東方紫藍談  ~紫と藍の幻想談~   作:カテサミン

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 こちらは【中編】となっております、先に前編をご覧下さい。


 今回は多数のキャラクターのキャラ崩壊が起きております、劇の参加者は雷鼓を始めテンションが高いのでご注意ください、サグメと布都の視点を中心に置いています。



 【中編】は繋ぎの部分になります、そして四コマの様に話が進んでいきます。

 終盤は【後編】へのストーリーに大きく関わり、四コマっぽさは無くなります。



 『前編』にて、月から幻想郷に降り立ち、無事に友達と再会できた稀神サグメは幻想郷の娯楽を観ることとなります。 果たしてその娯楽とは!


 それでは始まります!




《第7話》『もう一人のプリズムリバー』 【中編】

 

 

 

 夜の縁に舞い戻り 微かな光を辿って行く

 

 

 希薄な記憶の欠片を 探し続けて行こう

 

 

 癒しの旋律を奏でよう 思い出は私の胸の奥に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【幻想郷 娯楽場、観客席 午前8:50】

 

 

 

博麗霊夢「ん、もうすぐ始まるわね」

 

 

河城にとり「いよいよだ姉ちゃん、後十分で始まるよ」

 

 

河城みとり「う、うん! はぁ…なんか緊張してきちゃった…!」

 

 

霊夢「あんたが劇をやるわけでも無いのに緊張してどうすんのよ、楽にしてなさいっての」

 

 

みとり「そうなんですけど…あぅ…」

 

 

咲夜「その緊張を舞台に向ければ自然と周りが気にならなくなるんじゃない? それに劇とかに感情移入しやすくなって良いことだと思うわよ?」

 

 

みとり「そ、そう…なんでしょうか」

 

 

霧雨魔理沙「そればっかりはみとりの気持ち次第だが、あんまり無理すんじゃねぇぞ?」

 

 

みとり「は、はい!」

 

 

にとり「楽しいお祭りみたいなもんだからね、挑戦するのも良いけど姉ちゃん自身も楽しまなきゃダメだよ?」

 

 

みとり「ふふっ♪ うん、分かったよ、にとり♪」

 

 

 

 

魔理沙「…」ジーッ

 

 

咲夜「…? 何?」

 

 

魔理沙「なんかお前さ、前よりちょっと優しくなったよな」

 

 

咲夜「! ……そう?」

 

 

霊夢「確かに、あんたって人に対して積極的にアドバイスするタイプじゃなかったじゃない」

 

 

咲夜「……」

 

 

咲夜「なら私は良い方向に変われてるって事なのかしらね」

 

 

魔理沙「そうかもな、でもどうしていきなりそんなになったのかってのは気になるんだよな」

 

 

咲夜「理由なんか特に無いわよ、それに気になる事でも無いでしょ」

 

 

霊夢「…そうね、咲夜がどう変わろうと私は興味無いし」

 

 

魔理沙「本当かよ」

 

 

霊夢「本当よ」

 

 

咲夜「本当なら話さなくても良いわよね」

 

 

霊夢、魔理沙、咲夜「……」

 

 

霊夢「えっ、理由あるの?」

 

 

魔理沙「お前興味に満ち溢れてるじゃねえか」

 

 

霊夢「ち、違う、違うから… ほ、ほら…! 『話さなくても良い』とか言うから気になっただけよ」

 

 

魔理沙「そういうのを興味津々って言うんだぜ?」

 

 

咲夜「あら、聞きたいの? 霊夢」

 

 

霊夢「だから違うっての」

 

 

咲夜「じゃあ話さなくて良いわね」

 

 

霊夢「えぇもちろん」

 

 

魔理沙「でもいつか聞かせろよ? お前からの『大好き』の件も含めてな」

 

 

咲夜「! ……えぇ、いつかね」

 

 

霊夢「……」ウズウズ

 

 

魔理沙「……お前やっぱ気になっ」

 

 

霊夢「あんたしつこいっての!」

 

 

魔理沙「うははは♪」

 

 

咲夜「ふふっ…♪」

 

 

 

 

 

 

魔理沙「…うん? おい霊夢、あれ…」スッ

 

 

霊夢「ん? …あれ、何であいつ居んの?」

 

 

咲夜「…? 誰?」

 

 

霊夢「稀神サグメって言うんだけど、月の民のあいつが何で…劇を観に来たのかしら」

 

 

魔理沙「かもな、輝夜か永琳が呼んだんじゃねぇの?」

 

 

咲夜「月の民…? 鈴仙からは何も聞いてないけど」

 

 

魔理沙「鈴仙が何も聞かされて無いってパターンじゃないか?」

 

 

咲夜、霊夢「あ、あり得る…」

 

 

霊夢(それより何で神子の所の布都と一緒にいるのかしら)

 

 

 

 

 

 

 ワイワイ ガヤガヤ

 

 

 

物部布都「サグメ殿こっちじゃ、そろそろ始まるでな」

 

 

稀神サグメ「あ、あぁ…」

 

 

サグメ(しかし凄い人の数だ、先の異変もそうだが何処かで見掛けた顔もちらほら居る…皆、ここで始まる娯楽を楽しみにしているのだろう)

 

 

サグメ(音楽家である雷鼓のファンの者も居るのだろうか……私も雷鼓の…いや、まだ彼女の演奏を観ても聴いてもいないのにファンを名乗るなどおこがましいか)

 

 

布都「う~む、何処に座ろうか…こういうのはやはり最前列の方が良いのかの」

 

 

サグメ「……布都、残念だが最前列は既に満席の様だ」

 

 

布都「むっ…! 流石に前は人気であったか…イカン、失念しておったわ…!」

 

 

サグメ「…?」

 

 

布都「サグメ殿を迎えると言う事だけを考えていたので席を取ることを忘れておったのじゃ! わ、我はなんという事を…! 一番大事な事ではないか…!」

 

 

サグメ「布都、私は何処の席でも構わない、立ち見でも観られればそれで」

 

 

布都「それは駄目じゃ! せっかくサグメ殿が来てくれたのじゃから観心地の良い席ではないと駄目なのじゃ!」

 

 

サグメ「そこまで考えてくれるのはありがたいのだが私は普通の観客の身だ、そんなに特別扱いしなくてもいい」

 

 

布都「いや、我は何とかしてみせるぞサグメ殿! こうなったら頼み込んででも席を譲ってもらおうぞ! それでも駄目なら実力行使で…!」

 

 

蘇我屠自古「アホかぁ!」スッ

 

 

 ゴスッ!

 

 

布都「ぬあぁっ!?」

 

 

サグメ「!?」

 

 

屠自古「朝から並んでる奴もいるってのに頼み込んで席を譲ってもらうとか普通考えるか? てか実力行使って何をする気だお前、周りの迷惑を考えろや!」

 

 

布都「痛いっ…! 何をするんじゃ屠自古ぉ!」

 

 

サグメ(この者、足が無い…幽霊…いや亡霊か? 布都と似た気も感じるが)

 

 

屠自古「頭に手刀されたぐらいで騒ぐな、そんなに痛くないだろ?」

 

 

布都「痛いわぁ! 最近は何かあれば直ぐに暴力じゃなぁ!? この大根足めが!」

 

 

屠自古「……電撃…やってやんよ…?」バチッ

 

 

布都「!? す、すいませんでしたー!」

 

 

屠自古「ふん」

 

 

サグメ(何者だ? 布都が怯えているが…ん? 『やってやんよ』…)

 

 

サグメ「……失礼だが、貴方は?」

 

 

屠自古「ん? あぁお前か? このアホのダチの月の民ってのは」

 

 

布都「アホではないわ! のう♪ サグメ殿」

 

 

サグメ「ふふっ、あぁそうだな」

 

 

サグメ「私の…大切な友だ」

 

 

屠自古「! はっ…♪ そうか…お前がそうなんだな」

 

 

屠自古「あー…いきなり悪かったな、驚いたろ」

 

 

サグメ「そうでもない、それに気にしてもいないさ」

 

 

屠自古「そうか、なら良いんだけどな」

 

 

布都「我には謝らんのかお主は…」

 

 

屠自古「ほら…コイツのダチならわかんだろ? こうやって止めてやらないと暴走するからさ、止めに来てやったんよ」

 

 

サグメ「! そうか…なるほど…」

 

 

布都「さ、サグメ殿…そこ納得してはイカン所じゃ」

 

 

屠自古「ダチならお前の暴走加減ぐらい百も承知だろ」

 

 

サグメ「そうだな…だが、納得したのはそこではない」

 

 

布都、屠自古「ん?」

 

 

サグメ「貴方か、布都の手紙に書いてあった屠自古…というのは」

 

 

屠自古「あぁそうだ、私は蘇我屠自古、よろしくな」スッ

 

 

サグメ「私は稀神サグメ…こちらこそよろしく頼む」スッ

 

 

 サグメと屠自古は互いに握手を交わす

 

 

布都「サグメ殿、我の手紙を読んでくれたのなら屠自古のことは分かるであろう? 充分に気を付けるのじゃ、怒らせたら直ぐに電撃と言う名の暴力が飛んでくるのだからの」

 

 

屠自古「その電撃を飛ばす前に私を怒らせんじゃないよ、それに私はお前が変なことしなきゃ電撃なんて落とさないんだからな?」

 

 

サグメ「あぁ、よく分かっているよ布都」

 

 

屠自古「ん…?」

 

 

サグメ「屠自古…貴方と布都の間には厚い信頼関係があること、それから貴方が心優しい人であることがな」

 

 

屠自古「なっ…!? は、はぁ!?」

 

 

布都「? サグメ殿、確かに太子様を共に支えると言う点では信頼関係は多少はあると我も思うが…屠自古は優しいとは思えんぞ?」

 

 

サグメ「ふふっ…そうかな? 私は優しいと思うのだが」

 

 

屠自古「お、おおお前! な、何を根拠にそんな…///」カアッ

 

 

サグメ「暴力とは言え布都を想っての行動、それから貴方が布都の手紙に分かりやすく加筆を」

 

 

屠自古「バッ…!? わっ、わーわー! 馬鹿や、やめろ! やめろって!」

 

 

サグメ「ふふっ…♪」

 

 

布都「む? 分かりやすく…?」

 

 

屠自古「な、何でもない! 何でもないから聞くな!」スッ

 

 

屠自古「お、お前なぁ…私のことは気にすんなって書いただろ…! てか何で私が加筆したって分かったんだよ…!」ヒソヒソ

 

 

サグメ「貴方の口癖から答えを導き出した、そしてそういう訳にもいかない、加筆してくれた事に礼を言わねば私の気が収まらないのだ、あの加筆は布都の為でもあったが私の為でもあったからな」ヒソヒソ

 

 

サグメ「ありがとう、感謝している」ヒソヒソ

 

 

屠自古「っ…! べ、別に私はコイツの為とかお前の為とか…/// そ、そんなつもりで…///」カアッ

 

 

布都「何ぞ二人でヒソヒソと…き、気になるのぅ」

 

 

屠自古(こ、こういう素直な奴は嫌いじゃないんだが調子が狂うんだよなぁ…///)

 

 

サグメ(布都と生活を共にする家族なのであろうな…口調は荒々しいが、面倒見が良い性格なのだろう)

 

 

サグメ(友以上の関係…か)

 

 

サグメ(……いや、考えるのはやめておこう、今私には大切な友が三人もいる…これだけで充分だ、ふふっ…♪)

 

 

 

 

 

布都「そういえば屠自古、お主何故ここにおる、太子様と共に客席に座っていたのではないのか?」

 

 

屠自古「あ…? あぁそうだった、その事でお前たちの所に来たんだったな」

 

 

サグメ、布都「?」

 

 

屠自古「まぁ何だ、お前たち…まぁ私も含めてだが、三人の席を取っといてあるから一緒に座らないか、って言いに来たんよ」

 

 

布都「ぬ? 何故客席が開くのじゃ、太子様も座っておるであろう?」

 

 

屠自古「あれ見ろ、後ろの方の客席」スッ

 

 

サグメ、布都「…?」

 

 

布都「ぬ? 何故太子様が聖白蓮の隣に座っておるのじゃ?」

 

 

屠自古「太子様が気を利かせてくれたんよ『月の民の者と屠自古、そして布都の三人で観るといい』ってな」

 

 

布都「な、なんと…!? 太子様ぁ…! 我はその慈悲深き行動に感銘を受けましたぞぉ…!」

 

 

屠自古「大袈裟だろ…」

 

 

サグメ(鈴仙から聞いた事がある、あれが豊聡耳神子か、オカルトボールの調査の為に永遠亭に訪れた彼女と一戦交えたと…)

 

 

屠自古(一応白蓮の隣に座った理由あるんだけどな、こころの事でだが)

 

 

屠自古「でだ、お前らどうする? 嫌なら別の席にしても良いんだぞ?」

 

 

布都「何を言う、答えは決まっておろう! 太子様のご厚意に感謝し、答えるのが太子様に仕える物の」

 

 

屠自古「こいつは仕えてねぇだろうが」スッ

 

 

サグメ「…!」

 

 

布都「! サグメ殿、ここは太子様のご厚意に…!」

 

 

サグメ「私にも断る理由はない、彼女の厚意に甘えよう」

 

 

布都「おぉ! そう言ってくれると思っておったぞ! では早速座るとしようぞ♪」スッ

 

 

 タッタッタ…!

 

 

屠自古「…やっぱあいつはしゃぎ過ぎだろ」

 

 

サグメ「ふふっ…♪」

 

 

屠自古「…悪いな、本当は布都と二人で観たかったんじゃないのか?」

 

 

サグメ「そんなことはない、大切な友が側に居るからと言って他の者を蔑ろにする様な事を私はしたくない」

 

 

屠自古「…!」

 

 

サグメ「それに貴方は幻想郷の娯楽に詳しそうだ、私と布都は娯楽には疎い、もし良かったら『この劇は何々だ』と助言をもらえると助かるのだが」

 

 

屠自古「…! はぁ…ったくしょうがねぇなぁ…///」

 

 

屠自古「私もお前に手紙書いたようなもんだしな、最後まで面通見てやんよ」

 

 

サグメ「! ふふっ…ありがとう、助かるよ」

 

 

屠自古「っ…/// で、でもあんまり私も詳しい方じゃ無いからな!? ほ、ほら行くぞ、中央の列だ」スッ

 

 

サグメ「あぁ」スッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【娯楽場、舞台袖】

 

 

犬走椛「……」プルプル

 

 

椛「……」プルプル

 

 

椛(む…無理!! 絶対無理! 私には向いてないですって!)

 

 

 『総合司会 犬走椛』

 

 

椛(昨日文さんの家の飲み会で泥酔した私が悪い、それは認めます…! 認めますけど記憶が無い…私あんなこと言って無いですよ!? 言質を録音しておくなんて酷いですよぉ…)

 

 

 

 

 ホワンホワン

 

 

射命丸文『椛、明日の人里の娯楽場での総合司会を私がやるじゃないですか』

 

 

椛『んふふふふ♪ そうれすねぇ…♪ がんひゃっれくらはいねぇ…♪ んふふ♪』フラフラ

 

 

文『えぇもちろん頑張りますよ、でもそうですねぇ、このお仕事は椛にも出来ると思うんですけどねぇ♪』

 

 

椛『んふっ…♪ わらひにへふはぁ…?』フラフラ

 

 

文『最近の椛の活躍には目を見張る物がありますからねぇ、侵入者の撃退や、悪さをしていた大妖怪の討伐…いやぁ♪ そんなものに比べたら総合司会なんて楽勝でしょう? ただ人前で喋るだけですからね♪』

 

 

椛『らくひょ~…?』

 

 

文『はたてもそう思いませんか?』

 

 

姫海棠はたて『……』

 

 

文『ほほぉ♪ そうですかそうですか、椛の司会が見てみたい! と♪』

 

 

はたて『……』

 

 

椛『んむぅ~…? 見たい~?』

 

 

文『えぇ、華麗な話術で会場を盛り上げる椛を見てみたいってはたても言ってます! もちろん私もね♪』

 

 

椛『会場~…?』

 

 

文『ふふっ、椛、娯楽場の総合司会…あなたなら楽勝な筈ですよ♪ やってみませんか♪』

 

 

椛『…ん~…』ポケー

 

 

椛『んぅ…? んふふふふっ…♪』

 

 

文、はたて『……』

 

 

文『…♪』カチッ

 

 

椛『ふふふふっ! 良いれしょう! このいにゅばしゅりもみゅじゅにお任せあり~♪ 総合司会でも何でも~♪ やってやりますよぉ~!』

 

 

文『おぉ! やってくれますか椛!』

 

 

椛『楽勝っすよ~♪ なんたってあたしはー! 誇り高き白狼天狗なんですからねぇ~♪』

 

 

文『…♪』カチッ

 

 

文『お~、そうですかそうですか♪ では頼みましたよ、椛♪』

 

 

椛『楽勝楽勝~! あっはっはっは♪』

 

 

文『…ふふっ♪』

 

 

はたて『あんた訴えられたら絶対負けるわよ』

 

 

文『はてさて…なんのことやら♪』

 

 

はたて『椛、南無…』

 

 

椛『んっふふふふ♪』

 

 

 ホワンホワン

 

 

 

椛(楽勝じゃないよぉ!)

 

 

椛「その後朝起きたら文さんにレコーダーの音声聞かされて…そしてこれだもん…二日酔いは無かったけどこんなのあんまりだよぉ…うぅ」

 

 

椛「台本を渡されて何を喋るかは分かってるんですけどむ、無理! 満員御礼の娯楽場で総合司会なんて無理だよぉ!」

 

 

 ガチッ…!

 

 

椛「はっ…!? しょ、照明が暗く…! も、もう始まる…!」

 

 

椛「私が出て行かないと劇が始まらない…! はうぅ! どうしようどうしよう…! き、緊張が…!」ブルブル

 

 

椛「でもやらないと皆に迷惑が掛かっちゃう…! 文さんもはたてさんも居ないから私がやらないと…! ふぅぅ…!」

 

 

椛「……」

 

 

椛「……」

 

 

椛「……」プツッ

 

 

椛「今日の夜…今日の夜が私の命日だ、うん、うんそうしよう、そうだ…うん、そうなんですよふふふ…」ブツブツ

 

 

椛「あぁ…なんかそう思うと気が楽だなぁ…ふふっ♪ 最初からそう思えば良かった」

 

 

椛「文さん、はたてさん…この犬走椛の最期の大舞台…その目に焼き付けて下さい」

 

 

椛「……!」キッ

 

 

椛「犬走椛…! いざ参る…!」スッ

 

 

 

 

 

 

《観客席 中央上 秘密のゆかりんVIPルーム♪》

 

 

 

エリス「お? いきなり暗くなったぞ?」

 

 

魅魔「暗転って言うんだよ、もうすぐ始まるな」

 

 

ドレミー・スイート「…スー…」zzZ

 

 

宇佐見菫子「あ、ドレミーさん起きて下さい、始まりますよ」スッ

 

 

ドレミー「んっ……あぁ…やっとですか…?」

 

 

サリエル「……幻想郷の娯楽…見物ね……」

 

 

神綺「うんうん♪ 夢子ちゃんもそう思うよね♪」

 

 

夢子「……」

 

 

神綺「はわっ!? む、無視!?」

 

 

魅魔「集中して観てんだから邪魔すんなっつーの」

 

 

神綺「えぇっ!? ま、まだ劇始まってないよ? 夢子ちゃん、お母さん寂し」

 

 

夢子「うるさい」ギロッ

 

 

神綺「ひっ!? は、はいぃ…!」

 

 

エリス「キャハッ☆ 夢子さんマジ怖ぇ☆」

 

 

サリエル「…今にも毛を毟りそうね…クフフ…」

 

 

ドレミー「母親を見る目付きじゃないですよね」

 

 

魅魔「その前に実の娘に怯えてどうすんだ」

 

 

菫子「あはは…」

 

 

八雲紫「……♪」ニコッ

 

 

ドレミー「…そういえば紫さん」

 

 

紫「あら、何かしら」

 

 

ドレミー「月からサグメさんが来てるんですけど良いんですか?」

 

 

紫「何が?」

 

 

ドレミー「だって紫さん、月の民が嫌いだって言ってたじゃないですか」

 

 

紫「月の民は嫌いだけど、稀神サグメの事は嫌いじゃないわよ?」

 

 

紫「私が嫌いなのは高圧的な態度で接してくる月の民よ……あぁ憎たらしい!」

 

 

ドレミー「あぁ…そうなんですか」

 

 

ドレミー(まぁ手紙を届けてる時点で容認してるって事ですもんね、サグメさんの事に関しては)

 

 

菫子「月の民ってそういう人が多いんですか…?」ヒソヒソ

 

 

魅魔「あくまでも『紫から見て』だからな、変な偏見を持つなよ?」ヒソヒソ

 

 

菫子「はい…そうします」ヒソヒソ

 

 

 パチパチパチパチ…!

 

 

魅魔「おっ! 始まるみたいだぜ♪」

 

 

菫子「あっ…! ふふっ、なんか学校の文化祭みたい♪」

 

 

紫(さてさて…♪ 素敵なお祭りの始まりよ♪)

 

 

紫(種族なんて関係ないわ…みんな、楽しんでいってね♪)

 

 

 

 

 

 

 【幻想郷フェスティバル! 開幕!】

 

 

 パチパチパチパチ…!

 

 

椛「……」スタスタ

 

 

椛「……」スッ

 

 

椛「…」ペコッ

 

 

 椛はスポットライトが照らされている舞台の真ん中に立ち、観客席へ向かって深々と頭を下げた。

 

 

椛(今日の夜が私の命日、今日の夜が私の命日、今日の夜が私の命日……!)

 

 

椛(……)スッ

 

 

椛「……」スゥー

 

 

椛「幻想郷にお住まいの紳士淑女の皆様、本日はお忙しい中お集まり頂きまして、誠にありがとうございます」

 

 

椛「只今より、ここ人里の娯楽場において…! 幻想郷フェスティバルを開催します!」

 

 

 

 パチパチパチパチ!!

 

 

椛「本日、総合司会を担当させていただきます犬走椛と申します! よろしくお願いします!」

 

 

 パチパチパチパチ!!

 

 モミジー! カワイイゾー!

 

 

椛「演劇、演説、音楽等々…! ありとあらゆる演目が…! 出演者が…! 皆様に娯楽を提供し、楽しませてくれる事でしょう!」

 

 

椛「それでは開幕させていただきます!」

 

 

椛「先ずは…! プリズムリバー楽団! 堀川雷鼓、九十九姉妹! 鳥獣伎楽によるオープニングセレモニーです!」スッ

 

 

 

 ワァーーー! パチパチパチパチ!!

 

 

 

 雷鼓を始めとした幻想郷の八人の音楽家達が舞台袖から登場する。

 

 

堀川雷鼓「……!」スッ

 

 

雷鼓(あぁ、良いわぁ…♪ 満席のステージで演奏出来るって最っ高…♪ それに私の演奏を聴かせたい人がいる…♪)

 

 

雷鼓(布都さん、サグメさん♪ 楽しんでいってね♪)

 

 

雷鼓「…椛ちゃんにマイク渡されちゃったけど、オープニングじゃあ歌は無いのよね、ふふっ♪」

 

 

雷鼓「今回のフェスには様々な催し物があるのは皆知ってると思うけど、演目一つ一つに音楽をつけさせてもらっているの、ここにいる八人の誰かが演者さんと一緒に会場の皆を盛り上げるわ!」

 

 

ミスティア・ローレライ「イェーイ!」

 

 

幽谷響子「イェーイ!」

 

 

雷鼓「ふふっ…♪ それじゃあ皆ぁ! 最初は私達の演奏よ! 盛り上がっていきましょう!」スッ

 

 

 

 ウォーーーー!!

 

 

 

 

 ~♪ ~♪

 

 

魔理沙「うはぁー…ついに始まったぜ、てか幻想郷フェスティバルって名前だったんだな」

 

 

咲夜「フェスティバルねぇ…雰囲気が合ってる様な合ってない様な」

 

 

霊夢「…まぁ別に良いんじゃない?」

 

 

魔理沙「楽しければってか?」

 

 

霊夢「そこまでは言ってないっての」

 

 

にとり「姉ちゃん、どう……おっ…!?」

 

 

みとり「わぁ…! ふんふ~ん♪ ん~♪」キラキラ

 

 

にとり「ありゃ、聞こえて無い?」

 

 

魔理沙「結構のめり込めるタイプなんだな、みとり」

 

 

咲夜「ノリノリじゃない、心配する必要は無かったみたいね♪」

 

 

霊夢(ノリが良いと言うか、そういうところはにとりに似てるのかしらね、咲夜が言ってた目元は…分からないわね)

 

 

魔理沙「そういやあれか? 照明とかもお前らが管理してるのか?」

 

 

にとり「そうだよ~♪ 河童の技術なめんなよ~?」

 

 

霊夢「…最近あんたら便利屋になってきてない?」

 

 

にとり「発明家だよっ! エンジニアって言ってほしいなぁ」

 

 

咲夜(大して変わらないわよね)

 

 

 

 

 

はたて「へぇ~…無理って言ってたのにきちんと出来てるじゃない」

 

 

文「あやや、椛にも意外な才能があったんですねぇ♪ 驚きですねぇ♪」

 

 

はたて「! ……あんた、もしかして…」

 

 

文「何です?」

 

 

はたて「椛に意地悪してやらせてんのかと思ったけど、『椛に司会をやらせてあげたかった』んじゃないの?」

 

 

はたて「椛はやるときはやる性格だし、司会業に不安で胸がいっぱいでも始まってしまえばちゃんとやってくれる…あんたはそれが分かってたんじゃないの?」

 

 

文「……ふふっ♪ さぁ、どうでしょうねぇ…♪」

 

 

はたて「……」

 

 

はたて(昔はお互い凄く仲が悪かった癖によくもまぁ…)

 

 

はたて(終わった後は魂が抜けて廃人みたいになるわよねきっと、天狗のよしみでフォローはしてあげるわ、椛)

 

 

文(人前に出るのが恥ずかしいというのが嘘の様ですねぇ、椛♪)

 

 

 

 

 

 

布都「おぉ~…! サグメ殿! 雷鼓殿が演奏をしておるぞ!」

 

 

サグメ「あぁ、そうだな…♪」

 

 

屠自古(見りゃわかんだろ…なんて言えねぇか、コイツらあの雷鼓って奴の演奏初めて聴いてんだもんな)

 

 

サグメ「雷鼓もそうだが、他の者達の旋律も実に興味深い…激しさ、楽しさ、哀しを音で伝えているのだな…演奏、曲を通じて自分の想いを届ける…そう感じるよ、音楽とは不思議な物だな」

 

 

布都「う、うむ…そ、そうであるな」

 

 

屠自古「お前絶対分かってねぇだろ」

 

 

布都「失敬じゃぞ屠自古ぉ!」

 

 

サグメ「ふふっ…♪」

 

 

サグメ(雷鼓…楽しそうに演奏するのだな♪)

 

 

 

 

 

雷鼓「~♪ ! ……♪」パチッ

 

 

 

 

サグメ(…!? い、今雷鼓と目が合ったな…目配せを私にした…よな…)

 

 

サグメ(な、なんだろう)

 

 

サグメ(何故かドキドキする)

 

 

 

 

 

 鳥獣伎楽のパンク・ロックバンドによるアップテンポで攻撃的なメロディー。

 

 雷鼓、九十九姉妹の和楽器を用いた和の旋律。

 

 プリズムリバー三姉妹のヴァイオリン、トランペット、キーボードによる軽快なリズム。

 

 

 それぞれの旋律が見事に合わさる事で違和感のない楽曲が生まれ、観客達を楽しませた。

 

 

 

 

 

 

椛「皆様、オープニングセレモニーで演奏をして下さった八人の音楽家に大きな拍手を!」

 

 

 パチパチパチパチ!!

 

 

 演奏を終えた雷鼓達は観客に向かって頭を下げ、舞台袖へと捌けていった。

 

 

椛「楽団の皆様、演奏ありがとうございました、さて、素敵な音楽によって生まれた興奮が冷めやらぬうちに次のステージへと参りましょう!」

 

 

椛「続いてはこの舞台の端にあるめくり台に書かれている演目が上演されます、上演と言いましても演説、公演と言った物が皆様に披露されます! 何でも有りと言ってしまえばそれまでですが演目の一つ一つを楽しんでいただければと思います♪」

 

 

椛「それでは演者の方々、よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

【演目その一 ~レミリア・スカーレットのカリスマ講座~】

 

 

 

レミリア「くくく…! あーっはっはっはー!」

 

 

 

観客(!?)

 

 

 

レミリア「幻想郷住人のみんな! 私はレミリア・スカーレット…! カリスマの権化と名高いレミリア・スカーレットよ!」バーン

 

 

レミリア「今からこの私がカリスマとは何なのか、カリスマとはどういう物なのか、それをみっちりゆっくりじっくりと教えてあげるから覚悟しなさい!」

 

 

レミリア「まず! カリスマとは資質を現す概念みたいな物だと思っている人がたくさんいると思うけど本当は違うの、全然違うのよ!」

 

 

レミリア「何故ならば! カリスマの権化であるこの私が存在しているのだから概念なんかじゃないのよ! 先ずはそれを理解してほしいわ!」

 

 

 

観客(えぇ…)

 

 

 

レミリア「私はカリスマ、カリスマは私…! 私の存在がそれを証明しているのよ、ほら見なさい! 私から出るカリスマオーラを…!」

 

 

レミリア「ほら! ほらちゃんと見なさい! 今バリバリに出てるわよ!? このカリスマが感じ取れないそこの人! それは私を理解してない、もしくは出来ていない証拠! カリスマ理解力ゼロのおバカにも解りやすく説明してあげるわ♪」

 

 

レミリア「カリスマにはね、パチェ…あ、いやいや、自分で本で調べたんだけど魅力、特質がある者にしか宿らないと言われているらしいのよね」

 

 

レミリア「私を見れば一目瞭然だと思うんだけど、私には生まれた瞬間からカリスマの権化だと言われる所が幾つもあるの、そして今でもそれを感じ取ることが出来る物がたくさんあるわ、私の魅力と特質を教えてあげる!」

 

 

レミリア「誇り高い吸血鬼! 強い! 家族に恵まれている! 霊夢に可愛いって言われた! う~☆も可愛いって言われた! 親友がいる! 威厳を感じる佇まい! 紅魔館の主! 着脱出来る羽! 月の民の戦士に勇敢に捨て身を行った! 運命を操る程度の能力! 庶民派、納豆好きよ! カリスマガードの異常な防御力! …あっ! 後ね、カリスマガードも霊夢に可愛いって言われたわ!」

 

 

レミリア「ふふっ♪ ほら、あなた達が聞いた通りよ♪ 私から溢れ出るカリスマを感じたでしょう?」ニッコリ

 

 

 

観客(えぇ!?)

 

 

 

レミリア「まぁつまり、私があなた達に伝えたい事は何なのかって言ったらね?」

 

 

レミリア「私以上のカリスマの持ち主は存在しないし、あなた達がカリスマを持ったとしても、私を超えるカリスマを持つことは無い…残酷な事だけどね」

 

 

レミリア「けれど私を見て、理解して、学べる事はあるでしょう? カリスマが何なのか…分かってくれたかしら?」

 

 

レミリア「カリスマは感じとるもの、あなた達の一人一人のカリスマを私を通して学んで、磨きあげて行きなさい、良いわね?」

 

 

 

観客(……)

 

 

 

レミリア「ふふっ、どうやら分かってくれたみたいね♪ それじゃあ今回のカリスマ講座はここまでよ♪ 聞いてくれてありがとう♪ それじゃあね♪」スッ

 

 

 パチパチパチパチ…!

 

 

 

 

魔理沙「くっくくっ…! くくく…!」プルプル

 

 

霊夢「あんたレミリアが出てきた時から笑ってわよね」

 

 

魔理沙「だ、だってお前っ…! ぶふっ…! あっははは…!」

 

 

霊夢「…」チラッ

 

 

咲夜「……」

 

 

霊夢「一言ある?」

 

 

咲夜「……ここに居る観客全員がお嬢様の事を可愛いと思ってくれればそれで良いの、私からは何も言えないわ…」

 

 

霊夢「…苦労してるわね、ほんと」

 

 

霊夢(私そんなにレミリアに可愛い可愛い言ってるっけ? まぁカリスマガードのポーズは可愛いかな、うん)

 

 

魔理沙「くふふふふっ…! あっははっ…!」プルプル

 

 

みとり「? ?? にとり、カリスマって何なのかな…? レミリアさんの言ってることが私、理解出来なくて」

 

 

にとり「姉ちゃん、それは皆が思ってる事だから大丈夫だよ」

 

 

 

 

紅美鈴「……」チラッ

 

 

小悪魔→こあ「…」チラッ

 

 

パチュリー・ノーレッジ→パチェ「……」

 

 

フランドール・スカーレット「…パチュリー」

 

 

パチェ「……」

 

 

パチェ「拍手をしてもらえただけでも良かったわね」

 

 

紅美鈴「そう…ですね」

 

 

こあ「は、はい…」

 

 

フラン「うん…」

 

 

パチェ「止められ無かった私が悪いのよ、そう…そうなの」

 

 

フラン「力になれなくてごめんね、パチュリー」

 

 

こあ、美鈴「……」

 

 

パチェ「……頭が痛いわ…」

 

 

フラン「私も…」

 

 

こあ、美鈴(わ、私達からは何も言えない…!)

 

 

 

 

 

屠自古「何言ってんだかわかんねぇし、何を伝えたいんだかわかんねぇ…」

 

 

布都「むぅ…? かりすま…とは一体…? 良く分からんぞ…」

 

 

屠自古「まぁ太子様にはカリスマあるだろうな、そう思えば良いだろ」

 

 

サグメ「カリスマ…」

 

 

サグメ(私の周りでは八意様、輝夜、豊姫にはカリスマがあると思うのだが)

 

 

サグメ(……布都の言う通り、良く分からないな)

 

 

 

 

 

【演目その二 ~色々な春ですよ~】

 

 

 

リリー・レッド「情熱の春をお届けっ! リリーレッドですよー!!」

 

 

リリー・ブルー「リリー…ブルー…寂しい春をお届けですよー…」

 

 

リリー・イエロー「リリーイエロー! スパイシーな春をお届けでっすよー!」

 

 

リリー・グリーン「リリーグリーン! 自然豊かな春をお届けですよー♪」

 

 

リリー・ホワイト「そして私が~…んんんん~…!」ググッ

 

 

リリー・W「リリー・ホワイトですよー♪ はっるでっすよー♪」

 

 

 

観客(!?)

 

 

 

リリー・W「はい♪ 春ですよー♪ 皆さん、いきなり私以外のリリーが出てきたからビックリしてると思うですよー」

 

 

リリー・W「でも驚く事ではないですよー、このリリー達はそれぞれが私と同じリリー・ホワイト達なのですよー」

 

 

リリー・W「服はアリスさんに作ってもらったのですよー♪ それぞれ赤のリリーと青のリリー、黄色のリリーと緑のリリーですよー♪ 私と同じ妖精リリー・ホワイトですが、この日の為にちょっと出てきてもらって協力してくれているのですよー♪ 冬の寒い中で感謝感謝ですよー♪」

 

 

リリー・W「それでですね、何故こんな格好をしているのかと皆さん疑問に思っていると思うのですよー、これには深い…深い理由があるのですよー」

 

 

リリー・W「私、リリーホワイトは考えたですよー…皆さんに来年の春を楽しんでもらうにはどうしたら良いのか、と…春を告げるだけではダメ、この小さい頭を捻りに捻って答えを探したのですよー、それはそれは苦労の連続でしたですよー」

 

 

リリー・W「そして答えを求めて数日…! ついに答えを出したのですよー! それは…!」

 

 

リリー・W「色々な春を作って皆さんにお届けして楽しんでもらうのですよー! これにビビビッ! と来たのですよー!」

 

 

リリー・W「情熱の春! 寂しい春等々! 皆さんには一人一人の春があって、それぞれの春を過ごす事になるですよー♪ そこに、私達リリーは色々な春と言う名の花を添えてあげるのですよー!」

 

 

 

 パチパチパチパチ…!

 

 

リリー・W「! わぁ…♪ 皆さん拍手をありがとうなのですよー! これは嬉しいですよー♪」

 

 

リリー・W「ふふっ♪ それでは次に、このリリー達がどんな春を皆さんにお届けするのかを詳し」

 

 

 オルァ!!

 

 

リリー達「!?」

 

 

 

観客(!?)

 

 

 

 舞台袖から二人の野生の神様が飛び出して来た…!

 

 

 

秋静葉「はいストップ! ストーップ!」

 

 

秋穣子「みなさーん? 春のお祭りは終わりですよー、はい終了~!」

 

 

リリー・W「! あ、秋さん達…!? な、何をしに来たのですよー!?」

 

 

穣子「ねぇ静葉、聞いた? リリーってば色々な春と言う名の花を皆に添えてあげるんだってさ」

 

 

静葉「えぇ聞いてたわよ穣子、ほんと…頭の中が春一番って感じの考えよね、そのまま強い風に乗ってどっかに吹き飛んじゃえば良いのにぃ…!」イライラ

 

 

リリー・W「えっ!?」

 

 

穣子「『えっ!?』っじゃないから、そもそもさぁ、こんな場所で何で春をアピールしてんのよ!」

 

 

静葉「そのアピールの仕方も姑息よねぇ…? 数で押せば良いって感じだもんねぇ!?」

 

 

穣子「何? 何なの? リリーグリーン? リリーブルー? 冗談はホワイトだけにしておきなさいよ!! 春にブルーな気持ちになるこっちの身にもなりなさいよ! えぇっ!?」

 

 

グリーン、ブルー「ひっ!?」ビクッ

 

 

リリー・W「ぐ、グリーン! ブルー! き、気にしなくても大丈夫ですよー!」

 

 

静葉「レッドとイエローに至っては私達と色が被ってんじゃないのよ! 私達に宣戦布告でもしてんの!? ねぇ!? 喧嘩なら買うわよ、秋の名の元に跪かせてあげましょうか!? あぁん!?」

 

 

レッド、イエロー「ひゃっ…!?」ビクッ

 

 

リリー・W「レッド! イエロー! 負けちゃダメですよー!」

 

 

穣子「はっ…! どうせあれでしょ? このままあんた達を放っておいたらリリーピンクだのリリーパープルだの…! ドンドン増えていくんでしょ!?」

 

 

静葉「丸でリリーのバーゲンセールよねぇ!? こちとら焼き芋のセールなんてしたこと無いのにさぁ!」

 

 

リリー・W「そ、そんなの知らないですよー!」

 

 

穣子、静葉「知れよ!!」

 

 

リリー達「えぇっ!?」

 

 

静葉「あーこれあれだわ…春をアピールすると見せ掛けて、ジワジワと秋を潰さんとする春の容赦ない責めだわ」

 

 

穣子「春告精の数の暴力って奴よね、春ってほんと野蛮…夏の幽香を見習いなさいよ」

 

 

リリー・W「そ、そんなことするわけないですよー!」

 

 

静葉「…皆さん、どう思いますか?」

 

 

穣子「春って怖いですよね? そうですよねぇ!? そうって言いなさいよぉ! ってか言え!」

 

 

 

観客(えぇー!?)

 

 

 

静葉「…あーほら、皆さん怖がってる」

 

 

穣子「色々な春の押し売り…それは怖がりますわ」

 

 

リリー・W「そ、それは秋さん達が」

 

 

静葉「穣子、これは私たち秋の出番よ、秋の魅力で皆さんを救う時よ」

 

 

穣子「そうだね、これ書き換えちゃおっと」スッ

 

 

 

【演目その二 ~色々な秋ですよ~】

 

 

 

観客(春が秋に乗っ取られた…)

 

 

 

リリー・W「ど、どうしてこんな事するですよー!? 酷いですよー!」

 

 

静葉「ですよですよと…! 何回言えば気が済むのよ! ご飯でも食べてなさいよ!」

 

 

穣子「こちとら大寒波が秋の中旬に来ちまったせいで『今年の秋は短かったですね』とか言われてイライラしてんのよ! 少しは秋の身にもなってみなさいよ!」

 

 

リリー・W「それは秋さん達のお仕事ですよー! 私にはどうすることも出来ないですよー!」

 

 

静葉「ああ言えばこういうんじゃないわよ!」

 

 

穣子「紅葉と豊穣の両方の楽しみを奪われた…秋の痛みを知りなさい!」

 

 

リリー・W「そ、そんな…」

 

 

穣子「大体『春ですよー♪』じゃないわよ、今冬でしょうが!」

 

 

リリー・W「うっ…」

 

 

静葉「冬に春をお届けしてどうすんのよ、これには流石のレティも激怒してるわ~…不味いわよこれ」

 

 

リリー・W「うぅ…」

 

 

穣子「てかさ、最初から良く考えれば分かるじゃん、リリーレッドだとか絶対流行んないから」

 

 

静葉「子供達は見た目よ見た目、白色じゃないあんたとかリリー感が無くて誰だか分からないから」

 

 

穣子「取って付けた様な個性はいらないのよ!」

 

 

リリー・W「うぅ…!」プシュゥ

 

 

リリー達(!! ま、マズイですよー! ここは逃げるですよー…!)コソコソ

 

 

静葉「あっ! ねぇ穣子、リリー・オータムって面白くない?」

 

 

穣子「はははっ! 語呂悪っ! あっははは!」

 

 

リリー・W「ゆ゛る゛さ゛ん゛!」グワッ

 

 

 カッ!

 

 

静葉、穣子「え?」

 

 

 ボフン…! 

 

 リリー・ホワイトの体から煙が吹き上がる!

 

 そして煙の中から立ち上がる大きな影、それは…!

 

 

 

リリー・W→リリー・ブラック「フハハハ! 久し振りのシャバですよぉ!」ボゴォ

 

 

静葉、穣子「!!?」ビクッ

 

 

 

観客(えぇっ!?)

 

 

 

リリー・B「毎度毎度懲りない秋共ですよぉ…? また春を囃し立て、揶揄し、茶化し、おちょくり、軽侮し、蔑む…フ、フハハ! フハハハハハハッ!」

 

 

静葉、穣子「は、ははは…」ビクビク

 

 

リリー・B「笑えねぇですよぉ!!」ゴォ

 

 

静葉、穣子「ひぃっ!?」ビクッ

 

 

リリー・B「春を侮辱した罪、その体に刻み込んでやるですよぉ…?」スッ

 

 

リリー・B「貴様ら用のとっておきの弾幕ですよぉ♪ 覚悟は良いですかぁ…?」

 

 

静葉、穣子「いっ!?」

 

 

リリー・B「フハハハ! 逃げられると思ったら大間違いですよぉ!」

 

 

リリー・B「さぁ…とうとうお約束の時が来たようですよぉ♪ 派手に散るですよぉ!!」スッ

 

 

 ゴゴゴゴゴ…!

 

 

静葉、穣子「ひっ!?」

 

 

リリー・B「ずぅえい!!」ブン

 

 

 ヒュッ…! ドゴーン!!

 

 

静葉、穣子「ぎゃあああぁぁぁぁ!!」

 

 

リリー・B「フハハハ! これぞ我が弾幕ですよぉ!」

 

 

リリー・B「……! みなさぁん…怖がらせてしまってごめんですよぉ…」

 

 

リリー・B「秋は…いや、悪は去ったですよぉ…これで一安心ですよぉ」

 

 

リリー・B「そろそろ私も元に戻るですよぉ、その前にみなさぁんに一言…言わせてほしいですよぉ」プシュゥ

 

 

リリー・B「春は一年に一回、必ずやって来るですよぉ…春と言う季節を楽しむと共にぃ…春の備えを万全にしておくですよぉ…♪」シュゥゥ

 

 

 

 ボフン…!

 

 

リリー・B→リリー・ホワイト「う~あ~…」

 

 

椛「! リリーさん、大丈夫ですか!?」

 

 

リリー・W「目~が~ま~わ~る~で~す~よ~…」グルグル

 

 

椛「え~っと…え、演目その2はこれにて終了です、リリーさん、ありがとうございました!」スッ

 

 

 椛はリリーを抱き抱え、舞台袖に捌けて行った…着弾すると爆発する弾幕を受け、大の字で倒れている秋姉妹もついでに運んで行った…

 

 

 

 

 

メディスン・メランコリー「懲りないね、秋姉妹」

 

 

レティ・ホワイトロック「どうしてこう学習をしないのかしら、冬で不機嫌になってるのは分かるんだけど…それと静葉、私怒ってないわよ」

 

 

風見幽香「ブラックの弾幕でもひび一つ入らないのね、この建物」

 

 

茨木華扇「気にするところはそこでは無いでしょうに」

 

 

 

 

屠自古「何であの妖精でかくなったんよ…身長が二倍ぐらいになってたぞ」

 

 

サグメ「でかく…なったというか変身していた様に見えたが」

 

 

布都「神であるにも拘わらずあの姉妹は何故あんなに辛辣な言葉を浴びせかけるのじゃ…」

 

 

サグメ「ふむ…春、か」

 

 

屠自古「ん? なんか思うことでもあるのか?」

 

 

サグメ「幻想郷に季節があるのが羨ましいんだ」

 

 

布都「ぬ? 月には季節が無いのか?」

 

 

サグメ「正確に言えば『月の都』には季節が無いんだ…一定の気温、湿度を保つ機械が常に稼働している」

 

 

布都「ほぉ~…」

 

 

屠自古「へぇ…」

 

 

サグメ「だが豊姫…いや、ある月の民が季節を楽しめる様にと地球の季節を再現出来る装置を作った、たまに稼働しているのを見掛けるな」

 

 

布都「な、なんと…!? それでは季節を思いのままに操れると言うことか!?」

 

 

サグメ「そうではないよ、本当に再現しているだけ…本物には遠く及ばないさ」

 

 

屠自古「それでも充分凄いなぁおい」

 

 

布都「おぉ~…♪ お? そうだサグメ殿、サグメ殿はどの季節が好きなのだ?」

 

 

サグメ「! 私は……秋、かな」

 

 

サグメ(中秋の名月…永遠亭で見た月は綺麗だったな)

 

 

布都「秋か! 秋……うぅむ…」

 

 

屠自古「お前さっきの姉妹見てそれ選ぶのな」

 

 

サグメ「……あの神達と季節の秋は別物と考えている」

 

 

布都「そう考えた方が良いんじゃろうな…」

 

 

屠自古「嫌な偏見持たれても文句言えねぇよな…」

 

 

 

 

 

【演目その三 ~アリスの人形劇~】

 

 

 

サリマ『スリア! 僕は…!』カタカタ

 

 

スリア『ダメよサリマ、私と貴方では種族が違うの…! 私達が結婚したらきっと後悔する、人間に疎まれている私と一緒になんて…!』カタカタ

 

 

スリア『貴方を傷付けたくない、辛い目にあってほしくないの! 人間じゃない私といても幸せになんてなれないわ! サリマ…どうか…どうか分かって…!』

 

 

サリマ『……スリア、聞いてくれ』

 

 

スリア『! サリマ…!?』

 

 

サリマ『種族…そんなものは関係無い! どんなに辛い運命がこれから先あったとしても構わない、私はあなたをずっと愛し続けてみせる! これからもずっと…ずっとだ!』

 

 

サリマ『この想いは変わらないよスリア!』

 

 

サリマ『……愛してる…愛してるよ、スリア』ダキッ

 

 

スリア『! サリマ…!』ダキッ

 

 

 

 こうして種族の違いと言う大きな壁を乗り越え、サリマとスリアの二人は結ばれ、家庭を築き、幸せに暮らす事ができました。

 

 互いの愛を深め合いながらいつまでも…いつまでも。

 

 めでたしめでたし…

 

 

 

 パチパチパチパチ!!

 

 

 

アリス・マーガトロイド「ふふっ♪ ありがとう…! ありがとうございました!」ペコッ

 

 

上海人形「シャンハーイ♪」フリフリ

 

 

蓬来人形「ホーライ♪」フリフリ

 

 

 パチパチパチパチ!!

 

 

アリス(ふふふっ♪ あぁ…なんか良いわね、こういうちゃんとしたステージで人形劇を披露するのって♪ 初めてだったけど失敗せずに出来て本当に良かった)

 

 

 パチパチパチパチ!!

 

 

アリス(拍手が心地良いわね…♪ 魔理沙達も観てくれたし…ふふっ♪)

 

 

 キャーー♪ アリスちゃ……!

 

 

アリス(!? んっ…!?)ピクッ

 

 

アリス(えっ…? い、今の声…!)

 

 

アリス(……居るわけ無い…わよね)キョロキョロ

 

 

アリス(空耳かしら…)

 

 

 

 

 

 

にとり「やっぱりさ、改めて観るとアリスの人形劇ってレベル高いよね」パチパチ

 

 

咲夜「えぇ、糸を使っての人形捌き、人形に合わせた物語の構成力…見事だわ」パチパチ

 

 

霊夢「人形使いがアリスしか居ないから実感湧かないけど、劇の内容は今回も良かったわね」パチパチ

 

 

にとり「うん♪ 姉ちゃんはどうだった?」

 

 

みとり「……アリスさんの人形劇…私、初めて観たから…な、なんかね? 上手く言葉で伝えられないんだけど…」

 

 

みとり「…感動……うん、凄い感動したの…アリスさんの人形の扱いとか、演技とか…でも一番は物語の内容…観てて心が暖かくなるのを感じたの」

 

 

にとり「! …そうだね、私もそう思うよ、感動したよね♪」

 

 

みとり「! うん♪」ニコッ

 

 

霊夢(物語のテーマが種族を越えた愛、だもんね…みとりの心に響いたみたいよ、アリス)

 

 

魔理沙「……」パチパチ

 

 

魔理沙「内容…そうだな、内容は良かった…面白かったな」

 

 

霊夢、咲夜、にとり「くっ…!」プルプル

 

 

みとり「? 魔理沙さん?」

 

 

魔理沙「そうだな…感動もしたぜ? いや本当に水を差す様で悪いんだけどよ、ただ…ただな? 一つだけ気になる事があるんだ、聞いてくれるか? みとり」

 

 

みとり「は、はい」

 

 

魔理沙「何だあの……サリマとスリアだっけ? あの新しく作られた人形よぉ」

 

 

魔理沙「心なしか私とアリスに似てねぇか?」

 

 

霊夢「ふくっ…!」プルプル

 

 

咲夜「ふふっ…!」プルプル

 

 

にとり「ふはっ…!」プルプル

 

 

みとり「えっ!? そうでしたか…? あ…そういえばサリマ君は白黒の服で金髪、スリアちゃんは青の服にケープとカチューシャを着けてましたね」

 

 

魔理沙「後よ、逆から読んでみろ、二人の名前」

 

 

みとり「逆、ですか…? ……あっ!」

 

 

魔理沙「……もうまんまじゃん?」

 

 

霊夢、にとり、咲夜「ふふふふっ…!」プルプル

 

 

霊夢「あ、あんた考えすぎよ…!」

 

 

咲夜「そ、そうよ、あれは人形じゃない…!」

 

 

にとり「た、たまたま似ちゃってただけだって…!」

 

 

魔理沙「そうか、じゃあ何でお前ら笑ってんだ」

 

 

霊夢、咲夜、にとり「くふふっ…!」プルプル

 

 

魔理沙「……素直に感動したい私と、誤魔化しの『ふふっ♪』が来るのを承知でアリスに聞きたい私…どっちの私を優先させれば良いんだろうな」

 

 

霊夢「もちろん前者よ、そっちを大切にしなさい」

 

 

魔理沙「……はぁ~…」ドヨーン

 

 

霊夢、咲夜、にとり(げ、元気が…)

 

 

みとり(人形のモデルは魔理沙さんとアリスさんだったんだ…)

 

 

 

 

 

 

サグメ「素晴らしいな、人形であそこまで感情を表現できるのか」

 

 

布都「西洋の人形だから物語もハイカラかと思うとったが、とても楽しめたぞ♪」

 

 

屠自古「種族愛か、中々面白かったな」

 

 

 

 

《そして、秘密のゆかりんVIPルームでは》

 

 

 

魅魔「お前何スキマから身を乗り出して大声出してんだこらぁ!」

 

 

菫子「気付かれちゃいますよ!?」

 

 

神綺「だってだってだってぇ! 私…! 私、アリスちゃん…! アリスちゃんの劇に感動して…! びえぇぇぇぇ!!」

 

 

魅魔「感動するのは分かるがな! でけぇ声を出すな!」

 

 

紫「しんちゃん、気持ちは分かるけどバレるのはさすがにマズイわよ?」

 

 

神綺「だってゆかり~ん! 私のアリスちゃんがぁ…!」

 

 

エリス「神綺さんマジでアリスちゃんしか言ってねぇぞ☆」

 

 

サリエル「……神綺…その『アリスちゃん』がクドイのよ…劇は良かったけど…」

 

 

夢子「……」スチャッ

 

 

神綺「ふえっ!? ゆ、夢子ちゃん!? な、何で剣を構えてるの!?」

 

 

夢子「魔界に送り返す前に毟っておいた方がいい気がしました」

 

 

神綺「何を!?」

 

 

夢子「毛」

 

 

神綺「!? い~や~…! そ、それだけは~…!」

 

 

魅魔「おう、手伝ってやるぞ夢子」

 

 

エリス「キャハッ☆ 神綺さん暴れんなっ☆」

 

 

サリエル「……混ざってあげるわ…」

 

 

夢子「お手伝い感謝します、では」スッ

 

 

神綺「『では』じゃないよぉ!? あ、アリスちゃん助けて~!」

 

 

 い~や~…!

 

 

ドレミー「神綺さんが観客席にいなくて良かったですね」

 

 

紫「しんちゃんが客席に居たらアリス恥ずかしがってやらなかったかもね♪」

 

 

菫子「あ、気持ち分かります…自分の親が学校に来ていて、その時に何かを発表するのってなんか変な勇気がいるんですよね、意識してしまうときもありましたし」

 

 

紫「学校行事からは逃げられないものねぇ♪」

 

 

菫子「そうなんですよねぇ…」

 

 

ドレミー「…夢子さん」

 

 

夢子「はい?」

 

 

神綺「ゆ、夢子ちゃん!? 先っぽぉ! 剣の先っぽがお母さんの頭に当たってるよぉ!?」

 

 

ドレミー「夢子さんは如何でしたか? アリスさんの人形劇」

 

 

夢子「……」

 

 

夢子「とても面白かったです、アリスも楽しそうに劇を披露していてとても印象深かったです」

 

 

神綺「! あ~! 夢子ちゃんも私と同じなんだぁ♪ ってはわっ!?」

 

 

夢子「本当に良く動く口ですね、毛を毟る前に先ずはお口チャックからにしましょうか、神綺様?」

 

 

神綺「お口チャックって何をどうするの!? お母さん怖いよ!? てかそんな他人行儀で呼ばないでよぉ…!」

 

 

サリエル「……言い方可愛いわね…お口チャック…クフフ…」

 

 

魅魔「厳しいだろ、やることは可愛くねぇんだから」

 

 

夢子「……」

 

 

夢子(アリスの作った人形すっごい可愛い…/// 持ち帰りたい…///)ウズウズ

 

 

 

 

 

【演目その四 ~幻想郷の素敵な動物たち~】

 

 

 

高麗野(こまの)あうん「わんわん!」

今泉影狼「わんわん!」

 

 

火焔猫燐「にゃー!」

寅丸星「にゃー!」

 

 

 

観客(!?)

 

 

 

お燐「……うんそうだよね、説明いるよね…しょうがないにゃあ、あたいが説明するよ」

 

 

お燐「この演目はこの娯楽場の設計者の一人でもある地霊殿の主、古明地さとり…あたいの主のさとり様ね、その人が考えた演目なの」

 

 

お燐「ほら、あるじゃん? 犬派とか猫派とかさ、そういうの抜きにして犬と猫の魅力を知ってもらう為の演目なの、まぁあたい達が上手く伝えられるかは分からないけど楽しんでいってね♪ そんじゃ、そっちからよろしくにゃ~♪」

 

 

お燐(とは言ったものの、魅力って何を言えばいいんだろ…さとり様、あなたが『出て下さい、お燐の可愛い所が見たいのでお願いします』って言うから出たんですよ…? 他の連中もさとり様に頼まれたみたいだし、はぁ…)

 

 

 

影狼「わ、わん…! お、狼の影狼よ! よ、よろしくね」

 

 

影狼(こ、怖いわー人間怖いわー…うぅ…! ふ、普通ならこんな人前なんて絶対出ないんだけど覚り妖怪に『可愛いから出て下さい』って土下座までされたから仕方無く出てるのよね)

 

 

影狼(でも何を言うかはもう決まってるから大丈夫♪ 姫…わかさぎ姫が紙に書いてくれたこの文を読み上げるだけ…! 姫、書いてくれてありがとう…!)

 

 

影狼「え~…皆さん! 私、今泉影狼はニホンオオカミの妖怪で狼女です、狼はイヌ科の動物なのです! 一匹狼という言葉をご存知でしょうか、孤立して単独で活動している狼の事です、この話をすると私、影狼は一匹狼なのか? と思われる方もいらっしゃるかも知れませんがそんなことはありません、寧ろ外向的な性格で本当は寂しがりやの可愛い可愛い影狼ちゃんなんです」

 

 

影狼(……あれ…これ続き読んで大丈夫だよね…?)

 

 

影狼「影狼ちゃんは落ち着いた性格で優しい! 可愛いんです! 間違って私を食べようとした所も凄く可愛い! そんなうっかり影狼ちゃん『満月の夜は毛深くなるのが気になるから肌を出したくない』なんて言ってるんですが、そんなこと無いよ! 影狼ちゃんのモフモフな体毛がこの寒い時期にはかなりの需要があるんだからね! 暖かくてモフモフ…! あぁ、なんて素晴らしいんだろう! そんな影狼ちゃんのモフモフな体毛にダイブして暖を取りたい! 皆さんもそう思いませんか!? そう思ったのなら、寂しがりやで可愛い影狼ちゃんをこれからもよろしくお願いしますね! って……はっ!?」

 

 

影狼(か、かかかかっ…! 可愛いって…/// ひ、姫何を書いっ…!! それに体毛って…あぅぅ…///)

 

 

影狼「……///」プシュゥー

 

 

影狼「わ、私からは…い、以上です…///」カアッ

 

 

影狼(い、勢いで読んじゃったけど姫~…! なんて事を書いてるのよ~…! しかも全然犬のアピールしてないし! 私のアピールになっちゃってるし…! うぅ…は、恥ずかしい…///)

 

 

 

 

星「にゃー! 皆さん、私は寅丸星と言います、命蓮寺に住んでいる虎の妖怪です」

 

 

星「今回は宗教目的では無く虎…ネコ科の動物の魅力を伝える為に参りました! …そうなんですが」

 

 

星「魅力と言いましても、何を伝えれば良いのか全く分からないんです、私、命蓮寺での日々の生活の中でネコ…いえ、虎として生活したことなんてたぶん一度も無いと思いますもん」

 

 

星「まず、戒律のせいでお肉が食べられないんです、肉食である虎にはこれ拷問に近いですし、人里の屋台でお肉を見かけると思わず食べてしまいそうになるんですけど、食べたら聖のお仕置き南無三が飛んでくるので我慢してるんです、皆さん、人里の子猫達にはお肉を与えてあげて下さいね、だって可哀想なんですもん、お肉を食べられない猫ちゃん」

 

 

星「それから私は良くうっかり屋だと言われます、何に対してうっかり屋だと言われているのか聞いたところ、私は物を良く無くすらしいんですよね…でもこれには少し異を唱えたいと思ってるんですよ」

 

 

星「気に入った物を集めて貯めるコレクターのネコちゃんもいる、と聞いたことがあるんです、これを私に当て嵌めると財宝が勝手に集まってくる、これは私の能力によるものなんですが、財宝なんかよりも私が大事に大事にしてるものがあるんです、宝塔って言うんですけど、この宝塔…一つしか無いので私をコレクターとは呼べないんですが大事な物なので使わない時はしまっておくんです、大事に保管しておくんですよ、でも私の知らないところで勝手に無くなるんですよね」

 

 

星「ここでさっきの二つの話が出て来ます『ご主人がうっかりしてるから無くすんだ』と言われるんですよ…いやいやいやいや…そうじゃないではないですか、宝塔は勝手に私の知らないところで無くなるんですよ、私は妖怪ではありますがネコ科の虎、ネコちゃんは自分の集めた物を自分で無くすなんておバカな事はしない…そういう生き物なんです」

 

 

星「皆さんの中にはネコちゃんを飼っている方もいると思います、どうですか? 皆さんのネコちゃん、物を集める事はしていても無くすなんてしてないでしょう?」

 

 

星「私もそうなんですけど誰も信じてくれないんですよねぇ……宝塔は自分で勝手に無くなると言うのに、はぁ…あ、私ネコとして命蓮寺で生活してるところありました、発見しちゃいましたね♪」

 

 

星「まぁあれですね、ネコちゃんは自分の大切な物を無くさない! これネコちゃんの魅力なんじゃないでしょうか、それが他の人にとって大切な物であったとしても、勝手に無くなったという事実があるのならばネコちゃんを責める事はしないようにしましょう! それでは…!」スッ

 

 

 

 

あうん「わんわん! みんな! 私は高麗野あうん、獅子でもあるんだけど狛犬だからワンちゃんだよ、よろしくね♪ あっ、霊夢さん見て見て! 私出てるよ♪」

 

 

あうん「私なりにワンちゃんの魅力を紹介すれば良いんだよね? 任せて任せて♪」

 

 

あうん「えっと、私が狛犬だから気付いたのかも知れないけどみんな忠犬って知ってるよね? 飼い主さんに忠実なワンちゃん…そんな忠犬だけど、それって飼い主さんとお互いに信頼しあってるからこそ、そのワンちゃんは忠犬になれるってことなんだよね♪ 犬と人との良い関係ってほんと素敵なんだよ?」

 

 

あうん「飼い主さんに忠犬って認められてお互いの信頼関係が良好になるともう…えへへ…/// なんか言うの恥ずかしいなぁ…/// こう…お腹を見せて撫でて撫でて~って私達の方からアピールするの♪」

 

 

あうん「いや…/// もう本当に、えっへへへへ…/// あの気持ちよさって言ったら…/// なんて表現したら良いのか…ご主人様にナデナデしてもらってるんだなぁとか、ご主人様の手暖かいなぁってとにかく『あぁ、私愛されてるんだなぁ、ご主人様のお役に立ててるんだなぁ』ってスッゴク思うの♪」

 

 

あうん「もう…本当に…/// 霊夢さんにお腹をナデナデされてるときって本当にそんな感じで…/// えへへ…///」ニヘー

 

 

 

観客(……えっ?)

 

 

 

あうん「今まで色んな所を狛犬として守護してきたけどやっぱり博麗神社が一番だよ~♪ 守矢神社だと諏訪子さんにちょっかい出されるし、命蓮寺だと山彦妖怪さんの『おはよーございます!!』が耳をつんざくからストレス溜まりっぱなしだったけど博麗神社は全然そんなことないんだ~♪」

 

 

あうん「私が姿を現せば霊夢さんが頭ナデナデしてくれるし、ご飯だって作ってくれるの♪ お昼になって私が仰向けで日向ぼっこしていると霊夢さんが寄ってきてくれてお腹ナデナデしてくれるんだ~♪ ……たまに萃香さんにもナデナデされるけど鬼の人の力って強いよね…ちょっと乱暴…でもそんなときは霊夢さん♪ 優しくナデナデしてくれればそんな嫌なことだって吹き飛んじゃうの♪」

 

 

あうん「うん♪ あ…! みんなもワンちゃんを飼ってたり、野生のワンちゃんが側に近付いてお腹を見せて来たら優しくナデナデしてあげてね♪ ワンちゃんとの信頼関係! これが大事だよ♪ 私からは以上だよ、それじゃあバイバイ…♪」

 

 

 

 

お燐「にゃー♪ あたいは地霊殿でさとり様のペット兼、火車の妖怪! 火焔猫燐だよ、お燐って呼んでね♪」

 

 

お燐(って言っても何を話したら良いのやらだよ…! 三人とも犬と猫の魅力をちゃんと伝えるのかと思ったら最終的には自分とその身内の事ばっかりだったじゃんか! いや、何となく魅力は伝わったかも知れないけどさ、たぶんそれ一部の人にだけだよ! しかも三人とも話の内容が濃すぎるんだよー!)

 

 

お燐(な、何も思い浮かばにゃい…あるとすればさとり様が猫形態になってる私を膝の上に乗せて撫でてる時に言ったやつ…?)

 

 

お燐(『あぁ可愛い…プニプニしてる…お燐、私はたまにお燐の肉球になりたいと思うときがあるのですが、どうやったらなれるんでしょうかね?』)

 

 

お燐(……いやいやいやいや無理があるよこの話は!! この話をしたらさとり様が周りから白い目で見られるかもしれないじゃないか! この話はダメだよ! あたい!)

 

 

お燐(でもどうしたら…! この三人以上に面白い話なんて何も思い浮かばな)

 

 

 待てぇーい!!

 

 

 

あうん、お燐、星、影狼「えっ!?」

 

 

 

観客(!?)

 

 

 

 犬…!? 猫…!? 確かに可愛いがなぁ…! 他にもいるだろう!?

 

 

 犬と猫を超越した圧倒的な可愛さ…!

 

 

 どんなニーズにも答える個性豊かな可愛いらしい耳…!!

 

 

 そう…! それはぁ……!

 

 

 

 

 

因幡てゐ「ウサギだぁー!」

清蘭「ウサギだぁー!」

鈴瑚「ウサギだぁー!」

 

 

 舞台袖から三匹の兎が勢い良く飛び出してきた!

 

 

お燐、星、あうん、影狼「なっ!?」

 

 

 

観客(えぇー!?)

 

 

 

鈴瑚「ほら! 退いた退いたぁ!」

 

 

清蘭「ここからは私たち兎の時代だよ!」

 

 

お燐「ちょっ…!? あんたたち何を勝手に…!」

 

 

てゐ「仲良く手を取り合って可愛いさアピールなんて面白味が無いウサァ! 何故ならぁ…!?」

 

 

清蘭「ウサギが!」

 

 

てゐ「一番っ!」

 

 

鈴瑚「ウサギが!」

 

 

てゐ「可愛い動物の頂点っ!」

 

 

てゐ、清蘭、鈴瑚「だからだぴょん♪」キラッ

 

 

 

全員(うわぁ…)

 

 

 

てゐ「んん!? 何だ!? 不服なのか!?」

 

 

清蘭「何でみんな嫌そうな顔してるのよ!?」

 

 

鈴瑚「みんなウサギ嫌いなの!? ほらぁこんなに可愛いじゃん! 垂れ耳、折れ耳、立ち耳の三種類のウサ耳だよ!?」

 

 

 

観客(……)

 

 

 

てゐ「はぁ……みんな犬と猫に毒されてしまったんだな…しょうがない、こんな手は使いたくなかったけど…清蘭、鈴瑚」

 

 

清蘭、鈴瑚「へい、おやびん!」

 

 

てゐ「可愛いさアピールだ!」

 

 

清蘭、鈴瑚「了解っ!」

 

 

 

全員「!?」

 

 

 

鈴瑚「うふふ…♪ みなさぁ~ん、もし~、もしもウサギの方が一番可愛いって言ってくれたらぁ~…♪」

 

 

清蘭「私と鈴瑚が経営している清鈴屋のぉ~…♪ お・だ・ん・ご…♪」

 

 

鈴瑚、清蘭「安くしちゃおうかなっ♪」キラッ

 

 

てゐ「おまけに~…♪ 私の幸運もサービスしちゃうぞっ♪」キラッ

 

 

 

観客(えぇ…)

 

 

 

お燐「ちょっとちょっと! こら! そういうのは無しだよ! それになんなんだいその猫なで声は!」

 

 

影狼「そ、そうよそうよ! 物で釣るなんて汚いわよ!」

 

 

てゐ「はっ…! 何とでも言えば良いウサ! 勝った方が正義なのだよ!」

 

 

清蘭、鈴瑚「はーっはっはっはー!」

 

 

お燐、影狼「こ、このぉ~…!」

 

 

てゐ「はんっ…! 何か文句でもあるのウサか!?」

 

 

鈴瑚「喧嘩なら買うわよ!」

 

 

星「け、喧嘩はやめましょうよ~、一旦落ち着いて」

 

 

あうん「う~ん……あっ! こういう時は弾幕勝負で白黒着けよう? 霊夢さんならきっとそうするよ♪」

 

 

てゐ「! 良いね、その喧嘩乗ったぁ!」

 

 

影狼「こ、ここまで来たら自棄ね…! 犬の力を見せてあげるわ!」

 

 

あうん「うん、頑張ろー!」

 

 

お燐「しょうがないにゃあ…! こっちも負けてられないからやってあげるよ!」

 

 

星「私も猫ちゃん代表として頑張りますよ! さて宝塔を……あ、あれ!?」

 

 

てゐ、鈴瑚、清蘭「ふっふっふ…! ウサギの可愛さの前にひれ伏せぇい!」

 

 

お燐(あ、でもあたいこのウサギ達に今助けられたんじゃ…ま、まぁ良いや、ここは流れに身を任せよう、うん)

 

 

 ギャーギャー!!

 

 

椛「み、皆さん! 弾幕勝負なんてダメです! ダメですったら!」

 

 

 ドドドド…!

 

 

椛「み、皆さん! これにて演目その四は終了となります! 只今犬、猫、乱入兎たちを落ち着かせるので暫くお待ち下さい! 河童軍団の皆さん! 協力お願いします!」

 

 

 ギャーギャー! ギャーギャー!

 

 

 

 

 

霊夢「あうんのやつ~…! 何を言っちゃってくれてんのよ…!」ブツブツ

 

 

魔理沙「ほぉ~…♪」

 

 

にとり「へぇ…♪」

 

 

咲夜「ふぅん…♪」

 

 

霊夢「…! な、何よあんたら…!」

 

 

霊夢「ち、違うから…! あうんが言ってた事は全部デタラメよ」

 

 

咲夜「まだ何も言って無いじゃない? 霊夢♪」

 

 

霊夢「くっ…!」

 

 

魔理沙「お前ネコの方が好きなんじゃなかったか?」

 

 

霊夢「そ、そうよ、犬より猫の方が好きよ」

 

 

にとり「あうんって狛犬を随分可愛がってるみたいじゃん♪」

 

 

霊夢「可愛がって無いから、あいつの方からしつこく近寄って来るだけ、軽く往なしてあげてんの」

 

 

魔理沙「その割りにはお前とのやり取りをこと細かく話してくれたよなぁ?」

 

 

霊夢「だ、だから…」

 

 

みとり「霊夢さんってワンちゃんが好きなんですか?」

 

 

霊夢「ち、違う…! ほ、本当に違うから…!」

 

 

魔理沙「……」ジーッ

 

 

霊夢「うっ…! あぁんもう…! 余計な事を言うんじゃ無いわよあうぅん…」ブツブツ

 

 

咲夜「犬、好きなのね」

 

 

魔理沙「犬ってかあうんがお気に入りなのかもな」

 

 

 

 

サグメ「鈴瑚、清蘭…♪」ニコッ

 

 

布都「サグメ殿、あの者らが我が手紙に書いた月から来たと言う団子屋の二人であるぞ」

 

 

屠自古「月…? なら知り合いなのか?」

 

 

サグメ「あぁ、正確に言えば私の同僚の部下…ということになる」

 

 

布都「ほぉ…」

 

 

屠自古「あいつら月から来て人里に住み着いたって聞いたな、月に帰らなくて良いのか?」

 

 

サグメ「そうだな……恐らく大丈夫だ」

 

 

屠自古、布都「?」

 

 

サグメ(二人の帰還命令は出ていない、依姫なら直ぐに出すと思ったのだが、あの異変の後に豊姫と何か話していたことと関係があるのか…?)

 

 

布都「それよりサグメ殿! あの二人が経営しておる団子屋のみたらし団子は絶品じゃったぞ♪ 今度一緒に…あ、いや、ルーミアと雷鼓殿と四人で食べに行こうぞ!」

 

 

サグメ「あぁ、是非行こう…♪ 私も二人の作った団子を食べてみたい」

 

 

サグメ(清蘭、鈴瑚…二人とも元気そうだな…♪ 幻想郷での話を聞かせてほしいな、ふふっ♪)

 

 

 

 

 

 

【演目その五 ~さぁ、何でも質問するがいい~】

 

 

 

丁礼田(ていれいだ)舞「やんやー♪」

 

 

 

爾子田(にしだ)里乃「やんやー♪」

 

 

 

里乃「おいでませー♪」クルクル

 

 

舞「おっ…いでませー♪」クルクル

 

 

 

 キュオン…! と音を立て、ステージ上で謎の踊りを踊っていた舞と里乃の前に大きな扉が出現する

 

 

 

舞、里乃「摩多羅 隠岐奈様の~♪ おな~り~♪」スッ

 

 

 

 ガチャッ…! ギィィ…!

 

 

摩多羅隠岐奈「あーっはっはっはー♪」バァン

 

 

 

観客(!?)

 

 

 

隠岐奈「摩多羅隠岐奈(またらおきな)ここにあり! 幻想郷の娯楽場に来てやったぞ!」

 

 

隠岐奈「この楽しそうな場所…! 目立つ場所…! 私にこそ相応しいな、ふっふっふ♪」

 

 

舞「お師匠様、ここがあなたの場所でございますね♪」

 

 

隠岐奈「うん、そうだな……舞、それ今私が言ったぞ?」

 

 

舞「えっ? そうでしたっけ? 僕、最近耳が遠くて…」

 

 

隠岐奈「踊り狂うのも良いが、寝不足はいかんぞ?」

 

 

里乃「寝不足は関係無いんじゃ…お師匠様これを、司会の白狼天狗から渡されたマイクです」

 

 

隠岐奈「里乃、助かるぞ…しかし最近の河童の技術は凄いな、これも彼奴の入れ知恵か? まぁ何でもいいか……ん? ここに向かって喋ればいいの?」

 

 

里乃「そうみたいですね」

 

 

隠岐奈「おぉそうか! では……! ゴホン…!」

 

 

隠岐奈(…!! 紫、お前が隠しスキマから覗いて見ているのは私にはお見通しだぞ、人間、魔界人、獏…と? うむ? 魅魔も一緒か、彼奴までいるとはな)

 

 

隠岐奈(ふっ…良い機会だ、お前らにも見せてやろう、この摩多羅隠岐奈の威光溢れる舞台をなぁ!)

 

 

隠岐奈「ふっふっふ…! 幻想郷住人の者たちよ! 良く聞くがいい!」

 

 

隠岐奈「私は究極の秘神である摩多羅隠岐奈! 後戸の神でもあり、能楽の神でもある…多くの神格を携えてはいるが私の事は好きに呼ぶといい、変な呼び方をされても怒ったりしないからな、そんな器は小さくないからな? 何故かって? 何故なら私は秘神だからだ、それ以上でもそれ以下でも無い、まぁそんなことは置いといてだ」

 

 

隠岐奈「私がこの舞台に立って何をするのか期待に胸を膨らませている者もいるだろうがはっきりと言っておこう、私は何もしない」

 

 

 

観客(……えっ?)

 

 

 

隠岐奈「その代わり! お前たちの聞きたいこと、つまりは私に対する質問だな、その質問に私が答えてやろう! 先の異変で私を知った者もいるだろうが、それはこの舞台から見渡す限り指で数える程しかいない」

 

 

隠岐奈「それでだ、お前たちが私にすることが出来る質問のテーマだが…ズバリ、私の事だ! これが主題となる」

 

 

隠岐奈「さっきも言ったがお前たちは私の事を知らなさ過ぎるのだ、私の事をもっと知る良い機会だとおもわないか? 気になるだろう私の事、いや、気になっている筈だ、そうに違いない」

 

 

隠岐奈「さぁ何でも質問するがいいぞ♪ 挙手で来い! この私が直々に選んで当ててやろう♪ はっはっは♪」

 

 

 

観客(……)

 

 

 

 

【十分後…】

 

 

 

隠岐奈「誰も手を挙げてくれないんだが…」orz

 

 

里乃「お、お師匠様ー!?」

 

 

舞「ふあぁ~……あふぅ…♪」

 

 

里乃「ちょっと舞! 何で欠伸してるの!?」

 

 

舞「だって僕飽きて来ちゃったし、ふぁ~…眠い…」

 

 

里乃「はぁ!?」

 

 

舞「……かぁ~…♪」zZZ

 

 

里乃「お師匠様が大変なときに飽きてどうするのよ! てか寝るなぁ!」

 

 

舞「あはは、寝てない寝てない…♪ ……皆さん、お師匠様に何か質問はないんですか? 何でも良いんですよ?」

 

 

 

観客(……)

 

 

 

舞「…無いみたいだね♪ 皆さん興味ない感じなの?」

 

 

隠岐奈「はうっ…!?」グサッ

 

 

里乃「こ、こらこら! お師匠様にトゲを刺すんじゃないよ!」

 

 

 はい!

 

 

隠岐奈、舞、里乃「!」

 

 

 

文『あのー、質問良いですか?』

 

 

隠岐奈「お! お前はあの時の天狗ではないか!」

 

 

舞、里乃(あ、元気になった)

 

 

隠岐奈「ふっふっふ♪ さぁ、何でも質問するが」

 

 

文『あぁいえいえ、隠岐奈さんにではなくて後ろの二童子…舞さんと里乃さんに質問したいんです』

 

 

隠岐奈「え」

 

 

里乃「えっ…!? わ、私たちに?」

 

 

舞「……うん、良いよ♪」

 

 

里乃「ちょっ…!?」

 

 

文『お、やった♪ あの時は逃げられちゃいましたからねぇ♪ では早速…♪』

 

 

隠岐奈「……」

 

 

里乃(また急に元気が無くなった…)

 

 

隠岐奈「……チッ」

 

 

里乃(舌打ち!?)

 

 

文『里乃さん、里乃さんが持っている葉の事なんですが、それって茗荷ですよね?』

 

 

里乃「へ? う、うんそうだよ、食べると物忘れが激しくなるって迷信があるの」

 

 

文『ほぉ、だからスペルカードの名前にも使われている…と、なるほどなるほど♪』

 

 

里乃「そ、そうだね…うん、そう…なんだ、あはは…」チラッ

 

 

隠岐奈「……」

 

 

里乃(こ、答えづらいなぁ…!)

 

 

文『では次…舞さん、舞さんは笹を持っていますがその笹で何かしたいとかあったりしますか?』

 

 

舞「これで? う~んそうだなぁ」

 

 

舞「…あっ! 僕のこの笹に願い事を書いた短冊を飾ってくれたらさ、僕と里乃で踊って短冊への願い事パワーを引き出してあげるよ♪」

 

 

里乃「わ、私もやるの?」

 

 

舞「里乃も踊ってくれないと出来ないでしょ?」

 

 

里乃「そりゃあそうだけど…」

 

 

文『ほぉほぉ♪ つまりお二人の能力を幻想郷の為、人の為に使っても良いと?』

 

 

舞「うん、そういうのも良いんじゃないかって最近思い始めて来たんだよね」

 

 

里乃「え~っと…舞? 私たちはお師匠様の為だけに行動…」

 

 

舞「お師匠様はどう思います? 僕の考え」

 

 

隠岐奈「……」

 

 

隠岐奈「やれば良いんじゃないの…? そうすればちょっとは私の知名度も上がるから……」ボソボソ

 

 

里乃(声小さっ!?)

 

 

舞「…♪ まぁ僕たち幻想郷の新参者だからさ、そういうことからやってみようと思うんだ、幻想郷に馴染みたいからね」

 

 

里乃「そ、それには一理ある…かな」

 

 

文『分かりました♪ 答えてくれてありがとうございました♪』スッ

 

 

隠岐奈「……質問…くれ」ボソ

 

 

里乃「……みんな…何かお師匠様に聞きたいこと無い? 何でも良いんだよ? 答えてくれるよきっと」

 

 

舞「僕の持ってる笹に生えてる葉を使って草笛を作ってたお師匠様は可愛いかったよ♪」

 

 

里乃「聞いてない事を答えるんじゃないわよ!」

 

 

 はいはい!

 

 

隠岐奈「!」

 

 

里乃「…? あっ、あの時の妖精だ」

 

 

隠岐奈「おぉ氷の妖精か、覚えているぞ♪ バカっぽく見えて心根はバカではない面白妖精だな」

 

 

チルノ『なぁ! 質問しても良いのか?』

 

 

隠岐奈「あぁ、良いとも! …! そういえばお前、日焼けが治ったのだな、まぁ当然か、あの日焼けは私の能力のせいで」

 

 

チルノ『霊夢から聞いたんだけどお前って妖怪なのか?』

 

 

隠岐奈「妖怪じゃなくて神様ですよー…ってはあっ!?」

 

 

舞、里乃「ぶふっ…!?」プルプル

 

 

 

観客(ふふっ…!)プルプル

 

 

 

隠岐奈「お前は何を言っているんだ!? 最初に私は摩多羅神だと名乗ったのを聞いていなかったのか!?」

 

 

チルノ『いや聞いてたけどさ、お前が神様じゃなくて妖怪だって霊夢が言ってたからさ、気になった!』

 

 

舞、里乃「くふふっ…!」プルプル

 

 

隠岐奈「なっ…!? お、おい博麗の巫女! 私は神様だと二回も言ったんだぞ!? 忘れたのか!?」

 

 

霊夢『……』

 

 

隠岐奈「な、何故黙りを決め込む!? ほら、お前も私に質問しろ!」

 

 

霊夢『え? 質問して良いの?』

 

 

隠岐奈「さっきから質問して良いと言っているだろう? さぁほら、質問を」

 

 

霊夢『あんたって本当は妖怪なんでしょ?』

 

 

隠岐奈「妖怪じゃなくて神様ね♪ っておいぃ! 妖怪じゃなくて神様だと言っただろうが! これで三回目だぞ!?」

 

 

霊夢『ふふふっ…!』プルプル

 

 

 はーい!

 

 

隠岐奈「おっ! お前は…」

 

 

魔理沙『私も質問良いか?』

 

 

隠岐奈「もちろんだとも♪ お前は先の異変で私が認めた唯一の人間だからな♪ サービスだぞ♪ 深い質問でもいい、何でも答えてあげるよ」

 

 

魔理沙『いや、もう本当によ、お前に会ったときから気になってたんだ、異変が終わった後も気になって夜も眠れなかった、滅茶苦茶気になってるんだ…』

 

 

隠岐奈「そ、そこまで気になってくれていたのか…! なんか嬉しいぞ、やはりお前は見込みがあるな♪」

 

 

魔理沙『…答えてくれんのか? でも答えづらいと思うぜ?』

 

 

隠岐奈「大丈夫だ霧雨魔理沙、私はどんな質問でも答えてみせる、約束しよう」

 

 

魔理沙『そうか…じゃあ聞くぜ?』

 

 

魔理沙『隠岐奈、お前ってさ…』

 

 

 

 

 

 

魔理沙『妖怪なのか?』

 

 

隠岐奈「妖怪じゃなくて神様ですよー……!? って何回言わせるんだクルァ!!」

 

 

舞、里乃「はははっ!」

 

 

魔理沙『だっははは!!』

 

 

 

観客『あっはははは…!』ドッ 

 

 

 

隠岐奈「!? わ、笑うなっ! 笑うんじゃなーい!」

 

 

隠岐奈「わ、私は…/// うっ…! か、神様だ! 秘神なんだぞぉ! 摩多羅神なんだぞぉ! 信じろぉ!」

 

 

隠岐奈「あっ…/// うぅ…/// よ、妖怪じゃない! 妖怪じゃないんだからな! それだけは覚えておくんだぞ! ってかいつまでも笑うなぁ!」カァッ

 

 

隠岐奈「ぬぁぁ…! こ、こんな形で目立つ事になるとは…! やはり自分で自分の事を語った方が良かったか…?」

 

 

舞「だから僕言ったじゃないですか、お師匠様はお師匠様らしくした方が良いって」

 

 

隠岐奈「……むぅ…少し自信が無かったんだよ、摩多羅神なんて聞いたこと無いって人もいるだろうからって…」

 

 

里乃(お師匠様は優しい所があるんだけどなぁ…まぁこれから知っていってくれれば良いのかな?)

 

 

里乃「…今度博麗神社の宴会、参加しましょう?」

 

 

隠岐奈「そ、そうだな…」

 

 

隠岐奈(紫、今度お前の所に行くからな、神社への宴会…私も参加させてもらうぞ)

 

 

隠岐奈「里乃! 舞! か、帰るぞ!」スッ

 

 

 ギュン!

 

 

隠岐奈「だ、だが少しは目立つ事は出来た…か?」スッ

 

 

里乃「あっ! お、お師匠様! 待って下さい!」スッ

 

 

舞「あ、みんなバイバイ♪ これから私たちとお師匠様をどうぞよろしく~♪」スッ

 

 

 隠岐奈が出現させた扉の中に三人は消えて行った…

 

 

 

 

魔理沙「はは、ちょっと意地悪しすぎちまったかな」

 

 

霊夢「笑い者にさせちゃったからね…でも、あいつ目立つ為にここに来たんだろうからさ」

 

 

魔理沙「結果的に目立つ事が出来て良かったか?」

 

 

霊夢「そう思ってるかもね」

 

 

魔理沙「今度神社に来たときに謝っとくか」

 

 

霊夢「一応あいつもようか…神様だからね」

 

 

魔理沙(妖怪って言いかけたな)

 

 

 

 

 

 

 《秘密のゆかりんVIPルーム》

 

 

紫「はははっ! あっはははは!」ゲラゲラ

 

 

魅魔「お前さっきから笑いすぎだろ」

 

 

紫「だ、だって魅魔…! 見…! くふっ…! 見てたでしょ? あんなの笑うじゃない、あっはははは♪」

 

 

紫「隠岐奈…ぷふっ…! ははははっ…♪ はぁ~面白い♪」

 

 

菫子「ひ、秘神摩多羅って後戸の神様って言われてるあの摩多羅神の事ですか?」

 

 

魅魔「あぁそうだ、大物には違いないんだけどな…こいつと一緒みたいなもんだし」スッ

 

 

紫「ふっふふふ…!」

 

 

菫子「…?」

 

 

サリエル「……あの神、面白いわね…こっちに気付いていたし…」

 

 

菫子「えっ!? そうだったんですか?」

 

 

サリエル「…こっちを一瞬見ていたわ…まず気付いているわね……後ろの二人は気付いて無かったけど…」

 

 

エリス「それにチョー強そうだったな☆」

 

 

夢子「何故か紫殿と同じ様な気を感じましたね」

 

 

神綺「あ、私もだよ夢子ちゃん♪」

 

 

夢子「まだ魔界に帰ってなかったんですか?」

 

 

神綺「お母さん最後までいるからね!?」

 

 

菫子「紫さんと同じ…? ですか?」

 

 

魅魔「ん~…まぁそう捉えちまうのもしょうがないよな」

 

 

ドレミー「ですよねぇ、あの人も紫さんと同じ幻想郷を作った賢者の一人ですし」

 

 

菫子、神綺「えぇっ!?」

 

 

エリス「マジかよ☆ あいつパネェな☆」

 

 

サリエル「…パネェわね…クフフ…♪」

 

 

夢子「驚きましたね」

 

 

紫「まぁそれだけよ…腐れ縁よ腐れ縁」

 

 

魅魔「腐れ縁ねぇ…♪」

 

 

紫「何よ」

 

 

魅魔「お前らって結構仲良くないか?」

 

 

紫「そんなことありまっせーん♪」

 

 

魅魔「それに能力だってちょっと似てるだろ?」

 

 

紫「はぁ…!? ちょっと魅魔…! あいつと一緒にしないでくれない?」

 

 

菫子「えっと隠岐奈さん…でしたね、どんな能力なんですか?」

 

 

魅魔「あいつは『あらゆるものの背中に扉を作る程度の能力』だ、隠岐奈の作る扉は何処にでも移動できる、人の背中に扉を作ればそいつの潜在能力を目覚めさせたりできるのさ」

 

 

魅魔「因みに隠岐奈の部下、二童子である舞と里乃の能力…舞は『後ろで踊る事で生命力を引き出す程度の能力』で里乃は『後ろで踊る事で精神力を引き出す程度の能力』だったな」

 

 

菫子、エリス「へぇ~」

 

 

夢子「三人とも戦闘だとサポートに特化している様ですね」

 

 

魅魔「それは魔界人視点の話だろ? 幻想郷じゃ舞と里乃は賑やか担当、隠岐奈の能力は紫と似てるって事ぐらいしか思い付かねぇな」

 

 

紫「だから一緒にしないでって言ってるでしょ…! 私は境界、隠岐奈は『ちょっと便利な無限どこでも○ア』でしょ?」

 

 

菫子、ドレミー「ぷふっ…!」

 

 

魅魔「ふははっ…!」

 

 

夢子、神綺、エリス、サリエル「…?」

 

 

紫「あんなもんさぁ…えぇ? どこからどう見ても『どこでもド○』じゃない、私のスキマの足元にも及ばないオキえもんさんの能力よ、あいつのはいちいち扉を開かなきゃならないけどゆかりんのは直ぐよ? ギュオン! と開いて直ぐ届くのよ? 私の方がお手軽で早いの! だから一緒にしてはいけませーん♪」

 

 

紫「それにオキえもんはさぁ、目立ちたがり屋のバカちんなの、そこが私と全然違うところなのよねぇ♪ 空を自由に飛びたいなぁ~♪ とかあいつの目の前で歌っても『幻想郷住人の大半は飛べるじゃな~い♪』ってなるのよ? 歌ったこっちが虚しくなるのよ?」

 

 

菫子、ドレミー「あっははっ…!」

 

 

魅魔「ちょっ…! お、お前やめろ…! はっははは!」

 

 

紫「オキえも~ん! また藍に仕事を押し付けられちゃったよぉ! 四次元ドアから藍を懲らしめる何か道具を出してよぉ!」

 

 

紫「『しょうがないなぁゆかりんは♪ とっておきの扉を開いてやろうな! はーっはっはー♪』」

 

 

ドレミー、菫子「くふふふふっ…!」プルプル

 

 

魅魔「に、似すぎだろおまえっ…! あっはははっ!」プルプル

 

 

紫「オキえもんは不思議なドアで何でも叶えてくれるもんねぇ♪」

 

 

菫子、ドレミー、魅魔「んはははっ…!」ゲラゲラ

 

 

エリス「オキえもんってあだ名なん? オッキーナの方が可愛くね?」

 

 

神綺「私はマッキーナの方が可愛いと思うなぁ♪」

 

 

サリエル「…私はラッキーナを推すわ…」

 

 

夢子「なんとかッキーナから離れた方がよろしいかと」

 

 

紫「……」

 

 

紫(隠岐奈、空気は読める奴…そこだけ、うん、そこだけはゆかりん認めてあげてるわ)

 

 

紫(威光云々を語って目立つよりかは宴会に参加した方が目立つと思うんだけどねぇ…)

 

 

紫(ふふっ…隠岐奈? せっかく表に出て来たのならあなたの好きなようになさい、あなたはそれぐらいでちょうどいいんだから…♪)

 

 

 

 

 

【演目その六 ~秦こころ(能楽)希望の面の在処~】

 

 

 

秦こころ「希望の面は、我と共にあり…」スッ

 

 

こころ「これからも共に…歩みを進めん…」

 

 

こころ「万一…再び我が手元から離れんとしたとき…」

 

 

こころ「我、ひと度…道端の小石に目を向け…共に希望を探し出そうとせん…!」

 

 

こころ「はるかなる場に居ようとも…我は小石と共に希望を求めよう…何時か…必ず…!」スッ

 

 

 ポポン…!

 

 

 

こころ「……」スッ

 

 

こころ「…」ペコッ

 

 

 

 パチパチパチパチ!!

 

 

こころ「ありがとう…!」ペコッ

 

 

 

 こころに客席から大きな拍手と、大きな歓呼の声が上がった。

 

 

 能楽に用いられた能楽囃子の楽器を担当した四人の者たちにも同様に客席からの歓声を受ける。

 

 それぞれ太鼓の雷鼓、小鼓の八橋、大鼓の弁々、笛のメルラン、彼女たちの活躍も称賛を受けた

 

 

こころ「おぉー、歓声が凄いな」

 

 

こころ「これが歓声を浴びて嬉しい時の表情…♪」スチャッ

 

 

 

 

 

 

 

古明地こいし「わぁ~♪ あははっ! こころちゃん嬉しそう♪」

 

 

古明地さとり「……ふふっ…♪」

 

 

霊烏路空「さとり様? どうしたんですか?」

 

 

さとり「お空、こころさんの能を観て如何でしたか?」

 

 

お空「うにゅ? う~ん…難しい事は私には分からないんですけどとにかく凄いなぁと思いました!」

 

 

さとり「そうですね、私もそう思います」

 

 

お空「お~♪ やった♪ さとり様もおんなじだ♪」

 

 

さとり「…♪」

 

 

さとり(道端の『小石』を求める…ですか、ふふっ…♪)

 

 

さとり(こころさん…これからも私の妹をよろしくお願いします)

 

 

こいし「面白かったね♪ お姉ちゃん、お空♪」

 

 

お空「はい! とっても面白かったです!」

 

 

さとり「えぇ、とってもね…♪」

 

 

 

 

豊聡耳神子「素晴らしい…! 見事だったぞ、こころ」

 

 

聖白蓮「今回も明媚でたおやかな能でしたね、こころ、お疲れ様でした」

 

 

聖「しかし…あの面のデザインは何とかならないのですか?」

 

 

神子「何を言う、希望に満ち溢れた美しい面だろう」

 

 

聖「美しい…? あなたの顔から生気が抜け出た様なデザインのあの面がですか?」

 

 

神子「生気に重点を置いて作っている訳では無いからな、希望があればそれで良いのだよ、はっはっは♪」

 

 

聖「こころの気持ちを考えなさい、あの面を持って人里を大手を振って歩けますか?」

 

 

神子「私は歩けるぞ? 私も歩けるということは、こころも歩けると言うことだ、私はあの子の親だからな♪ はっはっは♪」

 

 

聖(相変わらず自己完結の激しいこと、こころから直接聞いた事はあるんでしょうか)

 

 

 

 

屠自古「ふっ…♪ 頑張ったな、こころ」

 

 

布都「こころ殿の能はいつ観ても甘美な気持ちになるのぅ♪ 思わず見入ってしまうのじゃ♪ 雷鼓殿たちの囃子も見事だったぞ」

 

 

サグメ「そうだな、彼女の能楽も素晴らしい物があったが雷鼓達の囃子…舞台の演者の邪魔にならないように音量を控え目に、柔らかく演奏していた様に聴こえたよ」

 

 

布都「お、おう…わ、我もそう思っておったぞ!」

 

 

屠自古「お前絶対分かってないだろ」

 

 

布都「二回も言うでないわ屠自古ぉ!」

 

 

サグメ「ふふっ…♪」

 

 

サグメ(古くからある伝統の芸の型を守り、演じ、伝えて行く、その姿勢は見習いたい物だな…月では次々に新しい物が造られるから古い物は直ぐに排除されてしまう)

 

 

サグメ(気持ちが入っていたり、想いがこもっていたりすると古い物でも違って見えて来るのかもしれないな)

 

 

 

 

 

【演目その七 ~鳥獣伎楽と地獄に行こうぜ!~】

 

 

 

ミスティア「イエェーイ!!」

 

 

響子「おっはよーございまぁぁーーす!!」

 

 

 ゴォォォ!

 

 

観客(!?)

 

 

 黒いパンクファッションの服に身を包み、サングラスをかけた二人が会場に派手にシャウトする。

 

 

 

ミスティア「またの名を寺子屋の生徒ミスティア…またの名を屋台の女将、おかみすちー…そしてまたの名を…!」

 

 

ミスティア「パンク・ロックバンド鳥獣伎楽のギター担当のミスティア・ローレライなんだぜぇ! イエェーイ!!」

 

 

響子「ぎゃ~て~ぎゃ~て~♪ 命蓮寺ではでかいシャウトは禁じられてるけど朝の挨拶は何故か禁止されないのが最近の不思議! ボーカル担当の幽谷響子なんだぜぇ! イエェーイ!」

 

 

ミスティア「イエェーイ!!」

 

 

響子「はい皆さんご一緒にぃ!」

 

 

ミスティア、響子「イエェーイ!」

 

 

 

観客「い、イエェーイ!!」

 

 

 

響子「サンキュー!」

 

 

ミスティア「サンキュー! ……これから、鳥獣伎楽のライブを始めるけど今回はちょっとしたコラボって奴をやってるんだよね、ボーカルの人を一人増やしてるんだぜ!」

 

 

響子「この日の為だけのスペシャルコラボって奴だぜ! みんなぁ! 楽しんでってくれよぉ!」

 

 

ミスティア「それじゃあ河童のみんなぁ! 暗転よろしくぅ!」

 

 

 カチッ!

 

 ざわざわ…! ざわざわ…!

 

 

 

??「……今回ボーカルを担当させてもらってありがたく思ってるわよん♪ パンク・ロックバンドに地獄を足したら?」

 

 

ミスティア「そりゃあもう地獄の中の地獄だぜぇ!」

 

 

??「変なTシャツ? はっ! 地獄のファッション舐めんじゃないわよん!!」

 

 

響子「ウェルカム・トゥ・ザ!」

 

 

 

 カチッ!!

 

 

 

??→ヘカーティア・ラピスラズリ「ヘルアンドヘェェル!」

 

 

ヘカ、響子、ミス「イエェーイ!!」

 

 

 

 

観客「えぇー!?」

 

 

 

 

ヘカーティア「曲のタイトル言っちゃってぇ!」

 

 

響子、ミスティア「『ファニーTとは言わせねぇ!』」

 

 

ヘカーティア「盛り上がっていくわよん♪」

 

 

響子、ミスティア「ワン・ツー・スリー! イェーイ!」

 

 

 ジャカジャーン!! ~♪ ~♪

 

 

 ワー! ワー!

 

 

 

 

 

 

東風谷早苗「へ、変なTシャツヤローさん…」

 

 

八坂神奈子「ははっ! 面白いな、あの地獄の女神がロックバンドでボーカルをやるとは、結構周りも盛り上がっているじゃないか」

 

 

洩矢諏訪子「でも今回だけなんだろ? ずっとやってくれないと面白くないじゃん?」

 

 

神奈子「どうだろうな、三位一体のヘカテー神…体の一つは幻想郷の住人、これの評判が良かったら続けていくかもしれないぞ?」

 

 

諏訪子「お、だとしたらファンになってやっても良いね♪ ああいうの外の世界に居たときにちょっと聴いてたから懐かしくてさ」

 

 

早苗「ファン…!? やめましょうよ、あの変なTシャツが流行りでもしたらどうするんですか!」

 

 

早苗「大体曲名の『ファニーTとは言わせねぇ』って…ファニーっておかしな…って意味でしたよね、自分で認めちゃってる時点でもう常識が」ブツブツ

 

 

神奈子「早苗、人の趣味にケチは…いや、それよりもそのTシャツ嫌いはなんなのだ」

 

 

諏訪子「早苗はおちゃらけた服装が好きじゃないからね♪」

 

 

神奈子「私はそうは思わないのだが」

 

 

早苗「神奈子様! そう思っていただかないとあの変なTシャツを着ることになるかも知れませんよ!?」

 

 

神奈子「う、うん!?」

 

 

諏訪子「あの服を神奈子が着てたら絶対笑う自信あるなぁ♪」

 

 

 

 

 

純狐「キャー♪ ティアー! カッコいいわよー!」

 

 

クラウンピース「えぇー!? うっそぉ!?」

 

 

クラウンピース(ノリノリで歌ってるけど曲名ダサすぎでしょ!? Tシャツが益々変に見えて来るじゃん! ご主人様そういうの分かんないのかな)

 

 

純狐「ほら、クラウンピースも立って立って! ティアの事を応援しましょ♪」

 

 

クラウンピース「えぇ!? あ、あたいもですか!?」

 

 

純狐「だってティアがあんなに頑張っているのよ? 応援しなきゃ! ね?」

 

 

クラウンピース「は…はい…」

 

 

クラウンピース(友人様も気付いて! あの歌が広まれば広まる程ご主人様の『変T度数』が上がるんですってば!)

 

 

 

 

サグメ、布都「!?」

 

 

布都「さ、サグメ殿…」

 

 

サグメ「あ、あぁ…」

 

 

サグメ(ヘカーティア・ラピスラズリ…幻想郷に居着き、馴染み始めたとは聞いていたがまさかここまで…いや、今問題なのはそれではない)

 

 

サグメ「布都…あのギターとか言う楽器を担当しているのは前に私が幻想郷に来た時、貴方達と共に世話になったあの屋台の女将…なのか?」

 

 

布都「そ、その筈じゃ…し、しかしあの豹変ぶりは…本人とは思えぬな」

 

 

サグメ「音楽をやっていると聞いたのは記憶しているがこんなに激しい物だったとは…丸で爆音の様だな」

 

 

屠自古「すげぇよなあの女将…演奏しているときだけタガが外れると言うかなんと言うか…それでも本人なのは変わらないんだけどな」

 

 

サグメ、布都「そ、そーなのかー…」

 

 

サグメ(音楽は人の心でさえ変えてしまうのかもしれないな…それほど打ち込めているとも捉えられるか)

 

 

サグメ(私も…いや、あそこまで豹変するのは流石に無い、か)

 

 

 

 

 

 

【最終演目 ~?????~】

 

 

 

椛「皆様、幻想郷フェスティバルはお楽しみいただけているでしょうか! 先の鳥獣伎楽&地獄の女神は大いに会場を盛り上げてくれましたね! 客席の皆さんの熱気がこちらにも伝わって来るほどでした」

 

 

椛「宴も酣ですが、始まりもあれば終わりもあるものです…次の演目が最終演目となります」

 

 

椛「最終演目では皆様に癒しをお届けする演目になります…! え? どんな癒しなのかですか?」

 

 

椛「ふふっ…♪ それは楽器を担当する四人の方達曰く…」

 

 

椛「可愛さ! だそうです! それでは! 演目のラストを飾ってくれるのはこの方々です!」

 

 

椛「異色の音楽ユニット! ホリズムリバーミア!」

 

 

 

 パチパチパチパチ!!

 

 

 

 舞台袖からルーミア、雷鼓、プリズムリバー三姉妹が出てくる。 

 

 五人の口元には河童達が作った小型のマイクが着けられている。

 

 

 

 

布都「ぬおっ!? サグメ殿!」

 

 

サグメ「! ルーミア、雷鼓…!」

 

 

 

 

 

 

ルーミア「わはー♪ 私が最後に出てきてびっくりしたかー?」

 

 

雷鼓「ふふっ♪ 驚いてくれたかしら、サプライズのつもりだったんだけど」

 

 

リリカ・プリズムリバー「みんなは私たち姉妹と雷鼓さんのユニット、ホリズムリバーは知ってると思うけどルーミアの登場は予想出来なかったでしょ♪」

 

 

ルナサ・プリズムリバー「驚いてくれないとやる気が無くなるから驚いてほしいんだよね…」

 

 

メルラン・プリズムリバー「『わーっ!』とか『えぇーっ!?』みたいなのがほしい! ってか下さい!」

 

 

リリカ「こらぁ! 暗くなるのと催促は禁止だよ!」

 

 

雷鼓「ふふっ♪ えっとね? 私たちが最終演目の担当になったわけだけど何をするのか…これをまずは話しておくわね」

 

 

雷鼓「私たちホリズムリバーは演奏を、そしてこのルーミアちゃんが歌を歌うの、歌詞はもちろんオリジナルよ♪ 歌詞は私とルーミアちゃんで考えたの♪」

 

 

 

観客「えぇ!?」

 

 

 

ルーミア「そーなのだー♪」

 

 

ルナサ「あ、驚いてくれたわ…!」

 

 

メルラン「なんかやる気出てきたわ…!」

 

 

リリカ「失敗云々言ってたのが嘘の様だね…二人のスイッチ入ったよ、雷鼓さん」

 

 

雷鼓「良し! 準備は良いかしら?」

 

 

リリカ「うん!」

 

 

メルラン、ルナサ「オッケー!」

 

 

 ルナサはヴァイオリン、メルランはトランペット、リリカはキーボード、雷鼓は和太鼓を構える。

 

 

ルーミア「……」

 

 

ルーミア(サグメ…布都…チルノ達みんなも…観てくれてるなー…少し不安だなー)

 

 

雷鼓「…! ルーミアちゃん」

 

 

ルーミア「!」

 

 

雷鼓「…大丈夫…♪ 行くわよ?」ニコッ

 

 

ルーミア「! …わはー♪」ニコッ

 

 

ルーミア「それでは聞いてほしいのだ! 曲名は…」

 

 

ルーミア『7の付く日は7日なのかー♪』

 

 

 

 

 

 ~♪ ~♪

 

 

ルーミア『ふんふんふ~ん♪ ふんふんふ~ん♪』

 

 

ルーミア『7日~なのかー♪ そーなのかー! 7日~なのかー♪ そぉーなのかー!』

 

 

ルーミア『7日なのかそーなのかー? そーなのかーったら7日なのかー! 7日の日では無かったとしても7の付く日7日なのかー!』

 

 

ルーミア『7日~なのかー♪ そーなのかー! 7日~なのかー♪ そぉーなのかー!』

 

 

雷鼓『7日なの~? そうなの~?』

 

 

ルーミア『そーなのだー♪』

 

 

リリカ、メルラン、ルナサ『わはー♪』

 

 

ルーミア『疑ってるなら教えてやるのだ♪』

 

 

雷鼓『大見得切って言っちゃって♪』

 

 

ルーミア『7日であろう! そうであろう!』

 

 

ルーミア『そーなのだー♪』

 

 

雷鼓、ルナサ、メルラン、リリカ『わはー♪』

 

 

ルーミア『そうなの~? って私が言ったな~♪』

 

 

メルラン『ちょっと待って~♪ おかしくない?』

 

 

リリカ『17日も7日なの~?』

 

 

ルナサ『27日も7日なの~?』

 

 

雷鼓『これに対してルーミアちゃん♪』

 

 

ルーミア『…7日ではない…そうではない』キリッ

 

 

雷鼓、ルナサ、メルラン、リリカ『えっ…』

 

 

ルーミア『……』

 

 

ルーミア『わはー♪ 嘘なのだー♪』

 

 

雷鼓、ルナサ、メルラン、リリカ『そうだったのかー♪』

 

 

五人『わはー♪』

 

 

ルーミア『7日~なのかー♪ そーなのかー♪ 7日~なのかー♪ そぉーなのかー♪』

 

 

ルーミア『7日なのだそーなのだー♪ そーなのだーったら7日なのだー♪ 7日の日では無かったとしても7の付く日7日なのだー♪』

 

 

ルーミア『毎月~♪ 7日~の日は自ずと~♪ やってく~るのだ何故なら~♪ 7の付~く日は』

 

 

ルーミア『7日だ~から~な~♪』

 

 

五人『わはー♪』

 

 

 

 ~♪ ~♪

 

 

 

 

 

 パチパチパチパチ!! パチパチパチパチ!!

 

 

 ワー! ワー!

 

 

 

 

ルーミア「! わはー♪ ありがとうなのだー!」

 

 

雷鼓「ふふっ♪ ありがとう! ありがとうね♪ みんな!」

 

 

ルナサ「ほぁぁ…! う、歌えたぁ…!」

 

 

メルラン「リリカ私生きてる!? ちゃんと歌えてた!? 演奏出来てた!?」

 

 

リリカ「出来てたから! 大成功だったから!」

 

 

雷鼓「大丈夫よ、ルナサ、メルラン…♪ ほら、みんなの拍手と歓声が聞こえるでしょ♪」

 

 

ルナサ、メルラン「!」

 

 

ルーミア「みんなの演奏があったから歌えたんだぞー♪ 本当にありがとなのだー♪」

 

 

リリカ「! ふふっ♪ ありがとね♪ ほら、姉さんたちも素直に喜ぼうよ、ね♪」

 

 

ルナサ「…ちょっとだけ歌を歌うなんて雷鼓さんから聞かされたときは不安だらけだったけど…ここまで拍手されちゃあね♪」

 

 

メルラン「喜ばない訳にはいかない…わね♪」

 

 

リリカ「! そうだよ、二人とも♪」

 

 

雷鼓「ふふっ♪」

 

 

ルーミア「わははは♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「あはははっ! な、なんか…! ふっはは…! なんか良いな、あの歌」

 

 

霊夢「中毒性あるわよね、歌詞が」

 

 

咲夜「確かにね、それに…まぁ可愛かったわ、お嬢様には負けるけど♪」

 

 

みとり「わぁ~♪ 可愛い歌だったなぁ、リズムも何もかもが可愛かったよ~、ルーミアちゃんって可愛いね♪」

 

 

にとり「可愛いってのは認めてあげても良いんだけどねぇ…私に変なあだ名を着けなきゃ可愛いのにねぇ…やれやれだよ」

 

 

魔理沙「7日~なのかー♪ ってか?」

 

 

霊夢、咲夜、にとり、みとり「ふふふふっ…!」プルプル

 

 

魔理沙「あ、やべぇ、なんかはまりそうだぜ」

 

 

霊夢(そーなのかー? なんてね♪)

 

 

 

 

 

 

サグメ「……」

 

 

布都「おぉ~、はははっ! ルーミアのやつめ~♪ 可愛いではないか♪ 雷鼓殿も和太鼓の演奏だけではなく歌うとは思いもせんかった…! いやぁ、見事な歌であったの♪」

 

 

屠自古「ふっ…♪ お前の口癖も歌に取り込んでたしな」

 

 

布都「口癖? なんのことじゃ?」

 

 

屠自古「そうであろう! って言ってたじゃんよ」

 

 

布都「ぬ? いや、あれは我の口癖では無いぞ?」

 

 

屠自古(自覚ねぇのかよ…)

 

 

布都「サグメ殿、サグメ殿は…ぬ!?」

 

 

屠自古「どうし…うん!?」

 

 

サグメ「…」ツー

 

 

布都「さ、サグメ殿…!? どうしたのじゃ!?」

 

 

サグメ「! ふ、布都…? な、何がだ…?」

 

 

屠自古「何がって、それだよ…!」スッ

 

 

 屠自古はサグメの目を指差す

 

 

サグメ「? ……えっ?」スッ

 

 

 サグメは自分の目元に指を這わせた

 

 

サグメ「…? こ、これは…」

 

 

布都「泣いておるのか? サグメ殿…」

 

 

サグメ「い、いやそんな…おかしいな…なぜ涙が」

 

 

屠自古「きっと感極まったんだろうな」

 

 

サグメ「!」

 

 

屠自古「嬉しいとか感動したとか、そういうのが一気に来ちまったから胸がいっぱいになったんよ、きっと」

 

 

サグメ「…!」

 

 

サグメ「そうか…そういうことか」

 

 

サグメ「雷鼓の演奏…そしてルーミアの歌…初めて出来た友の舞台を見た…それだけで心が凄く熱くなるのを感じた」

 

 

サグメ「他の演目では無かった、特別な感情だと思う」

 

 

布都「さ、サグメ殿、我もサグメ殿と同じ気持ちじゃぞ! な、涙は出んかったが…」

 

 

屠自古「良いんだよ別に涙なんか無理して流さなくて、捉え方は人それぞれなんだからな…それにお前は幻想郷にまだ馴染んでねぇんだから余計だろうよ」

 

 

サグメ「そうだな……布都」

 

 

布都「う、うむ?」

 

 

サグメ「捉え方は違うが私と貴方は同じ気持ちだ、雷鼓とルーミアの演目に感動した…それだけで私も嬉しいよ、布都」

 

 

布都「! サグメ殿…」

 

 

屠自古「…♪」ニコッ

 

 

サグメ「ふふっ♪」ニコッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【幻想郷フェスティバル、閉幕!! 14:30】

 

 

 舞台には隠岐奈と二童子を除く演者達が集まっていた

 

 

 

椛「幻想郷住人の皆様! 本日はお集まりいただきありがとうございました! またこの日の為に準備をしてくださった関係者の方々、本当にありがとうございました!」

 

 

椛「おかげさまで本日は客席は満員御礼となり、盛大に楽しいフェスティバルを開催することが出来ました、皆様、今一度、演者の方々に大きな拍手を!」

 

 

 パチパチパチパチ!!

 

 

椛「それではこれにて…! 第一回! 幻想郷フェスティバルを閉幕させていただきます! 本日は本当にありがとうございました!」

 

 

 

 パチパチパチパチ!!

 

 

 

 

 【閉幕後 人里、娯楽場】

 

 

 こうして幻想郷フェスティバルが終了した

 

 

 演者、観客たちは、それぞれが自分に関わりのある者の側へと歩み寄っていた

 

 

 

パチェ「……」

 

 

レミリア「あら♪ どうしたのパチェ」ツヤツヤ

 

 

パチェ「…楽しかった?」

 

 

レミリア「えぇとっても♪ 私のカリスマがまたレベルアップするほどにね! あっはっは♪」ツヤツヤ

 

 

パチェ「そう…なら帰りましょう」スッ

 

 

レミリア「…? ねぇ、何でパチェあんなに元気が無いの?」

 

 

フラン「自分の胸に手を当てて考えてみたら…? お姉さま…」

 

 

こあ「あはは…」

 

 

レミリア「? あれ、咲夜は?」

 

 

美鈴「まだ霊夢さんたちと一緒にいるんじゃないですかね」

 

 

パチェ「友達と一緒にいるんだから邪魔しちゃダメよ、レミィ」

 

 

レミリア「わ、分かってるわよ」

 

 

 

 

 

穰子、静葉「 」プシュー

 

 

メディ「まだ気絶してるね」

 

 

リリー・W「何で秋さんたち気絶してるですよー?」

 

 

華扇「? 覚えていないのですか?」

 

 

リリー・W「ほぇ? 何をですよー?」

 

 

レティ「覚えていないのもいつもの事なのよ」

 

 

幽香「変身の副作用なんでしょうね」

 

 

リリー・W「ほー?」

 

 

 

 

 

 

 

咲夜「? あら、にとりは?」

 

 

霊夢「ん、照明とかの片付け手伝ってくるんだって」

 

 

咲夜「あぁ…大変ね、色々と」

 

 

アリス「ふふっ、みとり、どうだった? 楽しんでくれたかしら?」

 

 

みとり「はい! 種族を越えた愛の物語…! とっても感動しました!」

 

 

アリス「! はぁ良かったわ♪ 観てくれてありがと、みとり」

 

 

アリス「あなた達はどうだった? 私の人形劇♪」

 

 

霊夢「! な、内容は…お、面白かったわよ」

 

 

咲夜「えぇ…と、とても…私も感動したわ…」

 

 

アリス「そう♪ 良かった♪」

 

 

魔理沙「…」

 

 

アリス「んふふふふっ♪ 魔・理・沙♪」

 

 

魔理沙「…何ですか」

 

 

霊夢、咲夜「ふくっ…!」プルプル 

 

 

アリス「どうだった私の人形劇♪ 良かったでしょ?」

 

 

魔理沙「そうですね、内容は面白かったですね」

 

 

アリス「な、何で敬語なの?」

 

 

魔理沙「敬語をやめてしまうとですね、その人形のデザインの事について言及しそうになるんですよ」

 

 

アリス「あ! スリアとサリマの事? これはねぇ♪ んふふふっ♪ 私とあなたを」

 

 

霊夢、咲夜「アリスぅ!」

 

 

アリス「な、何よ!?」

 

 

霊夢「今日ぐらい暴走は控えなさいよ!」

 

 

咲夜「こっちは疲れてるし、みとりだって居るんだからね!?」

 

 

アリス「疲れてる? そんなもので私の愛は止まらないわよ!? ふふっ!」

 

 

霊夢、咲夜「さらっとふふっ、じゃないわよ!」

 

 

みとり「ふふふふっ…♪」

 

 

 

 

 

 各々がフェスティバルでの思い出を語らい、話に花を咲かせ、演目が終わった後でも会場は賑わいを見せていた

 

 

 

 そして時が過ぎ、日が沈み始めた頃

 

 

【人里、娯楽場 16:30】

 

 

 ギュオン…!

 

 

紫「よっ…! ふぅ…」

 

 

紫「はぁ~♪ 楽しかったわねぇ♪ やっぱり娯楽場を作って正解だったわ」

 

 

紫「これからもここで演目をやっていったりするのかしらね♪ 第二回! 幻想郷フェスティバル! な~んちゃって」

 

 

八雲藍「また何を一人で喋ってるんですか?」

 

 

紫「? あら、藍じゃない♪ 橙は一緒じゃないの?」

 

 

藍「『藍じゃない♪』じゃありませんよ! 朝からマヨヒガに居なかったから心配してたんですよ? それと橙はチルノ達ともう帰りました」

 

 

紫「あらら…皆を帰すのに時間掛かっちゃったわね、てか心配されるほどゆかりん弱っちい妖怪じゃないわぁ♪」

 

 

藍「…? 今まで何処に居たんですか?」

 

 

紫「VIPルームで観てたのよ、場所の話をするなら私はずっと娯楽場に居たことになるわねぇ♪」

 

 

藍「スキマの中で観てたんですか?」

 

 

紫「えぇ、ほら…魅魔とかと一緒にいたから」ヒソヒソ

 

 

藍「! あぁなるほど…察しました」

 

 

紫「話が早くて助かるわねぇ♪」

 

 

藍「ですがその前に私に一言言ってから行くか、手紙でも書いておいてくれれば、とは思いますね」

 

 

紫「…」ジトッ

 

 

藍「『何この九尾めんどくさい』みたいな目で見るのをやめなさい!」

 

 

紫「あ、伝わるのね」

 

 

藍「少しは大人として普通の事をしてくださいよ!」

 

 

紫「ほら、私って十七歳の時と二十歳の時があるじゃない? その差が最近激しいのよね♪ 少女になったり大人になったりで忙しいのよねぇ♪」

 

 

藍「千七百とか二千の間違いでしょう!?」

 

 

紫「はぁ!? 何をまた失礼ぶっこいちゃってくれ……!!」

 

 

藍「……? 紫様?」

 

 

紫「シッ…!」

 

 

藍「…? 何を…」

 

 

紫「良いからちょっと黙ってて…」スッ

 

 

紫(にとり達の片付けはまだ続いてて人妖がたくさんいる、舞台袖に居るのは…)

 

 

紫(……考え過ぎかしら…でも万が一って事もある…側に輝夜が居るから言いそうね…鈴仙達と一緒に帰って無かったの?)

 

 

紫(ちょっとスキマで声を聞いてみましょうか)スッ

 

 

 

 ギュオン…!

 

 

 

 

【舞台袖】

 

 

 

ルーミア「んおー? 輝夜は何でまだここにいるのかー? 永琳たちはもう帰ったみたいなのだ、一緒に帰らなくて良かったのかー?」

 

 

蓬莱山輝夜「ほら♪ サグメの帰りの付き添いよ、永遠亭には私が送って行くことにしたの♪」

 

 

ルーミア「おー、そーなのかー」

 

 

輝夜「そーなのよー♪」

 

 

ルーミア、輝夜「わはー♪」

 

 

輝夜(……ふふっ♪)

 

 

雷鼓「…輝夜さん」

 

 

輝夜「ふふっ、大丈夫よ♪ 私に任せて♪」

 

 

雷鼓「…ありがとう」

 

 

ルーミア「…?」

 

 

リリカ「この人たちが雷鼓さんが言ってたサグメさんと布都さん?」

 

 

雷鼓「そうよ♪」

 

 

リリカ「そうなんですね♪ 初めまして、私はリリカ・プリズムリバー、こっちの二人は私の姉さんたち、髪が白い方がメルラン姉さん、金髪の方がルナサ姉さんよ、種族は……騒霊だって言われたっけ」

 

 

布都「聞いておったが、三姉妹だそうじゃの」

 

 

リリカ「はい♪」

 

 

布都「そうか、我は物部布都、尸解仙じゃ♪ よろしくな♪」

 

 

サグメ「稀神サグメ、月の民だ、よろしく頼む…あなた達の演奏を聞いたよ、とても素敵だっ」

 

 

ルナサ、メルラン「おぉ~…」

 

 

サグメ「! な、何だ?」

 

 

メルラン「姉さん、この人翼が生えてるよ、凄く羨ましいんですけど」

 

 

ルナサ「なんか色々といじったらビジュアル系の音楽家になりそうね…カッコいいと思うわ」

 

 

サグメ「ビジュアル…?」

 

 

リリカ「あぁ無視して下さい、演奏終わりはこんな感じなんで…」

 

 

リリカ「てか姉さんたち、布都さんにも興味持ちなよ」

 

 

ルナサ「何で?」

 

 

リリカ「何で!? ほら、初対面でしょ?」

 

 

メルラン「えと…紫外線さんでしたっけ?」

 

 

布都「なんじゃそれは!? 我は尸解仙であるぞ!」

 

 

メルラン「あ~…要するに不死の仙人さんなんですよね?」

 

 

ルナサ「全然珍しくないよね、不死の人とか仙人とか幻想郷にごろごろいるし」

 

 

布都「んなっ…!?」

 

 

メルラン「そんなことよりもサグメさんでしたよね! カッコいいです! その翼が!」

 

 

ルナサ「…良いなぁ、その翼があればリリカより人気でそう、少しくれませんか?」

 

 

サグメ「い、いや、これはあげられる物では無いのだ」

 

 

ルナサ、メルラン「……」ジーッ

 

 

サグメ「うっ…!」 

 

 

リリカ「姉さんたち、私怒るよ? 演奏終わりだからって初対面の人を困らせるのはダメだよ!」

 

 

ルナサ「…ごめんね、わーかってはいるんだけどさぁ…」

 

 

メルラン「テンションが上がったりー! 下がったりー…! でこっちも忙しいのよね」

 

 

リリカ「二人とも本当にごめんなさい…!」

 

 

布都「お主大変じゃな…しかしこれも音楽家の感性と言う物なのであろう?」

 

 

サグメ「そー…なのであろうか」

 

 

雷鼓「ルナサとメルランは演奏しちゃうとビートのボルテージの浮き沈みが激しいのよね♪」

 

 

リリカ「雷鼓さん、それもっと分かりにくくなりますって」

 

 

ルーミア「そーなのかー?」

 

 

雷鼓「そーなのよー♪」

 

 

雷鼓、ルーミア、布都、サグメ「わはー♪」

 

 

サグメ「ん…!」

 

 

布都「おっ! 不意打ちでやられてしまったの♪」

 

 

雷鼓「ルーミアちゃんが居ると和むわねぇ♪」

 

 

ルーミア「わはは♪ サグメも上手くなってきたなー♪」

 

 

サグメ「ふふっ…♪ ルーミアが良くやってくれるからな…♪」

 

 

輝夜(…♪ サグメ楽しそうね、たぶんこの流れだと他のみんなと同じ様な展開になるわね、永琳を先に帰らせておいて良かった♪)

 

 

リリカ「仲良しですね…」

 

 

ルナサ「私達もああいうのほしいよね、三人で気合い入れるみたいな掛け声」

 

 

メルラン「メルランバンザーイ! で良くない?」

 

 

リリカ「メルラン姉さんふざけてるだけだよね? マジで言ってる訳じゃないよね?」

 

 

サグメ(……)

 

 

サグメ(しかし…さっきから気になるな)

 

 

サグメ(プリズムリバー三姉妹…遠くから見ていた時は分からなかったがこの者達から感じる気は何だ?)

 

 

サグメ(三人居るのにも関わらず一人の気しか感じられない…そしてその気は、リリカ、メルラン、ルナサの三人の物では無い)

 

 

サグメ(リリカは自分たちは騒霊と言っていた…騒霊は幽霊とは違う、亡霊と同じならば気配も感じない筈なのだが)

 

 

サグメ(……)

 

 

ルーミア「んおー? サグメー?」

 

 

サグメ「! …ん?」

 

 

ルーミア「どうしたのだー? なんか難しい顔してたぞー?」

 

 

サグメ「! ……ふふっ♪ 何でもないよ、ルーミア」

 

 

ルーミア「そうかー? なら良いけどなー♪」

 

 

サグメ「……」

 

 

サグメ(よそう、変な考えを張り巡らすのは)

 

 

 

 

布都「そう言えば雷鼓殿、話ってなんなのじゃ?」

 

 

サグメ「私にもあると言っていたな…雷鼓」

 

 

雷鼓「えぇ、実は演目の参加者の人達ってみんなそれぞれの場所で今回のフェスの打ち上げをしているの」

 

 

布都「打ち上げとな?」

 

 

サグメ「宴会の事か…?」

 

 

雷鼓「そう、ミスティアちゃん、響子ちゃん、八橋、弁々…こころちゃんとその保護者さんたちはミスティアちゃんのお店で打ち上げを…その他の人達も色々な場所で宴会をしているでしょうね」

 

 

リリカ「博麗神社が大半なんじゃないかな」

 

 

ルーミア「賑やかだろーなー♪ チルノ達も行ってるかな♪」

 

 

雷鼓「そこで私達も打ち上げをすることになったの…なったんだけど…」

 

 

サグメ、布都、ルーミア「?」

 

 

雷鼓「……ここからは私の勝手な我が儘…リリカたちには話して了承を得ているわ、話の内容はここからなんだけど」

 

 

雷鼓「ルーミアちゃん、布都さん、サグメさん…あなたたちもこの打ち上げに参加してほしいの、場所はリリカ達の家でもあるプリズムリバー邸」

 

 

サグメ、布都「!!」

 

 

雷鼓「本当はみんなで博麗神社に行っても良かったんだけど…今回は静かに打ち上げをしたい気分なのよね」

 

 

リリカ、メルラン、ルナサ「……」

 

 

ルーミア「! 雷鼓! 私は雷鼓達と一緒に打ち上げしたいのだ」

 

 

雷鼓「でも良いの? 博麗神社の方がお友だちがたくさん」

 

 

ルーミア「雷鼓達だって友達なのだ! それに…! サグメもいるからな…!」

 

 

サグメ「…!」

 

 

雷鼓「…ありがとう、ルーミアちゃん♪」

 

 

布都「……雷鼓殿、その申し出嬉しく思うぞ、我もその打ち上げには参加したいと思うておる、太子様と屠自古ならこころ殿と一緒におるから心配無用じゃしな」

 

 

雷鼓「布都さん…ありがとう♪」

 

 

布都「じゃがサグメ殿は…」

 

 

サグメ「! ……」

 

 

雷鼓「……サグメさん」

 

 

ルーミア「サグメ…」

 

 

サグメ「……」

 

 

ルナサ「宴会…まぁ打ち上げに参加するって事は一日参加が普通なのよ」

 

 

メルラン「月ではどうか分からないけどさ、幻想郷じゃこれが普通なんだよね」

 

 

リリカ「でもサグメさんは月の民で夜には帰らないといけないとか…そういうのあるんでしょ?」

 

 

サグメ「私は……」

 

 

輝夜「…」

 

 

サグメ(滞在期間は今日の夜まで…劇を観るだけだからだと夜までにしてしまった、これを破れば豊姫、依姫、レイセンに責任が…)

 

 

サグメ「……」

 

 

雷鼓「……ごめんなさいサグメさん、無理にとは言わないわ」

 

 

ルーミア「で、でも雷鼓!」

 

 

雷鼓「ルーミアちゃん、こればっかりは…」

 

 

ルーミア「っ…!」

 

 

布都「サグメ殿…」

 

 

サグメ「……」

 

 

輝夜「…」

 

 

ルナサ「雷鼓さんから聞いてるけど、本当に寡黙な人なのね」

 

 

メルラン「どんな状況でも言葉に出さないと気持ちは伝わらないよ? あなたってそういうの分かってるんじゃないの?」

 

 

リリカ「……サグメさんは…どうしたいですか?」

 

 

サグメ「っ…! ……」フルフル

 

 

サグメ「…」

 

 

サグメ「……私は…」

 

 

サグメ(私の本当の気持ち…ドレミー、貴方から教わったのに今ここで伝えないでどうするんだ、リリカたちからも言われているのに…!)

 

 

サグメ(…)

 

 

サグメ(すまない…豊姫、依姫、レイセン…)

 

 

サグメ「……雷鼓、布都、ルーミア…」

 

 

雷鼓、布都、ルーミア「…!」

 

 

サグメ「……私は酒を飲み、羽目を外す事は出来ないかもしれない、それでも私は雷鼓達と一緒にその打ち上げに参加したいと思っている」

 

 

ルナサ「それはさ、月の民の事情よりも優先してんの?」

 

 

サグメ「…! ……あぁ、そうだ」

 

 

ルナサ、メルラン、リリカ「!」

 

 

雷鼓「サグメさん…」

 

 

輝夜「……ふふふっ♪」

 

 

サグメ「! 輝夜…?」

 

 

輝夜「良く言えたわね、サグメ♪」

 

 

ルナサ「はぁんもう…演技なんて私の柄じゃないから」

 

 

メルラン「様になってたよ姉さんのは、私なんかもっとパーっ! とやりたいのにさ!」

 

 

リリカ「はぁ、なんか疲れちゃった♪」

 

 

サグメ、布都、ルーミア「……!?」

 

 

布都「え、演技? とな?」

 

 

ルーミア「どういう事なのだ?」

 

 

雷鼓「…ごめんなさいサグメさん、あなたの事を試していたの」

 

 

サグメ「試す…?」

 

 

輝夜「勘違いしちゃダメよサグメ、その指示をしたのは全部私なんだからね」

 

 

サグメ「輝夜、何を…」

 

 

輝夜「あなたはこういう状況に置かれちゃうと悩んじゃうタイプでしょ? 月と…月の民と…友達と…それらが天秤に置かれた時にどちらも選ぼうとする…それが口下手なあなたの昔からの悪い癖♪」

 

 

サグメ「う…」

 

 

輝夜「二兎を追う者は一兎をも得ず、玉兎が近くにたくさん居るのにこの言葉は皮肉かしらね♪ ふふっ♪」

 

 

輝夜「だから試したの、雷鼓から宴会云々の話を聞いた時に思い付いたのよねぇ♪」

 

 

輝夜「月か友達か…どちらを選ぶか」

 

 

輝夜「結果あなたは友達を選んだ…それが正しいのよきっと♪ そこは変わったわね、サグメ?」

 

 

サグメ「輝夜…」

 

 

布都「…? し、しかし根本的な解決にはなっていないのでは無いのか!?」

 

 

ルーミア「そ、そうなのだ、サグメは月に…!」

 

 

輝夜「それも大丈夫♪ サグメが友達を選んだ時点で私はサグメの味方だから♪」

 

 

輝夜「サグメ、行ってきなさい♪ 月の民の上層部には話をつけておくから」

 

 

サグメ「!」

 

 

輝夜「こっちにはあの八意様が居るのよ~♪ 月夜見だって怖くないわよ♪ 何がなんでも言うこと聞かすからね」

 

 

 

ルナサ「…月の事何にも知らないけど怖くない?」

 

 

メルラン「何が?」

 

 

ルナサ「輝夜さんと永琳さんの権力」

 

 

リリカ「そういう話はしないの!」

 

 

 

サグメ「輝夜…!」

 

 

輝夜「ほら♪ お友達と楽しんで来なさいよ? 一日ゆっくりとね」

 

 

サグメ「…! ありがとう、輝夜…!」

 

 

輝夜「どういたしまして♪ それじゃあね、サグメ…♪」ニコッ

 

 

 

 

ルーミア「じゃあ、サグメ! 一緒に打ち上げ出来るのかー!」

 

 

サグメ「あぁ、それに…その…泊まっても文句は言われないだろうな」

 

 

ルーミア「! 泊まりまでかー!? やったのだー!」

 

 

雷鼓「ふふっ、サグメさんと一緒にお泊まりなんてね♪」

 

 

布都「い、いきなり過ぎて少し着いていけんが…サグメ殿や皆と一緒に一つ屋根の下で共に過ごせるのは大変嬉しいことなのじゃ♪」

 

 

ルナサ「会場は私たちの家だけどね」

 

 

メルラン「食べ物とかあったっけ?」

 

 

リリカ「人里で買っていけば良いでしょ」

 

 

サグメ「! リリカ、メルラン、ルナサ」

 

 

リリカ、メルラン、ルナサ「…!」

 

 

サグメ「騒がしくなるかもしれないが…一日、よろしく頼む…!」スッ

 

 

リリカ、メルラン、ルナサ「……」

 

 

ルナサ「…サグメさんって生真面目だよね?」

 

 

メルラン「生真面目なのにちょっといじればビジュアル系なところがギャップとして受けるんですか?」

 

 

リリカ「変なことを聞かないっ!」

 

 

サグメ「ふふっ…♪」

 

 

 

 

【娯楽場、客席中央】

 

 

紫「……」

 

 

藍「…?」

 

 

紫「ねぇ、藍」

 

 

藍「は、はい?」

 

 

紫「さっきまで月に居た月の民と、幻想郷に居着いている月の民の違いって何だと思う?」

 

 

藍「…なんですか唐突に」

 

 

紫「答えなさい」

 

 

藍「……そうですね…」

 

 

藍「……前者の月の民が穢れに敏感…な所でしょうか」

 

 

紫「ピンポーン…♪ だ~いせ~いか~い♪」

 

 

藍「は、はぁ…」

 

 

紫「……たったそれだけの事、だけどその月の民がもしも」

 

 

紫「強い力を持っていて、それでいて穢れに敏感であり、尚且つその力に理解をしてくれる者が複数居た場合、知らなくても良いことを知ってしまうかもしれない」

 

 

藍「…? 紫様、何を仰りたいのです?」

 

 

紫「藍、私今日は帰らないから、博麗神社に行ったら、霊夢によろしく言っておいてね、それじゃ…」スッ

 

 

 ギュオン…!

 

 

藍「あっ!? ゆ、紫様…!」

 

 

藍「あの雰囲気、何を…」

 

 

藍「……いや、これは余計な詮索はするなと言われてい様な物だな、それも本気で」

 

 

藍「…明日帰って来たら、話してくれるところまで聞きますかね」

 

 

 

 

【スキマ空間】

 

 

 

 

 

紫「……」

 

 

紫「…」

 

 

紫「ごめんね…あなた、あんまり騒がれるの好きじゃないかもしれないけどこうなっちゃったら仕方ないわよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「ごめんね、レイラ」

 

 

 

 

 

 

 

 後編へ続く…!

 

 






 お疲れ様でしたここまで読んでくださってありがとうございました!


 後編の完結までもう少しお待ち下さい。




 中編、如何でしたでしょうか、今回あうんや隠岐奈たち天空璋のキャラを出してみました。


 隠岐奈は紫と少し性格を似せています、彼女も賢者の一人として、幻想郷を愛しています。


 違いと言えば隠岐奈は目立ちたがり屋で少しだけしつこい所でしょうか、霊夢と魔理沙とチルノの事を個人的に気に入ってたりします。

 紫と隠岐奈は腐れ縁ですが、魅魔が言っていた通り、周りから見れば凄く仲が良い様に見えます。

 隠岐奈の目的はどんな形であれ目立つ事なのであれで良いのでしょう…たぶん





 あうんは霊夢大好きっ子、また神社に人ではない者が居着くことになりました。

 彼女がああは言ってましたが、萃香とは仲が良い様です。





 それからルーミアの歌の事なんですが歌詞は本当に適当で雷鼓、布都、サグメの口癖を含めただけな感じです。

 七日~なのかー♪ の部分はゆっくりと

 雷鼓達が入って来る部分はセリフで早口で歌えば何となくで歌えたりします



 次回から物語の核心に迫り、終わりを迎えます。

 ここの幻想郷のもう一人のプリズムリバーは…?



 それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました、次回をお楽しみに♪


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