リ得ナイトハ言ワンガ、ソレハ優レタ戦士トシテ異常ダ」

「成る程、勉強になりますね」

「オ前ハ一体何者ダ? 何ヲ隠シテイル?」

 

 内心でコキュートスを賞賛しつつも、モモンガは次なる行動を迷う。

 

「……隠している事を話す前に、私も質問しても良いでしょうか」

「フム、力ヲ隠サレタママ戦ッテモツマラナイ。答エラレル事ナラ答エヨウ」

 

 モモンガは思う。たぶん、これが最後のチャンスなのだろうと。何を聞けばよいのか、何を問えばいいのか、考える。考えて、ある意味最低な質問を決めた。

 

「――――その『貴賓室』には、誰かいるのか?」

 

 この円形闘技場内で最も豪華な場所がある。明りこそ点いているが、ここで見る限り人の気配は見られない。

 それを聞いた蟲の怪人は硬直し、怒気を強め、だが冷静に答えた。

 

「今ハイナイ」

「今は? ならばこの墳墓の中にいるのでしょうか。ならばここに侵入した罪を詫びたいと思います、一目会わせてはいただけませんか?」

「……御方々ハ何処カへ出ラレテイル。御戻リハ不明ダ」

「それはおかしいですね。主が部下たちに何も告げずに去ったのですか? 何処へ、いつ帰るか告げずに?」

「…………ソレ以上、喋ルナ」

「一度も? 一瞬でも顔を出してこなかったのですか? 何があっても、侵入者が来ても、イベントがあっても。

 ああ、もしそうであるならばソレは外出などと言うものではなく―――」

「ダマレェ!」

 

 

 

 

 

 

「―――貴方達を捨てて、出ていっただけなのでは?」

 

 

 

 

 

 

 

 モモンガ自らの心を抉るような言葉は大声ではなく、語りかけるような口調だが何故か闘技場中へと響き渡る。

 さざ波のように広がる沈黙、耳が痛いほどの静寂。

 そして、波が返す様に色を濃くする悲しみと合わせて、火が広がるかの様な感情が全体へ広がる―――怒りだ。

 

「……ダマレ……ダマレダマレ! ソンナ事ハ判ッテイル!」

 

 まさしく烈火の如く吹きあがる怒気。コキュートスの体からは、反して強い冷気が発せられた。

 

「至高ノ方々ガ我ラヲ置イテ行ッタ事ナド、判ッテイルノダ! ソレガ我ラノ不足カ、何ナノカハ判ラヌガ、モウ戻ッテ来ラレナイ事ナド、覚悟シテイル!」

 

 それはまさしく、魂からの言葉だった。

 ナザリックの誰もがそう思いながらも、決して口に出す事はなかった慟哭。その可能性を考えることすら耐えられない苦しみを生む呪いの言葉。

 彼らは決して無能ではなく、そして勘が鈍い訳でもない。ただ、拠り所がないから都合のいい結論に縋っていただけなのだ。

 

「ダガ我ラニ何ガ出来ル!? コノ地ノ守護トイウ与エラレタ命ニ背ク訳ニハイカナイ! 至高ノ方々ニ供ヲ願ウコトモデキナイ! ナラバ、ナラバ一体何ヲ!?」

 

 それは、彼らは、いわば捨て子だ。何がしたい、何をするべきと判断がつく前に、一人残された子供なのだ。

 どんなに力を持ち、知恵を得ていても、自我ができたばかりの彼らは本質道に迷った子供と大差がない。

 

 

 ――――その姿に、独りナザリックに残された自身(モモンガ)を幻視する。

 

 

「……恨んではいないのですか? 置いて行かれたことを」

「恨ム……? ソンナ事ハアリエン」

「それは自分達を創ってくれた感謝から、ですか?」

「創造主ヘノ忠誠ハ確カニ有ル。ダガ、ソレダケデハナイ」

 

 危ない発言にも、気が高ぶっているコキュートスは気づかない。だが次に発した言葉には、今まであったような怒気や悲哀ではなく、

 

「我ラハ、敬愛シテイルカラダ。異形種デアル事ニ誇リヲ持チ、我ラトコノ地ヲ創造シタ(ちから)ト知恵、ソシテ強キ御心ニ」

 

 

 

 

 

 

 

 確かな、誇りに満ちた結論。

 何があろうとそこだけは揺るがないのだと、彼はあっさりと、ナザリックの在り方を、モモンガの誇りを、言葉にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ク……クク……」

 

 体が震え、喜びが湧き上がる。

 

「一人になったと思ってた。サービス終了前も、後も。もう俺には何も残ってないと思ってたが……何だ、全部ここにあったんじゃないか」

「……何ガ言イイタイ」

 

 まるで狂ったかのように言動を変えた目の前の男に、コキュートスは困惑する。だが、その男には狂気など感じられず、むしろ喜びと余裕すら感じさせた。

 

「ああ、いやすまなかったなコキュートス。一人で盛り上がっていた。別にお前達を笑っていたわけではない」

「ハッ、モッタイナキ御言葉―――ハ?」

 

 何故か跪きかけた自分に疑問を持ち、ギリギリで正気を取り戻す。コキュートスの困惑は強くなる。目の前の男の言動に、強い喜悦を覚えていた。その理由を考え、最も自分にとって都合のいい妄想をちらつかせた。

 

「マサ、カ」

「感動の再会だ、どうせならば盛り上げたいところだが場が冷えてしまったな……ならば――――」

 

 戦士の手に忽然と現れる小さなアイテム。砂時計の姿をしたそれは、あるカテゴリに属する強力なもの。それを『彼等』は時に揶揄し、誇り、称するのだ。『課金アイテム』と。

 

「少し派手にいくか!」

 

 ガラスが砕ける音。同時に闘技場を覆う巨大な立体魔法陣。その内に、コキュートスは尊き白い(かんばせ)を垣間見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――その金の瞳から大粒の涙を流した。

 

「あの方だわ……あの方よ! あの方が、帰っ、て!」

 

 狂乱、いや狂喜して叫ぶ彼女に、困惑と同時に期待を抱いて闘技場へ目を向ける。そこには、

 

「なっ、あれは!」

「まさか、超位魔法!?」

 

 私の驚愕に答えるように、シャルティアが言葉を重ねる。

 もしあれが想像通りのモノならばすぐさま止めに入らなければならない。あれが何の魔法かまでは判らないが、攻撃的なモノならばこの狭い空間だ、多数の死者を出す事になる。

 だが、本来長い発動待機時間を必要とするそれはただの一瞬すら待ちはなく、

 

 

 

「それでは――――少し派手にいくか!」

 

 

 

 耳に届いた瞬間、何故か喜悦に身を震わせる音色と共に、世界が赤く彩られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――目を見開いたそこには、地獄絵図があった。

 無機質な床や壁は赤黒く彩られ、激しい熱を発している。それはまさに地獄絵図、第七階層守護者である彼にとって、とても身近な光景だ。

 

「……ダメージが、無い?」

 

 見渡せば闘技場の全て、舞台と観客席は炎とマグマで覆われている。しかし逆に言えばそれだけで、隕石の雨が降るでも目に見えるモノ全てが塵と化すわけではない。

 この場にいる者達はほぼ全てが強い属性耐性を保有している為、この程度ならば悪くて火傷程度だ。それはおかしい、超位魔法の効果としてはあまりに弱い。

 

「……いや、フィールドの属性を変えた。たったひとつの魔法で?」

 

 個人の魔法で世界の在り方を改変する。確かにそれは超位魔法に相応しい。

 だが、何故、それだけの事ができるものが何故、その力を攻撃に転じなかったのか。

 彼は―――宝石の眼をした悪魔は炎が舞う視界を細め、その先にある真実を解き明かそうとし、

 

 

 

 

 

「クク……フフフ……ハッハッハッハ!」

 

 

 

 

 

 心より求めた声が、赤く彩られた世界よりも強く、心を焦がした。

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 闇の様に深い黒衣の外套。

 恐ろしい魔力の篭められた多数の装飾。

 白磁の様に美しく、金剛石を超える強度の骨格。

 伽藍堂の内に怪しく輝く赤い宝珠。

 そして―――その手にはあるギルドの象徴。

 

「我が友よ、我が子等よ、我がシモベ共よ! よくぞ我らが居城を守り通した」

 

 黒々とした絶望の闇が広がる。

 その黒い光に触れた下僕たちは恐れ、狂乱し――――歓喜する。

 その闇が、その声が、その姿が、激しい衝撃となって彼等の背骨を下から上へと貫き、絶頂へと導く。

 

「今、私はここに帰還した! この時、この場より、私が再びこの地を独裁し、私がお前達を支配しよう」

 

 全てのものが跪く。

 死霊、不死者、悪魔、精霊、そして守護者までもが。

 その表情には一つ、ただ一つだけの感情が浮かび上がっていた。

 

「我が名を讃えよ――――ナザリックが地下大墳墓、アインズ・ウール・ゴウンの長、すなわち―――」

 

 この場の誰もがその姿を求めた。

 この場の誰もがその声を求めた。

 そして、この場の誰もがその名を求めた。

 

「我が名はモモンガ! オマエ達の真なる支配者である!」

 

 ――――瞬間、第六階層は悲鳴のような歓喜の絶叫に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 玉座の間。偉大さと美しさを兼ね備えたその場には、多種多様の異形種が跪いていた。

 

「各階層守護者、揃いまして御座います」

 

 美しき天使の様なサキュバス―――アルベドが玉座に最も近い位置で皆のように跪き、声を上げる。

 

「良くぞ揃ってくれた、我がシモベ達よ。まずは暫くこの地を空けた事を詫びよう、そして礼を言う」

 

 浅く頭を下げた王に、彼等は動揺を覚える。だがその口を開く事はない。何故ならばまだ王の言葉は続いていたからだ。

 

「そしてオマエ達に至上の命令を下す」

 

 王が玉座から立ち上がる。

 

「アインズ・ウール・ゴウンを無窮のモノとせよ。

 全ての障害、全ての外敵を退け、アインズ・ウール・ゴウンの栄光を永遠に保ち続けるのだ!

 期限はそう―――我々がこの世界という箱庭に飽きるまで、としておこう」

「御命令、賜りました。アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ! 我ら全ての王、モモンガ様に栄光あれ!」

 

 王を除いた、全てのモノの喝采が響き渡る。地を揺らし、階を突き抜け、外へと届けと言わんばかりに。

 それは復活であり、産声であり、まさしく始まりなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――何事にも終わりはある。

生には死があり、朝には夜があり、ゲームにはクリアがある。

では、旅の終わりとは一体なんだろうか?

 

それはきっと、家に帰るということ、なのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 終わらない喝采に、モモンガの眼下で炎の様な赤が怪しく揺らめく。

 

(……どうしよう……こいつら、マジだ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただし、果たして家が一番安らぐかどうかは、誰にも判らない。





これにて最終話。
皆様、短いようで長いお付き合いありがとうございました。
あとがきは後日、活動報告にて致します。

それでは、また機会がありましたら宜しくお願いします。

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