東方紫藍談  ~紫と藍の幻想談~   作:カテサミン

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 魔理沙の日常になります、非日常…になるかも知れません。



 魔理沙の日常とは謳っていますが彼女なりに思う事があり、今回は幻想郷の色々なところに赴き話を聞いて回ります、魔理沙は住人と話す事が好きでもあるのでみんなに聞いてみたい事があるようです



 時期としては『霧雨魔理沙の200のコト、が終わってから三日後の夜』となっています、200のコトを読んでいないと分からないところがあるかと思いますので先にそちらを読んでいただけたらと思います…この様な形になってしまい申し訳ないです。

 話の補完は魔理沙の回想シーンで補えれば良いのですがそれでも分からない単語が出てくるので今回のお話は長めです

 また短編集にある『冬眠ゆかりん』ともお話がリンクしてます。







 それでは始まります♪





【霧雨魔理沙の日常】『普通の魔法使い』

 

 

【現在、22時38分 魔法の森、霧雨魔法店】

 

 

 

 

 私、霧雨魔理沙は焦っていた

 

 

 

 

霧雨魔理沙「無い…! 無いっ…! ぬあぁっ…!」アセアセ

 

 

 

 

 ドサドサッ、ゴトゴトッ、パラパラッ…と、本の山が崩れ落ちて行く音が聞こえる。

 

 まるで湖を泳いでいるかの様に私は本という名の荒波にもまれ、もがいていた…博麗神社から家に帰ってきてからかれこれ一時間ずっとこんな感じだ。

 

 

 

魔理沙「いってて…! くっそ…! ぬおっ…!」

 

 

 

 私は自分の頭に落ちてきた本に怒りを覚えつつ、また本の荒波へと飛び込む。

 

 普段の私ならこの荒波に飛び込んだりしないし、本に怒りなんて覚えることはないんだけどな。

 

 

 ははっ、魔理沙さんらしくないよな、でも

 

 

 私は今、本気で焦っているんだ

 

 

 

魔理沙「何処行った…!? 何処だ…!? 出てきてくれ…!!」ガサゴソ 

 

 

魔理沙「師匠がくれた…あの魔導書…!」ガサゴソ

 

 

 

 

 大切な物、無くしちまったかもしれねぇからだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 【時は遡り 10時間前、博麗神社】

 

 

 

 

博麗霊夢「掃除、ほら、落ち葉集めて」

 

 

魔理沙「へいへい」サッサッ

 

 

霊夢「丁寧にやりなさい」

 

 

魔理沙「やってるよ…」サッサッ

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「次、お茶」

 

 

魔理沙「へいへい」スッ

 

 

霊夢「ズズズッ…」

 

 

魔理沙「ど、どうでしょうかっ!」

 

 

霊夢「…」

 

 

霊夢「ぬるい、薄い、不味いっ!」

 

 

魔理沙「あぁ!?」

 

 

霊夢「…何か?」

 

 

魔理沙「い…いいえ…」

 

 

霊夢「いれ直して」

 

 

魔理沙「へい…」

 

 

魔理沙「霊夢め…この魔理沙さんがせっかくいれてやったのに文句ばっかり言いやがって…」ブツブツ

 

 

霊夢「あららぁ? 何か言ったぁ?」ニッコリ

 

 

魔理沙「いっ…! いいえっ…!?」

 

 

霊夢「ふ~ん…♪ そう♪」ニヤニヤ

 

 

魔理沙「ぐっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「次、洗濯、井戸から水汲んで洗って」

 

 

魔理沙「へいへい…っておい、にとりが作ってくれた温泉のお湯使わせろよ」

 

 

霊夢「…♪」ピラッ

 

 

 

 霊夢は三日前に開かれた魔理沙のクイズ大会の優勝賞品である『霧雨魔理沙を一日好きに出来る券』を得意気な顔で魔理沙に見せ付ける

 

 

 

魔理沙「いいっ…! へいへい分かったよ、分かりましたよ博麗の巫女様ぁ!!」

 

 

霊夢「ふふふふ♪ それでいいのよ、それで」ニッコリ

 

 

魔理沙「ちくしょー…あいつ絶対地獄に落ちるぜ…」ボソッ

 

 

霊夢「あらぁ? 何か言ったぁ?」

 

 

魔理沙「い、いいえっ!」

 

 

霊夢「んっふふふふふ♪」

 

 

魔理沙(悪魔かアイツは…!)

 

 

 

 霊夢から言い渡される命令を朝から悉くこなした魔理沙、そんな彼女にもお昼休みという休憩が待っていた

 

 

 

 

 

魔理沙「流石に疲れたぜ…」

 

 

霊夢「はいお疲れ様♪ 良く働くじゃない、見直したわよ魔理沙」

 

 

魔理沙「良く言うぜ…朝からこきつかっといてよ」

 

 

霊夢「私は優勝賞品を有効活用しているだけなんだけどねぇ♪」

 

 

魔理沙「くそぉ…まさかお前が優勝するなんて思って無かったんだもんよ…」

 

 

霊夢「すいませんねぇ♪ アリスと二人で優勝してしまって…あっはっはっは♪」

 

 

魔理沙「お前…ノリが紫の婆さんみたいだぞ?」

 

 

霊夢「…! ……それはちょっと…」

 

 

魔理沙「悪いこと言わねぇからやめとけ、うん」

 

 

霊夢「…ほら休憩、休憩しましょ、人里のお饅頭とお煎餅、好きなだけ食べて良いからさ」

 

 

魔理沙「おう、ありがたくいただくぜ♪」

 

 

霊夢「んじゃ私も…」

 

 

 

 

 

霊夢「そういやさ」

 

 

魔理沙「ん?」

 

 

霊夢「今から二日前か、アリスこの券使ったんでしょ? どうだったの?」

 

 

魔理沙「!!? ……」

 

 

霊夢「…?」

 

 

魔理沙「お前…聞きたいのか?」

 

 

霊夢「まぁちょっと怖いもの見たさでね」

 

 

魔理沙「ふっ…アレはなぁ…なんというか」

 

 

魔理沙「アリスからしてみれば天国なんだろうが私からしてみれば地獄だったぜ、ずっとアリスの家に居たんだからな」

 

 

霊夢「あぁ…そうでしょうね」

 

 

魔理沙「日付が変わった瞬間に券を使いやがったんだぞ? もうな? 家の中ではわりと好きにさせてくれてたんだが不思議の国に一緒に連れてかれた気分だった」

 

 

魔理沙「『これは生き地獄だ、だからこの地獄を生き抜けば私は悟りを開ける筈だ』と根拠の無い何かを自分に言い聞かせながら一日を過ごしたんだ、正直夜の22時ぐらいから白目向いてたと思うぞ、無心だったんだろうな」

 

 

霊夢「そこまで!?」

 

 

魔理沙「一部抜粋して聞かせてやるぜ」

 

 

 

 

 

 

 ホワンホワン

 

 

 

アリス・マーガトロイド『まぁ~りさ♪ はい♪ あーん♪』

 

 

魔理沙『……いいっての、ケーキぐらい自分で食えるからよ』

 

 

アリス『んふふふ♪ 一日魔理沙を好きに出来る券を発動ー♪』

 

 

魔理沙『!?』

 

 

アリス『従ってくれるわよね♪ はい♪ あ~ん♪』

 

 

魔理沙『くっ…! あ、あーん…』モグモグ

 

 

アリス『ふふ♪ 美味しい?』

 

 

魔理沙『…味は…味はな、うん』

 

 

アリス『いやぁん♪ 魔理沙に美味しいって言ってもらえたわぁ♪ ふふふ♪』

 

 

魔理沙(自分で食わせてくれ…!)プルプル

 

 

 

 

 

アリス『♪』ニコニコ

 

 

魔理沙『…アリスよぉ』

 

 

アリス『なぁに魔理沙♪』

 

 

魔理沙『私今よ、魔導書読んでるじゃん?』

 

 

アリス『うん♪』

 

 

魔理沙『…何で一緒に読もうとするんだよ』

 

 

アリス『魔理沙が何の本を読んでいるのか凄く気になるの♪』

 

 

魔理沙『嘘つくなよ、本の表紙で分かるだろうが、それにお前本の方見てないだろ』

 

 

アリス『えっ?』

 

 

魔理沙『私の顔ずっと見てんじゃんお前』

 

 

アリス『…』

 

 

魔理沙『…』

 

 

アリス『…』

 

 

魔理沙『…』

 

 

アリス『ふふっ♪』

 

 

魔理沙『ふふっじゃねぇよ』

 

 

 

 

 

アリス『魔理沙♪ 紅茶よ♪』

 

 

魔理沙『お、ありが…』

 

 

魔理沙『…おい』

 

 

アリス『なぁに魔理沙』ニコニコ

 

 

魔理沙『お前この紅茶飲めるか?』

 

 

アリス『…』

 

 

魔理沙『…』

 

 

アリス『ふふっ♪』

 

 

魔理沙『ふふっじゃねぇぞ!? 何を入れたぁ!?』

 

 

アリス『ちょっと…ほんのちょっとよ?』

 

 

アリス『体が火照っちゃう薬♪』

 

 

魔理沙『アホかお前っ!!』

 

 

 

 

 

 

アリス『んふふふ♪』

 

 

魔理沙『アリスさん』

 

 

アリス『なぁに魔理沙♪』

 

 

魔理沙『風呂に一緒に入るのは博麗神社の温泉以来ですね』

 

 

アリス『そうね♪ でも今はあのときとは違って霊夢も萃香も早苗も居ないわ♪ 私と魔理沙だけの空間よ♪』

 

 

魔理沙『そうですね』

 

 

アリス『むぅ…ねぇ魔理沙、さっきから何で敬語なの?』

 

 

魔理沙『私にも分かりません』

 

 

アリス『…はっ!? ま、まさかこれが夫婦の倦怠期ってやつなのかしら!?』

 

 

アリス『ねぇ魔理沙! 私あなたに飽きられちゃうの!? そんな事になったら私生きていけないわ魔理沙ぁ!! 倦怠期は嫌ぁ!』

 

 

魔理沙『知るかぁぁ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙『アリス…』

 

 

アリス『なぁに魔理沙♪』

 

 

魔理沙『何で同じベッドで一緒に寝るんですか…』

 

 

アリス『そりゃあ…ふふふっ♪』

 

 

魔理沙『…お休みなさい』

 

 

アリス『! ねぇねぇ魔理沙、お休みする前にこれを見て?』

 

 

魔理沙『…?』

 

 

アリス『ほら、この枕! 表にYES! 裏にはNO! って書いてあるでしょ?』

 

 

魔理沙『…あぁ?』

 

 

アリス『ほらっ! 私は今日はYES! YESなのよ魔理沙ぁ♪ もうね♪ 私は毎日イエスでも全然構わないのだけ』

 

 

魔理沙『お休みなさい』ボフッ

 

 

アリス『あぁんそんなぁ…魔理沙ぁ! もう寝ちゃうの!? これからなんじゃないの!? 夜はまだまだ長いのよ魔理沙ぁ!』

 

 

魔理沙(う、うるせぇ…!)

 

 

アリス『はっ!? ま、まさかこれは…!? 世に聞くじ、焦らしプレイと言うやつなのではっ!?』

 

 

魔理沙『黙って寝ろぉ!!』

 

 

 

 

 ホワンホワン

 

 

 

 

 

霊夢「うっわぁ…」ドンビキ

 

 

魔理沙「私は少しでも救いがほしくて側に居た上海と蓬莱に『助けてくれ!』の眼差しを向けたんだが」

 

 

魔理沙「上海と蓬莱も引いてた…」

 

 

霊夢「自分の人形にまで引かれるとはね」

 

 

魔理沙「なんか気の毒になって助けを諦めたよ、自分の主が大暴走しているのを陰から見守る事しか出来なかったんだと思う」

 

 

霊夢「…」

 

 

魔理沙「紫じゃねぇけどよ……」

 

 

魔理沙「マジでつれぇわ…」

 

 

霊夢「そりゃあつれぇでしょうよ…」

 

 

魔理沙「結局悟りも開けなかったしよ…」

 

 

霊夢「それは置いときなさいよ、うん」スッ

 

 

霊夢「…ほら、饅頭と煎餅食べてお茶飲んで元気出しなさい」

 

 

魔理沙「…ありがとな霊夢」

 

 

霊夢「うん…」

 

 

霊夢(アリス、あんた羽目を外し過ぎよ…)

 

 

魔理沙「あぁあの悪夢を思えばここは自由だなぁ…天国か…?」

 

 

霊夢「それは大袈裟、ここは神社よ」

 

 

 

 

 

 

【お昼休憩後…】

 

 

魔理沙「うっし! 食って元気出たぜ、愚痴を聞いてくれてありがとうな、霊夢」

 

 

霊夢「ふっ…そいつはどうも♪」

 

 

魔理沙「もうアリスの所に比べればもう何でも来いってやつだぜ! ほら、次の命令は何だ? 何でもこなしてやるぜ?」

 

 

霊夢「あ~…ん~そうねぇ…もうちょっと待っててくれる?」

 

 

魔理沙「ん? 待つ?」

 

 

霊夢「もうちょっとで来ると思うのよね」

 

 

魔理沙「? 何が?」

 

 

 

 

 すたすた ザッザッ

 

 

 

霊夢「あら…噂をすればね」

 

 

魔理沙「ん? おっ!?」

 

 

 

 

 

レミリア・スカーレット「アリス、あなた妙にお肌がツヤツヤしてるわね」

 

 

アリス「ふふっ♪ 何でか分かる? そりゃあ好きな人と同じ屋根の下で一日過ごしたらこうなるわよ♪ んふふふふふ♪」ツヤツヤ

 

 

レミリア「私も神社に泊まった事あるけどそんなにはならなかったわよ?」

 

 

パチュリー・ノーレッジ「…魔理沙は無事なのかしら、心に傷を負ったら直ぐには治せないわよ?」

 

 

十六夜咲夜「まぁあの魔理沙ですし、大丈夫だとは思いますけどね」

 

 

アリス「なんですって!? 魔理沙に心の傷がっ!?」

 

 

咲夜「アリス、それギャグよね?」

 

 

パチェ「ギャグじゃなかったらあなたの神経を疑うわ」

 

 

レミリア「あっはは…って笑い事じゃないわね、コレ」

 

 

 

 

魔理沙「いぃっ! アリス…!? ってあの面子は…」

 

 

霊夢「そう、クイズ大会の時の面子よ」

 

 

霊夢「…大会が終わった後ちょっと話し合ってね」

 

 

魔理沙「あ? 何をだよ」

 

 

霊夢「それをみんなであんたに説明、質問すんのよ」

 

 

魔理沙「…あー?」

 

 

 

 

 

 

 

 【霊夢たち、説明中…】

 

 

 

魔理沙「あ~…つまり?」

 

 

パチェ「話聞いてたの? あなたの師匠の事についてよ」

 

 

咲夜「クイズの時に文からの問題で質問されてたのは覚えてる? それを私たちに聞かれてたことも分かっているわね?」

 

 

魔理沙「まぁ、うん」

 

 

パチェ「気になるでしょ色々と、だから帰ってきた後このメンバーで話し合ったの『あなたの師匠の事についてあなたに聞こう』ってね」

 

 

レミリア「霊夢とアリスは存在は知っていたみたいだったけど、深くはあなたから聞いて無かった」

 

 

アリス「妻である私でもね、本当に『私には思い出せない師匠がいるんだ』ぐらいしか聞いてないのよ」

 

 

魔理沙「おいお前さらっと何言ってやがる」

 

 

霊夢「それは置いといて…とにかく魔理沙、私たちの質問に答えなさい」

 

 

魔理沙「…200問も質問責めされたのにまだ私に質問する気なのかよ」

 

 

パチェ「こっちは消化不良なのよ、気になってしょうがないの」

 

 

霊夢「この券、まだ私は使えるからこの券の文字通り好きにさせてもらうからね」

 

 

魔理沙「…ったく、そんなもん使わなくても答えてやるっての」

 

 

霊夢、レミリア、咲夜、アリス「…!」

 

 

魔理沙「別に隠すことでもないしな、今まで私の師匠のことについて聞かれてなかったから答えてなかっただけだ」

 

 

魔理沙「よーし何でも聞いてくれ、出来る範囲で答えてやる、ただこれだけは言っとくぞ? 本当に断片的にしか覚えてねぇんだ、それでも良いのか?」

 

 

パチェ「充分よ」

 

 

咲夜「じゃあ質問するわよ? でもその前にあのクイズ大会で聞けたことはこれ、書いてまとめてみたわ」

 

 

 

 『魔理沙には師匠がいるということ(女性)』

 『魔理沙は師匠を尊敬しているということ』

 『その師匠が人なのかどうかは覚えてない』

 『その師匠に出会ったのは10年も前』

 『師匠とのことは断片的にしか覚えていない』

 『師匠は魔法を使え、魔理沙に見せた事がある』

 『恐らく師匠とは短い間しか一緒に居なかった』

 『最後にマスタースパークを見せてもらった』

 

 

 

 

魔理沙「良く覚えてんな~…」

 

 

レミリア「咲夜が一晩でまとめあげてくれたわ♪ 流石ね、咲夜」

 

 

咲夜「恐悦至極でございますわ、お嬢様」

 

 

パチェ「で? どうなの?」

 

 

魔理沙「何が?」

 

 

パチェ「これは全部合ってるの?」

 

 

魔理沙「合ってる…たぶん」

 

 

霊夢「たぶん…ね」

 

 

アリス「これもうろ覚えなの?」

 

 

魔理沙「絶対に合ってるってもんはあるが、全部が全部合ってるとは思えんな」

 

 

魔理沙「特に『人なのかどうか』と『師匠とは短い間しか一緒に居なかった』は怪しいな、あぁ女性は合ってるぜ?」

 

 

魔理沙「他のやつも合ってる…うん、合ってるな」

 

 

レミリア「気になるのはマスタースパークよね」

 

 

霊夢、アリス(マスタースパーク…)

 

 

パチェ「そうそれよ、何故だか知らないけれどあの風見幽香も使ってたわよね」

 

 

魔理沙「お? おぉそういえばそうだな、何であいつ使えるんだ?」

 

 

咲夜「…逆に聞くけど、それ知らないの?」

 

 

魔理沙「知るわけ無いだろ『へぇー、幽香も使えるんだなぁ』ぐらいしか思ってないもんよ」

 

 

パチェ「あなたの師匠が使い、見せてくれたマスタースパークを風見幽香が使ってる事を不思議に思ったりしないの?」

 

 

魔理沙「……」

 

 

魔理沙「…」

 

 

魔理沙「そう言われると不思議に思えて来たぜ…あいつ何で使えるんだ?」

 

 

咲夜「知らないわよ、聞いたこと無いんだから」

 

 

霊夢「てか何で今の今まで不思議に思わなかったのよ、あんたの師匠の技なんでしょうが」

 

 

魔理沙「そんなのいちいち気になってられねぇだろ? 『幽香はマスタースパークが使える』ってのが私にとってはそれだけで充分だったんだよ」

 

 

霊夢「そういうのはあんたらしいけど…」

 

 

アリス「…? 魔理沙、あなた今『だった』って言った?」

 

 

魔理沙「あぁ言った」

 

 

魔理沙「お前らにそんな事言われたらなんか…気になって来ちまったよ…」

 

 

霊夢、アリス、レミリア、パチェ、咲夜「…」

 

 

レミリア「幽香が師匠だなんて事はないわよね?」

 

 

魔理沙「それはねぇな、断言してもいい」

 

 

レミリア「…そうよね」

 

 

パチェ「他に覚えてる事は無いの? 外見とか」

 

 

魔理沙「…そうだな」

 

 

魔理沙「外見…? まぁ…さっきから言ってるが人間かどうかは分からねぇ、ただ綺麗な顔はしてたと思う…それと……あっ!?」

 

 

魔理沙「髪! 髪の毛だ! 長い髪の毛だったぜ!」

 

 

魔理沙「色は…そう! 緑色だった!」

 

 

レミリア、パチェ、アリス、霊夢「緑色…」

 

 

咲夜(緑…確か魔理沙の好きな色は緑色)

 

 

咲夜「魔理沙、その調子よ、思い出せるところまで思い出してみて」

 

 

魔理沙「ん~と……えっと……」

 

 

アリス「ま、魔理沙…無理に思い出さなくても」

 

 

魔理沙「いや…! まて、待てよ…!? 服……服は…」

 

 

魔理沙「………私の服装に…似てる…か?」

 

 

魔理沙「……いやでもそうだな…全体的に…青色の服で…白もちょっと入ってて……頭に…たぶんあれは帽子…いや、何だあれ……頭巾っぽくて」

 

 

魔理沙「あれは……」

 

 

魔理沙「…………」

 

 

魔理沙「……」

 

 

魔理沙「…」

 

 

咲夜、パチェ、レミリア「…!」

 

 

アリス「!? ま、魔理沙? 魔理沙!?」

 

 

魔理沙「……」

 

 

霊夢「! 魔理沙ぁ!!」

 

 

魔理沙「!?」ビクッ

 

 

霊夢「はぁっ、はぁっ…」

 

 

アリス「ま、魔理沙…」

 

 

魔理沙「はっ、はっ…は…あ…あ、あぁ?」

 

 

霊夢「あ、あんた大丈夫…?」

 

 

アリス「眉間にシワ寄せて目を見開いて…息、してなかったわよ…? 大丈夫…?」

 

 

魔理沙「あ、あ、あぁ…だ、大丈夫だ」

 

 

咲夜「ごめん魔理沙…思い悩ませてしまったわね」

 

 

魔理沙「いや…良いんだ、お前が謝る事じゃねぇよ」

 

 

レミリア「…」

 

 

魔理沙「…なぁどうだ? なんかあったか? 師匠の手掛かり…」

 

 

パチェ「…」

 

 

パチェ「緑色の長髪であること…あなたの服装に似ているが、青色をベースとし、白色の部分が何処かしらにあるのがあなたの師匠の服装、そして帽子か頭巾を被っている」

 

 

魔理沙「……」

 

 

霊夢「それだけ覚えていれば会ったら一目で分かるんじゃないの?」

 

 

魔理沙「…たぶんな」

 

 

霊夢、咲夜、パチェ、レミリア「…」

 

 

魔理沙「…」

 

 

アリス「…ね、ねぇあのさ、この話…辞めない?」

 

 

アリス「別にいいじゃない魔理沙の師匠の事なんて、魔理沙は魔理沙なんだし、それに魔理沙の師匠の事を知ったって何かが変わる訳でも無いし」

 

 

アリス「それに…魔理沙がその事で辛い顔をして思い悩む姿を私は見たく無い…」

 

 

霊夢「アリス…」

 

 

魔理沙「…ありがとな、アリス」

 

 

アリス「…魔理沙」

 

 

魔理沙「でも私よ…今ので思い出したことがもう一個あるんだ」

 

 

アリス「えっ…?」

 

 

魔理沙「私には凄く大事な物だ、今まで忘れてた自分が嫌になるぜ」

 

 

霊夢「なんなの…?」

 

 

魔理沙「師匠が私にマスタースパークを見せてくれる前、小さかった頃の私に手渡してくれた物があるんだ」

 

 

魔理沙「一冊の魔導書…私が初めて手にした魔導書だ」

 

 

霊夢、咲夜、パチェ、レミリア、アリス「!!」

 

 

魔理沙「……」

 

 

 

 

 

 

 

【そして現在…】

 

 

 私は本にまみれた床に這いつくばりながら、師匠からもらったであろう魔導書を探していた。

 

 

魔理沙「コレか!? あっ違うな、コレはぱっつぁんのとこらから借りてきた奴だな、ここら辺は全部紅魔館のか」ポイッ

 

 

 私は立ち上がり、床に散乱しまくっている本を踏まないように他の本を探す

 

 

魔理沙「…ここら辺か?」

 

 

魔理沙(チクショー、こんなことになるなら少し掃除…いや、片付けて整理整頓しておけば良かったぜ)

 

 

魔理沙(師匠の本…何処にあるんだ…)

 

 

魔理沙(無くしちまってたら最低だな、私…)

 

 

魔理沙(いや、だが)

 

 

魔理沙(その本を大切にしてたっていう思い出は、私の中に確かに存在してるんだ…!)

 

 

 

 私はもう一度、本の海を掻き分ける

 

 

 バサッドサッ…再び、私の家にけたたましい音が鳴り響く

 

 

 

魔理沙「違う…! これも違う! これでもねぇ」

 

 

 

 私は一冊一冊を手に取り、表紙を見ては右、左、はたまた後ろへと本を放り投げる事を繰り返す

 

 

 

魔理沙「最後に読んだのは何時だ…? 思い出せよ霧雨魔理沙…! 大切な…! 大切なもんだろうがよ!」

 

 

魔理沙「……」

 

 

魔理沙「…」

 

 

魔理沙「…!! そうだ…!」

 

 

 

 バサッドサッ…! また私は本の海を掻き分ける、ある一点の場所を目指して

 

 

 

魔理沙「そうだ…何で気付かなかったんだ…」

 

 

魔理沙「私の机の…一番下の引き出し」

 

 

 普段私は本をしまうという事をしない、だから気付け無かったんだと思う、紅魔館から借りてきた本もそこら辺から拾って来た本も…机の上に放りっぱなしだったり床に山積みにしている

 

 死ぬまで借りてんだ、自分なりに大切にしてるつもりだったんだが

 

 

魔理沙「大切な思い出になってるもんには敵わねぇって事かな」スッ

 

 

 いつも魔導書を読むときに使っている机、椅子に腰掛けて机に向かって本を開いている私の机

 

 

 私はその四つの引き出しが付いている机の一番下の引き出しを開けた

 

 

 

魔理沙「…!! あった!」

 

 

魔理沙「これだ…! やったあったぞ! これが師匠がくれた魔導書だ!」スッ

 

 

 

 私は早速椅子に腰掛け机に向かい、その本を開く

 

 パラパラっとページを捲ってみた

 

 

 

魔理沙「うへぇ…古ぼけてやがる、文字も掠れてて読めやしねぇ、破けちまってるところもあるな…そんなに読んだって事なのか?」

 

 

魔理沙(著者は……書いてねぇな…師匠、名前くらい書いといてくれればいいのによ)

 

 

魔理沙「はぁ…うん?」

 

 

 

 私はその魔導書の最後のページを見た

 

 

 

魔理沙「…!? マスター…スパーク…か…?」

 

 

魔理沙「そう書いてあるな…うん、間違いねぇ」

 

 

魔理沙「……っ!?」

 

 

 

 

 

 

 キィィィン…!

 

 

 『いいか? ジジジジッ 最後……おわかジジジジッ… 目に焼き……』

 

 

 『おう!』

 

 

 キィィィン…!

 

 

 

 

 

 

魔理沙「はぁ…! はぁ…! は、はぁ!?」

 

 

 シーン……

 

 

魔理沙「な、何だ…!? い、今のは…!」

 

 

魔理沙「記憶…か? 私の、昔の…?」

 

 

魔理沙「あぁ…くそ…あったま痛いっ…」

 

 

魔理沙「はぁ…はぁ…」

 

 

 

 私は重い足取りでふらつきながら自分のベッドにダイブした

 

 

 

魔理沙(今日は…もう寝るか…本見つかったし、頭いてぇし…風呂も…明日で良いや…それに、明日は…)

 

 

 

 

 

 

 ホワンホワン

 

 

 

【博麗神社】

 

 

パチェ『取り合えず一旦お開きね、あぁ魔理沙』

 

 

魔理沙『ん?』

 

 

パチェ『もしその魔導書が見付かったら私のところに来なさい、何か手助けしてあげられると思うわ』

 

 

魔理沙『おう、今日帰ったら探してみるぜ』

 

 

アリス『私も出来る限り手伝うわ、魔理沙』

 

 

魔理沙『サンキューな、二人とも…本を見つけたら先ずはアリスの家に行く事にするぜ』

 

 

アリス『分かったわ、ふふっ♪』

 

 

レミリア『魔法は私たちには専門外ね』

 

 

咲夜『パチュリー様とアリスにお任せしましょう』

 

 

霊夢『まぁこればっかりはね』

 

 

霊夢『…魔理沙』

 

 

魔理沙『あん?』

 

 

霊夢『あんまり一人で悩むんじゃないわよ』

 

 

魔理沙『! …へっ、んなこと分かってるぜ♪』

 

 

霊夢『…ならいいけどね♪』

 

 

 

 ホワンホワン

 

 

 

魔理沙(…)

 

 

魔理沙(今…23時か…あぁいいや目覚ましは…めんどくせぇ)

 

 

魔理沙(今日は…疲れたぜ…)

 

 

魔理沙(……お休み)

 

 

魔理沙「…」

 

 

魔理沙「スー…スー…」zzZ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【次の日、7時20分 魔法の森、霧雨魔法店】

 

 

 

 ドンドン! ドンドン!

 

 

 

魔理沙「かぁ~…くぉ~…」zzZ

 

 

 

 ドンドン! まぁ~りぃ~さぁ~!

 

 

 

魔理沙「んっ…んあっ…?」

 

 

 

 ドンドンドンドン! まぁ~りぃーさー!

 

 

 

魔理沙「……あぁ?」

 

 

 

 玄関のドアを叩く音と、外から聞こえる大きな声で目が覚めた

 

 

 

魔理沙「…うわっ、おいおいまだ7時じゃねぇかよ…もうちょっと寝かせてくれねぇかな…」

 

 

 

 まままま魔理沙ぁー! 出ぇて来いやー!

 

 

 

魔理沙「…」イラッ

 

 

魔理沙「はっはっはっは…騒々しい目覚まし時計だなぁ? えぇおい、セットした覚えはねぇぞぉ?」スッ

 

 

魔理沙「…」スッ

 

 

 

 ガチャッ!

 

 

 

魔理沙「朝から騒々しいわぁ! 誰だぁオルァ!」

 

 

 

ルーミア「わ~はは~のは~! なのだー!」

 

 

魔理沙「…」

 

 

ルーミア「…」

 

 

魔理沙「…」

 

 

ルーミア「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「お疲れしたぁ」スッ

 

 

ルーミア「ぬおぉ!? ま、待つのだー! 扉を閉めないでほしいのだー!」

 

 

魔理沙「悪いな、これから魔理沙さんは二度寝タイムなんだ、てか朝っぱらから何しに来たんだお前は」

 

 

ルーミア「…」グゥー

 

 

魔理沙「…あ?」

 

 

ルーミア「腹へったのだ…」

 

 

魔理沙「…」

 

 

ルーミア「飯」

 

 

魔理沙「…」

 

 

ルーミア「メシくれ」

 

 

魔理沙「たかりに来たのかよ!?」

 

 

ルーミア「腹へったのだー! 何か食わせてほしいのだ!」

 

 

魔理沙「ふざ…ふざけんなよお前ぇ…こちとらお前に叩き起こされて不機嫌なんだからな? それにタダでメシ食わせてやるほど魔理沙さんは甘くねぇぞ?」プルプル

 

 

ルーミア「ならこれやるのだ、さっきそこら辺で採ってきたのだ」

 

 

魔理沙「あん? …キノコ?」

 

 

ルーミア「たくさんあるのだ、これやるからメシを食わせてくれなのだ」

 

 

魔理沙「…これ食えば良いじゃねぇか」

 

 

ルーミア「調理された物しか食いたくねぇのだ」

 

 

魔理沙「贅沢な奴だな…」

 

 

魔理沙(お! カリスマリッシュルームもありやがるな)

 

 

ルーミア「うぅ…」キラキラ

 

 

魔理沙「キラキラの眼差しを向けんな」

 

 

魔理沙「……はぁしょうがねぇなぁ、昨日の残り物のシチューならあるからそれでいいか?」

 

 

ルーミア「!! おぉー♪ もちろんなのだ!」

 

 

ルーミア「おっ邪魔するのだー♪」

 

 

魔理沙「へいへい…」

 

 

魔理沙(随分早く起きちまったがまぁいい、予定変更だぜ)

 

 

魔理沙(これから風呂入って、メシ食って、んでアリスんとこ行くか)

 

 

ルーミア「ぬおっ!? な、なんなのだー!?」

 

 

魔理沙「あ…そういや本片付けて無かったな」

 

 

ルーミア「足の踏み場がねぇのだ…」

 

 

魔理沙「…ちょっと飛んで、椅子に座ってくれ」

 

 

ルーミア「分かったのだ」スッ

 

 

魔理沙「ルーミア、今から私風呂入って来るからよ、その鍋にシチュー入ってるから勝手に食って良いぞ、でも全部食うんじゃねぇぞ? 私の分も残しておいてくれ、分かったか?」

 

 

ルーミア「…」

 

 

魔理沙「…?」

 

 

ルーミア「魔理沙それは…フリなのかー?」

 

 

魔理沙「フリじゃねぇよアホ! 良いか!? 全部食うんじゃねぇぞ!? 分かったな!?」

 

 

ルーミア「…チッ」

 

 

魔理沙「舌打ちしてんじゃねぇ!!」

 

 

 

 

 

 私は風呂に入り、15分程で出た、ルーミアは私の言い付けを守りシチューを残してくれていた

 

 その事に関しては意外だったな、マジで全部食うと思ってたから…どうやら食べる速度を落とす事で食欲を抑える方法を身に付けたらしい、ゆっくり噛んで、ゆっくり味わう…流石グルメ妖怪だな…いや宵闇の妖怪だったか

 

 残っていたシチューを私はルーミアと一緒に食べ、朝食を終えた

 

 

 そしていつもの服に着替える…白と黒のお気に入りの服、帽子…後はショルダーバッグだ、いつも紅魔館から借りる本をこのバッグに入れている…だが今回はこれ以外は入れるつもりはない、師匠からもらったこの魔導書以外はな

 

 

 私はルーミアと共に家の外に出…ん? あぁ家の片付けか? んなもんは後で良いんだ、今日は大事な日になるかもしれねぇからな

 

 

 

 

ルーミア「んお? 魔理沙もお出掛けするのかー?」

 

 

魔理沙「あぁ、ちょっとな」

 

 

魔理沙「そういやお前はどうすんだ?」

 

 

ルーミア「私はこれから寺子屋なのだー」

 

 

魔理沙「あぁそっか、それじゃここでお別れだな」

 

 

ルーミア「おー♪ そーなのかー」

 

 

魔理沙「そーなのだー♪」

 

 

魔理沙、ルーミア「わはー♪」

 

 

ルーミア「わはは♪ 魔理沙、今日寺子屋に来てくれたりするかー?」

 

 

魔理沙「ん? あー、んまあ気が向いたら行ってやってもいいぜ」

 

 

ルーミア「そーかー♪ 分かったのだー」

 

 

ルーミア「じゃあまたなー魔理沙ー♪ シチュー美味しかったのだー♪」

 

 

魔理沙「おう、じゃあな」

 

 

 

 ルーミアはふよふよと人里の方に飛んで行った

 

 

 

魔理沙「あいつあんなゆっくり飛んで行って遅刻とかしねぇのかな…まぁいいか」

 

 

魔理沙「さてさて…」スッ

 

 

 

 私はこの魔法店に立てられている『なんかします』と書かれた看板の横に立て掛けられているお気に入りの箒にまたがり、宙に浮く

 

 

 

魔理沙「うし…! じゃあ行きますか」

 

 

魔理沙「先ずは…アリスの家からだな」

 

 

魔理沙「へっ…! 今日も一日頑張るぜー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【魔法の森、アリス邸】

 

 

 

魔理沙「おーいアリス、魔理沙さんが来てやったぜー!」

 

 

 シーン…

 

 

魔理沙「…あ? あいつまだ寝て…る訳ねぇよな、いつも7時には起きてるもんな」

 

 

 

 ガチャッ、と扉が開いた

 

 

 

魔理沙「お! おはよう、アリ…ス?」

 

 

上海人形「シャンハーイ♪」

 

 

魔理沙「上海? アリスはどうしたんだ?」

 

 

上海「シャン…ハーイ♪」スッ

 

 

魔理沙「ん? これは、手紙か?」

 

 

魔理沙「どれどれ」

 

 

 

『私の愛する魔理沙へ  私は少し気になることがあるので紅魔館地下図書館に朝早くから出掛けています、もしあなたがお師匠さんの本を見つけ、私のところに訪ねて来ているのだとしたらこの手紙を上海から受け取っているはず…紅魔館で会いましょう、魔理沙』

 

 

 

魔理沙「なるほど…分かったぜ、アリス」

 

 

魔理沙「てか気が利くなぁ、アリスは…お前のご主人様は暴走しなければ私の最高の相棒だぜ」

 

 

 魔理沙は上海を優しく撫でてやる

 

 

上海「! シャ、シャンハーイ…///」テレテレ

 

 

魔理沙「ふっ、そんじゃあ紅魔館に…!」

 

 

魔理沙「いや…待てよ…?」

 

 

上海「シャンハーイ?」

 

 

魔理沙「……ダメで元々だな」スッ

 

 

魔理沙「じゃあな上海、手紙ありがとな!」スッ

 

 

 ギューン!

 

 

上海「? シャンハーイ♪」フリフリ

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「この際だからな、色々と聞いてやるとするぜ」

 

 

魔理沙「幻想郷さんよぉ、今まで異変を頑張って解決しているこの魔理沙さんに少しでも感動をよこしやがってもいいんだぞ?」

 

 

魔理沙(……師匠、私は…)

 

 

 

 

 

 

 

 

【マヨヒガ】

 

 

 

八雲紫「だぁからぁ! 知らないって言ってんでしょうが!」

 

 

魔理沙「嘘つくんじゃねぇぞババア!」

 

 

紫「誰がババアだクルァ!!」

 

 

八雲藍「…」

 

 

紫「らぁん! この礼儀を弁えない不届きな若僧をさっさと追い出しなさい!」

 

 

魔理沙「藍! お前からも言ってやってくれよ! この嘘つきババアによぉ!」

 

 

紫「誰が嘘つきだクルァ!!」

 

 

魔理沙「あぁん!?」

 

 

紫「おぉう!?」

 

 

藍「どっちもどっちだと思いますけどね…」

 

 

魔理沙、紫「はぁ!?」

 

 

藍「!?」ビクッ

 

 

紫「クイズの時にも答えたでしょうが! 私は知らないって言ってんのよ! あなたの師匠の事なんかねぇ!」

 

 

魔理沙「言われたよ! でもよくよく考えてみるとお前が知らねぇ訳がねぇって思ったんだよ! 幻想郷の管理人であるお前がなぁ!」

 

 

紫「…」

 

 

魔理沙「お前なら幻想郷の住人全員の顔と名前ぐらい分かるだろ!? なぁ! それぐらい出来ないと幻想郷の管理人は勤まらない筈だ! はっ、そうかそうか…! 幻想郷の管理人さんの管理が杜撰だとそりゃあ藍も苦労するよなぁ!」

 

 

紫「…」

 

 

魔理沙「…! あ、あん?」

 

 

魔理沙「な、なんだよ…! なんか言い返してみろよババア!」

 

 

紫「魔理沙」

 

 

魔理沙「…!」

 

 

紫「私だって完璧な妖怪じゃないのよ」

 

 

紫「どんな能力にも弱点はあるように、どんな生物にも何かしらの欠点という物があるの」

 

 

紫「私だって完璧な管理人さんじゃないの、適当で不完全なところもあるのよ」

 

 

藍「…」

 

 

魔理沙「…」

 

 

魔理沙「…悪い、言い過ぎたぜ」

 

 

紫「魔理沙、一つ言っておくわ」

 

 

紫「私はあなたの師匠の事は知らない、答えられないわ」

 

 

魔理沙「……そうか」

 

 

藍「…」

 

 

紫「そのお師匠さんの本だったかしら? 見せてもらえる?」

 

 

魔理沙「おう」スッ

 

 

紫「これね…」ペラッ

 

 

魔理沙「藍も、知ってるわけ無いよな?」

 

 

藍「……残念だが、紫様がご存知で無いことは答えられんからな」

 

 

魔理沙「だよな…」

 

 

紫「…」

 

 

紫(こんなにボロボロになるまで…覚えて無いのでしょうけど小さい頃に何度も何度も読み返したんでしょうね)

 

 

紫(悪いわね、私にも譲れない物があるの…あなたも霊夢の親友なら私のこの気持ち、分かってくれるわよね)

 

 

紫(少しこの本におまじないを掛けておきましょうか…ごめんね、魔理沙)スッ

 

 

紫「魔理沙、返すわ」

 

 

魔理沙「おう…なんか、本当に悪かったな」

 

 

紫「本当に悪いと思っているならババア呼ばわりはやめなさいよ♪」

 

 

魔理沙「それとこれとは話が別だぜ…」

 

 

紫「ふふっ♪」

 

 

魔理沙「笑うとこじゃねぇだろ」

 

 

紫「……よっぽどそのお師匠さんに会いたいみたいね」

 

 

魔理沙「あぁ」

 

 

紫「名前も顔も覚えていないお師匠様、そんな人ともし会えたとしたらあなたはどうしたいの?」

 

 

魔理沙「どうしたい…」

 

 

魔理沙「…そうだな」

 

 

魔理沙「会って謝りてぇし、お礼が言いたいな」

 

 

紫「…」

 

 

魔理沙「私を魔法使いという道に導いてくれたこと、そして今までの思い出を忘れちまっている事への謝罪だ」

 

 

魔理沙「忘れちまっている事に関しては怒られてもいい…てか怒られるのが当然だよな、あっははは!」

 

 

紫「…」

 

 

魔理沙「あの人に会ったから、今の私があるんだと思う」

 

 

魔理沙「だから色んな話をしてみてぇなぁ、異変解決の話とかさ」

 

 

紫「ふふっ♪ きっと喜んで聞いてくれるんじゃない?」

 

 

魔理沙「そう思うか?」

 

 

紫「あなたの師匠でしょ? だったらあなたに似てる筈、師匠は弟子に似るものよ」

 

 

魔理沙「それ普通逆じゃねぇか?」

 

 

紫「細かい事は気にしない気にしない♪」

 

 

魔理沙「はぁ…ったくよ~」

 

 

紫「ふふっ♪」

 

 

魔理沙「へっ…んじゃ私そろそろ行くわ、邪魔して悪かったな」

 

 

紫「ごきげんよう♪」

 

 

魔理沙「じゃあな~♪」

 

 

 

 ギューン!

 

 

 

紫「…」

 

 

藍「…紫様」

 

 

紫「はぁ、私ああいう嘘苦手なんですけど…萃香と勇儀に嫌われたく無いんですけどねぇ…」

 

 

藍「…」

 

 

藍「魅魔殿…」

 

 

紫「あら、あなた覚えてたの?」

 

 

藍「私が小さい頃良く遊んでもらってた記憶がありますので」

 

 

紫「あぁそういえばそうだったわね、懐かしいわ」

 

 

藍「…」

 

 

紫「魅魔の存在を知っているのは…私、藍、魔界の住人たち、幽々子…そして幻想郷が出来た時から居る最古参の住人と賢者クラスの住人」

 

 

藍「魅魔殿が魔理沙の前に姿を現さないのには理由があるんですよね?」

 

 

紫「そうよ」

 

 

藍「この先…隠し通していけるでしょうか」

 

 

紫「無理ね、間違いなく」

 

 

藍「…」

 

 

紫「…」

 

 

紫「藍」

 

 

藍「はい」 

 

 

紫「留守番頼めるかしら?」

 

 

藍「…分かりました」

 

 

紫「ふふっ、あらあら? 仕事サボって何処へ行こうというのかね? とか言わないの?」

 

 

藍「魔理沙のためになんとかしてあげるんでしょう?」

 

 

紫「…」

 

 

藍「それは幻想郷の管理人としての仕事です」

 

 

紫「ふふっ…急に言うようになったわね」

 

 

藍「元からですよ」

 

 

紫「それじゃ…行ってくるわ」スッ

 

 

 ギュオン!

 

 

藍「行ってらっしゃいませ、紫様」

 

 

 

 ギュオン…!

 

 

 

藍「…でも、どうなさるおつもりなのだろうか」

 

 

 

 

 

 

【スキマ空間】

 

 

 

紫「先ずは悪霊師匠の確保…それから」

 

 

紫「ふふっ、あの子に手伝ってもらおうかしら」

 

 

紫「二ヶ月も一緒に居たんだから、嫌とは言わせないわよ?」

 

 

紫「ドレミー、あなたの力も必要だわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【香霖堂、店前】

 

 

魔理沙「よっと…到着だ」

 

 

魔理沙(香霖とはガキの頃からの付き合いだ、師匠のことも知ってるかも知れない)

 

 

魔理沙(今まで聞いたこと無かったからな…どんな回答をされんのか…)

 

 

 ガヤガヤ ガヤガヤ

 

 

魔理沙「あん? なんだ?」

 

 

 

赤蛮奇「だ、だから何回も言っているだろう!」

 

 

わかさぎ姫「もう何回も聞いたよ?」

 

 

赤蛮奇「なら何故分かってくれないんだ!?」

 

 

今泉影狼「だから、分かってるって蛮奇」

 

 

朱鷺子「うん♪ 分かってるよ蛮奇ちゃん」

 

 

赤蛮奇「絶対に分かってないだろう! それにお前は便乗犯じゃないか!」

 

 

魔理沙「…お前ら店の前で何やってるんだ?」

 

 

影狼「あ! あの時の人間!」

 

 

わかさぎ「魔理沙さん?」

 

 

赤蛮奇「た、助けてくれないか!? 霧雨魔理沙!」

 

 

魔理沙「あー?」

 

 

朱鷺子「あっ! 魔理沙さん!」

 

 

魔理沙「よっ、朱鷺子」

 

 

朱鷺子「はい! 香霖堂にようこそです♪ えへへっ♪」

 

 

魔理沙「で? 何やってるんだ?」

 

 

朱鷺子「あぁ~、それがですね…」

 

 

赤蛮奇「聞いてくれるのか!?」

 

 

魔理沙「お前の問題なのか…」

 

 

赤蛮奇「と、とにかく聞いてくれ! 私はこの二人にはめられようとしているんだ」

 

 

魔理沙「はぁ?」

 

 

赤蛮奇「私はこの二人…わかさぎ姫と影狼がやっている『草の根妖怪ネットワーク』とかいうものに入った記憶が無いんだ! それなのにも関わらずっ!」

 

 

赤蛮奇「私は入った事になっているんだ! 私の同意も無しにだぞ!? 何故私がこんなネットワークに入らなければならないんだ!?」

 

 

魔理沙「…いや、知らねぇよ!?」

 

 

影狼「そんな酷い事言わないでよ蛮奇!」

 

 

わかさぎ「そうだよ蛮奇ちゃん! 私たちもう仲間でしょ!?」

 

 

朱鷺子「そうだそうだー!」

 

 

赤蛮奇「ぐっ…い、何時からだ! 何時から私たちはそんな関係になったんだ!」

 

 

わかさぎ「あの天邪鬼異変以来からの仲でしょ!」

 

 

赤蛮奇「そんな前からか!?」

 

 

影狼「あの頃から」

 

 

わかさぎ「私たち」

 

 

朱鷺子「仲間だもんね♪」

 

 

影狼、わかさぎ、朱鷺子「イエーイっ♪」

 

 

赤蛮奇「…!?」

 

 

魔理沙「……まぁなんだ、流れに身を任せてみるのもアリなんじゃねぇの?」

 

 

赤蛮奇「わ…私は人里で静かに暮らしていたいだけで」

 

 

魔理沙「でもお前アレだぞ? 友達は多い方が良いぞ?」

 

 

赤蛮奇「!」

 

 

魔理沙「良いんじゃねぇの? 草の根妖怪ネットワーク、楽しそうじゃん」

 

 

赤蛮奇「…他人事だと思って言ってないか?」

 

 

魔理沙「いや、そんなことは無いぜ?」

 

 

赤蛮奇「…」

 

 

赤蛮奇(…流れに身を任せてみる、か)

 

 

赤蛮奇「検討してみるよ」

 

 

魔理沙「おう、その方が良いぞ」

 

 

赤蛮奇「…ありがとう」

 

 

魔理沙「お礼が言えれば上出来だぜ」

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「朱鷺子」

 

 

朱鷺子「はい?」

 

 

魔理沙「お前は草の根妖怪ネットワーク入らないのか?」

 

 

朱鷺子「あ〜私は良いですよ…蛮奇ちゃん、わかさぎちゃん、影狼さんでこそのネットワークだと思うので♪」ニッコリ

 

 

魔理沙(その割には妙に息が合ってたな、草の根妖怪…って程でももうねぇよな朱鷺子は)

 

 

魔理沙「あ~香霖さ、中に居るか?」

 

 

朱鷺子「はい! 居ますよ♪」

 

 

魔理沙「そうか…あっ、そういや最近どうなんだ?」

 

 

朱鷺子「ど、どうって…な、何がですか?」

 

 

魔理沙「惚けんなっての、香霖とだよ」

 

 

魔理沙「最近進展はあったのか?」

 

 

朱鷺子「へっ!? えぇぇ!? り、霖之助さんとですか!?」

 

 

魔理沙「他にねぇだろ?」

 

 

朱鷺子「そ、それは…/// え、えぇと…/// あうぅ…///」カァ

 

 

魔理沙「…まだか」

 

 

朱鷺子「だ、だって…こ、ここで働きはじめてまだ一年しか…///」

 

 

魔理沙「お前意外に奥手なんだな、アリスを見習っ…いやアレは見習うな、うん」

 

 

朱鷺子「は、はい?」

 

 

魔理沙「とにかくなんか進展あったら教えてくれよ? 私と霊夢なら相談にも乗れるからな?」

 

 

朱鷺子「! はい、ありがとう魔理沙さん!」

 

 

魔理沙(しっかしあの香霖が惚れられるとはねぇ…わかんねぇもんだわ)

 

 

 

 

 

 

【香霖堂】

 

 

森近霖之助「いらっしゃい、香霖堂へようこそ」

 

 

魔理沙「よっ香霖♪ なぁ外のあれはほっといて良いのか? ろくろ首に人魚に狼女って…見せ物小屋でも始める気か?」

 

 

霖之助「…なんだ、魔理沙か」

 

 

魔理沙「なんだとはなんだ、相変わらず失礼な奴だな」

 

 

霖之助「君に失礼と言われてしまったら僕の評判は地の底の底なんだろうね」

 

 

魔理沙「おいっ! そりゃどういう意味だ!」

 

 

霖之助「ふっ…いやすまない、少しからかい過ぎたかな」

 

 

魔理沙「ったく…そういうの朱鷺子にもやってんのか?」

 

 

霖之助「? 何故朱鷺子が出てくるんだい?」

 

 

魔理沙「朱鷺子が可哀想だなぁってさ」

 

 

霖之助「そんなことはしないよ、彼女は良く働いてくれているからね」

 

 

魔理沙「なんか…店少し綺麗になったな」

 

 

霖之助「僕としてはもう少し汚れていた方が味が出て雰囲気が出ると思うのだけれど、朱鷺子は掃除が好きみたいでね、勝手にやってしまうんだよ」

 

 

魔理沙「…お前の為に店綺麗にしてやってんだっつーの」ボソッ

 

 

霖之助「? 何か言ったかい?」

 

 

魔理沙「いんや、なにも…」

 

 

霖之助「?」

 

 

魔理沙(朱鷺子、お前頑張れよ? こいつは幻想郷一の鈍感男だからな)

 

 

 

 

霖之助「ところで今回はどういったご用件なのかな? また鉄クズでも拾ってきたのかい?」

 

 

魔理沙「いや…そんなんじゃねぇんだ、今日は話をしに来た」

 

 

霖之助「話?」

 

 

魔理沙「これに見覚えはないか?」スッ

 

 

霖之助「おや? 本…?」

 

 

魔理沙「…」

 

 

霖之助「これは…また懐かしい物を持ってきたね」

 

 

魔理沙「!」

 

 

霖之助「しかしあの時よりもかなりボロボロになっているね、字もかすれていて読めない程になってしまっている」

 

 

魔理沙「お、おい! 懐かしいってどういう意味だ!?」

 

 

霖之助「この本…原型は留めていないが昔君が小さい頃に良く読んでいた本だね?」

 

 

霖之助「君が僕に『これは魔導書なんだ』って嬉々として僕に言っていたのを記憶しているよ、もうかれこれ十年ぐらい前になるかな」

 

 

魔理沙「!! ほ、他に、他になんか言ってなかったか!?」

 

 

霖之助「他に?」

 

 

魔理沙「この本の持ち主の事とかさ! なんかもっと…他の情報だよ!」

 

 

霖之助「…何やら訳ありのようだね、良かったら説明をしてくれないかな?」

 

 

魔理沙「…! …聞いてくれるか」

 

 

霖之助「もちろん」

 

 

魔理沙「実はよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻 魔界の片隅にひっそりと佇む御殿では

 

 

 

 

 ある一人の悪霊が項垂れていた

 

 

 

 

【靈異殿】

 

 

 

サリエル「…」

 

 

エリス「ちょっとちょっと☆ 魅魔さん、マジでどうしちゃったん☆ さっきからテーブルに突っ伏して顔伏せちゃってさ☆」

 

 

魅魔「う~~~…」

 

 

エリス「いや、う~じゃねえし☆ う~だけじゃわかんねぇ☆」

 

 

魅魔「う~~~……あ''~~~」

 

 

サリエル「…」

 

 

エリス「あ~、が追加されてもわかんねぇぞ☆」

 

 

魅魔「マジで……」

 

 

サリエル、エリス「…?」

 

 

魅魔「……やべぇ」

 

 

サリエル「…やべぇ?」

 

 

魅魔「やべぇよ……」

 

 

エリス「何がやべぇのか分かんねぇからこっちがやべぇぞこらぁ☆」

 

 

魅魔「だから……やべぇんだって…」

 

 

エリス「キャハッ☆ なんか重症じゃん☆」

 

 

サリエル「…魅魔、これ以上ふざけるつもりならあなたの頭から壊死させるわよ…」

 

 

魅魔「……」

 

 

サリエル、エリス「…」

 

 

魅魔「いっそのこと殺ってくれ…」

 

 

サリエル「……」

 

 

エリス「キャハッ☆ パネェ☆」

 

 

エリス「てかサリエルさん、魅魔さんマジでヤバくない?」

 

 

サリエル「…割りとマジでやべぇわね……悪霊が死にたがるなんてマジでやべぇわ……」

 

 

エリス「魔界滅ぶんじゃね☆」

 

 

サリエル「…住みかを追い出されるのは嫌ね……」

 

 

魅魔「くっそ……紫のやつぅ……!」

 

 

サリエル「…紫…?」

 

 

エリス「ん☆ ゆかりん絡みなん?」

 

 

魅魔「あんなっ……! あんなもんっ……! あんな心にダイレクトに来る様なもん見せやがって…!」

 

 

サリエル「…見せやがって…?」

 

 

エリス「キャハッ☆ ダイレクトアターック☆ ってか? キャハハハハッ☆」

 

 

魅魔「……」

 

 

サリエル「…エリス……」

 

 

エリス「ちょーごめん…」

 

 

魅魔「……紫によ、CD渡されたんだよ…」

 

 

エリス「シーディーってなんぞ?」

 

 

サリエル「…紫に聞いたことあるわ…専用の機械があれば映像を記録したり、その記録した映像を再生し、見ることが出来る物……」

 

 

エリス「それの方がやべぇ☆」

 

 

魅魔「そのCD…菫子と一緒に見たんだけどよ…」

 

 

サリエル「…菫子……クフフ♪ 元気かしらね……」

 

 

エリス「また会いたいぜ☆ 菫子ちゃん☆」

 

 

魅魔「…内容がよ…私の弟子に200問質問するって内容だったんだけどよ…」

 

 

魅魔「…もう…なんつーかさ…ぜってぇこれ狙ってんだろって問題が幾つかあってさ…」

 

 

魅魔「弟子の魔理沙が…私のこと覚えて無くても尊敬してるだとか…魔法使いになる切っ掛けが私だとか、私が撃ったマスタースパークが印象に残ってるだとかさ…」

 

 

魅魔「そんなことお前らさぁ…言われてみろよお前……やべぇだろぉ……?」

 

 

エリス「キャハッ☆ やべぇの使い方間違ってね?」

 

 

サリエル「…つまりは…嬉しいのね? 魅魔…」

 

 

魅魔「!!」

 

 

エリス「弟子にそんな風に思われてたらそりゃやべぇわ☆ 嬉しくなって会いたくなっちまうわ☆」

 

 

魅魔「…!」

 

 

サリエル「…前に…頭が忘れていても心と体は覚えているもの……私はそう言ったわ…忘れたとは言わせない…」

 

 

サリエル「…心に残った僅かな記憶の欠片を紡いで…あなたの弟子はあなたを思い出そうとした…その気持ちをあなたは感じとり…心が暖かくなった…そうね…?」

 

 

魅魔「…! ……」

 

 

エリス「…魅魔さんもうさ、会ってやりゃいいんじゃね☆ 良い機会じゃん?」

 

 

魅魔「そんな簡単に言うんじゃねぇよ…! それに……」

 

 

サリエル「…弟子のマスタースパークが完成に到って無いから会えない…あなたは前にそう言っていた…」

 

 

サリエル「…それに対し紫はこう言った…『十年経って顔も覚えていない自分の弟子にどうやって声を掛けたら良いのか分からない恥ずかしがり屋の言い訳』…と…」

 

 

サリエル「……今のあなたを見ていると紫の答えが正しかったのだと思えて来たわ…」

 

 

サリエル「…本当は自分の弟子に会いたくて会いたくて堪らないんでしょう……?」

 

 

魅魔「…!! それは…」

 

 

サリエル、エリス「…」

 

 

エリス「夢の世界で魅魔さんが話してくれた魔理沙って人間の話、私好きだよ☆ なんか良いじゃん? そういう雰囲気と関係」

 

 

魅魔「…」

 

 

エリス「素直になれねぇ師匠と、その師匠に会いたい人間の話ってやつ?」

 

 

魅魔「魔理沙が私に会いたい? 何でそんなことが分かるんだよ」

 

 

サリエル「…その映像を見ていなくても…尊敬している、魔法使いに導いた、あなたの魔法が印象に残っている…これ等の答えから導き出されるのはその魔理沙という人間があなたに会いたがっているという事実…」

 

 

魅魔「…!」

 

 

サリエル「…そんなことが分からないあなたじゃない筈…」

 

 

魅魔「…私は」

 

 

サリエル、エリス「…」

 

 

サリエル「…!」スッ

 

 

エリス「サリエルさん?」

 

 

サリエル「…誰か来るわ」

 

 

エリス「ほぇ?」

 

 

 ギュオン!

 

 

紫「よっと…サリエル、お邪魔するわね」

 

 

サリエル「…紫」

 

 

エリス「おっ☆ ゆかりんじゃん☆」

 

 

紫「エリスも久し振りね♪」

 

 

魅魔「! 紫…! お前っ…!」

 

 

紫「……魅魔、探したわよ」

 

 

魅魔「探した…?」

 

 

紫「…あのCD、見てくれたの?」

 

 

魅魔「…」

 

 

エリス「見たからここで項垂れてた件☆」

 

 

紫「項垂れていた?」

 

 

サリエル「…説明してあげるわ…」

 

 

 

 

【死の天使、説明中…】

 

 

 

紫「…」

 

 

サリエル「…そういう事よ…」

 

 

エリス「魅魔さん素直じゃねぇから☆」

 

 

紫「…ほんとにその通りね」

 

 

魅魔「…」

 

 

紫「魅魔、私があなたを探していたのには訳があるの、一緒に着いてきてもらうわよ」

 

 

魅魔「…? 何処に連れていく気だ」

 

 

紫「幻想郷よ、あなたに着いてきてもらわないと困るの」

 

 

魅魔「なに…?」

 

 

紫「魔理沙があなたに会いたいが為に情報を集めて回ってる」

 

 

魅魔「!!」

 

 

紫「幻想郷であなたの存在を知っている者はあなたの事を絶対に話さないでしょう、あなたは幻想郷では伝説の悪霊だからね」

 

 

紫「保険は掛けておいてあるけど魔理沙の行動は私にも予測しづらい…何時かは真実に辿り着いてしまうかもしれない、そうなった場合あなたに会いたいという欲求は益々エスカレートしてしまう可能性も無くはない」

 

 

紫「地道な努力の積み重ねが今の魔理沙を形作っている、あなたに会いたいという努力も欠かさないでしょう、だからこそ」

 

 

紫「危険な事をしてまで、あなたに会う可能性も無くはないのよ」

 

 

魅魔「…!」

 

 

サリエル、エリス「…」

 

 

魅魔「……」

 

 

エリス「魅魔さんもうさ、腹決めなよ」

 

 

サリエル「…」

 

 

魅魔「…」プルプル

 

 

 魅魔は体を震わせる、両手の握りこぶしに力を入れ、何かを我慢するかのように

 

 

 

紫「あなたの何がそこまで我慢させてるの?」

 

 

魅魔「っ…! ……わかんねぇ…」

 

 

紫、エリス、サリエル「!」

 

 

魅魔「わかんねぇから……辛いんだよ…」

 

 

サリエル「……日々の積み重ねが無意識に変なプライドを作ってしまった……」

 

 

エリス「…笑えなくなっちまうな」

 

 

紫「ほんとにね…」

 

 

魅魔「…」

 

 

紫「魅魔、私は『つれぇつれぇ』って毎日のように言ってるけどね、本当につれぇのは」

 

 

紫「自分の一番好きな人に会えなくなるということよ」

 

 

魅魔「…!」

 

 

紫「あなたは魔理沙に会わなければならない、会わないとあなたも魔理沙も変われない」

 

 

紫「直接会うのが嫌だと駄々を捏ねても良いわ、でも間接的には会ってもらうわよ」

 

 

紫「あなたと魔理沙の為にもね」

 

 

魅魔「…! どうする…つもりだよ」

 

 

紫「会ったときに何と言葉を掛けてあげるかは自分で考えなさい、その代わり私はあなたたち二人が誰にも邪魔をされず、二人きりになれる空間を作ってあげるわ」

 

 

紫「協力してくれる者にはもう話は付けてある、後はタイミングとあなたの行動力」

 

 

紫「魅魔、私と一緒に幻想郷に来なさい」

 

 

魅魔「……」

 

 

魅魔「…」

 

 

魅魔(魔理沙…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【場は戻り、香霖堂】

 

 

魔理沙「…!」

 

 

霖之助「僕が君に会う度に君はその本をずっと読んでいた、時には話を聞かなくなるほどに熱中して読んでいたよ」

 

 

霖之助「『師匠から貰った物なんだ、すげぇんだぜ! その師匠!』君はその類いの事しか言わなかった」

 

 

霖之助「僕がその師匠はどんな人だ? と聞いても君は『秘密だぜ♪』と言い、詳しくは語ってくれなかった」

 

 

魔理沙「何やってんだよ…ガキの頃の私」

 

 

霖之助「子供は自分だけの秘密を持ちたがるものだよ、何ら不思議な事じゃない」

 

 

魔理沙「それで今の私が苦しんでたら世話無いぜ…」 

 

 

霖之助「…」

 

 

魔理沙「てか…私に師匠がいるって覚えててくれたんだな」

 

 

霖之助「あんなにしつこく聞かされていればね」

 

 

魔理沙「私の言動とかもよく覚えてたな」

 

 

霖之助「長い付き合いだからだろうね」

 

 

魔理沙「…そっか」

 

 

魔理沙「…ありがとな香霖、良い収穫だったぜ」

 

 

霖之助「それはどうも…収穫?」

 

 

魔理沙「あぁ、私は心のどこかで『師匠の事を覚えて無いのは、何か嫌な思いをしたからなんじゃないか…』とか、私らしく無いことまで考えてたんだ」

 

 

魔理沙「でも香霖から聞く限りじゃ、私は嫌な思いなんて何一つしてなかった、それどころか本を大切にして嬉々としてずっと読んでいたなんてな、はははっ!」

 

 

魔理沙「本当にありがとよ香霖、なんか肩の荷が下りたぜ!」

 

 

霖之助「ふっ…それは何よりだ」

 

 

魔理沙「じゃあ私行くわ、今度はなんか拾って持ってきてやるぜ」

 

 

霖之助「あぁ、楽しみにしているよ」

 

 

魔理沙「そんじゃあな♪」スッ

 

 

 ギィィ、バタン…

 

 

 

霖之助「…」

 

 

霖之助(あの本と魔理沙の師匠…僕は本当にその師匠が何者なのかは分からない)

 

 

霖之助(だがそれが元で魔理沙は魔法使いを目指すようになり、霧雨道具店…彼女の両親から)

 

 

霖之助(…いや、やめておこう)

 

 

霖之助(今の僕に出来ることは黙って見守ること、それだけで充分だ)

 

 

霖之助(魔理沙なら自分で答えを導き出せるだろうからね)

 

 

 

 

 

【幻想郷、上空】

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙(…もっと情報を集めてみるか)

 

 

魔理沙(まだまだ、時間はたっぷりあるからな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【白玉楼】

 

 

西行寺幽々子「この本の持ち主~?」

 

 

魔理沙「そうだ、心当たりねぇか?」

 

 

幽々子「ん~……無いわねぇ♪」

 

 

魔理沙「おい答え出すの早すぎだろ! もっと考えてくれよ!」

 

 

幽々子「考えたわよぉ? でもこんなにボロボロの本、何が書いてあるのかも分からないし何も感じないわぁ♪」

 

 

幽々子「感じ取れるのはあなたがこの本の持ち主にとても会いたいという事、それだけねぇ♪」

 

 

魔理沙「…まぁそっか、紫が知らねぇんじゃお前が知るわけねぇもんな」

 

 

幽々子「あらあら紫に聞いてたの? ならここに来るのはお門違いよ♪」

 

 

魔理沙「だよな…」

 

 

魔理沙「ま、話聞いてくれてありがとよ、邪魔したな」

 

 

幽々子「あぁ、魔理沙」

 

 

魔理沙「あん?」

 

 

幽々子「私は亡霊だからね? 勘違いしないように」

 

 

魔理沙「そんな分かりきった事何で今言うんだよ」

 

 

幽々子「さぁ? ふふふっ♪」

 

 

魔理沙「相変わらず分からん奴だな…」スッ

 

 

 

 ギューン!

 

 

 

幽々子「…」

 

 

幽々子「亡霊…幽霊…悪霊…同じ霊という名の言霊でもその意味は大きく異なる」

 

 

幽々子「久し振りに会いたいわぁ♪ 博麗神社の悪霊さんに、ふふっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

【永遠亭】

 

 

魔理沙「また何やってるんだ? お前らは」

 

 

藤原妹紅「ぐっ…! どっちが…!」

 

 

蓬莱山輝夜「うっ…! 先にギブアップするかの勝負よ…!」

 

 

魔理沙「異様な光景だぞ? 月の姫と蓬莱人が逆さ釣りなんてよ」

 

 

輝夜「も、妹紅…! そろそろ頭に血が上り過ぎて頭がフジヤマヴォルケイノなんじゃないのかしら…!?」

 

 

妹紅「お、お前こそ…! 頭に血が上り過ぎてエイジャの赤石が口から飛び出て来そうになってんじゃねぇか…!?」

 

 

魔理沙「…お前ら実はバカだろ」

 

 

妹紅、輝夜「コイツと一緒にするな!」

 

 

妹紅「おっ…!」

 

 

輝夜「うっ…!」

 

 

妹紅、輝夜「き、気持ち悪い…」

 

 

魔理沙「バカじゃねぇか」

 

 

妹紅「普通の殺り合いじゃつまらないからな…」

 

 

輝夜「今度は我慢で勝負しようと思ったのよ…」

 

 

魔理沙「何でそれを選んだんだよ!?」

 

 

輝夜「普通じゃ面白くないでしょ、不老不死舐めんじゃにゃいわよ」

 

 

妹紅「笑いたきゃ笑えよ、こっちは真剣に勝負してんでしゅよ」

 

 

魔理沙「頭に血が上り過ぎて口調が変になってるぞ?」

 

 

魔理沙(…不老不死、か)

 

 

魔理沙(捨虫の魔法を使えば私も…)

 

 

八意永琳「魔理沙」

 

 

魔理沙「! お、おう…永琳」

 

 

永琳「…? 大丈夫?」

 

 

魔理沙「な、何が? 魔理沙さんはいつも健康だぜ?」

 

 

永琳「…調べてみた結果、出たわよ」

 

 

魔理沙「そうか…! どうだった?」

 

 

永琳「この本が書かれたのは少なくとも二十年前、あなたの言う師匠とやらがこれをくれた時ぐらいの年代のもの」

 

 

永琳「素材は幻想郷に存在している物よ、紙、書いたペン等、全て人里で入手出来る物ね」

 

 

魔理沙「! そうか」

 

 

魔理沙「はぁ…私の師匠は『月の民説』は外れか」

 

 

永琳「残念だったわね、でもその師匠が幻想郷に居た事は確かだと思うわ」

 

 

永琳「少し希望が見えたんじゃない?」

 

 

魔理沙「あぁそうだな! 協力してくれてありがとうな、永琳!」

 

 

永琳「どういたしまして」

 

 

妹紅「ふぁぁ…? な、なにぃ…?」

 

 

輝夜「まりぃしゃあ…あなひゃひひょういるの…?」

 

 

魔理沙「頭に溜まった血を体に戻してまともな日本語喋れるようになってから聞きやがれ!!」

 

 

永琳「はぁ…」アタマカカエ

 

 

 

 

 

 

 

 

【守矢神社】

 

 

東風谷早苗「えぇぇぇぇぇっ!!? ま、魔理沙さんに師匠がいるんですか!?」

 

 

魔理沙「想像してた通りの反応をするなお前」

 

 

早苗「そりゃあそうですよ! あの傍若無人で人の迷惑考えない魔理沙さんにも尊敬する人がいるんですね! 私ちょっと感激です! 尊敬することが出来るんですね!」

 

 

魔理沙「好き放題言いやがるな早苗ぇ!」

 

 

八坂神奈子「ふむ…こんなにボロボロでは何が何だか分からんな」

 

 

洩矢諏訪子「汚ない本だなぁ…神奈子の注連縄みたいだ」

 

 

神奈子「あぁそうだな、程好い茶色で…って何だと!?」

 

 

諏訪子「ケ~ロケロケロ♪」

 

 

早苗「ふくっ…! ふふふふっ…!」プルプル

 

 

神奈子「早苗、何故笑う!?」

 

 

魔理沙「おい喧嘩してねぇでよ、その本から何か感じないか? 神の力的な奴とかさ」

 

 

神奈子「…いや感じるも何も…こう、読めないとな」

 

 

早苗「文字には不思議な力がありますからね、そこからパワーを得る事も可能ではありますけど」

 

 

神奈子「本自体には神の力や魔力等の力は感じられん、文字にもな」

 

 

早苗「その師匠さんから渡された時はどうだったんですか?」

 

 

魔理沙「…わかんねぇ、まだ何も知らないガキだったからな」

 

 

諏訪子「…」

 

 

早苗「ふーむ…情報が少なすぎますねぇ」

 

 

神奈子「八百万の神々にもお前が語ってくれた風貌の神はいないな、魔理沙の師匠は何かしらの神では無いのだろう」

 

 

魔理沙「う~ん…神でもねぇのか」

 

 

諏訪子「…」ジーッ

 

 

神奈子「すまないが、力になれそうにないよ」

 

 

魔理沙「いや良いんだ、私もダメ元で色んな所に行ってるからよ」

 

 

早苗「魔理沙さんの師匠さんには私も会ってみたいですね、どんな方なんでしょうか」

 

 

魔理沙「それは私のセリフだぜ…」

 

 

諏訪子「…ほい魔理沙、本返すよ」スッ

 

 

魔理沙「おう」スッ

 

 

魔理沙(一通り回ったな…次は…)

 

 

魔理沙「ありがとなお前ら、そんじゃあ」

 

 

早苗「あ、待ってください魔理沙さん!」

 

 

魔理沙「ん?」

 

 

早苗「ふふふ…! 魔理沙さんがその師匠さんに会えるように守矢の奇跡をその体にしっかりと」

 

 

魔理沙「お疲れしたぁ」

 

 

早苗「ちょっ!? ちょっと待ってくださいよ!!」

 

 

魔理沙「あのなぁ、こちとらお前の宗教勧誘に付き合ってる暇ねぇんだよ」

 

 

早苗「が、願掛けぐらいしていってくださいよ!」

 

 

魔理沙「金取るんだろ?」

 

 

早苗「むっ…! 無料でいいですよ!?」

 

 

魔理沙「意地かよ…まぁそれなら良いか」

 

 

早苗「ではどうぞどうぞ♪」

 

 

諏訪子「…」

 

 

神奈子「たくましいね早苗は」

 

 

諏訪子「そだね」

 

 

諏訪子(あの本から私と同じ何かを感じたんだけど気のせいかな…?)

 

 

諏訪子(私の場合は祟るだけど…あれは…)

 

 

諏訪子(…いや、やっぱり気のせいだね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【太陽の畑、幽香の家】

 

 

 

魔理沙「あれ…良いのか? メディスン」

 

 

風見幽香「大事な話がしたいんでしょう? メディなら外でプリズムリバー達と談笑中よ」

 

 

魔理沙「ははっ、賑やかになったなぁここも」

 

 

幽香「…で? 話ってなんなのかしら?」

 

 

魔理沙「あぁ…取り敢えずこの本を見てくれるか?」スッ

 

 

幽香「本?」

 

 

魔理沙「誰が書いたとか…知ってたりするか?」

 

 

幽香「……知らないわね」

 

 

幽香「こんなボロい本で誰が書いたとか予測することなんて難しいんじゃないのかしら、中も何が書いてあるか分からないもの」

 

 

魔理沙「最後のページ、読んでみてくれるか?」

 

 

幽香「……!」

 

 

魔理沙「お前なら分かるだろ…? それはマスタースパークの使い方だ」

 

 

魔理沙「その本は…私の師匠が書いたもんなんだ」

 

 

幽香「師匠…?」

 

 

幽香(まさかあいつが…?)

 

 

幽香「…謀ったわね魔理沙」

 

 

魔理沙「!」

 

 

幽香「あなたこれを書いた人物を知ってるんじゃない、それなのに『誰が書いたか分かるか』と聞いた…」

 

 

幽香「…何が望み?」

 

 

魔理沙「…」

 

 

魔理沙「すまねぇ…でも知りたいだけなんだ」

 

 

魔理沙「顔、名前、性格…全く覚えて無いんだが、私には十年前に師匠がいたみたいなんだ」

 

 

魔理沙「覚えているのは断編的なものばかり、緑の長い髪、青い服装、そして私との別れ際にマスタースパークを放って見せてくれたこと…その他は分からないんだ、いつ別れたとかもな」

 

 

幽香「…」

 

 

幽香(魅魔…まさか魔理沙の師匠をやっていたとは…だから魔理沙もマスタースパークを…)

 

 

幽香「……そんなやつ見たこと無いわね」

 

 

魔理沙「本当にか?」

 

 

幽香「例え知っていたとしても私を謀ろうとするようなやつには教えたくないわね」

 

 

魔理沙「! ……」

 

 

幽香「…」

 

 

幽香(…余程知りたいようね)

 

 

幽香「他に聞きたいことは?」

 

 

魔理沙「! 良いのか?」

 

 

幽香「許可するわ」

 

 

魔理沙「じゃあ聞くぞ? これが最後だ」

 

 

魔理沙「何でお前はマスタースパークを使えるんだ?」

 

 

幽香(……そうきたか)

 

 

魔理沙「私は師匠に…そしてこの本があったからこそマスタースパークを使える事が出来るようになったんだ」

 

 

魔理沙「師匠が私に見せてくれたのは覚えてる…それだけははっきりと覚えてるんだ」

 

 

魔理沙「でも幽香…お前は何で使えるんだ?」

 

 

幽香「…」

 

 

魔理沙「師匠を見たこと無いって言ってたがマスタースパークは私の師匠のオリジナルの筈だ、だから幽香…」

 

 

幽香「…」

 

 

幽香(……言うべきか? いや、私に聞く前にスキマ野郎に聞いている可能性があるわね)

 

 

幽香(何故だか分からないけど言えない事情があるのだとしたら…?)

 

 

幽香(…ふっ……貸しよ…紫)

 

 

幽香「魔理沙」

 

 

魔理沙「!」

 

 

幽香「私のマスタースパークだけどあなたと、あなたの師匠の使っているやつとは全くの別物よ」

 

 

魔理沙「なっ…!? なに!?」

 

 

幽香「同じ物だと思っていたの? 心外ね」

 

 

幽香「私のマスタースパークは私だけの物…あなたたちのと一緒にされたら困るわね」

 

 

魔理沙「で…でもお前…!」

 

 

幽香「なら今から遥か上空に向かって私と一緒に撃ってみる? 違いは一目瞭然よ」

 

 

魔理沙「い、威力の問題だろそれは!」

 

 

幽香「魔法を極めた末に導き出された答えがマスタースパークだとしたら同じことよ」

 

 

魔理沙「!」

 

 

幽香「私の膨大な魔力を凝縮し、手軽に撃てる手段がマスタースパークだった…それだけのこと」

 

 

幽香「私は私で独自にマスタースパークに辿り着き、覚え、極め、力を付けた…だから一緒にするなって言っているのよ」

 

 

幽香「偶然にも辿り着いた先がマスタースパークという技だった、それだけのこと」

 

 

魔理沙「…」

 

 

幽香「…まだ疑う?」

 

 

魔理沙「偶然…」

 

 

幽香「そうよ」

 

 

幽香「あなたの師匠が何者なのかは知らないけど中々強そうじゃない、偶然にもマスタースパークという同じ強さの果てに辿り着いたあなたの師匠…興味あるわ」

 

 

幽香「もし会えたのなら『風見幽香が戦ってみたいと言っている』と伝えなさい」

 

 

魔理沙「…相変わらず戦うの好きだな」

 

 

幽香「楽しいじゃない♪ 強い奴と戦うのは特に」

 

 

魔理沙「まぁ…スリルがあって楽しいってのは分からんでもないけど」

 

 

幽香「ふふっ、良く分かっているじゃない」

 

 

魔理沙「そいつはどうも…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「なんかスッキリしたよ」

 

 

幽香「何がかしら」

 

 

魔理沙「マスタースパークの事だよ、幽香には幽香の、私と師匠には私と師匠のマスパがあったんだな」

 

 

幽香「今まで同じにされてたのは納得いかないけど、分かって良かったじゃない」

 

 

魔理沙「あぁ…そっか~、私の勘違いだったってことか~、単純な話だったんだなぁ」

 

 

幽香「…師匠を探す手掛かりが一つ潰れたわね」

 

 

魔理沙「まぁな…でも良いんだ、これで他の事に目を向けられるからよ」

 

 

魔理沙「ありがとな幽香、話聞いてくれてスッキリしたぜ」

 

 

幽香「お役に立てたのなら何よりよ」

 

 

魔理沙「うし、んじゃあ私そろそろ行くわ!」スッ

 

 

幽香「魔理沙」

 

 

魔理沙「あん?」

 

 

幽香「…今度私と戦いなさい」

 

 

魔理沙「は? あ~…それは弾幕で…だよな?」

 

 

幽香「当たり前でしょ」

 

 

魔理沙「お、おう! それならいつでも大歓迎だぜ! そんじゃあな! 幽香!」フワッ

 

 

 ギューン!

 

 

幽香「…」

 

 

幽香「私が奴等に気を遣うとは…ふざけた話ね」

 

 

幽香(魅魔のやつ、幻想郷に帰って来ているのかしら)

 

 

幽香(どういう経緯で弟子と師匠の関係になったのか、何時まで共に居たのか…そんなものには興味はないわ)

 

 

幽香(ただ、何故魅魔は魔理沙にマスタースパークを教えたのか…それは気になるわね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【幻想郷、上空】

 

 

 

魔理沙(一通り聞いたな)

 

 

魔理沙(収穫は色々とあったが、師匠に近付いた感じはしねぇな)

 

 

魔理沙(誰も知らないし、種族も分からない…)

 

 

魔理沙(自分の師匠なのに分からない事だらけだぜ)

 

 

魔理沙(会えんのかな、私は…)

 

 

魔理沙(…次は紅魔館だな)

 

 

魔理沙(…! おっと、人里か)

 

 

魔理沙(…人里?)

 

 

魔理沙「…あっ!?」

 

 

魔理沙「そうだ! あいつらなら知ってるんじゃないか!?」

 

 

魔理沙「よし! 行くぜ!」

 

 

魔理沙(アリス、パチュリー、もうちょい待っててくれな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【人里、稗田邸 15時35分】

 

 

魔理沙「阿求、どうだ!? 載ってるか!?」

 

 

稗田阿求「待ってください、今探してますから」

 

 

魔理沙「早くしてくれよ、幻想郷縁起だったら載ってるだろ」

 

 

阿求「そう急かさないで下さい、名前が分かっておらず、魔理沙さんと幽香さん以外のマスタースパーク使い…なんて書き方はしてないと思いますから時間掛かりますよ、髪の毛と服装、マスタースパークと同じようなレーザー、十年前という情報だけで探してるんですから」

 

 

魔理沙「そ、そうだが何でそんなにいちいち一枚一枚ページ捲るんだよ、パラパラ~って捲れば良いだろ」

 

 

阿求「幻想郷縁起は稗田家の宝ですから丁寧に扱ってるんです、というより今話し掛けないでください、集中して探してるんですから」

 

 

魔理沙「お、おう……」

 

 

阿求「…」ペラッ

 

 

魔理沙「…」

 

 

阿求「…」ペラッ

 

 

魔理沙「…」イライラ

 

 

阿求「…」ペラッ

 

 

 

 

 

魔理沙「だーっ! イライラすんなぁ! ちょっと貸してみろ! 私が探し」

 

 

阿求「勝手に触るんじゃないっ!!!」

 

 

魔理沙「おわっ!!?」ビクッ

 

 

阿求「…!!」ギロッ

 

 

魔理沙「いっ…!?」

 

 

阿求「稗田なめんな…!」ゴゴゴゴゴ

 

 

魔理沙「!? は、はい…!」

 

 

阿求「絶対に探します、探しますが載って無いものは載ってません、載っていなくても『時間の無駄になった』とか言わないこと、良いですか?」

 

 

魔理沙「お、お、おう…」

 

 

阿求「ならいいです、適当にそこら辺で時間でも潰してきたらどうですか?」

 

 

魔理沙「そ、そうさせてもらうぜ」

 

 

魔理沙(阿求こえぇ~…あんな目付きすんのかよ)

 

 

魔理沙(稗田家の当主は伊達じゃないぜ…)

 

 

 

 

稗田「…」ペラッ

 

 

稗田(魔理沙さんが見せてくれた本…ボロボロだったけど魔導書に分類されるものなのかしら)

 

 

稗田(あれは一般流通もしておらず、小鈴のところにあるような妖魔本とも違うわね、あれは一体…)

 

 

稗田(まぁいいか…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【人里、中心街】

 

 

魔理沙「時間潰せって言われてもなぁ…」

 

 

魔理沙「……」

 

 

魔理沙「まぁ一応行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【鈴奈庵】

 

 

本居小鈴「えぇっ!? ま、魔理沙さんに師匠!?」

 

 

魔理沙「どいつもこいつも同じ反応だなぁ、おい」

 

 

二ツ岩マミゾウ「そりゃあそうじゃろ、初耳じゃぞ? しかしお主を弟子にしようとは相当物好きじゃな」

 

 

魔理沙「それさ、私に似たんじゃねぇのか?」

 

 

マミゾウ「逆じゃろ、普通」

 

 

宇佐見菫子「……」

 

 

マミゾウ「ほれ見ろ、菫子なんて絶句しとるぞ?」

 

 

魔理沙「おい! そんなにかよ!」

 

 

菫子「あ…いや…ご、ごめんなさい」

 

 

魔理沙「私に師匠がいるのがそんなに珍しいのか?」

 

 

マミゾウ「天狗が食い付きそうな話題じゃな」

 

 

魔理沙「天狗、ね」

 

 

魔理沙(騒ぎにさせたく無かったから文とはたてには聞かなかったけど…情報提供とかしてもらうために新聞に載せてもらうか…?)

 

 

菫子「…」

 

 

菫子(魔理沙さん、魅魔さんの事探してるんだ…!)

 

 

菫子(まさか幻想郷で大事になっちゃってるんじゃ…!? 魅魔さんはそんなこと望んで無いのに、紫さんはこの事を知ってるの…?)

 

 

マミゾウ「ほう、それがさっき言っておった本か」

 

 

小鈴「うわぁ、ボロボロですね」

 

 

マミゾウ「むぅ…これは流石に読めんなぁ」

 

 

魔理沙「もう読み物としては成立してねぇのかな…」

 

 

小鈴「でも大切な思い出の本なんですよね」

 

 

魔理沙「まぁな…所々覚えてねぇんだけどな」

 

 

菫子(本…! 魅魔さんが十年前に魔理沙さんに渡した本よね)

 

 

魔理沙「菫子、お前も読んでみるか?」

 

 

菫子「えっ!? あぁ、はい」スッ

 

 

魔理沙「まぁ…お前らは知らないよな、私の師匠のこと」

 

 

小鈴「そうですね、私も小さかったですし」

 

 

マミゾウ「儂と菫子もそうじゃな、幻想入りしたのは最近の話になるしのぅ、十年前の事はさっぱりじゃ」

 

 

魔理沙「ですよねー…はぁ…」

 

 

菫子(…)ペラッペラッ

 

 

菫子(こんなになるまで何度も読み返したのね、魅魔さんがこれを見たらとっても嬉しがるんだろうな…魅魔さんに見せてあげたい)ペラッ

 

 

菫子(魅魔さんが紫さんから渡されたと言って持ってきたCDを私の家で見た…)

 

 

菫子(あのバラエティ番組に良く似ていて、私と魅魔さん一緒になって笑ったなぁ…特にアリスさんのとこで、『神綺は自分の娘の奇行を知ってんのかよ、あははははっ!』って…)

 

 

菫子(でも番組が終わる頃になって段々と魅魔さんに対する質問が多くなっていった…その度に魅魔さんは複雑な表情をしていたのよね、隣に座ってたからその表情が私の目に入って来た…きっと魔理沙さんと会って話をしたくなっちゃったんだと思う)

 

 

菫子(魔理沙さんが魅魔さんに会いたい様に…魅魔さんも魔理沙さんに会いたいんだ)

 

 

菫子「…魔理沙さん、はい、本」スッ

 

 

魔理沙「おう」スッ

 

 

菫子(魔理沙さんに伝えたいけど伝えられない…魅魔さんとの約束は守らなきゃいけないから)

 

 

菫子(ごめんなさい…魔理沙さん)

 

 

魔理沙「ん~…じゃあ次行くか、邪魔したな♪」スッ

 

 

小鈴「? 何処に行くんですか?」

 

 

魔理沙「寺子屋に暇潰し、それから希望を求めて訪ねてみるぜ」

 

 

 スタスタ…

 

 

マミゾウ「暇を潰しておるのか師匠を探しとるのかどっちなんじゃ、あやつは」

 

 

小鈴「あははは…」

 

 

菫子「…」

 

 

菫子(魅魔さん…魔理沙さん…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【人里、寺子屋】

 

 

 

魔理沙「慧音…どうだ? お前なら知ってるんじゃないのか?」

 

 

上白沢慧音「…魔理沙、すまないが…」

 

 

魔理沙「!? お、お前が歴史で分からない事なんてあるのかよ!?」

 

 

慧音「あぁこの本の事もその師匠の事も私の記憶にはないよ、力になれなくてすまない…」

 

 

魔理沙「…! …マジかよ」

 

 

慧音「私とて歴史を全て把握している訳ではない、それに隠された歴史や無かった事にされた歴史、表舞台に出てこない様な歴史は記憶は出来ないんだ」

 

 

魔理沙「…! おい、それってどういう意味だ?」

 

 

慧音「悪魔でも…悪魔でもだぞ? 今上げた歴史の中にお前の師匠の歩んできた情報、歴史が含まれていた場合、記憶は出来ないんだ」

 

 

魔理沙「隠された歴史、無かった事にされた…表舞台に出てこない…」

 

 

慧音「…無理かも知れないがあまり思い悩むな、それと私の記憶よりも自分の記憶を頼りにした方が良いだろう」

 

 

慧音「事実は小説よりも奇なり…その本の存在がお前の師匠が存在しているという証ではないのか?」

 

 

魔理沙「…!」

 

 

魔理沙「そう、だな……うん! そうだよな!」

 

 

慧音「あぁ、自分を信じて突き進むといい」

 

 

魔理沙「やっぱ先生は言うことの格が違うぜ!」

 

 

慧音「おいおい…そんなに持ち上げる程でも…」

 

 

魔理沙「ありがとよ慧音! そんじゃあな!」

 

 

慧音「あ、あぁ…じゃあな」

 

 

魔理沙「あっ! そうだ! チルノたちと弾幕ごっこしてっても良いか?」

 

 

慧音「構わんぞ?」

 

 

魔理沙「よーし! オラァ! チルノぉ! 勝負しやがれ!」ドドドド

 

 

 

 ヤンノカマリサ! カカッテコイヨ! ジョウトウダー! ソーナノカー♪

 

 

 

慧音「嵐のようだなあいつは…ふふっ…♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【人里、表通り】

 

 

 

魔理沙「ふーっ…三戦、二勝一敗か、先ず先ず♪」

 

 

魔理沙「しかしあいつまだ日焼けしてやがったな…いつになったら直るんだ?」

 

 

魔理沙「…ん?」スッ

 

 

 

 『霧雨道具店』

 

 

 

魔理沙「!! やばっ…!」スッ

 

 

魔理沙「…って、何で私は物陰に隠れてんだよ…」

 

 

魔理沙「もう縁なんて切ってあるんだ、私には関係ねぇ」

 

 

魔理沙「……窓から覗くぐらいなら良いかな」

 

 

 

 

 

【霧雨道具店、屋根】

 

 

 

魔理沙「よっ…ここなら店内覗けるな」

 

 

 

 ガヤガヤ ガヤガヤ

 

 

魔理沙(客いるなぁ、繁盛はしてるみたいだな)

 

 

魔理沙(親父と…おふくろもいるな)

 

 

魔理沙(……)

 

 

魔理沙(…)

 

 

魔理沙(…)

 

 

魔理沙(親父とおふくろは私に会いたいとか思ったことあんのかな…それこそ、今の私みたいに)

 

 

魔理沙(…)

 

 

魔理沙(私は親孝行なんて出来そうにねぇな)

 

 

魔理沙(…)

 

 

魔理沙(私を産んで、育ててくれてありがとう…)

 

 

魔理沙(いつか自分の口で言える日が来るのかな)

 

 

魔理沙(…)

 

 

魔理沙(じゃあな、親父、おふくろ)スッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【人里、裏通り 16時25分】

 

 

 

魔理沙「ここら辺は人気が無いな、まるでゴーストタウンだぜ」

 

 

魔理沙「なんか出んじゃねぇだろうな」

 

 

魔理沙「こういう雰囲気のあるところで幽々子が妖夢を驚かしたらあいつ腰抜かすだろうな、あっははは!」

 

 

魔理沙「……一人で笑ってると空しいぜ」

 

 

魔理沙「…ん?」

 

 

 

 

 魔理沙は開けた空き地を発見した

 

 

 

 

魔理沙「空き地か? こんなところあったっけ…」

 

 

魔理沙「ますます何か出そうな雰囲気だが良いとこだなここ、魔法の森に雰囲気似てるし、誰もいないし、人目にも付かないからこそこそ隠れて修行するにはもってこいだな」

 

 

魔理沙「そうだな、修行…っ!?」 

 

 

 

 

 

 

 キィィィン!

 

 

 

魔理沙「ぐっ…!? な、なんだ…!? ま、また頭がっ…!」

 

 

 

魔理沙「いっ……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 キィィィン!

 

 

『そういやまだ聞いてなかったな、お前名前は?』

 

 

『! ま、まりさ! きりさめまりさ!』

 

 

 キィィィン!

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「はっはっ…!! はぁ、はぁ…! な、なん…!!」

 

 

魔理沙「し、ししょ…師匠…なのか…!? 今の…」

 

 

魔理沙「…!? ぐぁっ…!?」

 

 

 

 

 

 

 キィィィン!

 

 

 

『会いに来てやるよ、魔理沙のところにな』

 

 

『! うんっ!』

 

 

 キィィィン!

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「はっ…! はっ…! はぁ、はぁ!」

 

 

魔理沙(やべっ…! い、息が…!)

 

 

魔理沙(し…ししょ…)ユラァ

 

 

 

 

 ドサッ…

 

 

 

魔理沙「…」

 

 

魔理沙「…」

 

 

魔理沙「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギュオン!

 

 

紫「狙って気絶させようかと思ったけどまさか自分から気絶してくれるとはね」

 

 

ドレミー・スイート「恐らくフラッシュバックという奴でしょうねぇ、心に残っている強い体験が記憶として無意識に思い出され、それが現実に起こっているかの様な感覚を強く体験してしまう…まぁトラウマとかではないので心配しなくても大丈夫でしょうけどね」

 

 

紫「流石ね、ドクタードレミー」

 

 

ドレミー「語呂が良いのがなんか嫌ですねぇ」

 

 

紫「どのぐらい寝てそう?」

 

 

ドレミー「ん~、まぁ30分ぐらいですかね」

 

 

紫「だそうよ、悪霊さん」

 

 

魅魔「…」

 

 

紫「魅魔、ここで引いたらあなた一生」

 

 

魅魔「分かってる」

 

 

紫「!」

 

 

魅魔「もう…覚悟は出来てる」

 

 

紫「覚悟が出来てるなら直接会いなさいっての」

 

 

魅魔「…」

 

 

紫「ごめん、悪かった」

 

 

魅魔「…ドレミー」

 

 

ドレミー「はい、簡単にご説明しますね」

 

 

ドレミー「今から魅魔さんにも寝てもらいます、私の能力で一瞬で寝かせるので安心してください」

 

 

ドレミー「その後、夢の世界にいる魅魔さんの夢塊体を魔理沙さんの夢の中に放り込みます、後は魔理沙さんが目覚めるまでどうぞご自由に」

 

 

ドレミー「ただ30分しか時間がないのでそれはお忘れなく、魔理沙さんがハッ! と目覚めて私たちが目の前にいたら全てが水の泡ですから」

 

 

魅魔「分かった…よし、やってくれ」

 

 

紫「…素敵な夢の時間をね、魅魔」

 

 

魅魔「あぁ」

 

 

ドレミー「それでは…良い夢を…♪」スッ

 

 

 グワン…!

 

 

 

魅魔「っ!」ユラァ

 

 

 

 ドサッ!

 

 

 

 

 

 

 _____________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「…」パチッ!

 

 

魔理沙「…」

 

 

魔理沙「…?」

 

 

魔理沙「は?」

 

 

魔理沙「ここ何処だ? 何で私…こんなところで寝て…!!」

 

 

魔理沙「! そうだ…人里にある変な空き地で倒れて…それで…」

 

 

魔理沙「…それでどうなったんだ?」

 

 

魔理沙「てかここマジで何処だよ」

 

 

魔理沙「見渡す限りの大草原…? 他には何にもありゃしねぇ」

 

 

魔理沙「夢でも見てんのかな…?」スッ

 

 

魔理沙「…頬っぺをつねっても痛くないって事は、これは夢か?」

 

 

魔理沙「…」

 

 

魔理沙「いや待てよ…? まさか死んだんじゃねぇだろうな…!?」

 

 

魔理沙「だってあのとき苦しみながら倒れたよな、そのままポックリ…逝っちまったか!?」

 

 

魔理沙「いやいやいやいや! マジでやめてくれよ!? やりたい事だってまだまだたくさんあるんだぞ!? まだ読んでいない魔導書だってたくさんあるんだぞ!? 閻魔に説教されんのも御免だし、それに…」

 

 

魔理沙「まだ…会えてねぇよ…」

 

 

魔理沙(師匠…)

 

 

 フワッ…

 

 

魔理沙「…いやまて霧雨魔理沙、希望を捨てるな、これは絶対に夢だ、そうにちがいない」

 

 

 

 そうだな、ここはお前の夢の中だからな

 

 

 

魔理沙「やっぱりそうだったか、なら心配いらねぇな」

 

 

 

 少しは心配しても良いんじゃないのか?

 

 

 

魔理沙「心配し過ぎても良いことなんて何一つ無いぜ」

 

 

 

 そうか…前向きだな、お前は

 

 

 

魔理沙「当たり前だろ、それはこの魔理沙さんの一番の長所だぜ」

 

 

 だが時には後ろ向きになることも必要だと私は思うがな

 

 

 

魔理沙「まぁそういうメリハリも必要…って」

 

 

魔理沙「誰ださっきから! 私の中の何かと話してるかと思ったが全然違うじゃねぇか! 姿を見せやがれ!」

 

 

 だから後ろ向きになることも必要だと言ってるだろう?

 

 

魔理沙「…! あぁ!?」クルッ

 

 

 

 魔理沙は後ろを振り返った 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「!!?」

 

 

魅魔「…」

 

 

魔理沙「…!」

 

 

魅魔「…」

 

 

魔理沙「なっ…!? だ、誰だお前!」

 

 

魅魔「…」ピクッ

 

 

魔理沙「いきなり私の背後に…! お、お前! 本当に何もんだ!? あぁ!?」

 

 

魅魔「…」ピクッピクッ

 

 

魔理沙「! はは~ん、分かったぞ? ここは夢の中とかじゃなくてお前が作り出した空間か何かだろ! この魔理沙さんを嵌めようとするとは良い度胸だぜ!」スッ

 

 

魔理沙「よし! かかってこいよ! 弾幕で勝負し」

 

 

魅魔「師匠に向かってお前お前とは何事だぁ!!」スッ

 

 

 ゴチン!

 

 

魔理沙「いっ!? いってぇ!!?」

 

 

魅魔「拳骨で済んだだけでもありがたいと思えよ!? 私の電撃はそれ以上だぞこらぁ!」

 

 

魔理沙「いってぇ~…! くぁ~…! た、たんこぶ出来たぜっ…!」

 

 

魔理沙「くっそ、何すんだししょ……」

 

 

魔理沙「……!!?」

 

 

魅魔「…」

 

 

魔理沙「…あ…あ、ぁ…」ジワッ

 

 

魅魔「…」

 

 

魔理沙「は…あ、あ、あぁ…」ポロッ

 

 

魅魔「…魔理沙」

 

 

魔理沙「!」

 

 

魅魔「お前私の事を忘れてしまっているのか? なんださっきの言葉使いは」

 

 

魅魔「が…ガキの…時の…っ」プルプル

 

 

魔理沙「!!」

 

 

魅魔「あ、あのときの方がっ…か、可愛いげがあったなぁ…! っ…えぇ?」ポロッ

 

 

魔理沙「あ、あぁ…」ポロッポロッ

 

 

魅魔「! お、おい! な、何を泣い」

 

 

魔理沙「師匠なのかっ!!?」ポロッ

 

 

魅魔「!!」

 

 

魔理沙「あ、あんたはっ…!! ぐっ…! うぅ! グスッ! わ、私の師匠なのかっ!?」

 

 

魅魔「…!」ポロッ

 

 

魔理沙「グスッ…! グスッ!」ポロッ

 

 

魅魔「……お前が、ガキの頃に…ウッ…見せてっ…! や、やっただろう!」

 

 

魔理沙「!!」

 

 

魅魔「マスタースパークをな…!」

 

 

魔理沙「…!!」ポロッポロッ

 

 

魅魔「クッ…そ、それも忘れて」

 

 

魔理沙「師匠ぉっ!!」バッ

 

 

魅魔「!!」ダキッ

 

 

 

 飛び込んで来た魔理沙を魅魔は優しく抱き止めた

 

 

 

魔理沙「師匠っ…!! 師匠ぉ…!」ポロポロ

 

 

魅魔「…!」

 

 

魔理沙「師匠…! わ、私はっ…!」ポロ

 

 

魅魔「…」ポロポロ

 

 

魔理沙「やっと…! やっと…会えたぜ…!」

 

 

魔理沙「師匠っ……! グスッ…!」ポロポロ

 

 

魅魔「…」ポロポロ

 

 

魅魔(あぁクソッ…違うだろ…魅魔)

 

 

魅魔(笑えよ…やっと弟子に会えたんだぞ…)

 

 

魅魔(涙…流してる場合じゃねぇだろうが…)

 

 

魅魔(バカヤローが…)ポロポロ

 

 

 

 

 

 

 

 幻想郷の悪霊は    初めて涙を流した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魅魔「あ~…落ち着いたか?」

 

 

魔理沙「うん…」

 

 

魅魔「はっ…何だ? 急にしおらしくなったな」

 

 

魔理沙「そりゃ師匠もだろ?」

 

 

魅魔「あ、あぁ?」

 

 

魔理沙「し、師匠だって泣いてたじゃねぇか…!」

 

 

魅魔「なっ…!? 泣いてねぇよ! この私が泣くわけないだろうが」

 

 

魔理沙「目…めっちゃ赤いけど」

 

 

魅魔「!? こ、これは…あれだ…! 私はな、感情が高ぶると目が赤くなる体質なんだよ」

 

 

魔理沙「ふっ…! あっははは…! 何だそれ…!」

 

 

魅魔「し、信じて無いな!?」

 

 

魔理沙「だってさ、はははっ! 嘘っぽいもんそれ」

 

 

魅魔「! はぁ…弟子には見破られちまうもんなのかねぇ」

 

 

魔理沙「そりゃあ師匠の弟子だからな」

 

 

魅魔「言う様になったなぁ、あっはははは!」

 

 

魔理沙「ははははっ!」

 

 

魅魔「ははっ…」ニコッ

 

 

魔理沙「へへっ…」ニコッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「なぁ、師匠」

 

 

魅魔「うん?」

 

 

魔理沙「師匠にその…言いたい事とか、聞きたい事とか…たくさんあるんだ」

 

 

魅魔「だろうな、あれから十年も経ってるから」

 

 

魔理沙「聞いても良いか?」

 

 

魅魔「あぁ…良いぞ」

 

 

魔理沙「!」

 

 

魅魔「だがあんまり時間がない」

 

 

魔理沙「ど、どういう事だ?」

 

 

魅魔「ここはさっきも言ったがお前の夢の中の世界だ、本体のお前が目を覚ましちまったら私もここからおさらばしないといけない」

 

 

魔理沙「!!」

 

 

魅魔「でも勘違いするなよ? ここにいる私は、正真正銘本物の私だ、お前が作り出した空想の存在とかそんなんじゃないからな? お前の夢の中の世界に私が入り込んでる状態だ」

 

 

魔理沙「…」

 

 

魅魔「ふっ、安心したか?」

 

 

魔理沙「うん、それは…な」

 

 

魅魔「それは?」

 

 

魔理沙「時間がねぇって言っても…幻想郷で会えば良いじゃねぇかって思ったんだけど」

 

 

魅魔「…それは無理だ」

 

 

魔理沙「な、なんでだ、師匠」

 

 

魅魔「…約束が…まだ違うだろ?」

 

 

魔理沙「!」

 

 

魅魔「十年前…お前は私と約束しただろ?」

 

 

魅魔「『お前がマスタースパークを自在に扱えるような大魔法使いになれたら会いに来てやる』ってな」

 

 

魔理沙「…!」

 

 

魅魔「だから現実世界で会うのはまだまだ先の話になる」

 

 

魔理沙「そ、それなら自在に扱えてるぜ!? 色々種類も考えて」

 

 

魅魔「八卦炉だっけか?」

 

 

魔理沙「!」

 

 

魅魔「私は手から撃てるんだぞ? それも何発も、何10発も、何100発もだ」

 

 

魅魔「だからまだダメだ」

 

 

魔理沙「…やっぱり師匠は格が違うな」

 

 

魅魔「当たり前だ、お前の師匠だぞ?」

 

 

魔理沙「…」

 

 

魅魔「そんな顔するな、今こうして会えてるじゃないか」

 

 

魔理沙「うん」

 

 

魅魔「…」

 

 

魔理沙「で、でもその約束が違うなら何でこうやって私に会いに来てくれたんだ?」

 

 

魅魔「それはお前が私に会いたいと駄々を捏ねたからだ、私に会いたい一心で幻想郷を飛び回ってただろ? ふふん、師匠としては見過ごせなかったからな」

 

 

魔理沙「! はぁ、何でもお見通しだったのか」

 

 

魅魔「そりゃお前の師匠だからな」

 

 

魔理沙「ははっ! そればっかりだぜ」

 

 

魅魔「え…? そ、そうか?」

 

 

魔理沙「気付いてないのか?」

 

 

魅魔「……」

 

 

魔理沙「…」

 

 

魅魔「私ってワンパターンなのかな…」

 

 

魔理沙「お、落ち込まないでくれよ」

 

 

 

 

 

 

 

魅魔「聞きたい事ってのは何だ?」

 

 

魔理沙「! そ、そうだな…まず師匠の種族は?」

 

 

魔理沙「人間じゃないんだろ?」

 

 

魅魔「あぁ、あ…そっか、最近ずっと足を生やしっぱなしだったからなぁ、たまには元に戻るか」

 

 

魔理沙「え?」

 

 

魅魔「人化の術、解!」

 

 

 

 ボフッ!

 

 

魅魔「よっと…」

 

 

魔理沙「…!? お、おおう!?」

 

 

魅魔「これが私の本来の姿だ、どうだ? ん?」

 

 

魔理沙「ゆ、幽霊? 亡霊か?」

 

 

魅魔「いや……あ、悪霊…だな」

 

 

魔理沙「悪霊…」

 

 

魅魔「あ…げ、幻滅したか?」

 

 

魔理沙「そんなことするわけないだろ、師匠のこと嫌いになんてなるかよ」

 

 

魅魔「!」

 

 

魔理沙「なぁ、能力とかはあるのか?」

 

 

魅魔「あ…あらゆるものに取り憑く程度の能力だ」

 

 

魔理沙「へぇ~! じゃあ無機物とかにも取り憑けんだ?」

 

 

魅魔「ま、まぁな」

 

 

魔理沙「へぇー! すげぇな! 流石私の師匠だぜ」

 

 

魅魔「…!!」

 

 

魔理沙「それに魔法もたくさん使えるんだろ? 最強じゃん♪ すげぇよ師匠!」

 

 

魅魔「!!」

 

 

魅魔(くっ…! やっぱり本物の方が心にダイレクトに来るな…! CDとは大違いだ…!)

 

 

魅魔(嬉しさでどうにかなっちまいそうだぜ…)

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「師匠、その…師匠には謝らなきゃいけないことがたくさんあるんだ」

 

 

魅魔「!」

 

 

魅魔(きたか…)

 

 

魅魔「あ、謝る?」

 

 

魔理沙「うん…あ、あのさ」

 

 

魅魔「う、うん?」

 

 

魔理沙「私、師匠と過ごした時間…殆んど覚えてないんだ」

 

 

魅魔「…!」

 

 

魔理沙「で、でも覚えてたことはあるんだ! 師匠の髪色とか服装、その色とか最後に私にマスタースパークを見せてくれたことと本をくれたことは覚えて」

 

 

魅魔「な、なぁぁにぃ!!?」

 

 

魔理沙「いっ…!?」

 

 

魅魔「わ、忘れちまってるだとぉ!?」

 

 

魔理沙「だ、だからそれを謝ろうと…」

 

 

魅魔「そ、それだけか!? それだけしか覚えてないのか!?」

 

 

魔理沙「う、うん…」

 

 

魅魔「約束も!?」

 

 

魔理沙「ご…ごめんなさい…!」

 

 

魅魔「はぁ…ま~じ~か~よ~…そっかだから約束の話をしたとき上の空だったのか」

 

 

魔理沙「ほ、本当に…! も、申し訳ない…です」

 

 

魅魔「ったくよ~…」

 

 

魅魔(すげぇわざとらしいし白々しいな、今の驚き…オーバーリアクションだったもんな)

 

 

 

 

 

 

魅魔「私とお前が会ったのは十年前、人里の裏通りだ、十年前でもあそこは人通りの少ない場所だったな、私がそこを散歩してたら箒を握り締めたガキんちょと出会った、それがお前だ」

 

 

魅魔「私を成敗してやるとか言いながら箒を私にブンブン振り回して来やがったのは今となっては良い思い出だな、あっはははは!」

 

 

魔理沙(わ、私はそんなことしてたのかよ…///)

 

 

魅魔「そんで…まぁ、あまりにもしつこかったからお前に電撃落としてやったんだよ、気絶したのを見届けて私はその場を立ち去った」

 

 

魔理沙(容赦ないぜ…)

 

 

魅魔「次の日、またそこを散歩してたらまた箒を握り締めたお前が私の目の前に立ち塞がった『あぁ、まだ懲りてないのかこいつは』と思いながらお前を見てたらな? お前、私の予想を遥かに越える行動をしたんだぞ?」

 

 

魔理沙「え?」

 

 

魅魔「私に土下座した」

 

 

魔理沙「えぇっ!?」

 

 

魅魔「『私を弟子にしてくれ、悪霊のお姉さんみたいなすげぇ魔法使いになりたいんだ』…ってな」

 

 

魔理沙「!!」

 

 

魅魔「正直…嬉しかった」

 

 

魅魔「私みたいな悪霊に弟子入りなんてな…一生無いことだって…そんなこと考えもしなかったからな」

 

 

魅魔「嬉しかった…だからお前に修行をつけてやることにしたんだ、今お前の本体が倒れてるあの空き地でな」

 

 

魔理沙「…!! そう…だったのか…」

 

 

魔理沙(だから…急にあのとき思い出して頭が痛くなったのか)

 

 

魔理沙「…師匠と修行してた期間は?」

 

 

魅魔「一ヶ月だな」

 

 

魔理沙「短いな…」

 

 

魔理沙(そりゃ覚えて無いのも無理ないのかもな)

 

 

魅魔「短かったがお前凄かったんだぞ? 私が教えたとはいえ、あの年であそこまで魔法を使えるなんて思いもしなかったんだからな、才能もあったがお前に一番あったのは諦めないって根性だな」

 

 

魔理沙「!」

 

 

魅魔「それに努力も凄かった、私が教えてやろうとしても自分で試行錯誤して自分の物にしてみせた事もあったなぁ、あのときは本当に驚いたぞ」

 

 

魔理沙「! …」

 

 

魔理沙「師匠はさ」

 

 

魅魔「うん?」

 

 

魔理沙「私の事…良く見てくれてたんだな」

 

 

魅魔「そりゃ私はお前の師匠だからな…あっ!」

 

 

魔理沙「ははっ! また言った!」

 

 

魅魔「くっ…/// あ~…癖なのかなぁ」

 

 

魔理沙「悪くない癖だと思うけどな」

 

 

魅魔「ワンパターンはあまり好きじゃないんだよなぁ…」

 

 

 

 

 

魅魔「ちょうど一ヶ月経った時、お前に別れを告げ、大魔法使いになったらまた会おうと約束し、私が書いた本を渡して最後にマスタースパークを見せて別れたんだ」

 

 

魔理沙「…」

 

 

魅魔「本を渡すとき私がなんて言ったのかも忘れちまってるのか?」

 

 

魔理沙「う、うん」

 

 

魅魔「『自分を知ってもっと強くなれ、自分のやり方が分からなくなったらこの本を読め』だな」

 

 

魔理沙「…!」

 

 

魔理沙「私はそんな大切なこと今まで忘れてたのかよ…」

 

 

魅魔「しょうがねぇよ、人間のガキの記憶力なんてそんなもんだ」

 

 

魔理沙「…師匠」

 

 

魅魔「ん?」

 

 

魔理沙「今まで忘れてて…本当にごめんなさい」

 

 

魅魔「!」

 

 

魔理沙「すいませんでした…」

 

 

魅魔「だからしょうがねぇって」

 

 

魔理沙「しょうがねぇで済ませちゃいけないぜ、こればっかりはよ」

 

 

魔理沙「師匠には恩しかねぇからさ」

 

 

魅魔「その言葉だけでも充分だよ、魔理沙」

 

 

魔理沙「!」

 

 

魅魔「ありがとうな、謝ってくれて」

 

 

魔理沙「! い、いや…/// う、うん」

 

 

魅魔「…」ニコッ

 

 

魔理沙「…/// …あっ!?」

 

 

魅魔「ん?」

 

 

魔理沙「も、もう一個謝んなきゃいけないことがあるんだ! えっと…! あ、あれ!?」

 

 

魅魔「どうした?」

 

 

魔理沙「師匠からもらった本がねぇんだ…!」

 

 

魅魔「あ~、それならお前の本体が持ってるんじゃないのか?」

 

 

魔理沙「あっ…!」

 

 

魅魔「あぁでも心配すんな、ここは夢の世界だから何でも出来る、本を具現化することも可能だ」

 

 

魔理沙「! やってみるぜ」

 

 

魔理沙「……はっ!」スッ

 

 

 ボン!

 

 

魔理沙「! 出た!」

 

 

魅魔「おぉ、出たなってうおぉ!?」

 

 

魔理沙「!」

 

 

魅魔「ボロボロじゃないか…良くこんなんで形保ってるなぁおい」

 

 

魔理沙「し、師匠…! この本の事で謝ろうと…」

 

 

魅魔「…こんなになるまで読んでくれたんだな」

 

 

魔理沙「!」

 

 

魅魔「ありがとよ、この本も本望だったんじゃないか? ここまで読んでもらってよ」

 

 

魔理沙「師匠…」

 

 

魅魔「ふふっ、師匠想いな弟子だよお前は」

 

 

魔理沙「…///」

 

 

魅魔「! あっはははっ! 照れんな照れんな♪」

 

 

魔理沙「師匠には叶わないぜ…///」

 

 

 

 

 

 

魅魔「私も質問して良いか?」

 

 

魔理沙「おう」

 

 

魅魔「何で私に弟子入りしたんだ?」

 

 

魔理沙「…!」

 

 

魅魔「そりゃお前から私みたいな『すげぇ魔法使いになりたい』って言われたけど…本当にそれだけなのか?」

 

 

魔理沙「…」

 

 

魔理沙「うん…たぶんそれだけだと思う」

 

 

魔理沙「ガキだったから強い人に着いていきたいとか、この人みたいに強くなりたいとか…そんな想いだったんだと思う」

 

 

魅魔「…」

 

 

魔理沙「でも…今の私ならこう言うと思うぜ」

 

 

魅魔「?」

 

 

魔理沙「師匠に憧れてるから…! ってさ」

 

 

魅魔「!」

 

 

魔理沙「師匠にまた会えて改めて私は思ったんだ、師匠みたいになりたいってさ」

 

 

魔理沙「その形は強さとかじゃなくて憧れに変わってるんだ、師匠に憧れて、師匠みたいになりたくて、これからも私は頑張っていける…」

 

 

魔理沙「師匠…わたしを弟子にしてくれて、私を魔法使いというものに導いてくれて」

 

 

魔理沙「本当にありがとう…!」

 

 

魅魔「!!」

 

 

魔理沙「ありがとうございました…!」スッ

 

 

 魔理沙は深々と頭を下げた

 

 

魅魔「…」

 

 

魅魔(あぁ…またかよ…)ポロッ

 

 

魅魔「魔理沙…」ポロッ

 

 

魔理沙「…!?」

 

 

魅魔「バカ野郎、悪霊に憧れるなんて…! 本当に…! グスッ…! バカ弟子だよお前は…!」ポロポロ

 

 

魔理沙「…へへっ、人間を弟子にする師匠の方が…よっぽど、バカなんじゃ…ねぇのか…♪」

 

 

魅魔「はっ…! お互い様だな♪」ポロポロ

 

 

魔理沙「うん…!」

 

 

魅魔「ふふっ…♪」ニコッ

 

 

魔理沙「へへっ♪」ニコッ

 

 

 

 ゴゴゴゴゴゴ!

 

 

魔理沙、魅魔「!」

 

 

魔理沙「な、なんだ!? 地震か!?」

 

 

魅魔「グスッ…あぁどうやら、お別れみたいだな…」

 

 

魔理沙「!」

 

 

魅魔「お前の本体が目覚めようとしている、ここまでだな」

 

 

魔理沙「…」

 

 

魅魔「! おいおい、またその顔かぁ?」

 

 

魅魔「忘れてた物は思い出せたし、お互いに言いたいことは言い合えた…もう充分じゃねぇか」

 

 

魔理沙「で、でも師匠…」

 

 

魅魔「はぁ、まったく仕方のない弟子だねぇ♪」スッ

 

 

魅魔「魔理沙…また私と約束をしよう、もうずっと忘れない最高の思い出を今作ろう」

 

 

魔理沙「えっ…?」

 

 

魅魔「…はっ!」

 

 

 ボン!

 

 

魅魔「お前が読んでくれてたものと同じ本だ、新品にしてある、後は…まぁ最後のページに一つ追加で書き足しておいてある、帰ったら見てみろ」

 

 

魅魔「お前の本体の側に置いておいてやるからな、そこは安心してくれ」

 

 

魔理沙「…! うん! ありがとう師匠!」

 

 

魅魔「後はそうだな…お前の友達には私の事は話すなよ? 種族と名前、これだけは語るな、お前が立派な大魔法使いになるまでは皆にも内緒だ、わかったか?」

 

 

魔理沙「お、おう!」

 

 

魅魔「まあ会ったってのは言っても良いけどな、それ以上はダメだ…お前が立派な大魔法使いになれたら幻想郷に行ってお前に会いに行くから、その時にみんなに私の紹介をすれば良いさ」

 

 

魅魔「魔理沙、改めて約束だ」

 

 

魔理沙「!」

 

 

魅魔「いつか…いつかお前がマスタースパークを自在に扱えるような大魔法使いになれたら」

 

 

魅魔「必ず会いに来てやるよ、魔理沙のところにな」

 

 

魔理沙「!!」

 

 

魔理沙「うん…! ありがとう、師匠!」

 

 

魅魔「約束だ!」

 

 

魔理沙「おう! 約束だぜ!」

 

 

 

 ゴゴゴゴゴゴ!!

 

 

 

魅魔「…それじゃあな、魔理沙」

 

 

魔理沙「! 師匠!」

 

 

魔理沙「まだ師匠の名前を聞いて無かったぜ!」

 

 

魅魔「! そうだったな」

 

 

魅魔「私の名前は…」

 

 

 

 

 

 

魅魔「魅魔だ」

 

 

魔理沙「! み…ま…!」

 

 

魅魔「ふっ、忘れんじゃねぇぞ♪」

 

 

魔理沙「! もちろんだぜ!」

 

 

魅魔「ふふっ…♪」ニコッ

 

 

魔理沙「へへっ…♪」ニコッ

 

 

魅魔「じゃあな、魔理沙」

 

 

魔理沙「また…! またいつか会おうぜー!」

 

 

魔理沙「ありがとう! 魅魔様ー!」

 

 

魅魔「!! ふふっ……♪」スッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ありがとう 師匠

 

 

 

  私はもう 約束を忘れない

 

 

 

 

 

 

 _____________________________________________

 

 

 

 

 

 

【人里裏通り 空き地】

 

 

 

 魔理沙! 魔理沙! 

 

 

 

魔理沙「んっ…んぁぁ…」

 

 

 

 魔理沙! 起きなさい!

 

 

 

魔理沙「んぁぁ…や、やめてくれぇ…アリスぅ…」

 

 

 

 魔理沙ぁぁ!

 

 

魔理沙「うはっ!?」ガバッ!

 

 

霊夢「うわあっ!?」ビクッ

 

 

魔理沙「はぁっはぁっ…!? あ、あぁ!?」

 

 

霊夢「あぁ!? じゃないわぁ! いきなり起き上がるんじゃないわよ! ビックリするわ!」

 

 

魔理沙「……? 霊夢…?」

 

 

霊夢「他に何に見えるの?」

 

 

魔理沙「ここ…は?」

 

 

霊夢「人里の裏通りの空き地、あんたさ、何でこんなところで寝てるのよ、こんなところで普通寝る? それに日が沈み始めてるのよ?」

 

 

魔理沙「…」

 

 

霊夢「…ねぇ、大丈夫?」

 

 

魔理沙「お、おう…」

 

 

霊夢「まぁあんたが無事ならそれで良いけど、それより阿求が探してたわよ、探したけど見付からなかったってさ」

 

 

魔理沙「…そうか」

 

 

霊夢「そうかって…師匠探しをしてたんでしょ?」

 

 

魔理沙「師匠…? …!!」

 

 

魔理沙「れ、霊夢!!」

 

 

霊夢「あ、あー?」

 

 

魔理沙「こ、ここに私の…私の師匠からもらった魔導書が」

 

 

霊夢「そこに落ちてるやつじゃないの?」スッ

 

 

魔理沙「!!」

 

 

 魔理沙は急いで落ちている魔導書を二冊拾い上げる

 

 

霊夢「あら、二冊あったのね、一冊だけだと思ってたけど」

 

 

魔理沙「…」ペラッ

 

 

霊夢「…? なんか変ね、一冊ボロボロでもう一冊は新品みたいじゃない」

 

 

 

 魔理沙は新品の方の魔導書の最後のページを開く

 

 

 

魔理沙「…」ペラッ

 

 

魔理沙「…!!」

 

 

霊夢「…?」

 

 

魔理沙「…」プルプル

 

 

霊夢「…魔理沙、こんなところにいないでさっさと紅魔館に行くわよ、アリスとパチュリー待ってるんでしょ?」

 

 

魔理沙「…」プルプル

 

 

霊夢「魔理沙、聞いてる!? あんたまだ寝ぼけて…!?」

 

 

 

 霊夢は本を抱き抱え、下を向いている魔理沙の顔を覗いた

 

 

 

魔理沙「グスッ…! うぅ…! グスッ…」ポロポロ

 

 

霊夢「あ、あんた…何で泣いてんの…?」

 

 

魔理沙「霊夢ぅ…! グスッ…! くぅ…!」ポロポロ

 

 

霊夢「な、何よ…? やっぱりなんかあったの? ほんとに大丈夫なの…?」

 

 

魔理沙「へへっ…! グスッ…! 心配すんな…! バーカ…!」ポロポロ

 

 

霊夢「あ、あー?」

 

 

魔理沙「グスッ…! 嬉しいときは…グスッ…! 泣くもんだぜ…!」ポロポロ

 

 

魔理沙「へへへっ…!」ポロポロ

 

 

霊夢「…」

 

 

霊夢「ふっ…♪」

 

 

霊夢(凄く嬉しそうな顔で泣くわね…見たことないかも)

 

 

霊夢(何か良いことあったみたいね♪ 魔理沙)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【紅魔館、地下図書館】

 

 

咲夜、レミリア、パチェ、アリス「えぇっ!? 師匠に会ったぁ!?」

 

 

魔理沙「おう! 会ったぜ!」

 

 

霊夢「みたいよ?」

 

 

レミリア「ど、どんな人だったの!?」

 

 

パチェ「名前は? 能力は?」

 

 

アリス「私の事知ってたりした!? 魔理沙の奥さんだって」

 

 

霊夢、咲夜「アリスは黙ってなさい!!」

 

 

魔理沙「あー? 知りたいのか?」

 

 

レミリア「当たり前でしょ!」

 

 

パチェ「気になるわよ、マスタースパークが使える程の人物なのよ!」

 

 

魔理沙「そうかそうか、そうだなぁ…♪」

 

 

アリス、レミリア、パチェ「…!!」ゴクリ

 

 

魔理沙「…♪」

 

 

咲夜「…?」

 

 

霊夢「…」

 

 

 

 

 

魔理沙「秘密だぜ♪」

 

 

レミリア、パチェ、アリス「なっ!?」

 

 

咲夜「秘密って…」

 

 

霊夢「教えてくれないのよ、私もここに来るまでに何度か聞いたんだけど」

 

 

咲夜「ふぅん…」

 

 

レミリア「ひ、秘密ですって!?」

 

 

パチェ「ここまで期待させておいて…! しかも会ったのに秘密ですって!? 意味が分からないわ!」

 

 

魔理沙「ふふっ、何で秘密にしてるか教えてやろうか?」

 

 

レミリア、パチェ「お、教えなさいよ!」

 

 

魔理沙「それはなぁ…」

 

 

レミリア、パチェ「…!」ゴクリ

 

 

 

 

 

 

魔理沙「それもまた秘密だぜ♪」

 

 

パチェ「ふっ…! ふざけんじゃないわよ魔理沙ぁ!」

 

 

魔理沙「はぁーっはっはっは!」ゲラゲラ

 

 

レミリア「くぅぅ…! この私に隠し事…! さとりを呼ぶわよ!」

 

 

魔理沙「おい! それは人道に反するぞ!」

 

 

レミリア「私は人間じゃないわぁ!」

 

 

 

 ギャーギャー!

 

 

 

アリス「な、何で秘密なのかしら」

 

 

霊夢「さぁ? まぁ良いんじゃない?」

 

 

咲夜「でも会ったことは確かなんでしょうね」

 

 

霊夢「ふっ、そうね」

 

 

アリス「ふふっ♪ そうみたいね♪」

 

 

咲夜「気付いて無いかもしれないけど、魔理沙」

 

 

霊夢「あんた今とっても良い顔してるわよ」

 

 

アリス「幸せそうね、魔理沙♪」

 

 

 

 

 

レミリア「待ちなさい魔理沙ぁ!」

 

 

パチェ「ここまで焦らしておいて…知る権利は私たちにもあるはずよ!!」

 

 

魔理沙「あっはははは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙(師匠、師匠のお陰でまた毎日が楽しくなりそうだよ)

 

 

魔理沙(これからは前を向いて一歩ずつ、着実に大魔法使いなってみせるぜ)

 

 

魔理沙(また師匠に会うために、私は私らしく憧れの師匠に…大好きな師匠にまた会うために)

 

 

魔理沙(少し…待たせちまうかも知れないけどな)

 

 

魔理沙(…)

 

 

魔理沙(ありがとう)

 

 

魔理沙(魅魔様)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魅魔から受け取った新しい魔導書の最後のページにはこう書かれている

 

 

 

 

 

 

   the Grimoire of Mima

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おしまい!

 

 

 

 






 予想以上に長くなってしまいましたがこれにて霧雨魔理沙の日常終了です、魔理沙は個人的に思い入れのあるキャラクターでもあるので少し力が入ってしまいました。


 魔理沙と魅魔…このような感じになりましたが如何でしたでしょうか。

 最初は魔理沙と魅魔を会わせる予定はありませんでしたが私の中で魔理沙と魅魔を会わせてあげたい欲求が働いてしまい、このような形にお話を再構築しました、私的には満足なのですが読者の皆様には読んでいて辛い、読みづらい部分があるのではないかと不安ではあります…



 以下、補足になります


 紫がボロボロの魔導書に掛けたおまじないは『その書物が復元されないようにするおまじない』です、復元されてしまうと魔理沙以外の者に魅魔の正体がバレる可能性があったからです


 紫とドレミーと魅魔は魔理沙が永遠亭に居た辺りからずっとスキマで魔理沙のことを見てました、気絶させる隙を伺っていたんだと思います



 それではここまで読んでいただいてありがとうございました、お疲れ様でした♪


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