黒蝕竜との戦いを終えたマッソたちはロックラックの門を潜り抜けてきた。
先に駆け寄ってきたのは団長だった。首尾はどうとか、無事生きて帰ってきてくれてよかったと言っていた。次々と寄ってくる我らの団の仲間たち。
しかし、マッソの顔は暗かった。
町の人や他のハンターの声にも反応しないで、ギルドへの道をひたすら歩いていった。
ギルドの着くなり受付嬢に討伐したこととその証拠、ギルドマスターに会わしてくれと頼んだ。
余程のことだと感じたのか、急いで取り次いでくれた。
受付嬢の案内の元、ロックラックのギルドマスターとスミノフがいた。
「先の手腕見事であった。してどうした?」
称賛の言葉と急ぎの用を聞いてきた。
「ゴア・マガラは討伐した」
マッソは一拍置いてから急ぎの用を言った。
「……
「なんと⁉」
ギルドマスターは驚愕の声をあげた。
スミノフは顔には出ていないが、驚いていていた。
「基本奴は無害ですが、一応用心を」
「情報だと、ゴア・マガラ特有の狂竜ウイルスを出さない。出したとしても索敵に使う程度しかと書かれています」
「……一応用心を、と町の人たちに伝えておこう」
ギルドマスターはスミノフにそのことを受付嬢に伝えてこいと命令し、スミノフは退出し、それに乗っかるように出て行こうとしたマッソは、ギルドマスターに止められた。
「あの子はどうだ?」
「元気だ」
「そうか、そうか。後のことは頼むな」
「死ぬのか?」
「死ぬ?馬鹿馬鹿しい。ワシが死ぬと思うか?引退だ、引退」
「そのときはうまい酒とあの二人を連れてくる」
「せいぜい楽しむことにする」
「失礼した」
マッソは退出した。
ギルドマスターは葉巻を取り出し、火をつけ吐いた。
「もうお前には会えないかと思ったが、いいもん残してくれたな馬鹿息子」
そう言うと、葉巻を吸った。
Side稲妻
とうとうロックラックから離れることになった次の目的地はシナト村。
そこに言って職場見学と父さんの手がかりを見つけないと。
「もう少ししていけばいいのに」
「まあな、当分は大丈夫だろ。教官もいるし、リーシャもいる」
「元気でね」
「いきなり抱きつかないでください」
リーシャさんに抱かれ、たぶん顔は赤いよね。けど、振り払いはしなかった。まだ、居たいな。
「いつでも来なさい。ただし、ちゃんと言ってからね?」
う!?ばれているってことは知っているんだね。
「そうします」
「それとこれ」
「一夏からの贈り物のよ」
なぞの木箱を渡されて、父さんの贈り物と聞いたと、その中身を開けてみた。
中には杖みたいな一メートルくらいの物が入っていた。けど、ただの杖じゃないよねこれ?
「それはドスと言う刀よ」
ドス、父さんは何でこんなものを送ったんだろう?
「名前は?」
「まだないわ。あなたが決めていいわよ」
白い鞘に入っていて、刀身も抜いてみるとそれも白い。曇りのいっぺんもない。……決めた。この刀の名前は。
「色彩」
「しきさい?」
「父さんの故郷の言葉で色に関することです。この刀はどんな色にも変わり、色とりどりの色彩を見せてくれる」
「だから色彩ね」
「はい」
僕は、ドスを置いてリーシャさんに感謝を伝えた。
「ありがとうございます。また来ます」
「ええ、いってらっしゃい」
「!……いってきます!」
イサナ船に乗り、だんだんと空へと上がっていき小さくなっていくロックラックの町を後にした。