Sideユキネ
先輩たちに襲われてからいなくんに抱き抱えられながら、屋根から屋根へと渡り着いた場所は宿屋でした。
なんでこうなっているんだろう?
「えっと、たぶん帰したら襲われるから今日だけ泊まって」
「え?ええええええ!?つ、つまり一夜過ごすことだよね?」
「そうなるね。部屋は二つとれるか聞いてくるから」
行っちゃった。
けど、うれしい。好きな人と一緒に過ごすなんて私、すごく幸せ!
あ、お母さんが言っていたけど、男の人ってジンオウガって言っていたけど、襲われるよね?だ、だけど見境なく襲うわけないしいなくんだからそんなことしないよね!(謎の根拠)
けど、一緒に寝られたらいいな。
~ユキネ妄想中~
「い、いなくん、恥ずかしいよ//////」
「ユキネ、そんなこと言ってもここは喜んでいるよ」
「だって、だって、ひゃう!?」
「ふふ、口では言っても説得力ないよ」
「そ、そこはンっ!?ん、ぅん、ん、ん、ぅん!?ハァハァ、アンっ!?」
「食べちゃダメ、か?」
~ユキネ妄想終了~
んんんんんん///!?やられたら立てなくなっちゅ!?
「ユキネ?」
「ひゃい!?」
「ひゃい?」
は、恥ずかしい!?今のはない、ないよ!
「部屋は僕のところ使うから」
「う、うん」
………………え?ええええええ!?本当なの?ウソ、じゃないよね。うん、本当なんだねその顔。
「案内するよ」
戸惑いなく手を繋いでって、さっきお姫様抱っこされていたっけ。うん、これぐらい問題ない……わけないでしょう!?
昔は繋いでいたでしょう、ですって?
そうよ、そうよね!昔繋いでいたんだから、今も繋げられないわけはないし!
……うん。一周回って冷静なったけど、変わらないな。手は大きくなったし豆とか出来ているけど、暖かくて優しい手は変わらない。やっぱり、いなくんだ。
背は大きくなったし顔も男らしくなっているけど、私に対する態度とか変わっていない。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ。それよりここ?」
「入って」
「うん、お邪魔します」
簡素な一人部屋。机とベット、荷物くらいしか見当たらない。好きなところに座ってと言われたからベットに座った。
椅子に座ったいなくん。上に来ていた白の着物の上衣を机においた。細い腕だと思っていたけど、鍛えている腕の筋肉が見えた。
「それじゃあ、今後の話をしようか」
「うん、話すことってある?」
「そうだね。一つだけ、住む場所を変えようか」
どうすれば話が飛ぶんだろう?
「まあ、急に言ったことだからしょうがないけど、さっきのことがあったばかりでしょう?なら、用心に越したことないし、一番いいのは知り合いの家に止めてもらうことなんだけど、事態がややこしくなるだけだから、ここに住まない?」
「いいの?」
「だから、この話をしたんだよ」
「お願いします」
確かに私は先輩たちの怒りを買ってしまった。だけど、いなくんに被害があったらと思うと嫌だ。いなくんはそうとは想っていない。あといなかった時間を少しでも多く過ごせればいいと思っていた。
「それじゃあ、寝ようか。ベットに寝ていいよ」
「いなくんは?」
「床で寝るからいいよ」
「そ、それはダメだよ!風邪引くよ!」
「これぐらい平気」
これはダメ。私が床で寝ると言うとベットで寝ろって言われる。なら、は、恥ずかしいけど、一緒に寝よう。
「い、いなくん!い、一緒に、寝よう……?寝てる?」
私が一人で考えている間に寝ているなんて。寝顔かわいい。
「すぅ……すぅ……ユキネ……大好きだよ……」
大好きって!?ね、寝言だし、友達としてだよね!?だよね、だよね……自分で言っていて少しイラつくな。
そうだ、隣で寝てみよう!起きたら、驚くだろうな。
いなくんの肩を枕代りにしちぇ!?え、ええええええ!?抱きついてきた。しかも、優しく、決して抜け出せないように。けど、いいか、このままで。
「おやすみいなくん」
おでこにキスして私は眠った。口にしなかったって?恥ずかしいでしょ!
余談だけど次の日起きたらやっぱり恥ずかしくなってしまう私でした。