Sideギルシュ
とうとう稲妻が旅立つのか。一年くらいいっしょにいたが、教えられることは教えた。モンスターやアイテム、地理、歴史、宗教などの知識、武器や会話、売買、交渉などの技術、限界からのさらなる体力。ハンターになるための大切なことは全部教えた。
稲妻と会ったのは五年前。当時、一夏からラギアクルスの子供と聞かされた時はにわかに信じられなかったが。
それでもちょくちょく会いに行っていた。
そう言えば一夏に稲妻が来たら育ててくれと言われたのは。本当に来るとは思わなかった。言われた通り、育てたが、お前あの時何を見たんだ?
『当分消えるってどういうことだよ?』
『言った通りだ。ちょっとした面倒ごとだ。二年ぐらいいなくなると思うが、稲妻の事任せる。他の奴にも言ったが……』
『ユウにも言ったのか?』
『いや言ってない。絶対に止めると思うし、それに大事なことだから』
『大事なこと?』
『しっかりと蹴りつけてこないといけないから』
『そうか。わかった、稲妻のことは任せておけ』
そんな会話したな。蹴りって何だろうな?お前が見た何かの手掛かりなのか?そう言えばこう言ったよな?
『聞いてもいいか?女がらみか?』
『……』
『え、マジ?』
『ギルシュ、少し体を動かしたくないか?』
『急にどうしたんだ?』
『今、怒り喰らうのと激昂したのクエストいかないか?』
『いや、い『いくよな?』ハイ』
……あの時は大変だった。無駄に大きいイビルジョーに無駄に小さいラージャンを倒すのに二日がかりだった。
一夏って、女難の相が出ていたっけ?しかも呪いの類並みに。毎度、ユウとかリーシャに会ったら、絡まれていたっけ?受付嬢や他の女ハンターにも人気あったな。モテていたなー。無性に殴りたいな!
「ギルシュ兄さん」
「稲妻か。とうとう出るのか?」
「はい、あいさつ回りもしてきたので、最後はギルシュ兄さんだけです」
「そうか。気をつけてな」
「はい」
「すこし寂しいな」
「はい」
「稲妻、色々大変だと思うが気をつけてな」
「はい、兄さんも体に気をつけて」
俺は稲妻を抱いた。まだ、子どものこの子に旅は危険かもしれない。けど、乗り越えていく気がする。助け合っていけばいい。頼ればいい。俺は行くから。
と、声には言えない。だから、精一杯抱きしめる。
「ちょっと待っていろ」
俺は部屋に戻り、ある物を取り出した。
「これは何ですか?」
「ピアスだ。こいつはな、あらゆる厄災を払うと言われている」
青色の玉が特徴のピアスを着けさせた。
前に作ってもらい、渡すのを忘れているとは。
「ありがとうございます」
「おう、俺も見つけたら連絡するようにするわ」
「はい、いってきます!」
「いってらっしゃい!」
いい旅日和だ。空が青い。
さて、仕事をするか。
「ギルシュさん!龍歴船からって、どうしたんですか!?」
「なんでもない!龍歴船がどうした?」
目に溜まっている水滴を拭い、龍歴船に向かった。