次の日、クロとシロ、ユキネはお世話になった人たちにユクモ村を出ていくと伝えた。
悲しむ人たちがいたが、ほんの数年いなくなるだけで終わり次第帰ると言った。
そして……。
「体に気をつけて」
「うん」
そう言って、ユキネを抱きしめる鳳翔。
「お世話になりました」
「あんたらまでいなくなるといよいよユクモも終わりか」
「大丈夫だってここも故郷なんだから」
クロと親しく話しているのは小次郎の父、次郎長。
「シロさんくれぐれも迷惑を掛けずに」
「村長、それはないでしょう」
冗談を言い合うシロと村長。
「じゃこれで」
「ええ」
「またね」
三人はユクモ村を出て、目的地はユキネが生まれた村とロックラック。
そして、歩き始めてはや一週間。
「場面変わるの早くない?」
気にするな!
ユキネの村に着いた三人。そこは壊された家屋に苔が、その辺りには雑草が生えている所だった。
「ここが」
「ああ、そうだ」
クロが先頭に真ん中にユキネ、シロが後ろ。目的の場所に着いた三人。そこには大きな四角の石が建っていた。
「これって」
「お前の母さんの墓だ」
「ここにはこの村の人たち全員のお墓なのよ」
そのお墓の前に花が供えられていた。
「誰か来たのね」
シロはそういうと持ってきた花と線香をあげた。拝んでいると、そこへレックスXを身にまとった男性ハンターが現れた。
「あんたら?」
「ちょっとお墓参りに来たのよ」
「そうか」
「貴方の名前は?」
「俺はトウジ。あんたらは?」
「俺はクロ、そしてシロとユキネだ」
「いまユキネと言ったか?」
トウジはクロの口から出たユキネの名前を聞いた時、近づいてきた。
「あ、ああ。そうだけど、どうした?」
「俺の娘の名前と同じだったからな。なあ、この墓って……」
「私たちが建てたのよ」
もう同じ過ちは犯さないと、シロが言った。
「私たちは当時ハンターとしてはすごく弱かった。あの時現れたモンスターには勝てないとわかっていたのよ。本来ならハンターらしく村人を守らないといけないはずなのに、怖くて怖くて。モンスターが去ったあと、生きている人たちを探している時にこの子を託されたのよ。そのとき、誓ったのよ。今度こそ強くなってやろうて」
「ああ。俺らは強くなったのかはわからないけど、あの時より断然に強くなっていると自覚している」
「……そうなのか」
「ああ、ユキネの父さん」
その言葉を聞いた時、双剣の矛先をクロに向け、そしてこう言った。
「その力、見せろ」
「いいぜ。来いよ」
クロは飛竜刀【花之宴】を抜刀の構えで向いた。
トウジの武器は白雷双剣ネオクルス。白海竜ラギアクルス亜種の素材をメインにした双剣。
先に仕掛けたのはトウジ。最初から鬼人化になり、怒涛の鬼人化乱舞をしてきた。対してクロは、最小限の動きだけでかわしているのだった。そして、一瞬のスキを狙って抜刀した。それに対して双剣でガードして衝撃を後ろに逃がした。
「本気出してないだろ?」
「ああ、それは様子見だからな」
「様子見するほど余裕があるだな」
「そりゃ、対人なんてやったことないから」
「そうかよ」
左手に持っている剣を逆手に持ち、高速でクロに接近して右手の剣だけの連続の突きを繰り出した。それに対してクロはさっきと同じようにかわし、かわせられないのだけ防いでいた。そこへ逆手でもっている剣で刀を弾き、そこへ連続の突きを喰らわせた。いくら頑丈なレウスXでも弱点の雷属性を喰らったなら相当のダメージを負う。
連続の突きで飛ばされたクロは鞘を地面に突き刺しながら勢いを止め、体重を太刀に乗せて一気に地面を叩いた。
「飛天御剣流土龍閃‼」
散弾の如く、土砂がトウジに降り注いだ。トウジは両手の剣を回転して防いだ。
「やるな」
「そっちこそ」
太刀を鞘に戻しながらクロは言い、また抜刀の構えになる。
トウジは双剣を構えて、鬼人化の準備をした。
二人が同時に掛ける時、廃村全体にモンスターの方向が響いた。その声は数年前聞いたモンスターと同じ声だった。