ゆかりんハウスが一体なんなのか…紫の口から説明があります♪
他のシリーズには無い幻想郷の住人達の反応を狙ったシリーズになります。
それでは始まります♪
ゆかりんハウス! 建設!
【マヨヒガ】
八雲藍「…」
藍「…」
藍「…」
藍「これで一週間目、か…」
初夏の風に肌も汗ばむ頃、幻想郷の皆様如何お過ごしでしょうか。
幻想郷の管理人が式、八雲藍でございます。
夏…幻想郷では人里でかき氷やアイスが売られ、妖怪の山ではケロケロの湖で海水浴、向日葵畑では何故か夏の収穫祭が行われ、氷の妖精チルノが恋しくなる季節です。
日に日に溜まってしまったストレスという名の汗を流すために地底の温泉に足を運ぶ方もおられるのではないでしょうか。
あ、因みに博麗神社にも温泉は湧いていますが湯に浸かる前にはちゃんと博麗の巫女に許可を得てから入るようになさってくださいね。
話は変わりますが私は夏が苦手です、九尾の妖怪…もとい狐ですから夏への対策を怠るとヤバイのです。
特に毛の手入れ…汗ばむと尻尾の毛が肌にくっついて煩わしい状態になってしまうことが多々あるのです。
ですがちょっと嬉しい事もあって…この暑さのお陰で私の尻尾に『もふもふダイブ』を仕掛けてくる子供達、思考が子供染みてる大きなお友達が減るんです、少し寂しい気持ちもあるにはあるのですが、毛先が枝分かれして十尾以上の狐になるよりはマシなのです。
我が愛しき式神…橙からの『もふもふダイブ』が無くなってしまうのは痛いですけどね。
…? あぁ紫様ですか? 紫様も『もふもふダイブ』ならぬ『もふもふスキマドロップ』というダイブの倍の威力の上位互換の技を繰り出して来るのですがそれも無くなります、えぇとても喜ばしい限りです。
あ、そうだ…紫様で思い出したんですけど
藍「紫様っ…! あなたは今何処で何をしているのですかっ!」プルプル
紫様が『ちょっと行ってくるわ♪ 藍、待っててね♪』とここマヨヒガで言い放ち、スキマを広げて消えてから早一週間。
藍「仕事をサボる為に消えたのか…!? まさか人間に化けて自分だけ外の世界のリゾートアイランドとか言うやつでバカンス三昧か!?」
考え出したらキリが無い。
私は怒りという名の心のモヤモヤが沸き出るのをなんとか表に出さないようにしなければならない生活を強いられているんだ、しかも三日前からだぞ!?
人里に出掛ける度にすれ違う住人たちに向ける作り笑顔はもうたくさんだ!
藍「ちょっとってなんですかちょっとって! ちょっとで一週間も居なくなられたらこっちが困るんですよ!」
藍「何故にっ…! 何故にこの私に何処に行くかを告げない…!? これは自分に疚しい事があるから私に告げないのか!? 少しでも私に良心があるのなら仕事を手伝う優しさを私に見せても良いはずだ! そのはずだっ!」
藍「やはりバカンスなのか!? 自分だけバカンスなのかスキマァァァァ!!」
藍「はぁはぁ…はぁ…」
静寂、叫んだところで無意味。
藍「わかってる…わかってはいるんですよえぇ…」
藍「紫様の帰りを待つしかない、これがもどかしいところなんです」
藍「…え? まるで飼い主を待つ子犬の様ですか? そんな風に見えたのならあなたはもう幻想郷入りして色んな妖怪に食べられちゃえば良いと思いますよ」
藍「……うん!? 私さっきから誰に向かって話し掛けてた!?」
藍「い、いかんいかんいかんぞこれは…! これではまるでおふざけ状態の紫様ではないか! ヤバイ…! ストレスが溜まって限界にきている証拠だ!」
藍「もう紫様の帰りを待つのをやめて地底の温泉に、いやそれとも妖夢たちとまた会を開いて宴会を…!」
藍「ふ、ふふふっ…! ふふふふ♪ もう、もう良いですよね? 私頑張って律儀にここで待ってましたよね? もう充分待ちましたよね? もう許されても良いですよね? もう我慢が解かれても良いですよね? ね?」
藍「お許しはいただけてるはずだ、誰のとは言えないがなぁ!」
藍「良し! 善は急げだ! お疲れ様でしたのメンバーを誘って地底の温泉に」
ギュオン!!
藍「行くぞー! ……えっ? ギュオンっ…て…」
八雲紫「はぁ…はぁ……ら、らぁん…た、ただいまぁ…」ボロッ
藍「ゆ、ゆゆゆゆゆ、紫様!!?」
紫「そんなに無いわぁ…ゆかりんのゆの字は一文字しか無いわぁ…」ボロッ
藍「も、申し訳ありません! それよりお、お帰りなさいませ紫さ…! って違う違うっ! 今はそんなことはどうでもいいわぁ!」
紫「ふふっ…よく喋るわね藍…主が帰って来たのがそんなに嬉しいのかしらぁ…?」ボロッ
藍「一週間も何処で何をなさってたんですか!? どうしてそんなにボロボロなんですか!? 服も所々破けちゃってますし、それにその見たことの無い疲れきった顔はなんなんですか!?」
紫「つれぇわ…一週間も会えなかった主のご帰宅を嬉しがらないとかつれぇわ……」ユラァッ
藍「!! ゆ、紫様!!?」
私は倒れそうになった紫様を優しく抱き止めた
藍「だ、大丈夫ですか紫様!」
紫「あぁ…藍聞いて? 大妖怪も頑張ると疲れるのね…戦う~とかそんなんよりもスッゴい疲れるのね、頑張ると」
藍「頑張る…!? 頑張って何を…」
紫「…やっぱり気になっちゃう?」
藍「当たり前でしょう…あなたがこんなボロボロの姿で帰って来たんですから…そう思うのは自然な事なんです…」
紫「そ、ありがとう藍、心配してくれるのね」
藍「! それも当たり前ですよ…紫様」
紫「ふふっ…ゆかりん嬉しいわぁ…♪」
藍「紫様…」
紫「…」
藍「…」
紫「…」
藍「…」
紫「スー…スー…」zZZ
藍「えぇっ!? 寝たぁ!?」
紫「らぁん…何ようるさいわね…」
藍「こらぁ! 寝る前に私の質問に答えてくださいよ!」
紫「うるさいわねぇ…つれぇって言ってるじゃない、少しは休ませなさいよ」
藍「そのつれぇの原因はなんなんですかって聞いてるんですよ! こちとらあなたが帰って来ない原因が分からなくてイライラしっぱなしだったんですからね!? 終いにはボロボロの紫様がご帰還ですよ!? 少しは私の気持ちも考えてくださいよ!」
紫「…そういえば藍、私最近『つれぇ』ってのが口癖になってきてる様な気がするんだけど」
藍「そんなことは聞いてないんですよ! 質問に答えてください!」
紫「分かった…分かったわよ藍…でもその前にさぁ」
藍「っ…! なんですか!」
紫「風呂、ご飯、服、用意なさい」
藍「………は!?」
紫「嫌よこの状態で質問に答えるなんて…こんなに体も服もボロボロでお腹も空いてるし…私結構疲れてるのよ?」
紫「風呂は適温、ご飯は体力をつけるために肉料理中心、油揚げとおにぎり以外ならなんでも良いわ」
紫「服は…ほら、このスキマの中から出してね」
ギュオン!
紫「なんかマヨヒガ帰って来てから力が入らないのよねぇ…あっはっは♪ これが『やっぱり我が家が一番』ってやつかしら?」
藍「……用意したら答えていただけます?」
紫「ゆかりん嘘つかない」
藍「…」
紫「…」
藍「…分かりました、直ぐに用意します」スッ
紫「うおうっ!?」ズルッ
どべしゃっ!!
紫「顔痛いっ!? く、クルァ!! いきなり離すんじゃないわよ! 地面に叩き付けられたゆかりんの気持ちも考えなさーい!」
シーン…
紫「…あらら、もういない」
紫「らーん、先にお風呂だからね~!」
紫「って聞こえないわよね、もう用意してるのかしら…」
紫「はは~ん…♪ やっぱり私が一週間振りに帰って来たのが嬉しいのねぇ♪ うふふのふ♪」
紫「霊夢は顔に出ちゃうけど藍は行動に出ちゃうからねぇ♪ ゆかりんちょっと嬉しい♪」
紫「……でも用意出来るまで地べたに倒れながら待つの? 藍、部屋まで私を運んでくれる優しさは無いの?」
紫「……やっぱつれぇわ」
【そして一時間後 マヨヒガ 居間】
紫「はぁ~っ♪ 食べた食べた♪ ふぅ~♪」
紫「藍、ご馳走さま♪ 美味しかったわよ」
藍「…」
紫「お風呂も適温で直ぐに入れたし、ご飯も肉料理中心♪ 特に生姜焼きと豚カツが美味しかったわ♪ ゆかりんフルパワーよ♪ 完全復活~♪」
紫「ありがとうね藍、私生き返った気分だわ♪ んふふふっ♪」
藍「…」
紫「さぁってと、体も綺麗になってお腹もいっぱいになったことだし…そろそろお休みタイム♪」スッ
紫「それじゃあね藍、お休みなさ」
ガシッ!
藍「待ちなさい」
紫「……」
藍「…」
紫「…」
藍「…」
紫「お休みな」
藍「待ちなさいって言ってるでしょうが!」
紫「さっきも言ったと思うけど私疲れて」
藍「疲れてるのはこっちも同じだぁ!!」
紫「!?」ビクッ
藍「…戻りなさい、戻って座りなさい」
紫「…!」ギロッ
藍「そんな睨みには屈指ませんよ、さぁテーブルの前に座りなさい」
紫「……はい」スッ
藍「…」
紫「…」ポスッ
藍「…で?」
紫「何よ」
藍「さっきの質問、答えてくださいよ」
紫「あぁ~…」
藍「…」
紫「…」
紫「ゆかりんのスリーサイズは上か」
藍「ちがぁぁう!!」クワッ
紫「きゃっ!? なんなのよさっきから大声を出して! ビックリするでしょ!?」
藍「一週間振りに帰って来たと思ったら初っぱなからふざけるんですかあなたはぁ! 私の質問に答えなさいって言ってるんですよ!」
紫「うっさいわねぇどこぞのヤマザナドゥさんみたいにグチグチグッチグチとぉ! あ♪ らぁ~ん♪ 分かったわよ? あなた寂しかったんでしょ、うん? 愛情の裏返し的なやつなのね♪」
藍「寂し…! いや、寂しいわけあるかぁ!」
藍「あなたが突然いなくなったお陰で私は要らぬ心配にずっと悩まされ続けてたんですよ!?」
紫「? 要らぬ心配なら心配する必要無いじゃない」
藍「!? ま、まぁ…! た、確かにそうなんですけど…!」プルプル
紫「ふふっ♪ まぁ私の事を心配していてくれてたのは嬉しいわ、ゆかりんちょー嬉しい」
藍「! …/// 一週間長かったですよ…要らぬ心配もそうですが、少し被害妄想もしてしまいましたし」
紫「妄想ねぇ…藍、妄想は頭の中だけにしなさいよ? 実行したら悲しむのは大抵橙なんだからね?」
藍「分かってますよ…ですが今回は紫様の事だけです、心配が心配を呼んで冷静な判断が出来なくなってしまいました」
紫「まぁ、あんな言い方で急にいなくなったら誰でも不審に思うわよねぇ」
藍「…自覚があるならやめてくださいよ」
紫「サプライズしたかったのよ、藍を驚かせてあげようかと思って」
藍「? サプライズ…?」
紫「そ、ゆかりん大好きサプライズ」
藍「…それは一週間いなくなってた事に関係してるんですか?」
紫「えぇ大いに関係しているわ、私がボロボロで帰って来たことも、めちゃめちゃ頑張った事にも関係しているのよ」
藍「…もう、話してくださいますよね」
紫「えぇ、良いわよ」
紫「藍、心して聞きなさい」
紫「私は幻想郷にまた新たな娯楽をもたらすために、一週間を掛けてその娯楽のための下準備をしていたのよ」
紫「場所はスキマ空間、もちろんあのスキマボックスとスキマスタジオとは別の新たな空間によ」
紫「一週間掛かってしまったのは私一人で準備をしていたから、幻想郷住人の力を借りれば一日で終わったんだろうけどね、これも偏に住人皆へのサプライズのため…ゆかりんは頑張ったのよ」
藍「娯楽…? またですか…?」
紫「まっ! またって何よ藍! ゆかりんすっごい頑張ったのよ!?」
藍「まだ話の内容の核心が掴めて無いから紫様が頑張った度合いが分からないんですよ、何に頑張ったのかすら分かってないんですから」
紫「失礼ぶっこいてくれるわね…! 後で倒れる程おったまげても知らないわよ」
藍(言い回しが古いなぁ)
藍「スキマ空間の中で一週間何をなさっていたんですか?」
紫「! んふふふ♪ それはね?」
藍「はい」
紫「…」
藍「…」
紫「家作ってた」
藍「………」
藍「……は?」
紫「? だから、家作ってたって言ってんの」
藍「い…い、いい、え、えっ? い、家…!?」
紫「そう、家よ、家」
藍「いえ…」
紫「マイホーム♪ マイハウス♪」
藍「…」
紫「…」
藍「えっ」
紫「え?」
紫「…家が建ってイエーイ♪ な~んちゃっ」
藍「はあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
紫「!?」ビクッ
藍「家!? 家って、あの家ですか!?」
紫「他にどんな家があるってのよ」
藍「紫様が一人で!? スキマ空間でですか!?」
紫「そうよぉ? 建築関係に詳しいであろう、にとり、ヤマメ、勇儀、萃香…その他諸々の住人の力を借りずにゆかりん一人で作ったのよ♪」
紫「私がボロボロだったのは家を作る時に色々と大変だったからなのよ、釘とかに服が引っ掛かっちゃって破けるし、ガスとか火の調節してたら爆発して焦げるし…まぁ今となっては良い思い出だけどね」
紫「楽しい家の作り方って本とにらめっこしながらやったのよ? スキマで材料とか取り出したり、スキマ分身で私と私で相談しながら作ったの、楽しかったわ♪ …出来上がった後ちょっと空しくなったのは内緒よ?」
紫「それがサプライズに繋がるわけなのよ、ゆかりん一人で頑張って作る事でこれから始まる娯楽にも繋がるからね♪」
藍「……!」
紫「? どうしたの?」
藍「いえ…その…一週間も…その…大変…でしたでしょうね」
紫「まぁね」
藍「なんというか…お疲れ様でした…」
紫「いいえ~♪ ふふふっ♪」
藍(なんかもうなんと言葉を掛けて良いのか分からなくなってきたな)
藍(手間の掛かることを! とか…そんなことより仕事だぁ! とか…言いたい事はたくさんあるんですけど…)
紫「あっ、力仕事して無駄な筋肉とかついちゃってないかしら…でも筋肉痛とか無いから気にしなくても大丈夫かしら、ふふっ♪ ゆかりんはいつでもスレンダー美人よ♪」
藍(紫様のあのやりきった顔を見ていると何も言えなくなってしまう…まるで職人が良い仕事をし終えた後の様な清々しい顔)
藍(また変な娯楽が幻想郷に舞い降りるかと思うと不安で胸がいっぱいだがな…今回の娯楽とやらは一体…?)
紫「あ、そうだわ藍、あなた私が一週間の間何処に行ってたと思ってたの?」
藍「へ? あぁ…その…」
藍「外の世界のリゾートホテルとか言うやつで羽を伸ばしまくっているのかと…」
紫「…藍」
藍「はい」
紫「それは心外よ」
藍「すいません…」
紫「私の幻想郷を見捨てて外の世界に一週間も行くわけ無いでしょうが!」
紫「それがさっきの被害妄想とやらなの? 本当に被害妄想よ、藍」
藍「ごめんなさい…」
紫「フン!」
藍「…」
紫「…」ムスッ
藍「あ、あの…家を建てたのと、これから始まる娯楽とやらになんの関係性があるんですか?」
紫「あ♪ 聞きたい? 聞きたいの? 藍♪」
藍(あ、機嫌直った)
紫「そんなに聞きたいのねぇ♪ まぁあなたには一番に聞かせるつもりだったんだけどもね」
紫「んじゃ行きましょうか、スキマオープン♪」
ギュオン!
藍「え? 行くって何処にですか?」
紫「決まってるじゃない、私が建てたお家よ♪ そこで家の紹介も兼ねてじっくりと説明してあげるわ」
藍「…ふふっ、寝たいんじゃなかったんですか?」
紫「ちょっとね…でもあなたも早く知りたいでしょう? 私自身、早く語りたいって思いがあるからね」
紫「さぁ行きましょう、私が作った家に」
紫「ゆかりんハウスにね!」
藍「なんかモンスターハウスみたいな名前ですね」
紫「あ``ぁ``ん!!?」
藍「!?」ビクッ
【スキマ空間 スキマの通り道】
紫「あなた今日本当に失礼ぶっこいてくれるわね! 何がモンスターなのよ!」
藍「だってゆかりんハウスなんて言うから…」
紫「ゆかりんハウスの何処にモンスター成分が入ってるのよ!」
藍「こ、こんな感じかなぁって」
紫「んあっ!?」
ホワンホワン
藍『た、ただいま~…』
紫A『藍、お帰りなさい♪』
紫B『お帰りなさーい♪』
紫C、D、E『お帰りー♪』
紫G、H、I、J、K、L『おかえりなさいませー♪』
大きい紫『おっかえりー♪』
小さい紫『おかえりなしゃいましぇ♪』
藍『は!?』
紫A『らぁん♪ ご飯にする? お風呂にする? それとも…』
小さい紫『もふもふぅ…? ウヒヒヒ♪』ニタァ
藍『ひっ!?』
紫A『総員! 突撃ー!』
十人十色の紫たち『もふもふぅ!!』ガバッ
藍『い、いやあぁぁぁぁ…!!』
ホワンホワン
藍「こ、こんなかと…」
紫「想像力たくましいわねぇ! ゆかりんは一人で充分よ! 二人以上も要らぬわぁ!」
藍「そ、そうですよね! 申し訳ありません!」
藍(紫様が何十人と存在していたら幻想郷が過労死するような気がする…でも紫様はスキマ分身という技を身に付けているのでやってやれない事もない、現にそれで家を建てたみたいだし)
紫「大体そういうハウスが存在していたとしても天国じゃない、十人十色のゆかりんがあなたをお出迎えしてくれるのよ? 素敵じゃない♪」
藍「地獄の間違いでは…」ボソッ
紫「なんか言った!?」
藍「!? い、いえ…」
紫「フン…! …でもそういう考えは面白いと思うわよ?」
藍「面白い?」
紫「ほら…その発想だと仮にレミリアがたくさん居たら『カリスマハウス』になるし、早苗がたくさん居たら『ミラクルハウス』に、諏訪子なら『ケロケロハウス』橙がたくさん居たら」
藍「『ちぇぇぇぇぇぇぇぇんハウス』ですね♪ それこそ天国ですよ! えぇ!」
紫「……妄想は頭の中だけにしときなさいよ?」
藍「! は、はい…」
紫「はぁ……! 藍、そろそろ着くわよ」
藍「はい」
紫「ふふっ♪ 度肝を抜かすが良いわ♪」
藍(…どんな感じなんだろう)
【スキマ空間、ゆかりんハウス】
藍「 」ポカーン
紫「ふふっ♪ どう? この空間、この景色、そしてゆかりんハウスの外観は♪」
藍「………」
私は言葉が出なかった…いや、出なかったというかどう言葉で表現して良いか分からなかったんだ。
スキマの通り道から出た私の目に飛び込んできたのは見渡す限りの大草原、そして紫様が建てたのであろうゆかりんハウス。
私は吹いてくる心地よい風を肌で感じる、風の流れに身を任せるようにして右に首を回す。
大草原…いやそれだけではない、近くに川が流れているのが確認出来る、夏の季節だからか川のせせらぎが私の体に染み渡る様に聞こえてくる。
人が六人横に並べる程の小さな川だ、手すりの無い木の橋が掛けられている。
紫「あの川には魚が放流してあってね、釣りも出来るのよ、あの橋に座って友達と釣りってのもオツよね♪」
そして左、何やら巨大な大木がそびえ立っている、今や光の三妖精の住みかとなっているミズナラの木にそっくりだ、数えきれないたくさんの葉が生い茂っている
紫「気付いたと思うけどミズナラの木の再現よ♪ 中には住めないけどね、あの木は特別な仕掛けがしてあって季節事に色んな花を咲かせるのよ、春なら満開の桜を…秋なら紅葉…因みにこの空間の季節は幻想郷と同じよ♪」
藍「…」
紫「どうかしら? さっきから黙っちゃってるけど、感想はある?」
藍「感想…? あはは、そうですね」
藍「久し振りに紫様の本気を見た…と言うのが第一の感想です」
紫「ゆかりんはいつでも本気なんですけど~♪」
藍「スキマ空間であるにも関わらず、時間の概念までも作ってある…物体への重力、人工の太陽、恐らく月も作ってあるんですよね」
紫「この私が月を作るのは不本意だったんだけどねぇ…まぁただのハリボテだし、別に良いかなって」
藍「ハリボテだろうとちゃんと機能してるのは流石ですよね」
紫「そう? う~ん、でもこんなもん作っちゃったらにとりに妬まれそうねぇ」
藍「あはは、確かにそうかもしれませんね」
藍「……これは一週間も掛かる訳だ」
紫「他の物は二日で揃えたのよ、四日は…このゆかりんハウスに費やしたのよね、手強かったわ」
藍「ゆかりんハウス…」
名前はアレだけどこれもかなり作り込まれているのだろうと思う
外観は外の世界の一戸建ての家に良く似ている
紫「参考にした本が外の世界の建築本だったからね、作ったらこうなっちゃったのよ、幻想郷の人里の家と紅魔館と地霊殿を合わせた感じになるようにはしたのよ」
紫「家を囲む壁や塀なんか無いわ、開放感も重視しました♪」
藍「開放感ありすぎじゃないですかねぇ」
紫「まあこの大草原がゆかりんハウスの庭みたいなものだからね」
紫「作りは和モダン…日本古来の和風デザインに現代的なアレンジを加えたデザインなのだよ♪」
藍「ふふっ、いつから職人になったんですか」
紫「オラは職人~♪ やっくものゆっかり~ん♪」
藍「ふふふふっ…!」
藍(あ…なんか楽しんじゃってるな、私)
藍(紫様の本気を久し振りに見たからかな、世界を一個作るってやつをね)
紫「さぁさぁ♪ 出来立てホヤホヤのゆかりんハウスよ♪ 入って入って~」
藍「あ、二階建てなんですか?」
紫「まぁまぁ♪ そういうのは入ってから確認するものよ、早く入りなさいな」
藍「は、はい」
【ゆかりんハウス、リビング】
藍「わぁ…♪」
紫「どう?」
藍「私こういう雰囲気の作りの家好きですよ、和と洋を融合させた様なデザインなんですね」
紫「そうなの、和室と洋室をくっつけるようにして寛げる空間を目指したの、畳張りの部屋と洋風の部屋に…フロアを木で作って清潔感を演出♪」
紫「囲炉裏もセットしようかなぁと思ったんだけどさすがに辞めたわ、部屋の広さも申し分無いでしょ?」
藍「えぇ、凄く快適ですね」
藍「? あ、そういえば家具も置いてあるんですね」
紫「外の世界の物なの、忘れ去られて幻想入りしかけてる物をスキマで無理矢理引っ張ってきてね、後はスキマで新品レベルに手直ししたの」
藍「スキマ便利ですねぇ」
紫「今更じゃない?」
藍「洋室には背の高いローテーブル、その高さに合わせた木の椅子が六個ですか」
紫「ここで皆でご飯食べるからね」
紫「キッチンは…ほら、ここから見えてるけど洋風の物を準備してあるわ、コンロ、ヒーター…どっちを使っても良いようにしてあるわ」
紫「それから冷蔵庫、エアコン、床暖房、トースターから電子レンジその他諸々、必要な物は全部置いてあるわ、使い方が分からない住人もいるでしょうけどまぁこれは説明書でも置いておけば大丈夫でしょう、食材もその日その日にスキマでねじ込んでおけば文句も無いでしょうし」
藍「は、はぁ…」
藍(住人…? ここに誰か呼ぶのか…? 新しい娯楽とは何を)
紫「んで…あっちがトイレでしょ? それと…あ、そうそう♪ お風呂なんだけどね? 温泉湧いてるのよ」
藍「えぇっ!? 温泉引いてるんですか!?」
紫「えぇ、博麗神社の温泉のデザインを真似て作ってあるの♪ お風呂への扉を開けたら別次元に迷い混んだ様な錯覚に陥るんじゃないかしらね♪」
藍「…拘りが凄いんですが」
紫「ゆかりんは職人さんなのよ♪」
藍「あなたみたいな職人さんがいたら大工が悲鳴をあげると思います」
紫「似たようなこと幽々子言われてたわね、一ボスがどうとか…」
藍(この拘り様…本当に何を)
紫「さ、次は二階に行きましょうか♪」
【ゆかりんハウス 二階】
紫「二階は寝室を六部屋だけ設けてあるの、本当は屋根裏も作りたかったんだけど辞めたわ」
藍「何故です?」
紫「なんか窮屈になりそうだったから、屋根裏から外に出れる案も考えたんだけどそれも辞めました」
藍「? あぁ、空飛べるからですね」
紫「そ、屋根に皆で寝そべって星を観たりとかも素敵でしょ?」
藍「良いですね、なんかそういうのも」
紫「ふふっ♪ 段々ゆかりんハウスの素晴らしさが分かってきたようね♪」
藍「…はい」
藍(空間に着いた時から素晴らしいと思ってしまったのだが、今更言うまい)
藍「寝室は?」
紫「見てみる?」スッ
ガチャっ
藍「! ベッド…とライトしか置いてないんですね」
紫「今はね…四部屋はベッドルーム、二部屋は床に布団を敷いて寝れる様になっているわ、布団で寝るのが好きだって住人もいるでしょう?」
藍「ほ~…えっ? その『今は』っていうのは?」
紫「私に言ってくれれば色々その住人に合った物を追加してあげるのよ、ゆかりんハウスの管理人さんであるこの私がね♪」
藍「紫様は幻想郷の管理人さんでは…?」
紫「ここにいるときはゆかりんハウスの管理人さんよ、こんなに美人で若くて気立てが良い管理人さん他には居ないわよね♪ キャハッ♪」キャピ
藍「……」ジトッ
紫「何よ」
藍「自分で言ってやってのダブルパンチ…恥ずかしく無いんですか?」
紫「今日は失礼ぶっこいてくれるわねほんとにぃぃ!!」
藍「当然の反応でしょうが! 言われるのが嫌だったらやらなきゃいいじゃないですか!」
紫「ゆかりんがゆかりんでなくなるのをそんなに拝みたいのかしら!?」
藍「あなたはふざけてないと自分を保てないんですか!?」
紫「分かってるんだったら素直にゆかりんと遊びなさいよ!!」
藍「めんどくさっ!!」
紫「言ってくれるわねこんにゃろうがぁ!」
【そして娯楽の説明を】
私たちはゆかりんハウスの玄関前に移動していた
紫「どう? 藍、一通り見た感想は」
藍「正直ここまでの物とは思えませんでしたよ」
藍「空間の整備から家の作りの拘り…どれも素晴らしいと思いました」
藍「私は紫様が作っていた過程を見ていないので最初の説明の『家を作ってた』は半信半疑でしたが、紫様のスキマ空間であること、ボロボロで帰ってきたことから本当に紫様は頑張られたのだなと思いました、さっきも言いましたが紫様の本気を久し振りに見ました」
紫「ふふっ♪ そうでしょそうでしょ♪ もっと褒めても良いのよ♪」
藍「…それで?」
紫「うん?」
藍「この空間で行われるんでしょうけど…ここで始まる新たな娯楽とはなんなのですか?」
紫「ふふふのふ♪ よくぞ聞いてくれたわね!」
紫「これから始まる娯楽は一時の夢の様な出来事…でもそれは現実であり、触れ合い、自分で感じた心の想いは全て経験に置き換わる」
紫「ゆかりんハウスを舞台に行われるハートフルな三日間、涙あり笑いあり、思うがままにゆかりんハウスで生活しよう!」
紫「ゆかりんハウスでルームシェア!? ドキドキ! 幻想郷の住人の三日間!! わー♪ パチパチパチパチ~♪」パチパチ
藍「 」ポカーン
紫「…」
藍「…」
紫「はい」
藍「はいじゃないです」
紫「つまり幻想郷の住人をランダムに選んでこのゆかりんハウスに無理矢理連れてきて三日間過ごしてもらうのよ♪」
藍「えぇ…無理矢理タイプの娯楽なんですか?」
紫「だって~私からいきなり『ここに三日間住んでね♪』って言って首を縦に振る住人って少ないと思うのよ、しかもランダムに選んで選出するから断られる事もあるでしょうし」
藍「まあ、そうでしょうね…って普通の反応ですよ」
紫「うん、だから無理矢理連れてきます♪」
藍「そんな笑顔で言う事では無いですよ」
藍「まぁ、面白そうではありますけどね」
紫「でしょう?」
藍「幻想郷が平和になった今だから出来る娯楽ですしね、無理矢理連れて来て住まわせる事に目を瞑れば色々な幻想郷住人の反応がみられるかもしれませんしね」
紫「あら♪ 良く分かってるじゃない藍、ゆかりん感動よ♪」
藍(ノリで言ってしまったが紫様の頑張りを見せ付けられたせいで『辞めなさい』って言えなくなってしまっているんだよなぁ、今回も言いませんけど)
紫「あの住人とあの住人が!? 的な物を狙ってるのよ、設備をちゃんとしたのは文句を言わせなくするためでもあったのよね」
藍(こうは言ってるけどたぶん楽しんで作ったんだろうなとは思う、幻想郷の住人のためならなんでもやりますからね、この人は)
藍「あ…一つ質問しても良いですか?」
紫「許可するわ♪」
藍「住人の中からランダムに選ぶって言ってましたけど、どうやって選ぶんですか?」
紫「それは…ほいっと♪」スッ
紫は空間にスキマを二つ開いた
一つは小さなスキマで何やら突起物が上向きに飛び出ている
もう一つは大きく、四角いスキマで六つの線が引かれており、それぞれ間隔が空いている
紫「これはゆかりんスロットよ♪」
藍「す、スロット?」
紫「その突起物、下に引いてみなさい」
藍「? はい」スッ
ガチャコン
藍「え?」
ピロピロピロピロ♪
藍「え? えっ!? なんか回ってる!」
紫「外の世界のスロットマシンを参考にしてるわ」
紫「お、そろそろ止まるわよ♪」
ピロピロピロピロ♪ ガチャン
【博麗霊夢】
【八雲紫】
【八雲藍】
【橙】
【霧雨魔理沙】
【十六夜咲夜】
藍「おっ…!?」
紫「ふふっ♪ 察してくれた? そう、このゆかりんスロットで三日間を共に過ごすメンバーを選ぶのよ♪」
紫「この結果は今私が弄ったから決まった結果が出てきたけど『えぇっ!? あの子とあの子が一緒に住むの!?』みたいな結果ももちろん出てくるわ」
藍「い、いや…それは分かりますけどこれ私と紫様の名前も入ってるんですか!?」
紫「はぁ? 当たり前じゃない」
藍「…! ま、待ってくださいよ!? まさかこの名前の中にあの命蓮寺の狸の名前も」
紫「マミゾウ? 入ってるわよ?」
藍「そ、そんな中に私を放り込んだらどうなると思ってるんですか!?」
紫「まだ狸のことでブチブチ言ってんの? まぁ当たる可能性は低いけど、もし当たったらこの際だからその確執をなんとかなさい、当たるのも運次第、運に身を任せてみるのも良いものよ」
藍「し、しかし…! しかしですねぇ!」
紫「…」スッ
ガチャ!
ピロピロピロピロ♪ ガチャン♪
【八雲紫】
【綿月豊姫】
【綿月依姫】
【レイセン】
【稀神サグメ】
【八意永琳】
藍「えぇっ!!?」
紫「こんな結果がもし出たとしてあなたは私にブチブチ文句を言えるの?」
藍「も、申し訳ありませんでしたぁ!!」
紫「ふふっ♪ よろしい♪」
藍(ま、まさか月の民の名前まで…えっ? あの月の民まで無理矢理連れてくるんですか!?)
紫「まぁこんなところね♪ これで説明は終わりよ、どうかしら」
藍「……まぁその私も乗ってしまっているのでもう断りません、やりましょう…! ゆかりんハウス」
紫「そう♪ ならこれで心置き無く『ゆかりんハウスでルームシェア!?』を始められるわね♪」
紫「あ、因みに私と藍がこのスロットに選ばれなかったら住人には内緒でゆかりんハウスの状況を逐一監視するからそのつもりでいてね♪」
藍「は、はい…」
藍(で、出来れば狸とだけは…! 頼むぞゆかりんスロット…!)
紫「ふふっ♪ 一週間頑張ったゆかりんの努力♪ 報われるかしら♪」
紫「出来れば幻想郷のみんなにはこの一時の娯楽…楽しんでほしいわね」
紫「普段会わない人との触れ合いは良いものよ…この想いは私だけの物かも知れないけどね」
藍「…」
藍(何か思うことがあるのかな…?)
紫「さぁ、始まるわよ♪」
紫「ゆかりんハウスでルームシェア!? シリーズ♪ 開始よ!」
藍「お、おー!」
おしまい!
というわけで新シリーズ、始まります!
部屋の内装はザックリ説明になってしまいましたが、家具の色や形その他諸々を、読者の皆様に想像していただきたくてこの様に表現しました。
設定投げっぱなしになってしまっているような気がしますがご容赦下さい。
ルームシェアする六人の選出はネットのランダム機能で選びます、どの東方キャラが三日間住むのか私も楽しみです♪
一人一人のキャラの個性を潰さないように…『ゆかりんハウスでルームシェアシリーズ』をよろしくお願いします♪
それではここまで読んでいただいてありがとうございました、お疲れ様でした♪