ユキネがお墓参りのため村を出ていく準備をしている時、ツキヨ、ハーデ、レンはギンナにハクラが呼んでいると言われ、渓流の奥地に来た。
ハクラが住んでいる洞窟に入っていくと、胡坐で座っているハクラがいた。その姿は前よりも弱弱しく見える。
「おじいちゃん大丈夫?」
「おおう。大丈夫じゃよ。それよりよう来てくれた」
「大丈夫には見えないんだが?」
「はい。薬よ」
「すまないな」
冗談を言えるぐらいの元気はあるようだが、時々せき込むときがある。
それを見て心配な目で見るツキヨ。
「それよりもじゃ。さっそくじゃが、とうとう予言がはっきり見えるようになった」
「「‼」」
その一言でハーデ、レンは驚愕した。
「そこでじゃ。引っ越ししないか?」
「引っ越しですか?」
「そうじゃ。幸いワシに伝手がある」
「で、ですが!?」
「なんじゃ不満でも?」
「ないですけど、ここ以外に安全なところなんて。それにいくら伝手があるからって」
「確かに。じゃが、大丈夫じゃろう」
「ちなみに場所は?」
「候補としてはドントルマ、タンジアの周辺。後はシナト村って場所じゃ」
「シナト村って天空山のある村か?」
「ああそうじゃ。そこの長老とはちょとした仲での」
考え込むハーデとレン。その深刻な話が自分とは知らないツキヨはハクラにシナト村のことを聞いた。
「そうじゃのう。霊峰と同じくらいの山々にある風が多く吹く村じゃの」
「寒くないの?」
「どうしてそんなことを聞くんじゃ?」
「お母さんが寒いところが苦手だから」
「確かに寒いがここと同じくらいじゃがら大丈夫じゃよ」
「よかった」
話し終わったハーデとレン。
「どうやら終わったな」
「ああ。どういった奴が来るのかわからないが、アンタの案に乗った方が安全だと思う」
「ふむわかった。ならシナトじゃな?」
「ああ」
「これを持っていけ」
ハクナに渡されたものは金色に光る鱗と白い鱗のお守りみたいなものだった。
「これを長老に渡せばいい」
「たったこれでだけで?」
「なんじゃ不安でもあるか?」
「てっきり手紙でも渡すものかと」
「別にそれでもいいが、ワシが面倒じゃ」
そう言って帰した。
そこに残っているのはハクラ。岩陰から現れたアマツとクシャル。
「いいのですか?」
「なにがじゃ?」
「彼らに自分のことを言わなくて」
「なーに大丈夫。もしもの場合は、な」
「クシャルすまないがギンナを呼んでくれないか?」
「ああ」
クシャルはギンナを呼びに出て行った。
その間ハクラは奥に行ってあるものを持ってきた。
ちょうどギンナが着いた。
「どうしたんですか父?」
「ギンナこれをお前にやる」
ハクラが渡したのは二対の片刃の刀。一本は白い刀、もう一本は黒い刀。
「これは?」
「お前が一人前になった時に渡そうと思った物じゃ」
「父!私はまだ半人前です!」
「持っておけ。一人前じゃからのう」
「いいえ!」
「ギンナ!」
「!?」
怒鳴りだしたハクラに驚いたギンナ。
「ギンナ!お前はワシのことを心配しているのじゃろ?ライガが行ってお前が行かないのはおかしいじゃろ?」
「ですけど!?」
「少しは世界を回って来い。ワシは一人前になってもらうために教え込んだはずじゃ。それを試して来い」
「は、はい!明日明朝出ます!」
それを聞いて安心したのか目を瞑った。
アマツとクシャルは悲しい顔でハクラを見た。
翌日、ここに訪れたラインが発見した時、ハクラは息を引き取っていた。だが、その姿はまだ生きていると思わせるぐらいの姿であった。