Side稲妻
この怒りを抑えることができるはずがなかった。だけど、ユキネを見ていると怒りが収まっていった。
「いなくん、私耐えられない」
ユキネは呟いた。小さく弱々しい声で、喋りだした。
「本当に些細なこと。いなくんのお父さんのことでね」
「父さんのこと?」
「うん。私は一夏さんの知り合いってだけでね、色々噂されたの。それで、いじめられていた」
「父さんの知り合いってだけで、そんなことは……」
「いなくん。あなたのお父さんは有名なのは知っているでしょ?さらに若くてイケメンで、ギルドの女性たちには人気あるの」
「父さんが原因だね」
呆れたとしかいけない。たったそれだけで、ユキネはいじめられていたんだ。おかしい、絶対におかしい。
知り合いだったからって、いじめるのはおかしい。
許さない。
「ユキネ、逃げよう」
「え?」
「今、ここにいて解決しても、また同じことが起きる。だから、ここを出ていかない?」
「だ、だけど」
「迷惑とか考えている?大丈夫だよ、僕は。それに、一度くらい逃げてもいいと思うよ」
「え、どうして?」
「僕だって逃げたことがある。逃げて逃げて、最後は勝った」
「けど勝ったんだよね?私には無理だよ」
「諦めちゃいけない!確かに無理かもしれない、無茶かもしれない、だけどそのままだと嫌でしょ?だから、少しずつ強くなろ?強くなるまで僕が守るよ」
あれ?励ましているのに、なんか違うような。って、僕、父さん探しに来たのに、ユキネまで巻き込むとか、バカか!
クスクスと下を見ながら、笑いを押さえるユキネを見た。僕はそれを見て、ちょっとムスッとしてしまった。それでも僕は笑ってくれたと嬉しく思った。
「いなくん、私行ってくるよ。これで何か言われても、たぶんスッキリする、と思う」
「いいの?」
「うん。それに一緒にいてくれるんでしょう?」
決意したユキネを見てよかった半分、いたずらが成功したような笑顔を見せてくるので、少しばかりどうしようかなと考えてしまった。
ユキネの後を追う。ギルドに近づくにつれて少し歩みが重くなっていくように見えた。僕は近くにより声をかけた。
「大丈夫、僕がいるから」
「うん」
ギルドの女性職員室に着くとその部屋から数人の声が聞こえた。いっている内容はユキネに対する悪口とかだった。
「いってくるね」
ユキネは覚悟を決めて部屋に入っていた。
SideOut
Sideユキネ
私は勇気をもらった。
私は決意した。
私は覚悟を決めた。
部屋の扉を開ければ、そこにいるだろう先輩たち。
言うんだ。私の思いを。例えここをやめても、夢をあきらめても、私は守ってくれる人にこれ以上心配をさせたくないから。
「ユキネあんたどこ行っていたの?」
黙る。
「私たち忙しかったんだけど?」
言うんだ。
「男でも会いに行ったの?サイテー、イチカさんがいるのに」
もう言おう。
「そうだ今夜ユキネの「うるさいです」え?」
「うるさいと言ったんです」
「ユキネ、そんな口きいてもいいの?」
「ええ。それに私は先輩方に言いたいことがあります」
「なに?まっ、どうせろくなことではないでしょ?」
「私は何もしていないです。いつも私は無関係なことや私がやる仕事も押し付けて、先輩方はできるんですか?それに一夏さんとは知り合いのだけで、好きではありません。尊敬する人ですが。私の好きな人はいます!」
言った。言ってやったわ。これで未練なくやめれる。心残りはここまで応援してくれた父さんと母さんに対して失礼なことをしたこと。謝らないと。
「ふざけるな!生意気な口聞いて!」
先輩の一人に殴られると思い目を瞑った。だけど痛くなかった。目を開けてみると、先輩の手を掴んでいるいなくんがいた。
「なにしている?」
「あ、あんた手離しなさいよ!」
「ユキネのことを殴ろうとしたでしょ?」
「これは御仕置ぎっ!?イタイイタイ!?」
いなくんは握力を強めて、先輩を痛めさせた。その手を話すと、先輩方を睨み付けた。
「二度とこんなことをするな。するなら、わかっているよね?」
先輩方は涙流しながら、頷いていた。なんかくさい臭いもしたけど。
いなくんのこと初めて怖いと思った。怒ることはさっき見たからわかったけど。先輩方に向けたのが殺気なんだろ?
私の手を引きながら部屋を後にした。
いなくんに連れながら着いたのはギルドマスターの部屋だった。
「いなくんどうしてここに?」
「ん?あ、そっか知らなかったっけ?僕、ギルドマスターと知り合いなんだ」
その時、私の頭は真っ白になった。
SideOut