東方紫藍談  ~紫と藍の幻想談~   作:カテサミン

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 『今日も一日お疲れ様でしたの会』が帰って来ました!


 今回物語の軸になって行動するのは妖怪の山の三人、三人は会のメンバーを救うことが出来るのか!?


 それでは始まります!



 『今日も一日お疲れ様でしたの会メンバー』


八雲 藍  
魂魄 妖夢 
永江 衣玖
ナズーリン
鈴仙・優雲華院・イナバ
蘇我 屠自古




《第5話》『溜まりに溜まった精神厄』

 

 

 【朝 妖怪の山 休憩所屋外】

 

 

 

鍵山雛「…」

 

 

河城にとり「あぐっんぐっ…ん~♪ いやぁ~ここのお団子は美味しいね♪」

 

 

姫海棠はたて「うん、このみたらしのタレが甘塩っぱくて団子に合うのよね、お茶も渋味が効いていてみたらし団子のタレの味にマッチしてる、それでいて山の風景を一望出来る場所に店を構えているのも一役勝っている…最高の休憩所ね」

 

 

にとり「あはは、流石新聞記者だね、感想が一味も二味も違うや」

 

 

はたて「ふふん♪ そうでしょ? まるでこの団子の様にね」

 

 

にとり「上手い! 座布団一枚!」

 

 

はたて「はっはっは♪ …ってにとり、さっきの話の答えは?」

 

 

にとり「え? あ~、なんだったっけ?」

 

 

はたて「最近文が怪しいって話よ」

 

 

にとり「文なだけに?」

 

 

はたて「それは上手くないわよ」

 

 

にとり「ありゃりゃ」

 

 

はたて「紫のスキマボックスを有効活用したお陰で私の新聞が売れるようになったから文が焦り出すもんだとばかり思ってたんだけど、そんな様子が無いのよね」

 

 

にとり(一時は焦ってたけどね、酒に溺れて自暴自棄になってたし『つれぇです』が口癖になってたし)

 

 

はたて「寧ろ最近はなんかイキイキしてるのよ、何か知らない?」

 

 

にとり「さぁ? 私は知らないよ?」

 

 

はたて「本当に?」

 

 

にとり「知らんなぁ」

 

 

はたて「む…」

 

 

にとり(クイズ番組のライターやってるなんて言えないよねぇ、紫にも口止めされてるし)

 

 

にとり「てかそんなに気になるなら文に直接聞けば良いじゃないか、せっかく脱引きこもりしたんだからさ」

 

 

はたて「それとこれとは話が別よ、文に私が直接聞いたら負けな気がするじゃない」

 

 

にとり「何で?」

 

 

はたて「新聞記者ってのは情報を探るのが仕事だからよ」

 

 

にとり「なにその拘り、私には分からない拘りだね」

 

 

はたて「同じ物作り仲間としては分かってほしいわね」

 

 

にとり「発明家と新聞記者じゃ全然違うよ」

 

 

はたて「それは…うん」

 

 

にとり「だろう?」

 

 

はたて「ん~…ねぇ雛、雛は何か知らない?」

 

 

雛「…」

 

 

にとり「私が知らないんだから雛が知ってるわけないじゃないか」

 

 

はたて「分かんないでしょ、ねぇ雛、教えてくれたらこのお団子私が奢っちゃうわよ?」

 

 

にとり(えぇ…金で釣るんだ、もったいない事を)

 

 

雛「…」

 

 

はたて「雛、ねぇ聞いてる? …雛?」

 

 

にとり「雛?」

 

 

雛「…」

 

 

はたて「雛…? どうしたのよ、さっきからずっと空見上げてボーッとしてるけど」

 

 

にとり「団子も食べてないじゃないか、もしかして今日体調悪かったりする?」

 

 

雛「…」

 

 

はたて、にとり「…?」

 

 

 

 

 

 

雛「厄いわね」

 

 

はたて、にとり「え」

 

 

雛「厄いわ…凄く厄い…ごっつ厄い…」

 

 

はたて、にとり「…」

 

 

にとり「ほらぁ…お金で情報を得ようとするから」

 

 

はたて「そんないけない事だったの!?」

 

 

にとり「あれだよ、はたてが文の怪しい情報を得られないのははたてに厄が溜まってるせいなんじゃない?」

 

 

はたて「いぃっ!? ひ、雛! だったら私の厄を全部吸い取ってよ!」

 

 

雛「にとり…はたて…」

 

 

にとり、はたて「な、なに…?」

 

 

雛「幻想郷に蔓延る六つの厄が爆発しそうなの」

 

 

にとり、はたて「はい…?」

 

 

 

 

 

 【厄神、説明中】

 

 

 

にとり、はたて「せいしん…やく?」

 

 

雛「そう、精神厄よ」

 

 

にとり、はたて「…」

 

 

はたて「永遠亭でも最近需要が高いみたいなのよね」

 

 

にとり「あぁ薬か、確かに妖怪も精神をやられると困っちゃうから」

 

 

雛「違うわよ! そっちの精神薬じゃなくて厄の方よ!」

 

 

はたて「だから薬…えっ? 厄って厄年とかの厄!?」

 

 

雛「だからそう言ってるでしょ!?」

 

 

にとり「まぁ雛の口から薬の話が出るわけないよね、厄神様なんだからさ」

 

 

雛「そうよ、私は薬の神様じゃないんだから」

 

 

にとり、はたて(薬の神様って…)

 

 

はたて「それで…その精神厄? それってなんなの?」

 

 

にとり「初耳だよね、聞いたことないよ」

 

 

雛「厄って本当に様々な種類があるの」

 

 

雛「苦厄、大厄、危厄、水厄、困厄、重厄…と天変地異の類いから人に害をなすものまであって数えてたらキリがないわね」

 

 

雛「そういう厄は私の目に見えるし『あぁこれは厄なんだな』ってその人や妖怪が感じ取れるレベルのものなんだけど」

 

 

雛「中にはこう…表舞台に出てこないで人や妖怪の心の中で潜み続けてその者をじわじわと苦しめる厄が存在しているの」

 

 

雛「その厄は普段は心の中でじっとしていて普通に生活している分には何ら脅威は無いんだけど、心に何らかの負荷が掛かったり、ストレスを感じたりするとそのエネルギーを吸収しながら溜め込んで厄エネルギーに変換していくの、それで徐々に大きくなっていってその者の理性を崩壊させて暴走、豹変させるの」

 

 

はたて、にとり「それが…?」

 

 

雛「精神厄よ」

 

 

はたて、にとり「…」

 

 

はたて、にとり「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はたて、にとり「恐っ!!?」

 

 

雛「でしょう?」

 

 

はたて「えっ!? 何!? マジでそんな厄が存在してるの!?」

 

 

にとり「なんか最初病気のそれかと思って聞いてたけどよく考えると凄い恐くなってきたよ…」ブルブル

 

 

雛「あなたたち妖怪にとっては猛毒の様な厄かもね、この厄は私じゃないと見破れないのも恐いところなの」

 

 

雛「知らず知らずの内に精神厄に蝕まれているって人も少なくないのよ、自由な幻想郷でもその厄のせいで大切な物を失ったって話は聞くわね」

 

 

はたて「た、大切な物?」

 

 

雛「理性を崩壊させるのよ? 友達を傷付けたりとか物を破壊しつくしたりとか色々と…」

 

 

にとり「ね、ねぇ雛、念のために聞くけどそれって精神病とかの類いじゃないんだよね?」

 

 

雛「さっきも行ったけど全然違うわ、お医者さんが診て治せる様な代物じゃないの」

 

 

はたて「治療…とは違うんだろうけど、精神厄に蝕まれて雛に吸収してもらったってのは年に何回ぐらいあるの?」

 

 

雛「うーん…二十ぐらい?」

 

 

にとり「なんか地味に多いなぁ、益々恐くなってきた…」

 

 

はたて「私たちの中にもあるんでしょうね…精神厄…」

 

 

にとり「そういう事言うのやめてくれよ…」

 

 

雛「あるけどあなたたちは心配しなくても平気♪ ストレス発散の機会が二人は多いし、溜め込むタイプじゃないもの」

 

 

雛「私の目にははっきりと見えてるけど精神厄が肥大化する片鱗すらないわね」

 

 

にとり、はたて「ほっ…」

 

 

雛「これで精神厄のことを分かってくれたと思うけど…それを踏まえた上で最初の話に戻ってもいいかしら?」

 

 

にとり「うん、えっとなんだっけ?」

 

 

はたて「確か幻想郷に蔓延る六つの厄が爆発しそう、とかなんとか言ってたわよね?」

 

 

雛「えぇ」

 

 

はたて「…!? え…!?」

 

 

にとり「それってさ、ま、まさか…」

 

 

雛「そのまさかよ」

 

 

雛「精神厄が肥大化して限界を向かえている人…いえ妖怪かしら…? この場にいないのにも関わらずひしひしと感じるのよ、幻想郷に蔓延る六つの大きな精神厄をね」

 

 

はたて「六つ…六人って意味よね」

 

 

にとり「そんなに一度に現れるとはね」

 

 

雛「えぇ、こんなの初めてよ」

 

 

にとり「でもこんな時だからこそ厄神様の出番なんだろう?」

 

 

雛「ふふっ、そうね、その通りよにとり」

 

 

雛「雛祭りはもう終わっちゃったけど、幻想郷の厄神としての責務を果たす時よ!」

 

 

にとり「よっ! 流石幻想郷一番の厄神様!」

 

 

はたて(厄神って雛しかいないし、雛祭りは関係ある…?)

 

 

雛「うん! 私頑張るわ! ということで二人には手伝ってほしいんだけど」

 

 

にとり、はたて「え?」

 

 

雛「え?」

 

 

にとり「…」

 

 

はたて「…」

 

 

雛「…」

 

 

 

 

はたて、にとり「えぇー!? なんでぇ!?」

 

 

雛「えぇ!? 手伝ってくれないの!?」

 

 

はたて「なんで私たちが手伝う流れになったの!?」

 

 

雛「だって興味津々で聞いてくれたから…」

 

 

にとり「そりゃあ興味あるよ! 精神厄なんて初めて聞いたんだもん!」

 

 

はたて「そうよ! 一新聞記者としては聞き過ごす訳にはいかない話題だもん!」

 

 

雛「そう…よね…うん…物珍しい話題だもんね」

 

 

にとり「あ~…雛? 私たちは手伝いたくない訳じゃないんだよ?」

 

 

はたて「そ、そう! そうなのよ雛」

 

 

はたて(私は本当は手伝いたくないんだけどなぁ…あはははは…)

 

 

にとり「私たちが着いていってもどうにもならないんじゃないかと思ってさ、仮にも厄なんだから雛の仕事だ、私たちには精神厄をどうこう出来ないからさ」

 

 

雛「そうだけど精神厄を吸収するのって凄いパワーがいるのよ、相手が相手だから集中しないと吸収しきれないの」

 

 

雛「それと私が精神厄云々の話をしても簡単に信用してくれないかもしれない、さっきも言ったけど本当に物珍しい事だもの」

 

 

はたて「私たちがこんな反応だったからね」

 

 

雛「だから幻想郷に顔が広い二人が居てくれたら説明もしやすいと思ったの」

 

 

雛「そ、それに…/// 二人が側に居てくれたら、安心して吸収作業が出来るかなぁって…///」カァ

 

 

にとり、はたて「!」

 

 

にとり(まったく…その顔でそういう言い方は反則だよ)

 

 

はたて(…)

 

 

にとり「雛」

 

 

雛「!」

 

 

にとり「手伝いたくない訳じゃないって言ったろ? そういう理由があるんだったら手伝うよ」

 

 

にとり「私と雛の仲じゃないか、喜んで手伝わせてもらうよ」

 

 

雛「にとり…ふふっ、ありがとう」

 

 

にとり「ふっふっふ、雛の口下手なところは私が補ってあげるよ♪ 仲良くしてもらってる好で無料で一緒に行こうじゃないか」

 

 

雛「! もう、にとりったら…♪」

 

 

にとり「はっはっは♪」

 

 

はたて(…)

 

 

雛、にとり「…」

 

 

雛、にとり「チラッ♪」

 

 

はたて「! 『チラッ』じゃないわよ! 『お前はどうなん?』みたいな眼差しを向けないでよ」

 

 

はたて「まぁ…精神厄の取材にもなるだろうし? 一緒に行ってあげてもいいわよ?」

 

 

にとり、雛「…」ジトッ

 

 

はたて「な、何よ」

 

 

にとり「素直に一緒に行きたいって言えばいいのにね」ヒソヒソ

 

 

雛「私たちが一緒に来てくださいって言わなきゃ来てくれないのかしら」ヒソヒソ

 

 

にとり「めんどくさいから二人で行っちゃう?」ヒソヒソ

 

 

雛「そうね、残念だけどそうしま」ヒソヒソ

 

 

はたて「聞こえてるっ! 聞こえてるから! 全然ヒソヒソ話になってないから!」

 

 

雛、にとり「…」ジトッ

 

 

はたて「…! くっ! わ、分かったわよ! 手伝いますー! 手伝わせていただきますから連れて行ってくださいー!」

 

 

にとり「あっははは♪ そうこなくっちゃね」

 

 

雛「ふふっ…ありがとう、はたて」

 

 

はたて「ふん…///」

 

 

はたて「その代わり取材はさせてもらうわよ? 終わったら精神厄の事を記事にするかもしれないけど」

 

 

雛「それは願ったり叶ったりだわ、精神厄を認知してもらうには新聞は効果的だもの♪」

 

 

にとり(文が『なんでそこは私に頼んでくれないんですかぁぁ…!』とか言い出さなきゃ良いけどね)

 

 

はたて「それにしても六つか…結構移動することになりそうね、まずはどこからいくの?」

 

 

雛「そうね…近いところから順番に精神厄を撲滅していきましょう、一番近くに感じるのは…」

 

 

雛「守矢神社ね」

 

 

にとり、はたて「えっ…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 【妖怪の山山頂、守矢神社近辺】

 

 

 

雛「むむっ…感じる…感じるわ、精神厄のパワー」

 

 

にとり「ん~、あの三神にストレス…?」

 

 

はたて「ストレスとは無縁だと思うけど、精神厄に蝕まれているのかしら」

 

 

にとり「可能性があるとしたら早苗かな?」

 

 

はたて「うーん、偶然そこにいた客人とか」

 

 

雛「…!?」ピクッ

 

 

にとり「ありえるね、てか私たちの知り合いなのかどうかもわからないけど」

 

 

はたて「あ、それ盲点だったわ…って雛?」

 

 

にとり「? 雛、どうしたんだい、急に立ち止まって」

 

 

雛「いけない!」スッ

 

 

はたて、にとり「ん?」

 

 

雛「にとり! はたて! 急ぎましょう!」ググッ

 

 

 

 ギューン! クルクルクルクル!

 

 

 

はたて、にとり「速っ!?」

 

 

はたて「雛ってあんなに速く飛べるの!?」

 

 

にとり「きっと回転しながら飛ぶことで空気抵抗が…」

 

 

はたて、にとり「…」

 

 

にとり、はたて「なんて言ってる場合じゃないわぁ!」

 

 

はたて「急ぐわよにとり!」

 

 

にとり「お、おう!」

 

 

 

 

 

 【守矢神社】

 

 

東風谷早苗「衣玖さん!! お、落ち着いて下さい! どうしちゃったんですか!?」

 

 

八坂神奈子「くっ…! お、おい暴れるな!」

 

 

永江衣玖「はぁはぁ…! は、離せぇ! こいつを始末してやるんだ…! 私が…! 私が殺らなきゃダメなんだぁ!」ジタバタ

 

 

早苗、神奈子「!!?」

 

 

 

 

比那名居天子「ちょっと! これ外しなさいよ!」

 

 

洩矢諏訪子「お前にまで暴れられたら困るからさ、悪いけど拘束させてもらうよ、それは洩矢の鉄の輪だ、そう簡単には外せない」

 

 

天子「何よこんなものっ…!」グググッ

 

 

諏訪子「力ずくじゃ無理だよ、にしてもさぁ」

 

 

諏訪子「あれ永江衣玖だよね? 何であんなになっちゃってんの?」

 

 

天子「くっ! 拘束して体をズタズタにしてくれるならまだしも、放置するだけなんて最悪だわ!」

 

 

諏訪子「いきなり空から降ってきた奴にご褒美くれてやるほどこのケロちゃんは優しくないのだ♪」

 

 

天子「くっそぉー! 衣玖がやっとその気になってくれたのにー!」ジタバタ

 

 

諏訪子「ドMとは聞いてたけどここまでとは…さて、一体全体どういうことか」

 

 

神奈子「自分だけ落ち着いてるんじゃないよ諏訪子! コイツにも鉄の輪をかけてくれ!」

 

 

衣玖「うがぁー!」ジタバタ

 

 

早苗「いたたっ! 痛いですよ衣玖さん! 暴れないでください!」

 

 

諏訪子「神奈子、それなら神奈子の注連縄でやりなよー♪」

 

 

神奈子「出来るかっ! 注連縄は拘束具じゃないんだぞ!?」

 

 

諏訪子「えー、大戦中に私やられた経験あるんだけど」

 

 

神奈子「…したようなしてないような」

 

 

諏訪子「したってば、ほらぁ、八回目の大戦の時だよ」

 

 

神奈子「……あ~、ははは…やってたわなぁ」

 

 

諏訪子「あれ結構痛かったんだからなぁ~!」

 

 

衣玖「殺ってやる…! 殺ってやりますよ私はぁ!」ジタバタ

 

 

早苗「お二人とも昔話に花を咲かせている場合ではありませんよ!?」

 

 

天子「こらぁ! 外すのは諦めてやるから痛め付けろー!」

 

 

早苗「何言ってるんですか!? あ~んもう! 誰か助けて下さーい!」

 

 

 スタッ!!

 

 

雛「早苗ちゃん!」

 

 

早苗「! ひ、雛さん!?」

 

 

雛「!? あぁっ!」

 

 

衣玖「ぬあぁぁっ!!」ジタバタ

 

 

神奈子「雛か、遊びに来てくれたところ悪いが今取り込み中でな」

 

 

諏訪子「取り込み中というか、巻き込まれたというか…雛も巻き込まれたくなかったらここから逃げた方がいいよ」

 

 

雛「いえ、この騒動を静める為にここまで来たんですもの、逃げるわけにはいかないわ!」パンッ

 

 

 雛は両手を合わせて集中する

 

 

雛「早苗ちゃん、神奈子さん! そのまま彼女を押さえててください!」

 

 

早苗「は、はい!」

 

 

神奈子「? おい、何をする気だ?」

 

 

雛「私が彼女の暴走を止めます! 協力してください!」

 

 

早苗「! 神奈子様!」

 

 

神奈子「あぁ、分かった!」

 

 

雛「…」スッ

 

 

雛「溜まりに溜まり、精神の狭間で蔓延る邪な精神厄よ! その身を具現と化し、厄神の手によって吸印せん!」

 

 

 

 雛の両手が淡い光に包まれる

 

 

 

衣玖「うがぁぁ!!」ジタバタ

 

 

雛「はあぁっ!」ズズッ

 

 

 

 その両手を衣玖の腹の辺りに押し付ける

 

 

 

雛「厄手吸印!!」

 

 

 ドッ!

 

 

衣玖「!!? うぐぅ!」

 

 

 雛の両手が衣玖から離れると同時にズズズッ、と音を立てて黒いモヤモヤした塊が衣玖の体から引き摺り出された

 

 

早苗、神奈子、諏訪子「!?」

 

 

衣玖「! ……」ガクッ

 

 

早苗「あ…! い、衣玖さん!?」

 

 

衣玖「 」グデーン

 

 

雛「大丈夫、気を失ってるだけよ、数分で目が覚めると思うわ」

 

 

神奈子「聞くが、今何をしたんだ?」

 

 

諏訪子「雛の事だから厄関係の事だと思うけど、永江衣玖から取り出したそのモヤモヤは厄なの?」

 

 

雛「えぇ、話せば長くなるんだけど…彼女が暴れていた原因はこの厄のせいなの」

 

 

早苗「原因は厄だったんですか…」

 

 

 雛は両手に乗っけていた厄を自分の胸に持っていき、厄を取り込んだ

 

 

早苗「えっ!? そんなことして大丈夫なんですか!?」

 

 

雛「ふふっ、大丈夫よ、これは特種な厄だけど厄は厄だもの、私の体に吸収さえしてしまえば還元出来るの、最終的には流し雛をする必要はあるけどね」

 

 

諏訪子「その厄って普通じゃなさそうだね」

 

 

雛「えぇ、実は」

 

 

 おーい!

 

 

にとり「はぁ、やっと追い付いた」

 

 

はたて「あんた遅すぎよ」

 

 

にとり「天狗じゃないんだからそんなに速く飛べるわけないじゃないか」

 

 

早苗「あ、にとりさん、はたてさん」

 

 

にとり「やぁ」

 

 

はたて「こんちは」

 

 

諏訪子「今日は客が多い日だねぇ」

 

 

神奈子「突然飛来してきたコイツらは客人とは言えないけどな」

 

 

衣玖「 」グデーン

 

 

にとり「ん? あれ、もしかしてもう終わっちゃった?」

 

 

雛「えぇ」

 

 

はたて「天狗も驚く程のスピード解決ね…」

 

 

にとり「まぁ地元だしね、説明いらずだろうし」

 

 

雛「精神厄の暴走が始まっていたから速く済ませたの、荒治療になってしまったけど早苗ちゃんと神奈子さんが押さえててくれていたから助かったわ、大惨事にならずに済んだんですもの」

 

 

にとり(治療とか聞くとやっぱり医者の仕事だと思っちゃうね)

 

 

はたて「察するに…永江衣玖よね」

 

 

雛「えぇ、これで後五つね」

 

 

早苗「あの…事態を収拾してくれたことにお礼をしたいんですけど、いまいち状況が…」

 

 

神奈子「ふむ…落ち着いた事だし、境内の中でゆっくり話でもしようじゃないか」

 

 

にとり「そうだね、それが良いと思うよ、こっちも何で天人達がいるのか知りたいしね」

 

 

はたて「私としてはあの大穴が気になるんだけど」

 

 

 

 守矢神社の敷地内に大きな穴が開いている

 

 

 

諏訪子「それも説明してあげるよ」

 

 

神奈子「よいしょっと…早苗、タオルか何か濡らして持ってきてくれ、永江衣玖を介抱してやろう」

 

 

早苗「はい、分かりました」

 

 

はたて「ゆっくりしてる時間あるの?」ヒソヒソ

 

 

雛「本当は急ぎたいけどお言葉には甘えなくちゃ、それに説明もしたいもの」ヒソヒソ

 

 

諏訪子「ぷっ…! 神奈子、獲ったどーって言ってみてよ」

 

 

神奈子「? 何だいきなり」

 

 

諏訪子「竜宮の使いお姫様抱っこしてるから」

 

 

神奈子「銛で仕留めてもないし食う気もないからな!? てか懐かしいなそのフレーズ」

 

 

諏訪子「あっはっは♪」

 

 

にとり「お姫様抱っこ…あはは、ありゃお雛様抱っこだったね」

 

 

雛「に、にとり!」

 

 

にとり「あれも懐かしいよね」

 

 

雛「あれは紫さんが勝手に…///」

 

 

はたて「?」

 

 

諏訪子「ほれ、お前たちも上がんなよ」

 

 

雛「え、えぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

天子「…」

 

 

天子「……」

 

 

天子「おらぁ! 放置プレイとスルーにも程があるわよ!?」

 

 

諏訪子「あぁ忘れてた、ケロちゃんうっかり…てへケロ♪」

 

 

はたて「てへけろ?」

 

 

神奈子「突っ込んだら負けだぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 【数分後 守矢神社 境内】

 

 

諏訪子「やけに大人しくなったね」

 

 

天子「別に…最初は衣玖がやっとその気になってくれたと思ってワクワクしてたんだけど」

 

 

天子「あの大人しい衣玖が『殺ってやる』だの『うがぁー!』だの言うのは流石に…なんか変だなぁとは思うのよ」

 

 

雛(私の中では異変レベルの問題なのよね)

 

 

にとり「へぇ~気遣えるんだ、優しいとこあんじゃん」

 

 

諏訪子「雪でも降るのかな?」

 

 

はたて「異変じゃない、記事に書いてやろうかしら」

 

 

天子「…あんたら私のこと何だと思ってるのよ」

 

 

はたて「変態」

 

 

諏訪子「ドM」

 

 

にとり「クレイジーマゾヒスト」

 

 

天子「人聞きの悪いことを…! 私は『痛みの探求者』なのよ、そんなちんけな言葉で片付けてもらいたくないわね!」

 

 

神奈子「どうあれ変態なのは変わらんだろ」

 

 

天子「あぁん!?」

 

 

早苗(痛みの探求者ってなんかちょっとかっこいい…はっ!? い、いけないいけない、常識常識…)

 

 

天子「ふん…で? 衣玖がああなった原因、あんた知ってるんでしょ?」

 

 

雛「それは…」

 

 

天子「?」

 

 

にとり(…まてよ? 精神厄がストレスとかと関係あるって雛言ってたよね)

 

 

天子「何よ、早く言いなさいよ」

 

 

雛「…」

 

 

にとり(原因、目の前にいんじゃん)

 

 

 

衣玖「うっ…」パチッ

 

 

全員「!」

 

 

衣玖「…? う、うん…? こ、ここは…?」

 

 

神奈子「お、目が覚めたか」

 

 

早苗「衣玖さん、良かった…」

 

 

諏訪子「おはケロっ!」

 

 

衣玖「早苗さんたち…ということはここは…」

 

 

早苗「守矢神社ですよ、それよりもどこか身体が痛むとかありませんか?」

 

 

衣玖「…? いえ、特には…」

 

 

神奈子「それは何よりだな、急にお前達が空から降ってきたから何事かと思ったが」

 

 

衣玖「空…? ……! そ、総領娘様…! 総領娘様は」ガバッ

 

 

天子「いるわよ」

 

 

衣玖「! 総領娘様…」

 

 

天子「その様子だと元に戻ったみたいね」

 

 

衣玖「元に…?」

 

 

天子「? えっ、あんた何も覚えてないの?」

 

 

衣玖「……はい、私達が何故守矢神社にいるのか、どうして私が守矢神社で目覚めたのか…定かではありません」

 

 

天子「えぇ…あんなに積極的になってたのに覚えてないの?」

 

 

衣玖「積極…的?」

 

 

神奈子「お前はちょっと黙ってろ、永江、その答えならあの厄神に教えてもらうといい」

 

 

天子「…」ムスッ

 

 

衣玖「…? あ…」

 

 

雛「名前は知っていたけど初めましてよね、私は鍵山雛、厄神よ」

 

 

衣玖「あなたがあの厄神様…こちらこそ初めまして、私は永江衣玖、総領娘様…比那名居天子様の身の回りのお世話をさせていただいております」

 

 

雛「えぇ、ご丁寧にどうも…」

 

 

衣玖「はい…」

 

 

天子「…」

 

 

諏訪子「雛、そろそろ教えてよ、この竜宮の使いに何が起きたのかをさ」

 

 

雛「その前に…衣玖さん、ここで目覚める前の事教えてくれるかしら、覚えてるところまででいいの」

 

 

衣玖「…」

 

 

神奈子「確かに天人達の事情も気になるな」

 

 

衣玖「…」

 

 

早苗「あ、あの衣玖さん…話づらかったら無理に」

 

 

衣玖「いえ…お話します」

 

 

衣玖「総領娘様…」

 

 

天子「?」

 

 

衣玖「…ご無礼をお許し下さい」

 

 

天子「え?」

 

 

衣玖「…」

 

 

 

 

 ホワンホワン

 

 

 

【数十分前、天界】

 

 

 

天子『…』

 

 

衣玖『総領娘様、どうかなさいました?』

 

 

天子『ねぇ、衣玖』

 

 

衣玖『はい?』

 

 

天子『天界ってさ、幻想郷の遥か上空に位置してるじゃない?』

 

 

衣玖『えぇ、そうですね』

 

 

天子『高度何メートルぐらいなのかしらね』

 

 

衣玖『雲の上に位置してますから、およそ一万メートルぐらいですかね』

 

 

天子『一万メートルかぁ…』ゾクゾク

 

 

衣玖『はい、悪魔でもおよそですけど』

 

 

天子『およそでも何でもいいのよ』

 

 

衣玖『はぁ、そうなのですか?』

 

 

天子『そう、問題なのはそこじゃないの』

 

 

衣玖『?』

 

 

天子『衣玖、今から私』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天子『天界から幻想郷の地面に飛び込みダイブしてくるわ!』

 

 

衣玖『…』

 

 

衣玖『……』

 

 

 

 

 

 

 

 

衣玖『はい!?』

 

 

天子『ふっふっふ、盲点だったわ…天界はしょーもなくて退屈にまみれたところだから楽しみも何も無いと思っていたけどこんなところに楽しみが眠っていたなんて』

 

 

天子『衣玖、私まだ高度一万メートルの高さから地面に落下した経験が無いのよ』

 

 

天子『飛ばずに停止もせずに地面に落下するのよ♪ どんな痛みが私を待っているのかしら…想像しただけで…っ! あはぁん♪ 想像痛覚が心地いわ♪』ビクビク

 

 

衣玖『な…!? なぁっ…!?』ゾクッ

 

 

天子『それじゃ衣玖! 私行ってくるから♪ あ、行くって言っても辿り着くのはどの地面かわからないけどね♪』

 

 

衣玖『お、お待ちなさい!』

 

 

天子『ん? 何よ』

 

 

衣玖『何よではありません! あなたはどうしてそんっ…! そんなおぞましい事を考え付くのですか!?』

 

 

天子『おぞましい? だから何回も言ってるでしょ、私は痛みの探求がしたいのよ』

 

 

天子『死なないギリギリのラインを見極めて痛みを味わって楽しむの♪ 痛覚を通して快感に伝わる楽しさに目覚めてからはさ、これがもう楽しくて楽しくて♪』

 

 

衣玖『で、ですからそれはもう百万歩をも譲って許容しました、いえ! 出来るようになったのです!』

 

 

天子『だったら私を止める理由が無いじゃない』

 

 

衣玖『理由ならあります! 自分で痛みの探求をなさるのなら私ももう諦めているので止める事はしません! ですけどもね!』

 

 

衣玖『他の方にご迷惑にならない範囲でお願いしたいのです! ここから飛び降りる!? 迷惑の何者でもありません! 建造物、通行人、その他諸々の何かに当たったりでもしたらどう責任をとるおつもりなのですか!』

 

 

天子『…フッ、衣玖』

 

 

衣玖『な、何ですか?』

 

 

天子『探求に犠牲は付き物よ』

 

 

衣玖『!!?』

 

 

衣玖(あぁ、どうしましょう…言い出したら最後、やり遂げるまで止まらない総領娘様を私は止める事が出来ない…)キリキリ

 

 

衣玖(飛び降りたら物凄い速度と重さでしょう、私では止める事すら叶わない…地面に落下で済めば話は別ですがそこに開くであろう大穴、落下した衝撃による地面の隆起、家屋等の被害…総領娘様の探求心が起こした被害の責任をまた私が…)イライラ

 

 

衣玖(そもそもそれをやることで私に迷惑を掛けていることは総領娘様は感じていらっしゃるのでしょうか…このご様子ですとそんなことは少しも思って無いのでしょうね)イライラ

 

 

衣玖(私の思いなど知らずに探求探求…人の迷惑等知らずに探求探求…)イライラ

 

 

衣玖(総領娘様は私の事をどう思っているのでしょうか…私はあなたをこんなにも慕い支えているというのに)

 

 

衣玖(あぁ…どうして私のこの声は総領娘様に届かないのでしょうか…探求心の犠牲に私もなっているというのに何故…)ザワザワ

 

 

衣玖(………)モヤモヤ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衣玖(私、このお方の側にいる必要があるのでしょうか)

 

 

 

  モヤモヤ  ザワザワ

 

 

 

 

 

 ホワンホワン

 

 

 

 

衣玖「そう思ってしまった瞬間から段々と意識が遠くなっていった様な気がします…そして気が付いたらここに…」

 

 

早苗、神奈子、にとり、はたて、雛「…」

 

 

天子「…」

 

 

諏訪子「…」

 

 

早苗(じ、常識の塊の様な衣玖さんにこれはキツいし辛すぎますね…)

 

 

神奈子(最早笑い事では済まされんな)

 

 

にとり(引くなぁ、マジかよ…)

 

 

はたて(重いわね…こういう話は苦手なのよ)

 

 

雛「…」

 

 

神奈子「恐らくその後、天子と共に落下したんだろうな、そして守矢神社の敷地内に落ちた」

 

 

衣玖「えっ!?」

 

 

神奈子「運が良かったな、あれぐらいの衝撃じゃ家の神社はびくともしない、穴は開いてしまったが家には土着神がいるから何も心配もいらないな」

 

 

衣玖「も、申し訳ありません! ご迷惑をお掛けして!」

 

 

神奈子「そんなに頭を下げるんじゃない、心配いらないと言ってるじゃないか」

 

 

衣玖「し、しかし…」

 

 

諏訪子「…」

 

 

天子「…」

 

 

雛「…話を割ってしまって申し訳ないけれど、あなたが気を失ってしまった原因とここに寝かされていた理由を話しても良いかしら?」

 

 

衣玖「…! は、はい」

 

 

雛「実は…」

 

 

 

 

 【厄神説明中…】

 

 

 

衣玖「そ、そんな…!」

 

 

雛「あなたはその精神厄に蝕まれていたの、だから常識から逸脱した行為と暴言を繰り返して暴走してしまったのよ」

 

 

神奈子「精神厄…そんな厄があるとはな」

 

 

早苗「知らなかったです…まだまだ幻想郷は広いですね」

 

 

衣玖「わ、私はなんてことを…私が未熟なばかりに皆さんにご迷惑を」

 

 

早苗「衣玖さんのせいじゃないじゃないですか! これは厄のせいですよ!」

 

 

神奈子「いや、あながちそうとは言い切れない」

 

 

神奈子「精神厄とは言うがな、見方を変えれば『雛にしか治療できない精神病』という風に捉える事も出来る」

 

 

早苗「神奈子様…」

 

 

雛「…」

 

 

にとり(確かにね、否定は出来ないか)

 

 

神奈子「永江が精神厄に犯された理由、どんなバカでもわかるよな」ジロッ

 

 

早苗、にとり、はたて、雛「…」

 

 

天子「…!」スッ

 

 

 天子は何故か俯いている

 

 

諏訪子「…」

 

 

衣玖「…! み、皆さん違いますよ、総領娘様は何も悪くないです」

 

 

天子「!」

 

 

衣玖「私が色々と未熟だからこうなってしまったのです、あはは、私も天界に住んで結構経つというのにまだまだですね」

 

 

衣玖「確かに妖怪は精神は弱い種ですが、私は精神を病んだ事なんて一度も無いんですよ? 今回は特例で厄にやられてしまいましたがもう大丈夫です、雛さん、ありがとうございました」

 

 

衣玖「総領娘様、さっきの私の心の中で思ってしまった声は恐らくその精神厄によるものだと思います、罵倒にも取れる言葉の数々、本当に申し訳ありませんでした」

 

 

天子「…!」

 

 

衣玖「決して私の本心ではありません、だから…」

 

 

諏訪子「おいクソガキ」

 

 

天子「!!」

 

 

早苗、にとり、はたて、雛、衣玖「!」

 

 

神奈子「…」

 

 

諏訪子「お前さっきから黙ってるけど何か言うことないのかよ」

 

 

諏訪子「コイツはこう言ってるけどお前分かんないの? 全部お前の為を思って言ってるんだぞ!」

 

 

諏訪子「よく知らないけどお前は偉い奴の娘だから顔を立てる為ってのもあるんだろうけどそれだけでここまで言ってくれる奴なんてそうそういない!」

 

 

諏訪子「何でか分かるか!? お前がどれ程奇行に走ろうともお前の事を大切に思ってるからだ!」

 

 

諏訪子「お前は何とも思わないのか!? 目ぇそらすな現実を受け入れろ! お前の事を大切に想ている奴の気持ちも考えろよ! その気持ち踏みにじって好き勝手やって傷つけてんだぞ!? 少しは永江の気持ちになって考えた事あんのかお前は!」

 

 

天子「…!」

 

 

衣玖「…!!」

 

 

諏訪子「はぁはぁ…はぁ…」

 

 

早苗(諏訪子様…)

 

 

神奈子(諏訪子…)

 

 

にとり「…立場の上下関係ってのはよくわかるから言わせてもらうけどさ、いつもお前が他人に迷惑掛けてもあんまりおとがめ無しなのは衣玖が頑張ってるお陰なんじゃないかな?」

 

 

にとり「天邪鬼みたいに指名手配されてもおかしくないじゃん、危険人物とは見なされてるかも知れないけどお前の事を誰も邪険にしてないのは何でだろうね」

 

 

天子「…!」

 

 

はたて「…前に」

 

 

はたて「前にあんたが地霊殿を興味本意で襲撃しに行ったって聞いたから取材しに行ったんだけどさ」

 

 

はたて「さとりが言ってたのよ、襲撃が終わった後に永江衣玖が謝りに来てくれたって『あんな奇行種みたいな人にも側にいて見守って、思ってくれる人がいるんですね、羨ましいです』って」

 

 

天子「…!」

 

 

雛「例え精神厄に蝕まれていたとしても心から出た言葉は本心よ」

 

 

雛「あなたにも届いている筈よ、厄に蝕まれない強い心を持っているあなたになら」

 

 

天子「…」

 

 

天子「……」

 

 

衣玖「そ、総領娘様…」

 

 

天子「…」スクッ

 

 

 天子は俯きながらおもむろに立ち上がると衣玖の側に近付き、腰を下ろすと…

 

 

衣玖「総領娘様…あ、あの…」

 

 

 ガバッ!

 

 

衣玖「! …!? えっ…」

 

 

天子「…」ギュッ

 

 

 優しく衣玖の体を抱き締めた

 

 

衣玖「えぇっ…!? そ、総領娘様あの…その…!」アタフタ

 

 

天子「ごめんっ…!」

 

 

衣玖「…!」

 

 

天子「衣玖っ…! 衣玖ごめん…! ごめんね…!」

 

 

天子「グスッ…! ごめんなさいっ…!」ポロポロ

 

 

衣玖「!! …」ニコッ

 

 

 衣玖は少し微笑むと、天子の真似をするように優しく天子の体を抱き締めていた

 

 

 

にとり、はたて「ふっ…」

 

 

雛、早苗「ふふっ…」

 

 

神奈子「…」チラッ

 

 

諏訪子「…」ニコッ

 

 

神奈子(良かったな)

 

 

天子「グスッ…うぅ…!」ポロポロ

 

 

衣玖「…」ニコッ

 

 

 

 私の言葉 あなたにやっと届いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 【守矢神社、中庭】

 

 

にとり「一件落着だね」

 

 

はたて「はぁ、何であんなこと言ったんだろ私…」

 

 

にとり「はたても中々優しいところあるじゃないか」

 

 

はたて「べ、別に取材の内容をそのまま行っただけよ!」

 

 

 

雛「ふふっ、早速二人に助けられちゃったわね」

 

 

早苗「にとりさんとはたてさんの言葉もグッと来ましたがやはり諏訪子様のあの一喝には勝りませんね!」

 

 

神奈子「こらこら早苗、勝ち負けじゃないんだぞ」

 

 

諏訪子「あ、早苗もそう思う? うはは♪ やっぱり守矢のケロちゃんは一味違うだろう?」

 

 

早苗「もちろんですとも!」

 

 

早苗、諏訪子「あーっはっはっは!」

 

 

神奈子「台無しだよ」

 

 

雛「あはは…」

 

 

雛「二人は?」

 

 

神奈子「境内だろう、暫く二人きりにさせてあげよう、積もる話もあるだろうしな」

 

 

雛「ふふっ、そうね…それじゃあ私たちはこれで」

 

 

早苗「えっ、もう行ってしまうんですか?」

 

 

雛「えぇ、次の精神厄をやっつけに行かないといけないから」

 

 

諏訪子「大変だねぇ、厄神様は」

 

 

神奈子「働き者なのは良いことだ」

 

 

諏訪子「何で私を見ながら言うのさ」

 

 

神奈子「他意は無い」

 

 

諏訪子「嘘つけ妖怪三段腹」

 

 

神奈子「あぁ!?」

 

 

早苗「ぶふっ…! あっははは…!」ゲラゲラ

 

 

雛「? それじゃあ早苗ちゃんまたね、衣玖さんたちによろしく伝えておいて」

 

 

早苗「あっ…はははっ…は、はい、ま、また…!」

 

 

神奈子「いい加減私と漫画のキャラを結び付けるのをやめろ! 紫じゃあるまいし、このケロケロ帽子が!」

 

 

諏訪子「ケロケロ帽子をバカにするな! 嫌だったら髪型を変える事だね!」

 

 

 ギャーギャー!

 

 

 

にとり「え、何で喧嘩してんの?」

 

 

はたて「さぁ?」

 

 

雛「お待たせ、次行きましょ」

 

 

にとり「はいよ」

 

 

はたて「はぁ、後五人もいるのね…まぁやるからには最後までやるけどさ」

 

 

にとり「次はどこ?」

 

 

雛「う~ん、精神厄の気配の方角からして…」

 

 

雛「あのお寺かしら」

 

 

にとり、はたて「寺…?」

 

 

 

 

 

【守矢神社、境内】

 

 

 

天子「ねぇ、衣玖」

 

 

衣玖「はい、なんですか?」

 

 

天子「本当にごめんなさい、あなたの気持ちも考えないで私…」

 

 

衣玖「ふふっ、良いんです、気にしないで下さい」

 

 

天子「…気にするわよ、私だってあなたの事は大切に思ってるんだから」

 

 

衣玖「!」

 

 

天子「……こんなの言える立場じゃないわね、虫がよすぎるもの」

 

 

衣玖「そんなことはありません、そう思っていただけるだけでも私はとても幸せです」

 

 

天子「ほ、本当?」

 

 

衣玖「えぇ、もちろん」ニコッ

 

 

天子「…ありがとう、衣玖」

 

 

衣玖「ふふっ、どういたしまして」

 

 

 

天子「衣玖、その…あのね?」

 

 

衣玖「はい、なんですか?」

 

 

天子「考えたんだけど私…痛みの探求については辞められないと思うの」

 

 

衣玖「はい、私もそう思ってました」

 

 

天子「え?」

 

 

衣玖「総領娘様の…楽しみというか趣味というのか分かりませんが、それを無理に辞めろというのは私の口からはとても言えません」

 

 

衣玖「私も趣味を無理に辞めろと言われたら深く傷ついてしまいますもの、ですから総領娘様にそんな残酷なことは言えません」

 

 

天子「で、でも」

 

 

衣玖「でもも何もありません、私がそうしたいのです」

 

 

天子「衣玖…」

 

 

天子「…でも衣玖、もし私が他人に迷惑をかけるような探求をし始めたらそれを止めてほしいの」

 

 

天子「わがままばっかりだけど、衣玖にはずっと私の側にいて見守ってほしいの、私も衣玖の言葉に必ず耳を傾けるから…!」

 

 

衣玖「! 総領娘様…」

 

 

天子「…」

 

 

衣玖「ふふっ、わがままなのは今に始まった事ではないじゃないですか」

 

 

衣玖「それよりも、私と総領娘様の二人でお互い腹を割って話し合えている事の方が大きいです」

 

 

天子「!」

 

 

衣玖「これからは二人で話し合っていきながら、支え合っていきましょう、総領娘様」ニコッ

 

 

天子「! うんっ♪」ニコッ

 

 

 

 

天子「後ね衣玖、一つお願いがあるんだけど…」

 

 

衣玖「あら、いきなりですね」

 

 

天子「ダメ?」

 

 

衣玖「ふふっ、いいですよ、なんなりと」

 

 

天子「うん、あのね衣玖」

 

 

天子「私の事を総領娘様って呼ぶのを辞めてほしいの」

 

 

衣玖「へ…? えぇ!?」

 

 

天子「ほ、ほら…/// せ、せっかくこういう関係になれたんだからさ…/// 地上にいる時ぐらいいいでしょ…?」カアッ

 

 

衣玖「そ、それは構わないですけど…/// ええと…///」カアッ

 

 

衣玖(想像の斜め上の願い事をされてしまいました…これは恥ずかしいというよりはなんかこそばゆいですね…///)

 

 

衣玖(しかし総領娘様の気持ちに応えなければ…覚悟を決めましょう)

 

 

衣玖「で、では…」

 

 

天子「うん…」ドキドキ

 

 

衣玖「…」

 

 

衣玖「……///」カアッ

 

 

衣玖「て、天子…様…///」

 

 

天子「…」

 

 

衣玖「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

天子「えぇ…様付けなの?」

 

 

衣玖「そ、そんな! 私結構頑張りましたよ!? 総領娘様!」

 

 

天子「天子っ!」

 

 

衣玖「て、天子様っ!」

 

 

天子「…でも、そうね」

 

 

衣玖「はい?」

 

 

天子「いや、衣玖が私の事をいきなりさん付けで呼んだり呼び捨てで呼んだりしたらなんか変だなぁと思って」

 

 

衣玖「…あ、確かにそうですね」

 

 

天子「でしょ? う~ん仕方ないわね」

 

 

天子「衣玖、これからは天子…って呼んでね? お願いよ」

 

 

衣玖「はい! 総領むす…!」

 

 

天子「…」ムスッ

 

 

衣玖「て、天子様!」

 

 

天子「ふふふ♪ よろしい♪」

 

 

衣玖「ふふっ…」

 

 

 

 

【守矢神社、中庭】

 

 

天子「皆に一言お礼言わないと気がすまないわ」

 

 

衣玖「ですね、私は個人的に雛さんにお礼をしたいです」

 

 

天子「精神厄…だったっけ? 本当に地上には不思議がいっぱいだわ」

 

 

衣玖「最初薬の名前かと思いました」

 

 

天子「うん、私も」

 

 

 

 オラァー! ドコッ!

 

 

 

天子、衣玖「え…?」

 

 

 

諏訪子「食らいやがれ! 必殺! ケロちゃん首ななめ上飛び込み打ちおろし延髄蹴りっ!」ヒュッ

 

 

神奈子「うごぉあ!?」ゴッ

 

 

 

 ドゴッ!

 

 

 

衣玖「えぇ!?」

 

 

天子「は? え? なにやってんの…?」

 

 

早苗「あ! お二人ともこちらへどうぞ! 今なら守矢名物プチ諏訪大戦が見れますよ!」

 

 

天子、衣玖「えぇ…」

 

 

 

神奈子「食らえっ! ミニ御柱で右から左に向かって対象物を粉砕、玉砕、大喝采する攻撃ぃ!」ヒュッ

 

 

諏訪子「うぎゃあ!?」ガスッ

 

 

 ドベシャッ!

 

 

 

天子「あ、なんか楽しそうね♪」

 

 

早苗「でしょう?」

 

 

衣玖「何故喧嘩を…」

 

 

早苗「喧嘩するほど仲が良い、これが神奈子様と諏訪子様なのです!」

 

 

天子「いや、理由になってない」

 

 

衣玖「? あら、雛さんたちは?」

 

 

早苗「雛さんたちなら次の精神厄退治に向かいました、まだまだ精神厄で苦しんでいる方がいるみたいで」

 

 

天子「むぅ、お礼も言わせないで行っちゃうなんて…」

 

 

衣玖「お礼を言うのはもう少し先になりそうですね、そうりょ…! て、天子様」

 

 

天子「ん~…もう少し待っててくれても良かったのに」

 

 

早苗「…お二人ともとっても良い顔をするようになりましたね」

 

 

天子、衣玖「!」

 

 

天子「そ、そりゃあ…ね…///」

 

 

衣玖「まぁ、はい…///」

 

 

早苗「あぁ、なんか雰囲気も良いですね! ご馳走さまです!」

 

 

早苗「あ、ご馳走さまと言えば天子さんたちもここでお昼食べていきませんか?」

 

 

衣玖「ご一緒してもよろしいのですか?」

 

 

早苗「はい♪ 私が腕に撚りを掛けて作ります!」

 

 

天子「あんた料理出来たんだ…まぁ作ってくれるなら」

 

 

衣玖「お言葉に甘えましょうか、早苗さん、よろしくお願いしますね」

 

 

早苗「はい! それでは少し待っててくださいね」 

 

 

天子「…思ったんだけど早苗って結構勝手にベラベラ喋るタイプよね」

 

 

衣玖「あはは…そうですね」

 

 

天子「…」

 

 

 スワコォー! カナコォー!

 

 

天子「…喧嘩するほど仲が良い、か」

 

 

衣玖「そういえば私たち喧嘩という喧嘩はしたこと無いですね」

 

 

天子「言い争ったりはあるじゃない」

 

 

衣玖「あれは喧嘩と呼べる物では無いのでは?」

 

 

天子「そうかもね」

 

 

衣玖「はい」

 

 

天子「…」

 

 

衣玖「…」

 

 

天子「衣玖」

 

 

衣玖「はい」

 

 

天子「これからもずっと側にいてね、よろしくね、衣玖」

 

 

衣玖「! はい! 総領娘様! …あっ!」

 

 

天子「! …」ジトッ

 

 

衣玖「うっ…て、天子様…」

 

 

天子「はぁ…早く慣れてね」

 

 

衣玖「は、はい…頑張ります」

 

 

天子「ふふっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 【命蓮寺、中庭】

 

 

 

蘇我屠自古「お前調子に乗んのもいい加減にしろよこらぁ!!」バチバチ

 

 

物部布都「ぬぉぉ!? と、屠自古ぉ!! じ、慈悲をぉぉ!」

 

 

 

ナズーリン「大丈夫だ寅丸ぅ! 永遠亭で頭カチ割ってもらって正常かどうか確認してもらうだけだからなぁ!」

 

 

寅丸星「そんなことをしたら死んでしまいますよナズぅ! いやぁぁ!!」

 

 

 

豊聡耳神子「ほら、じゃんけん勝負だ聖、今日は私が勝つからな」

 

 

聖白蓮「いえ、ですから…もう少し待ってくれませんか? まだ頭痛が酷くて…」グッタリ

 

 

 

雛、にとり、はたて「…」

 

 

雛、にとり、はたて「えぇ…?」

 

 

にとり「何が何でどうしてこういう状況になったんだろうか」

 

 

雲居一輪「それは話すと…」

 

 

村紗水蜜「長くなるよ、うん…」

 

 

多々良小傘「今日はなんか大変な一日だよね…」

 

 

幽谷響子「マミゾウさん大丈夫ですか?」

 

 

二ツ岩マミゾウ「イカン、儂まで頭が痛くなってきた…」

 

 

封獣ぬえ「つーかあいつらもどうすんだよ」

 

 

秦こころ「とじーがもののふに雷落とすのはいつもの事だぞ?」

 

 

はたて「精神厄あるところにカオス有りなのかしら」

 

 

にとり「雛、誰から精神厄を感じるの?」

 

 

雛「あの緑の亡霊さんと、ネズミさんからね」

 

 

雛「でも凄いわね、二人とも精神厄に蝕まれそうになっているけどギリギリのラインで理性が厄を押し留めているわ」

 

 

はたて「あいつは亡霊だし、ネズミの方は妖怪でも賢将と呼ばれているだけはあるのかしら」

 

 

雛「亡霊さんは厄が大きくなったり小さくなったり揺れ幅が大きいわ、ネズミさんは厄の肥大化を何か強い力で無意識に押さえつけてるわね」

 

 

にとり「厄もやっぱり千差万別なんだね」

 

 

一輪「厄…? 何の事?」

 

 

にとり「後で説明してあげるよ、雛、やっちゃいなよ」

 

 

雛「その前にどうしてああなってしまったか教えてもらえるかしら?」

 

 

はたて「あれ、手早く済ませないでいいの?」

 

 

雛「暴走は押し留められているから、ああなってしまった原因を聞いた方が厄の吸収も捗るわ、衣玖さんのように気絶させる程の荒治療になることもなくなるの」

 

 

はたて(雛が医者に見えてくる不思議…)

 

 

水蜜「本当に聞きたいの?」グッタリ

 

 

一輪「あなたたちまで頭痛くなると思うよ?」グッタリ

 

 

にとり「そんなに柔じゃないよ、てか何でそんなにグッタリしてるのさ」

 

 

一輪、水蜜「…」

 

 

一輪「いや…同じ仏門に身を置く仲間だけどもつくづく星と私たちの頭の中の作りが違うんだな、と思って」

 

 

水蜜「逆に私たちがおかしいのかもしれないって納得させられるところだったんだもん」

 

 

雛、にとり、はたて「?」

 

 

小傘「早苗じゃないけどさ、私たちの常識は星さんにとっての常識とはかけ離れてるんだと思う」

 

 

こころ「逆も然りだ」

 

 

ぬえ「私たちの方が正常だ、そうに決まってる」

 

 

マミゾウ「まぁ何じゃ、そんなに聞きたいのなら話してやるが」

 

 

響子「マミゾウさん、無理しないでください」

 

 

マミゾウ「大丈夫じゃ、ありがとな響子、さて…すまんが横になったままで話しをさせてくれ」

 

 

雛「えぇ」

 

 

にとり(この狸がここまで弱ってるの初めて見たな)

 

 

マミゾウ「お主らがここに来る少し前になるんじゃが…」

 

 

 

 

 ホワンホワン

 

 

 【数十分前、命蓮寺境内】

 

 

 

星『あぁ、皆さんよく集まってくれましたね』

 

 

一輪『まぁそりゃあね』

 

 

水蜜『星があんな深刻な顔して相談があるなんて言い出したからさ』

 

 

小傘『ちょっとびっくりしちゃったよね』

 

 

ぬえ『お前がびっくりしてどうすんだよ』

 

 

小傘『はっ!?』ドギャーン

 

 

こころ『ぬっ!』スチャッ

 

 

ぬえ『対抗して驚きの表情の面被るなよ』

 

 

響子『あははは!』

 

 

マミゾウ『お主大分ツッコミ役が板についてきたの』

 

 

ぬえ『やめろよ、定着させんな』

 

 

こころ『でもたまにボケてくれるぬえっちが好き』

 

 

ぬえ『そういう事を言うな!』

 

 

一輪、水蜜『ふっ…!』

 

 

マミゾウ『ククク…!』

 

 

星『あ、あの~、私の相談聞く気あります?』

 

 

マミゾウ『おお、すまんすまん』

 

 

水蜜『ごめんごめん、ぬえが可愛くてついね』

 

 

ぬえ『…///』

 

 

聖『ふふっ…星、皆貴方の悩みを解決するためにここにいます、ですが一番相談したいであろうナズーリンを待たなくて良いのですか?』

 

 

星『えぇ、その方が良いんです、ナズがいるとまたため息を吐いて元気を無くすのではないかと思いまして』

 

 

一輪、水蜜、ぬえ、聖(ナズが元気を無くす…)

 

 

マミゾウ(察したわい)

 

 

聖『そ、それで星、相談というのは何なのですか?』

 

 

星『あぁはい、相談というのはですね』

 

 

星『宝塔の事なんですけど』

 

 

一輪、ぬえ、水蜜、こころ、小傘『うん知ってた』

 

 

星『え?』

 

 

マミゾウ『あぁ気にするな、続けてくれ』

 

 

こころ(…お?)

 

 

星『? はい、それで宝塔の事なんですけどね?』

 

 

星『ほら…宝塔って私も何故だかわからないんですけど私の手元からよく無くなるじゃないですか』

 

 

星『もう本当に本当に何でこんなに無くなるのか不思議でしょうがないんですけどもね? それで私ふと思ったんですけど』

 

 

星『宝塔が無くなるとナズに怒られてしまう、これは分かるんですよ、ナズは宝塔を大事にしていますからね』

 

 

星『それで思った事なんですけど…』

 

 

 

 

 

 

 

星『宝塔が無くなる事については全面的に私が悪いんですかね?』

 

 

マミゾウ、こころ『ん?』

 

 

水蜜、一輪、ぬえ『は?』

 

 

聖、小傘、響子『え?』

 

 

星『? ですから宝塔が無くなるのって私が悪いんですかねって』

 

 

星以外『え?』

 

 

星『え?』

 

 

 

 

 

 

星以外『ええぇぇぇぇぇ!!?』

 

 

星『どうしたんですか? いきなりそんな大声出して』

 

 

一輪『どうしたはこっちのセリフよ!』

 

 

水蜜『うわぁ…なんか、うわぁ…』

 

 

ぬえ『お前とうとうヤバイぞ!』

 

 

響子『な、なんか背筋がゾゾゾ~ってなりました…』

 

 

小傘『わ、私も…』

 

 

こころ『?? ???』

 

 

聖『あぁ…なんか頭が痛くなってきました…』クラッ

 

 

マミゾウ『大丈夫か? しかしお主は何をいきなり言うとるんじゃ…』

 

 

星『え? 私変なこと言いましたか?』

 

 

一輪、ぬえ、水蜜、小傘『言ったよ!』

 

 

星『えぇ…それこそ私が『ええぇ』なんですけど』

 

 

一輪『ね、ねえ…星…? 今自分が変なこと言ったって自覚ある?』

 

 

星『無いですね』キッパリ

 

 

一輪『えぇ…』

 

 

星『だって変も何も無いじゃないですか』

 

 

一輪『…なんか鳥肌立ってきた』orz

 

 

こころ『いっちーがやられた』

 

 

小傘『恐いんだけど…』

 

 

水蜜『星…あのさ、ほら…例え話だけど宝塔が無くなるじゃん?』

 

 

星『はい』

 

 

水蜜『それはナズに対して申し訳ないなーって気持ちはあるの?』

 

 

星『まぁ、はい』

 

 

水蜜『宝塔が無くなる事については?』

 

 

星『私は悪くありませんよね?』

 

 

水蜜『…手に負えないんだけど』orz

 

 

こころ『みなみっちゃんもやられた』

 

 

ぬえ『…お前さ、何でそんな結論に至ったんだよ』

 

 

星『何がですか?』

 

 

ぬえ『自分が悪くないって』

 

 

星『はぁ…一から説明していいですか』

 

 

ぬえ『おい! 何で今ため息吐いたんだよ!』

 

 

マミゾウ『押さえろ、相手の思う壺じゃぞ?』ヒソヒソ

 

 

星『あのですね? 皆さん良く聞いてくださいよ?』

 

 

星『宝塔はね、私が無くしてる訳では無いんですよ、勝手に無くなるんです』

 

 

星『故意に私が無くした事は一回ありましたが、それ以外は私は関わっていないんですよ? 勝手に私の見ていないところで何故か無くなるんです』

 

 

星『ナズに怒られるのが分かっていて無くす馬鹿者が何処にいるんですか? 私は無くしたくないんですよ? 無くなる事については私は無関係だとも最近思うようになりましたし、勝手に無くなる相手をどうしろと言うんですか?』

 

 

星『あぁ、なんかそう思うとナズが私に怒るのもお門違いなのではないかと思いませんか? ナズは勝手に無くなる宝塔そのものに怒るべきなのではないでしょうか?』

 

 

星『で、です…今のを踏まえた上でもう一度言いますけど』

 

 

星『宝塔が無くなる事については私は悪くないですよね?』

 

 

ぬえ『…おいコイツどうにかしろ』orz

 

 

こころ『ぬえっちもやられた』

 

 

響子『はわわわっ…!』オドオド

 

 

小傘『ど、どうしたら良いのかな…』

 

 

聖『…すいませんマミゾウさん、肩に寄りかかってもいいですか?』

 

 

マミゾウ『…構わんが』

 

 

聖『ありがとうございます、さっきから頭痛がして…』

 

 

マミゾウ『気持ちはわかるぞい』

 

 

星『? 聖、大丈夫ですか?』

 

 

聖『大丈夫じゃないですよ…貴方も私も』

 

 

星『はい?』

 

 

マミゾウ『…星、聞いてよいか?』

 

 

星『はい』

 

 

マミゾウ『お主は何故宝塔が自分の側から無くなるかを考えた事はあるか?』

 

 

星『あ~…前は考えてたんですけど考えても答えが出ないので考えない事にしたんです』

 

 

マミゾウ『…あのな星、儂から言えることはこれだけじゃ』

 

 

マミゾウ『物というものは勝手に無くなるなんて事は無い、持ち主の不注意か無意識にポロッと無くしてしまうもんなんじゃ、宝塔はここの宝…誰かがイタズラで隠すなんて事もせんしな』

 

 

マミゾウ『自分の物を管理する能力というものが欠けていたりするもんなんじゃ、心当たりは無いんか?』

 

 

マミゾウ『もう一度自分と向き合ってみい、そうすれば宝塔が何故無くなるのかが自ずと見えてくるはずじゃ』

 

 

星『…』

 

 

小傘、響子(ま、マミゾウさんカッコイイ!)

 

 

星『マミゾウ』

 

 

マミゾウ『?』

 

 

星『はぁ…あなたからそんな言葉が出るとは思いませんでしたよ、私の話を聞いてたんですか?』

 

 

星『宝塔は私の知らない、見ていないところで勝手に無くなるんですよ』

 

 

星『それをどうしろって言うんですか? 宝塔と一日中にらめっこしてろって言うんですか? そんな拷問私には耐えられませんよ』

 

 

星『ほら、私悪くないじゃないですか』

 

 

マミゾウ『…』

 

 

マミゾウ『どうせぇっちゅうんじゃい…』グッタリ

 

 

響子、小傘(あぁ! 心を折られたー!?)

 

 

星『聖…あぁ頭痛が酷いんでしたね、では…響子、小傘、こころ』

 

 

響子、小傘『ひえっ!?』

 

 

星『あなたたちはどう思いますか? 私が悪いと思いますか?』

 

 

星『よーく考えてみてください、私が悪いところなんてないと思うんですよ』ズイッ

 

 

響子、小傘『ひぃぃ…』ブルブル

 

 

こころ『とらっち』

 

 

星『はい?』

 

 

こころ『驚いて言いそびれたから言えなかったのだが、さっきからその襖越しに誰かがこちらを覗いている』

 

 

響子、小傘『えぇっ!?』ビクッ

 

 

星『なんと覗きですか! 感心しませんね!』スッ

 

 

 バッ!

 

 

星『不埒者め! 何者ですか! 私が成敗してくれま…!?』

 

 

ナズ『…』

 

 

星『いぃ!? ななななナズぅ!?』

 

 

こころ『おぉ、ナズーだったか』

 

 

ナズ『私を成敗とは…君は何様のつもりなんだい? ご主人』

 

 

星『い、何時からそ、そこに…?』

 

 

ナズ『君が最初に宝塔と口にしたときからだね』

 

 

星『……』

 

 

星『えっ、それほぼ最初からじゃないですか?』

 

 

ナズ『そういう事になるな、さてご主人』フッ

 

 

 ゴゴゴゴゴゴ!

 

 

星『!!?』

 

 

ナズ『随分と好き勝手を言うじゃないか寅丸ぅ…!』ゴゴゴゴゴゴ

 

 

響子『な、ナズーリンさん!?』

 

 

小傘『あ、あのオーラは!』

 

 

こころ『前に霊夢達と見たやつだ』

 

 

聖『あぁ…毘沙門天様…』

 

 

 

ナズ『私は悪くないだの、勝手に無くなるだの、私が貴様に怒るのはお門違いだの…ふざけるのも大概にしろよ寅丸ぅぅ!!』

 

 

星『ひえぇっ!!』

 

 

ナズ『仲間の声にも耳を傾けず、挙げ句には納得させるために詰め寄って脅しをかけるとは…不届き也!!』

 

 

ナズ『来いっ!! その根性を叩き直してくれるっ!』グッ

 

 

星『いたたっ!! ひ、引っ張らないで下さ痛いっ! だ、誰か助けて下さいー!!』ズルズル

 

 

 イヤァァァ…!

 

 

響子、小傘『い、行っちゃった…』

 

 

こころ『みんな、悪は去ったぞ』

 

 

一輪『うっ…やっぱり星を止められるのはナズしかいないのね…』

 

 

水蜜『鳥肌ヤバイ…てか何でたまにあんな素っ頓狂の事を言うんだろ』

 

 

ぬえ『絶対アイツ頭のネジ外れてるぞ…』

 

 

マミゾウ『頭のネジだけで済めばええがの…』

 

 

聖『頭痛が…』ズキズキ

 

 

 ガララッ!

 

 

神子『失礼するよ』

 

 

屠自古『勝手に入っちゃって良いんですか? って、お?』

 

 

こころ『お、みみこ、とじー』

 

 

聖『神子…』

 

 

神子『おぉ、ここにいたかこころ、会いたかったぞ!』スリスリ

 

 

こころ『ぬあっ、やめろくっつくなー』ユサユサ

 

 

屠自古(…なんかこの部屋空気が淀んでるな)

 

 

神子『ん? どうしたお前たち、元気が無いな』

 

 

一輪『無いのは宝塔だけで充分だわ…』

 

 

屠自古『何があったんよ…』

 

 

水蜜『家の飼ってる虎がね…ちょっと暴れたの…』

 

 

神子『虎は獰猛だからな、放し飼いはよくないぞ』

 

 

ぬえ『マジで檻の中に入れといた方がいいんじゃないのか?』

 

 

マミゾウ『それであやつの頭が治れば苦労はせんわい』

 

 

聖『それで神子…寺に来た用件は何ですか…?』

 

 

神子『今日は土曜日だろう、いつものじゃんけんだ』

 

 

聖『あぁそうでしたね…でももう少し待ってくれませんか? 頭痛が酷いんです』

 

 

神子『お前が頭痛? フッ、珍しい事もあるものだな、はっはっは♪』

 

 

屠自古『虎ってあの宝塔持ちの奴の事だよな?』

 

 

一輪『持ってないよ』

 

 

屠自古『は?』

 

 

一輪『そのいつも持ち歩いてるみたいな言い方しない方がいいよ』

 

 

屠自古『マジで何があったんよ…』

 

 

こころ『とじー、もののふは今日一緒じゃないのか?』

 

 

屠自古『布都か? 布都なら…あ?』

 

 

屠自古『太子様、布都がいません!』

 

 

神子『む? おかしいね、さっきまで着いて来ていたのに』

 

 

屠自古『…! まさかあいつ…!』

 

 

神子『…? あぁ、またか…私としてはこころの大切な拠り所の一つでもあるここを燃やされるのは忍びないのだけれどもね』

 

 

屠自古『あのアホが…! おいお前ら、あいつ捕まえるの手伝ってくれ!』

 

 

 

 

 ホワンホワン

 

 

 

 

マミゾウ「全員グッタリしている体に鞭を打ち、皆で中庭に出て寺の柱に松明で火を着けようとしておったあやつを発見、そして今に至るという訳じゃ」

 

 

雛、にとり、はたて「…」

 

 

はたて「何か…大変だったみたいね…うん…」

 

 

にとり(これここにいる皆が精神厄にやられていてもおかしくないんじゃ…)

 

 

雛「そう…話してくれてありがとう、事情は分かったわ」

 

 

マミゾウ「ほうか…あぁ疲れたわい…」

 

 

はたて「一匹の虎が爆弾発言しただけで命蓮寺がここまで弱体化するとはね」

 

 

一輪「あんな大きな爆弾だったらそりゃあね」

 

 

水蜜「被害は甚大だよ、主に精神の方…」

 

 

にとり「雛…」

 

 

雛「うーん…私は厄専門だからそういうのはお医者様に任せるわ」

 

 

にとり「だよね」

 

 

雛「さてと…あの二人から厄を取り除かないと」スッ

 

 

はたて「密着させてもらうわよ、今度はこの目で精神厄を見なくちゃね」スッ

 

 

 

にとり「それにしても宝塔、私の技術でなんとか出来ないかな」

 

 

一輪「やってくれると嬉しいわ…寺の悩みの種だから」

 

 

にとり「宝塔に発信器を着けてみたりとか色々と案はあるけどね」

 

 

水蜜「いや、宝塔をどうにかしても解決にはならないんじゃない? 問題なのは星の方なんだからさ」

 

 

にとり「そっかぁ持ち主…! あの虎を改造してみるのが一番かもね、実は最近サイボーグって技術に興味があってさ♪」

 

 

マミゾウ「なんか色々と収拾つかなくなるからやめい」

 

 

 

屠自古「今日は百万ボルトで勘弁してやんよ!」

 

 

布都「ぬぉ!? 前の十倍ではないか屠自古ぉ!」

 

 

屠自古「うっせぇ! 命蓮寺の焼き討ちはやめろって太子様から言われてんだろうが! いい加減分かれや!」

 

 

屠自古「そもそもお前が寺を燃やす動機はなんなんだよ!」

 

 

布都「ふっ…なに、簡単な事じゃ」

 

 

布都「そこに寺があるじゃろう?」

 

 

屠自古「…」

 

 

布都「燃やしたくなるじゃろうが!」

 

 

屠自古「わかんねぇよ!」

 

 

布都「この気持ちが分からんとはな! 見損なったぞ屠自古!」

 

 

屠自古「もうどうでもいいわバカ野郎!」バチバチ

 

 

布都「ぬっ!?」

 

 

屠自古「放電! 百万ボルト!」ズッ

 

 

 バリバリバリッ!!

 

 

布都「ぬぎゃあぁぁぁぁ!!?」

 

 

 

 

屠自古「…」バチバチ

 

 

布都「  」プスプス

 

 

屠自古「ったく…それ以前に寺が燃えたらこころが悲しむって事を分かれや」

 

 

はたて「す、凄いわね…目の前に雷雲があるみたい」

 

 

雛「静電気とか大丈夫かしら」

 

 

屠自古「ん? お前らは…?」

 

 

雛「初めまして、私は厄神の鍵山雛、こっちは友達の天狗のはたてよ」

 

 

はたて「どうも」

 

 

屠自古「天狗に厄神…何か私に用があるのか?」

 

 

雛「えぇ、あなたの厄を吸い取らせてほしいの」

 

 

屠自古「な、何!? 私に厄!?」

 

 

はたて「あるみたいよ、精神を蝕む厄があんたの中に」

 

 

屠自古「精神? 何だよそのストレスみたいなの」

 

 

はたて「察しが良いのね、まぁそんな物だと思ってもらっても構わないわ」

 

 

屠自古「…まぁ確かに苦労は絶えない生活はしてるからな、あぁ厄のことならやってくれるんならやってくれ」

 

 

雛「ありがとう、ではさっそく」スッ

 

 

 ポンっと雛は屠自古の肩に手を置く

 

 

屠自古「お…? おぉ~…」

 

 

はたて(これが吸収…はっ! 取材取材…♪)

 

 

はたて「ねぇ、どんな気分?」

 

 

屠自古「お、おぉ、な、なんかな」

 

 

屠自古「心がスーっとしていく様な感じがするな、一人でのんびりしているときと同じ様な気分だ」

 

 

はたて「ほぅほぅ…」メモメモ

 

 

雛(雷を打った時、精神厄が小さくなっていたのが見えたわね、大きくなったり小さくなったりしてあまり際立ってないけど放っておけないわね)

 

 

 ズズッ! スポンッ!

 

 

雛「…よし、取れたわ」

 

 

屠自古「! うわっ、なんだそれ」

 

 

雛「これがあなたの中に溜まっていた厄よ、精神厄って言うんだけど」

 

 

屠自古「黒いモヤモヤ…どす黒い雷雲がシャボン玉の中に入ってるみたいだな」

 

 

はたて(あ、今の表現凄い的確ね、いただきだわ)

 

 

雛「…」ズズッ

 

 

屠自古「!? おい…いや、大丈夫なんだろうな、厄神だからそれを吸収しても」

 

 

雛「えぇ、お仕事ですから♪」

 

 

屠自古「心なしか体も軽くなった気がするな…厄の事は良くわからんが、助けてくれてありがとな」

 

 

雛「いえいえ、どういたしまして♪」

 

 

 

 

一輪「精神厄とか初めて聞いたわ」

 

 

にとり「だろうね」

 

 

水蜜「病気との違いが良くわかんないけど、そんなもんが存在してんだね」

 

 

ぬえ「私とは一生縁が無さそうだな」

 

 

マミゾウ「どうかのう、誰しもがその要因を持っているのだとしたら気を付けねば足下をすくわれるかもしれんぞい?」

 

 

小傘「響子ちゃんの元気を見習えばその厄も出てこないかも」

 

 

響子「そ、そうかな…/// えへへ…///」

 

 

聖「確かに響子が一番その厄とは無縁かもしれませんね」

 

 

こころ「ぎゃーちゃんが羨ましいな」

 

 

神子(ふふふっ…屠自古を助けてくれたのか、あの厄神には個人的に何かお礼をしないといけないね)

 

 

 

ナズ「往生際が悪いぞご主人! 永遠亭で診察を受けるだけでいいんだ!」

 

 

星「い、嫌です!」

 

 

ナズ「何が嫌なんだ! 私はな? やっと決心が付いたんだ、仲間にまで迷惑をかけ、無くし続けても改善の策を考えないその思考! このままでは何も変わらないのだよ!」

 

 

星「なんと言われようと医者は嫌です! 注射は嫌いなんですよ!」

 

 

ナズ「注射? ハハッ♪ そんなもんで済むわけないだろう?」

 

 

ナズ「頭の中を隅々まで調べてもらうんだ…どんな検査をするのかは分からないがきっと注射よりも素晴らしい物が君を待っていることだろうね」

 

 

星「!?」ゾクッ

 

 

ナズ「大丈夫だよ、永遠亭のうどん殿と私は知り合いでね、話を通してくれるだろうから八意永琳はきっと良心的に接してくれるはずさ」

 

 

星「くっ…な、ナズ! どうあっても私を医者に連れていくつもりですか!?」

 

 

ナズ「もう決まった事なんだよご主人」

 

 

星「む、無理矢理連れていくというのならですね! 私にも考えがありますよ!」

 

 

ナズ「考え?」

 

 

星「も、もし医者に行って…か、帰って来たらですね!」

 

 

星「宝塔をずっと無くし続けてやることを誓ってやりますよ! えぇ!」

 

 

ナズ「…」

 

 

星「…」ビクビク

 

 

ナズ「…」

 

 

星「…」

 

 

ナズ「 」ブチッ

 

 

 

 

 

 

ナズ「そんなことが許されると思っているのかぁ!!」ゴォッ

 

 

星「ひゃっ!?」

 

 

ナズ「来いっ! 貴様が医者に行く意思を見せなければこのまま引き摺ってでも連れていくだけだぁ!」

 

 

星「いやあぁぁぁぁ!」

 

 

 ガシッ!

 

 

ナズ「ん!?」

 

 

星「えっ!?」

 

 

はたて「はい止まって」

 

 

ナズ「な、何をする! 離したまえ!」

 

 

はたて「取り込み中悪いけどこっちにも事情ってもんがあんのよ、やっちゃって雛」

 

 

雛「ありがとうはたて、ネズミさん、ごめんなさいね」スッ

 

 

ナズ「何を…! !!」ポンッ

 

 

雛「…」ズズッ

 

 

ナズ「うっ…うはぁ…んぐっ…」ズズッ

 

 

雛「危なかったわ…もう少しで衣玖さんの様に暴走するところだった」ズズッ

 

 

はたて「私には既に暴走してたように見えたんだけど…」

 

 

雛「ネズミさんには何か神の力があるみたいね、加護のような形でネズミさんに付いているの、でも今の一言でそれがプツリと途切れてしまったのよ、だから精神厄を抑えきれなくなったのね」

 

 

はたて「神…? てかあんたは何で火に油を注ぐような事を言うのよ」

 

 

星「だ、だって…」

 

 

はたて「だってもなにも無いわよ、ネズミがこうなったのはあんたのせいなのよ?」

 

 

はたて「宝塔の話は聞いたわ、ハッキリ言うけどあんたのその謎理論は理解できない、あんたが宝塔を無くす無くさないの話よりもっと大事なものがあるでしょ?」

 

 

雛「呆れながらも宝塔を探し続けてくれるネズミさんの気持ち、優しさ…あなたはどう感じるの?」

 

 

 スタスタ

 

 

にとり「宝塔は例え宝でも物だ、無くしても頑張って探せば見つけられるけど人への信頼ってのは一度無くすと取り戻すのはそう簡単じゃないんだぞ」

 

 

星「! …」

 

 

雛「チャンスはまだあるわ、大事なのはあなたが誠意を見せることよ、簡単な事からでいいから失われてしまった信頼を少しずつ取り戻していって?」ズズッ

 

 

ナズ「…」ズズッ

 

 

星「…」

 

 

星「ナズ…」

 

 

 ズズッ スポンッ!

 

 

雛「ふう…よし、取れたわ」モヤモヤ

 

 

にとり「うわぁ、初めて近くで見たけどなんか黒いガスみたいだね」

 

 

雛「たぶんガスよりも危険よ? んっ…よし、吸収完了」ズズッ

 

 

はたて(ガスねぇ、確かに…う~ん新聞に乗せるとしたらどんな例えがいいかな)

 

 

ナズ「んっ…ん? あれ?」

 

 

にとり「気が付いた?」

 

 

ナズ「君たちは…? 気が付いた、とは?」

 

 

ナズ(ご主人が何かを口走ってからの記憶が飛んでいるな…はて…)

 

 

はたて「まぁまぁ、そんなことはどうでもいいじゃない」

 

 

雛「ふふっ、あぁそうそう、そんなことよりそこの虎さんが話したい事があるそうよ」

 

 

ナズ「? あ、そうだご主人!」

 

 

星「…」

 

 

ナズ「まぁさっきのは大げさだったが永遠亭には行った方がいいんだ、これはご主人のためにもなるし命蓮寺の皆の為にもなるのだからね、さぁご主人も覚悟を決めて…!?」

 

 

星「…」orz

 

 

ナズ「えっ…!? ど、どうしたんだいご主人、何故土下座を…」

 

 

星「ナズ…ごめんなさい…本当に申し訳ありませんでした」

 

 

星「宝塔を無くしてしまった責任は全て私にあります…本当に申し訳ありません」

 

 

ナズ「…! また何か企んでいるのかい? いきなりそんなことを言うなんてご主人らしく無いじゃないか」

 

 

星「…! チャンスをいただきたいのです」

 

 

ナズ「チャンス…?」

 

 

星「信頼を取り戻すチャンスです、ナズに、そして皆に」

 

 

星「今更過ぎますけどね…こんなこと言える資格なんて私には無いのは分かってます…ですが」

 

 

星「私自身の考えを変えていかなければ宝塔を無くし続ける生活はこれからも続いてしまう…そうしたら私はもう誰からも頼られなくなってしまいます、信頼もされなくなってしまいます」

 

 

ナズ「!」

 

 

ナズ「…そのチャンス、具体的に何をするんだい?」

 

 

星「一週間宝塔を私の元から無くさない様にします」

 

 

ナズ「…! 君に出来るのかい?」

 

 

星「出来る出来ないではありません、やるんです…やり遂げてみせます」

 

 

ナズ「…! …ふっ」

 

 

ナズ「この短時間で君の中に何があったのかは知らないが、軽率に言葉は使わないものだ」

 

 

ナズ「だが…今までにない熱意は感じ取れたよご主人」

 

 

星「…!」

 

 

ナズ「覚悟の上だね?」

 

 

星「! はいっ!」

 

 

ナズ「ふっ、なら皆にも説明しなければいけないね、また『えぇぇ』と言われるかも知れないが」

 

 

星「そ、それも覚悟の上です!」

 

 

ナズ「ふふっ、なら行こうか、皆の元へ」

 

 

星「はい!」

 

 

ナズ「……あぁそうだそこの三人、感謝するよ」

 

 

雛、にとり、はたて「!」

 

 

はたて「は、はぁ? 私たちは別に何もしてないけど」

 

 

ナズ「私の記憶が飛んでから君たち三人が私の側にいたこと、そしてご主人の考えがいきなり変わった事から君たちは無関係ではないのだろう?」

 

 

ナズ「…ありがとう」スッ

 

 

雛、にとり、はたて「…」

 

 

にとり「な? お礼を言われるのは悪くないだろう? ほっこりするもん」

 

 

はたて「な、何で私を見て言うのよ!」

 

 

雛「ふふふっ…」

 

 

 スタスタ

 

 

聖「では」

 

 

神子「私たちからの礼も受け取ってくれるかな?」

 

 

雛、にとり、はたて「!」

 

 

聖「精神厄の事はよくわかりませんが、ナズと星を助けていただいてありがとうございました」

 

 

神子「屠自古のことも助けてくれたのだろう? 感謝するよ」

 

 

にとり「いやぁ♪ それほどでも」

 

 

はたて「あんた何もしてないでしょ」

 

 

にとり「なんだとぅ!? それを言うならはたてだって」

 

 

 ぎゃーぎゃー!

 

 

雛「あ、あはは…」

 

 

聖「ふふっ、仲がよろしいことで」

 

 

神子「上下関係の無い友情ほど眩しいものはないな」

 

 

雛「こちらこそ厄を取り除かせていただいてありがとうございました、それでは私たちはこれで…」

 

 

神子「…! ほう、まだその厄に苦しむ人たちをお前たちは救おうとしているのだな」

 

 

雛「…!」

 

 

神子「ならば頑張りなさい、お前たちの頑張りはきっと報われるはずだ」

 

 

雛「あ、ありがとうございます」

 

 

雛「にとり、はたて、行きましょう!」

 

 

はたて「ちっ…ほらにとり、さっさと行くわよ」

 

 

にとり「舌打ちすんなっ! あ! そうだ!」

 

 

聖、神子「?」

 

 

にとり「なぁ、土曜日のじゃんけんってなんだ? 気になってたんだけど」

 

 

聖、神子「へ? あぁ」

 

 

聖「こころの為のじゃんけんです」

 

 

神子「月曜、火曜、水曜日は我ら神霊廟で、木曜、金曜、土曜日はここ命蓮寺でこころは寝泊まりをしているのだ」

 

 

にとり「なにその仕事みたいなの」

 

 

聖「それで日曜日なんですが…こころの寝泊まり場所はじゃんけんで決める事になったんです」

 

 

神子「私はこころの好きな様にさせれば良いと言ったのだがな」

 

 

聖「は!? それは私が言ったんですよ!?」

 

 

神子「…はてさて、そうだったかな? はっはっは♪」

 

 

聖「誤魔化さないでください! 貴方という人は本当に…!」

 

 

神子「まぁどっちでも良いじゃないか」

 

 

聖「良くありません!」

 

 

はたて(仲良いわね)

 

 

にとり(夫婦かな?)

 

 

雛「ふふふっ、さ、行きましょ二人とも、お二人の邪魔をしては悪いわ」

 

 

はたて「そうね」

 

 

にとり「だね、雛、次はどこ?」

 

 

雛「ん? ネズミさんが行こうとしてた場所」

 

 

はたて、にとり「おっ…!?」

 

 

 

聖「いきますよ!」

 

 

神子「ふふふ、私はパーを出すぞ?」

 

 

聖「そんな手には乗りません!」

 

 

神子「ふふふっ、では…」

 

 

聖、神子「じゃーんけーんホイッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【迷いの竹林】

 

 

 ザッザッザ…

 

 

藤原妹紅「精神厄?」

 

 

雛「そうなの」

 

 

妹紅「ほー、そんなもんがあんのな、初めて知ったよ」

 

 

はたて「大体皆同じ反応よね」

 

 

にとり「まぁそりゃあねぇ」

 

 

妹紅「もしかして私にもその厄があったりすんのか?」

 

 

雛「えぇ一応ね、不老不死だろうと厄は溜まるから」

 

 

にとり「でももこたんはその厄は表に出て来ないんじゃない?」

 

 

妹紅「もこたん言うなっての、ってどうしてだよ」

 

 

にとり「ほら、輝夜とボコスカ殺りあってるからストレスとは無縁でしょ」

 

 

妹紅「…否定できないな、それがなんか嫌だな」

 

 

はたて「否定したいの?」

 

 

妹紅「なんかその言い方だと輝夜のお陰でストレスとは無縁なんだって言われてるようでなんか嫌なんだよ」

 

 

雛「実際そうなんじゃないかしら」

 

 

妹紅「やめてくれ…」

 

 

 

妹紅「そうだ、さっきお前たちが来る前にも道案内したんだけどさ」

 

 

にとり「そうなの?」

 

 

妹紅「ふっ…去年のクリスマスのときの面子が集まったな」

 

 

雛、にとり「…!」

 

 

はたて「?」

 

 

 

 

 

 【永遠亭、客間】

 

 

八雲藍「…う~ん」

 

 

魂魄妖夢「はぁ…」

 

 

妖夢「…藍さん」

 

 

藍「なんだ?」

 

 

妖夢「あの二人が黙って診察されると思いますか?」

 

 

藍「いいや、まったく」

 

 

妖夢「ですよねー…あははは…」

 

 

藍「はははは…」

 

 

藍、妖夢「…」

 

 

藍、妖夢「はぁ…」

 

 

藍「というか…何故二人揃って同じ症状なんだろうか」

 

 

妖夢「親友ですから」

 

 

藍「なんかそれが理由でもおかしくないよな、不思議だよ」

 

 

妖夢「姉妹みたいなところもありますしね」

 

 

藍「姉妹…まぁ物理的に合体したこともあったからなぁ」

 

 

妖夢「波長が合いすぎなんですよね」

 

 

藍「合いすぎてかなりの頻度で悪ノリしだすんだけどな」

 

 

妖夢「それだけは勘弁です…」

 

 

 ガララッ!

 

 

鈴仙・優雲華院・イナバ「二人とも、お茶でもいかがですかー」

 

 

藍「お、いただくよ」

 

 

妖夢「ありがとう、鈴仙」

 

 

鈴仙「ふふっ」

 

 

 

 その時! お茶を出している鈴仙を狙う曲者二人が物影でこそこそ話をしていた!

 

 

 

蓬莱山輝夜「あ、来たわよてゐ」

 

 

因幡てゐ「ふっふっふ♪ 鈴仙、コイツを食らうウサ!」

 

 

輝夜「本当にそんなので捲れるのかしら」

 

 

てゐ「実証済みだから大丈夫ですよ」

 

 

輝夜「誰で試したの?」

 

 

てゐ「竹林の狼」

 

 

輝夜「あの狼スカート長くなかったかしら」

 

 

てゐ「でも成功したウサよ、では姫様、行きますよ」

 

 

輝夜「えぇ」

 

 

てゐ、輝夜「さーん、にー、いーち…」

 

 

てゐ、輝夜「発射っ!!」スッ

 

 

 ボフンッ!

 

 

 

鈴仙「はい、藍さん」

 

 

藍「ありがとう、鈴仙…ん?」

 

 

 フワァッ… 

 

 

鈴仙「えっ…!? !!?」

 

 

藍、妖夢「あ…///」

 

 

鈴仙「…/// !? きゃあっ!!」バッ

 

 

 バァン!

 

 

てゐ「ふぁーっはっは♪ 大成功!」

 

 

輝夜「白か…可愛いわね鈴仙『きゃあっ』も可愛かったけど♪」

 

 

鈴仙「て、てぇゐ! 姫様! 何をしてくれてんですか!」

 

 

てゐ「空気砲でスカート捲り大作戦」

 

 

輝夜「大成功!」

 

 

てゐ、輝夜「いぇーい♪」パァン

 

 

鈴仙「いえーいじゃない! あんたは本当に…!」プルプル

 

 

鈴仙「姫様も! こんな子供みたいな事やらないでくださいよ!」

 

 

輝夜「私は可愛い鈴仙の姿が見れればそれで良いのよ♪」

 

 

鈴仙「だからってスカート捲りは無いでしょう!? ってはっ!?」クルッ

 

 

藍、妖夢「! …///」メソラシ

 

 

鈴仙「み、見た…?」

 

 

藍「み、見えてしまった、が正解だ…」

 

 

妖夢「う、うん…/// れ、鈴仙! でも下着の趣味は悪くないと思うよ! むしろ可愛いと」

 

 

鈴仙「それ以上は言わないで妖夢ぅ!」

 

 

てゐ「ちぇっ、な~んだ、てっきり奇抜なの履いてるかと思ったけど期待外れだったな」

 

 

鈴仙「なんですって!」

 

 

てゐ「面白味がねぇウサ!」

 

 

鈴仙「はぁ!?」イラッ

 

 

鈴仙「てゐ…今度という今度は許さないわよ…!」

 

 

てゐ「そのセリフも聞き飽きたウサァ!」

 

 

鈴仙「こんのぉ…! 私の目を見なさい!」ギィン

 

 

てゐ「!! イタズラウサギはクールにトンズラ!」

 

 

鈴仙「待ちなさいっ! 今までで一番残酷な幻覚を見せてあげるわ!」

 

 

 ドタバタドタバタ!

 

 

輝夜「…よいしょっと」スッ

 

 

輝夜「ズズズッ…ふぅ…」

 

 

藍「いや…何で何事も無かったかのように茶を飲んでいる」

 

 

輝夜「だって鈴仙ったら私の事追っ掛けて来てくれないんだもん」

 

 

妖夢「追っ掛けられたいんですか?」

 

 

輝夜「そうよ、私だって共犯者なんだから私にも罰がきてもいいじゃない」

 

 

藍「立場的に鈴仙はやらないだろうな」

 

 

輝夜「そんなの気にしないでほしいんだけどね、鈴仙のそういうところも好きだけど♪」

 

 

妖夢(輝夜さんって掴み所がないというかなんというか…でも基本的に優しい人だなぁ)

 

 

 

 

 

 【永遠亭、診察室】

 

 

 

八意永琳「…」

 

 

八雲紫「…」

 

 

西行寺幽々子「…」

 

 

 

 

 

 

永琳「で?」

 

 

紫「お腹痛い」

 

 

幽々子「お腹が痛いの」

 

 

永琳「お薬出しておきますね」

 

 

紫「ないわぁ」

 

 

幽々子「酷いわぁ」

 

 

 バンッ!

 

 

永琳「何回このやり取りをすれば気が済むのよ!」

 

 

紫「幽々子、今度は台パンし始めたわよ」

 

 

幽々子「恐いわぁ、最近のお医者さんは」

 

 

永琳「…」イラァ

 

 

永琳「あなたたち本当はお腹なんて痛くないんじゃないの?」

 

 

幽々子「痛いからここに来てるんでしょう?」

 

 

紫「ちょっと考えれば分かるでしょう?」

 

 

永琳「…」イラッ

 

 

永琳(コイツらの言動に振り回されてはコイツらの思う壺よ八意永琳、平常心平常心…)

 

 

永琳「…で? どこら辺が痛いの?」

 

 

紫、幽々子「え?」

 

 

永琳「どこら辺が痛いのよ」

 

 

幽々子「だからお腹だって言ってるじゃないの」

 

 

紫「患者様の話をちゃんと聞いてるのかしら? この診療所不安だわぁ」

 

 

永琳「チッ…部位よ部位…! ヘソ下辺りとかあるでしょ」

 

 

紫、幽々子「…」

 

 

幽々子「そんな大胆な事恥ずかしくて言えないわぁ…///」

 

 

紫「察しなさいよ、乙女なのよこっちは」

 

 

永琳(こ、コイツらぁ…!!)ヒクヒク

 

 

永琳「いつから痛いのよ」イライラ

 

 

紫「朝から」

 

 

幽々子「私は昨日の夜寝る前から」

 

 

永琳「夜から? 昨日の夜は良く眠れたの?」

 

 

幽々子「グッスリ」

 

 

永琳「朝起きても?」

 

 

幽々子「痛かった」

 

 

永琳「朝は何を食べたの?」

 

 

幽々子「すりおろしりんご」

 

 

永琳「消化に良いものを食べさせてもらったのね」

 

 

幽々子「酷いと思わない?」

 

 

永琳「は?」

 

 

幽々子「妖夢ったら酷いのよ? お腹が痛いって言ったらね? すりおろしりんごしか作ってくれなかったのよ?」

 

 

幽々子「この私に対してすりおろしりんごだけ」

 

 

幽々子「例えお腹が痛くても」

 

 

幽々子「私は満腹を知りたい」

 

 

永琳「…」

 

 

永琳「昨日の夜は何を食べたの?」

 

 

幽々子「カキフライ、鯵フライ、エビフライ、イカフライ、唐揚げ、カツ丼、イカリング」

 

 

永琳「!?」

 

 

幽々子「紫が持ってきてくれたから残さずむしゃむしゃしてやったわ」

 

 

永琳「…」

 

 

永琳「あなたは?」

 

 

紫「何が」

 

 

永琳「昨日の夜何を食べたの」

 

 

紫「昨日の夜はXデーだったのよ」

 

 

永琳「Xデー?」

 

 

紫「一ヶ月に一度の藍のいなり寿司地獄の日」

 

 

紫「あなたにあの地獄の日の過酷さが分かる?」

 

 

永琳「…」

 

 

紫「私はね、狐じゃないのよ? それなのに皿に山の様に盛られたたくさんのいなり寿司を残さず食えなんて言われてみなさいよ」

 

 

紫「つれぇわよ? とってもつれぇ…辛いのよ…」

 

 

永琳「…」

 

 

永琳「で?」

 

 

紫「お腹痛い」

 

 

幽々子「お腹が痛いの」

 

 

永琳「お薬出しておきますね」

 

 

紫「ないわぁ」

 

 

幽々子「酷いわぁ」

 

 

永琳「…原因が分かったのに?」

 

 

紫、幽々子「!」

 

 

紫「…嘘だ」

 

 

幽々子「ウソつき」

 

 

永琳「…」

 

 

紫「…え? マジ?」

 

 

幽々子「教えてヤゴコロ先生」

 

 

永琳「…」

 

 

紫「…」

 

 

幽々子「…」

 

 

 

 

 

 

 

永琳「胃もたれよ」

 

 

紫、幽々子「!!?」

 

 

 

 

 

【永遠亭、客間】

 

 

輝夜「あっははは、あの二人がお腹痛いって?」

 

 

藍「あぁ」

 

 

妖夢「変だと思いません?」

 

 

輝夜「確かに腹痛とは無縁の二人だもんね、特に幽々子」

 

 

藍「朝起きたら布団にくるまりながらブルブル震えてた紫様を見つけてな、どうしたんですかって聞いたらお腹痛いの一点張り…朝ご飯もあまり召し上がらなかったんだ」

 

 

藍「『ごっつ痛いわ…ごっつ痛い』あぁ、もう永遠亭連れていこうってなった」

 

 

妖夢「幽々子様は昨日の就寝前から痛くなったみたいで、朝起きてきて『妖夢お腹が痛い』の一点張り『朝食は召し上がられますか?』って訪ねたら『うん』って仰られたので消化に良いであろりんごをお出ししたんですけど」

 

 

妖夢「『え? これだけ?』って言ったんですよ? お腹痛いのを気遣ってりんごをお出ししたのにこれだけ? って」

 

 

輝夜「あっははは!」

 

 

妖夢「いや、あなたお腹痛いんですよね? それなのに朝から重いもの食べる気ですかって言ってやりたかったぐらいですよ」

 

 

藍「そこは言わなかったんだな」

 

 

妖夢「なんか凄い嫌な目付きで睨み付けてきたんで…はい」

 

 

藍「あぁ、なんか分かるよ」

 

 

輝夜「ふっふふっ、はぁ…笑ったわ♪ 面白いわね♪」

 

 

藍「面白くないよ」

 

 

妖夢「大変なんですよ? 毎日毎日」

 

 

輝夜「大変なのは分かるわ、でも正直私はあなたたちが羨ましい♪」

 

 

藍、妖夢「羨ましい?」

 

 

輝夜「そういう主従関係がよ、紫とかからあなたたちの話を聞いてると主従通り越して…まぁ家族なんだけどやってることは親友の間柄みたいな感じするの」

 

 

輝夜「私の場合すぐ姫様姫様なんだもん、なんか壁が一枚あるみたいで嫌なのよ」

 

 

藍「もう少し歩み寄ってほしいのか」

 

 

輝夜「うん」

 

 

妖夢「でも歩み寄り過ぎると私たちみたいになるかもしれませんよ?」

 

 

輝夜「どうかしら、う~ん…思い付かないわね」

 

 

輝夜「はぁ、いっそのこと鈴仙と体が入れ代わったりしないかしら♪」

 

 

藍(それ紫様に間違っても言わないでくれよ…やりかねんぞ)

 

 

 ザッ!

 

 

鈴仙「…」ボロボロ

 

 

妖夢「あ、鈴仙…うわっ…!」

 

 

藍「おいどうした、ボロボロじゃないか」

 

 

鈴仙「…」ストッ

 

 

鈴仙「うぅ~…逃げられた~…」

 

 

輝夜「追っ掛けてて落とし穴に落とされたのね」

 

 

鈴仙「そうです…くぅ~、チクショーめ…」

 

 

妖夢「鈴仙、髪に枝が…取ってあげるね」

 

 

鈴仙「ありがと妖夢…あなたの優しさが心に染みるわ」

 

 

妖夢「あはは…」

 

 

藍「これでも入れ代わりたいと?」

 

 

輝夜「姫様扱いよりはマシよ」

 

 

藍(一回入れ代わったら気持ちが分かるかもな…いや、でもやめておこう)

 

 

 ザッザッ!

 

 

紫「…」

 

 

幽々子「…」

 

 

藍「紫様」

 

 

妖夢「あ、幽々子様!」

 

 

輝夜「あら、二人とも診察は終わったの?」

 

 

紫「うん」

 

 

幽々子「えぇ」

 

 

鈴仙「どうだったの? 薬は出してもらえた?」

 

 

紫「えぇくれたわよ、くれたんだけどね」

 

 

幽々子「納得いかないの」

 

 

藍「は? 納得いかない?」

 

 

紫「鈴仙、あなたの師匠はヤブなの?」

 

 

鈴仙「…いやぁ、腕はピカイチよ?」

 

 

紫「あんな診断されるなら最初からあなたに診てもらえばよかったわ」

 

 

妖夢「結果はどうだったんですか?」

 

 

幽々子「胃もたれ」

 

 

藍、妖夢、鈴仙、輝夜「え?」

 

 

紫「二人揃って胃もたれって言われた」

 

 

藍、妖夢、鈴仙、輝夜「…」

 

 

藍「くっ…!」プルプル

 

 

妖夢「ふっ…!」プルプル

 

 

鈴仙「フフッ…」プルプル

 

 

輝夜「あっはははっ!」ゲラゲラ

 

 

紫「笑うとこじゃないわよ輝夜ぁ…」

 

 

輝夜「だ、だって胃も…! ぷっ、くっふふふっ!」

 

 

幽々子「酷いわぁ、まだお腹がズキズキするのに」

 

 

紫「ねぇ藍」

 

 

藍「な、何ですか」

 

 

紫「私が胃もたれとかおかしくない?」

 

 

藍「フッ…! お、おかしいですね、はい」

 

 

紫「笑い的な意味で?」

 

 

藍「と、とんでもない!」

 

 

紫「はっ…まぁ私がもし胃もたれだったとしたらあなたのせいだけどね」

 

 

藍「…はぁ!?」

 

 

 

幽々子「妖夢、あなたがちゃんとした朝ご飯を作ってくれていれば胃もたれなんて診断されなかったのよ?」

 

 

妖夢「えぇ!? だって幽々子様昨日の夜から痛かったって」

 

 

幽々子「昨日は昨日今日は今日でしょ? すりおろしりんごじゃなかったらこの痛みは吹っ飛んでいたかもしれないじゃない」

 

 

妖夢「そんな都合の良い胃もたれがありますかっ!」

 

 

 

紫「昨日のいなり寿司がきてるのよ、ほらあなたのせいじゃない」

 

 

藍「いやいや! なんでそうなるんですか!」

 

 

紫「一ヶ月に一度地獄のいなり寿司生活、これを毎日続けてみなさいよ、そりゃ胃もたれになるわ」

 

 

藍「一ヶ月に一度でしょう!? それにもう胃もたれって認めるんですか!?」

 

 

紫「取り合えずこのムカムカをどうにかしたいのよ」

 

 

藍「完全に胃もたれじゃないですか」

 

 

紫「だからもう完全にあなたのいなり寿司が原因だからね、責任取りなさいよ」

 

 

藍「どう責任取れっていうんですか」

 

 

紫「この痛みスキマであなたに移してあげるから覚悟しなさい」

 

 

藍「…はぁ!?」

 

 

 

永琳「疲れたわ…」

 

 

輝夜「お疲れ永琳」

 

 

鈴仙「お疲れ様です師匠」

 

 

永琳「はぁ…」グッタリ

 

 

輝夜「ねぇ、二人は本当に胃もたれなの?」

 

 

永琳「えぇ、もう何の変哲もない普通の胃もたれよ」

 

 

鈴仙「何で胃もたれに…」

 

 

永琳「ただの食べ過ぎ、油ものの過剰摂取…自分で診断出来るぐらいの物なのに何でうちに来るのかしら」

 

 

輝夜「永琳に会いたかったから♪」

 

 

永琳「冗談でもそれは言わないで下さい」

 

 

鈴仙「病状は?」

 

 

永琳「一日消化に良いものを食べて処方した薬を飲めば治るわよ、それに素直に従ってくれればの話だけど」

 

 

鈴仙「…」チラッ

 

 

 

紫「藍、ちょっとピリッてするだけよ」

 

 

藍「嫌ですよ! ピリッの後に胃もたれが来るんでしょ!?」

 

 

紫「八雲家家訓『同じ痛みを味わおう』忘れたとは言わせない」

 

 

藍「そんな家訓無かった筈だぁ!!」

 

 

 

幽々子「妖夢、今日の夜ごはんは五倍増し増しにしてね、食べれば治るから」

 

 

妖夢「死にますよ!? 余計に胃もたれが悪化します!」

 

 

幽々子「私もう死んでるもん」

 

 

妖夢「そこじゃなくて胃もたれを気にして下さいよ!」

 

 

 

輝夜「あはは、またここに来そうね♪」

 

 

永琳「勘弁して…聞き分けのない患者は懲り懲りよ」

 

 

 

 ザッ

 

 

てゐ「お師匠様、お客様ですよ」

 

 

永琳「今日は客が多い日ね、患者なの?」

 

 

てゐ「いや、患者じゃないですね、通しても?」

 

 

永琳「えぇ」

 

 

鈴仙「てゐ! あんたよくも…!」

 

 

 ザッ

 

 

雛「こんにちは」

 

 

にとり「やぁ」

 

 

はたて「ここちょっと苦手なのよねってうわっ!?」

 

 

妹紅「よう、また客連れて…ん?」

 

 

鈴仙「にとり! 雛!」

 

 

にとり「しーっ」ヒソヒソ

 

 

鈴仙「えっ?」

 

 

雛「お久し振りね鈴仙さん、でも再会を喜ぶと永琳さんに感づかれちゃうわよ?」ヒソヒソ

 

 

鈴仙「あ…そ、そうだった」ヒソヒソ

 

 

にとり「敵の大将が目の前にいるからね、でもまた会えて嬉しいよ戦友」ヒソヒソ

 

 

鈴仙「ふふっ、私もよ」ヒソヒソ

 

 

輝夜(あらあら、あの時の面子が揃って…ふふっ♪)

 

 

永琳「?」

 

 

はたて「な、何このすごい集まりは」

 

 

妹紅(そっか、この烏はあの時の作戦には関係ないんだったな)

 

 

永琳「厄神、河童、烏天狗…妖怪の山の方々が何のようかしら」

 

 

雛「えぇ、精神厄を取らせていただきたくここへ」

 

 

永琳、輝夜、てゐ「精神薬…?」

 

 

鈴仙「えっ? 薬が必要なんですか?」

 

 

にとり「違うよ、厄神様がいる時点で察してくれよ」

 

 

鈴仙「いや、分かんないわよ」

 

 

永琳「ナニかしら…精神に蔓延り、その者の身体を蝕む厄みたいな物が存在するとでも言うの?」

 

 

雛「流石月の賢者様、その通りです、今日は大きな精神厄の気配を感じて幻想郷中を巡っておりました」

 

 

にとり「まぁ三ヶ所しか行ってないけどね、そしてここで旅も終わりさ」

 

 

永琳「精神厄…知らなかったわ」

 

 

てゐ「厄なんて運がどうにかしてくれるから興味ないウサね」

 

 

はたて「油断してると危ないわよ?」

 

 

妹紅「そうだぞ? ここに来るまでに話聞いてたけど、逃れられないもんが自分の中にあると思うと結構くるもんがある」

 

 

輝夜「あら~? もこたん怖いのぉ?」

 

 

妹紅「言っとくけどお前の中にもあるらしいからな」

 

 

輝夜「…えっ? マジ…?」

 

 

にとり「大丈夫だよ~、もこたんが平気なら輝夜も平気なんだもん」

 

 

妹紅「おい! 余計な事を言うな!」

 

 

輝夜「?」

 

 

はたて「雛、ここは誰?」

 

 

雛「三人ね」

 

 

雛「藍さんと妖夢さんと…鈴仙さん」

 

 

鈴仙「えっ!? わ、私!?」

 

 

てゐ「うわぁ! や、厄イナバだぁ!」

 

 

鈴仙「変な呼び名を付けるなぁ!」

 

 

雛「あっ! 鈴仙さん! 押さえて押さえて!」

 

 

鈴仙「えっ…な、なんで!?」

 

 

雛「今あなたの精神厄が大きくなったわ、私が吸収するまで怒りを押さえて?」スッ

 

 

鈴仙「う、うん…わ、分かったわ」スッ

 

 

永琳「厄神にしか実体として見る事が出来ず、尚且つ、精神病の患者になる手前の…? そして厄が大きくなる要因はストレス…?」

 

 

はたて(あれだけでここまで分かるのね、医者だからなのか月の賢者としての頭脳か)

 

 

雛「じゃあ吸収するわよ?」スッ

 

 

鈴仙「お、お願いします」

 

 

雛「…」ズズッ

 

 

鈴仙「んっ…」ズズッ

 

 

 ズズッ スポンッ

 

 

雛「取れたわ♪」モヤモヤ

 

 

鈴仙、妹紅、てゐ、輝夜「!? うわぁ…」

 

 

雛「う~ん、屠自古さんより大きく、ナズーリンさんより小さい感じね」ズズッ

 

 

にとり「良かったね、これで一安心だ」

 

 

鈴仙「う、うん…ありがとう雛」

 

 

雛「いえいえ♪ さて…次は」

 

 

鈴仙(屠自古さんとナズーリン…? あ、なんか身体が軽くなったかも)

 

 

永琳(厄神にしか出来い芸当ね、物理的に取り出すとは…吸収して還元するのかしら)

 

 

てゐ「なんかキモいなぁ…モヤモヤしてて」

 

 

輝夜「ね、黒焦げになったもこたんみたい♪」

 

 

妹紅「あ``ぁ``!?」

 

 

 

幽々子「妖夢、白楼剣で私のお腹斬ってみてくれない?」

 

 

妖夢「何を言ってるんですか!」

 

 

幽々子「この私が胃もたれ…これは私のお腹に迷いがあるせいだと思うのよ」

 

 

妖夢「お腹に迷いがあるんですか!?」

 

 

幽々子「ほらぁ、今日はカレーが食べたいわぁとか今日はシチューが食べたいわぁとかで迷うでしょ?」

 

 

妖夢「…それは分かりますけど胃もたれとは無関係な気がします」

 

 

幽々子「……斬って♪」

 

 

妖夢「嫌ですよ!」

 

 

幽々子「こら妖夢、真実は斬って知るの精神はどうしたの?」

 

 

妖夢「胃もたれごときの真実なんて斬る意味すらないです! 薬を飲んで、消化に良いものを食べてれば治るんですからね!」

 

 

幽々子「主がここまで困っているのに妖夢ってば酷い子ねぇ…」

 

 

妖夢「その前に私を困らせるのをやめてもらってもいいですか?」イライラ

 

 

幽々子「あ…いたたた…お、お腹が…」ズキズキ

 

 

妖夢(なんかもう仮病に見えてきた…斬っちゃった方が早いかな…)イラァ

 

 

雛「妖夢さん」

 

 

妖夢「うひゃっ!? ひ、雛さん!?」

 

 

雛「あ、驚かしちゃってごめんなさい、ちょっと肩に手を置かせてね?」ポン

 

 

妖夢「えっ、あぁはい…ってえっ?」

 

 

雛「…」ズズッ

 

 

妖夢「んんっ…ひ、雛さん…こ、これは…?」ズズッ

 

 

雛「あなたに悪い厄が着いててね、今それを吸収してるの」ズズッ

 

 

妖夢「や、厄ですか…」

 

 

雛「そうよ…っと」ズズッ

 

 

 ズズッ スポンッ

 

 

雛「はい、もういいわ」モヤモヤ

 

 

妖夢「わっ…そんなものが私の中に…」

 

 

雛「大きめね、早めに取り出せて良かっ」

 

 

幽々子「いただきまーす♪」グァ

 

 

雛「きゃっ!」スッ

 

 

 ガチンッ!

 

 

幽々子「あん♪ 避けられちゃった♪」

 

 

妖夢「あなたは何をやってるんですか!」

 

 

幽々子「綿飴に見えたの」

 

 

妖夢「厄だって聞いてましたよね? それにこんな黒い綿飴があってたまりますかっ!」

 

 

雛(や、厄を食べられそうになるなんて初めての経験だわ…)

 

 

妖夢「…量は多目に作ります、白玉楼に帰ったら消化に良いものを食べて薬を飲んで安静にしてて下さいね」

 

 

幽々子「あら、嬉しいわぁ♪」

 

 

妖夢(もう私の中で仮病認定しておこう、そうしないと身が持たない…)

 

 

 

紫「藍、私の両手を離しなさい」ググッ

 

 

藍「嫌です、少しでもあなたに隙を与えたら胃もたれが私を襲うんですから」ググッ

 

 

紫「手を…離せ♪」ニッコリ

 

 

藍「嫌…ですよ♪」ニッコリ

 

 

藍「力強いですね…! 本当に胃もたれなんですかあなたは…!」ググッ

 

 

紫「出来れば信じたく無かった…でも現実は受け入れなければいけないわ」

 

 

紫「そして現実を受け入れたとき私の世界は変わったわ…胃もたれ大妖怪八雲紫なんて言われてババア扱いされて大笑いされるビジョンが見えたんですもの」

 

 

藍「フフッ…!」プルプル

 

 

紫「笑ったわね、ゆかりん激おこよ」

 

 

藍「自分で言ったんじゃないですか!」

 

 

紫「まあ今は笑うがいいわ、私があなたの事笑えない状態にしてやるから」

 

 

紫「あなたも九尾の大妖怪、そんなあなたが胃もたれになれば『あぁ、大妖怪にも胃もたれの荒波が押し寄せて来てるのね』で済むようになるの、私も笑われなくてすむのよ、ふはは♪」

 

 

藍「な、なんて卑劣な!」

 

 

紫「なんとでも言いなさい、事の発端はあなたのいなり寿司なのだからね、覚悟しなさい」

 

 

雛「あ、あの~」

 

 

藍「雛…?」

 

 

紫「久し振りね雛」

 

 

雛「お久し振りね、お取り込み中悪いのだけれど藍さんの厄抜きしてもいいかしら?」

 

 

藍「!! 雛、今はやめ」

 

 

紫「精神厄よね? 良いわよ、吸収しちゃいなさい」

 

 

藍「ちょっ…!?」

 

 

雛「ごめんなさいね藍さん、私もお仕事なのよ」スッ

 

 

藍「んくっ…!? ち、力が…!」ズズッ

 

 

紫「ふふふ、修行不足ね藍、胃もたれ状態の私の力に抗えもしない、さらに精神厄を溜め込んでしまうなんてね」

 

 

雛「やっぱり紫さん精神厄の事も知ってるのね」ズズッ

 

 

紫「もちろん、精神厄は幻想郷の敵…妖怪にとっては猛毒だもの、大昔私も精神厄に犯された経験あるわ」

 

 

雛「紫さんが…!?」

 

 

紫「辛かったわ、暴走する手前で抜き取ってもらったから事なきを得たんだけどね」

 

 

雛(? 誰に抜き取ってもらったのかしら)

 

 

藍「ぐっ…!?」ズズッ

 

 

雛「もう少しよ、藍さん」ズズッ

 

 

紫「えぇ、本当にもう少しねぇ…? 藍?」ニヤリ

 

 

藍「ぬぉぉぉ…!」プルプル

 

 

 

はたて「私たちは何を見せられてるのかしら」

 

 

にとり「厄神と胃もたれ妖怪と、時々精神厄」

 

 

幽々子「あら、映画かしら♪」

 

 

妖夢「面白くなさそうです」

 

 

てゐ「暇」

 

 

鈴仙「暇なら混ざってきなさいよ」

 

 

妹紅「私が厄の塊だって言いたいのか? あぁん?」

 

 

輝夜「厄妹紅…いや、妹紅厄…? あ、もくたん♪」

 

 

妹紅「炭じゃねぇか!」

 

 

永琳(早く終わらないかしら)

 

 

 

 

雛「! ていやぁ!」ズズッ

 

 

藍「うっ!」ズズッ

 

 

 ズズッ スポン

 

 

雛「ふぅ…ふふっ、取れたわ♪ あらら…随分大きい、何百年と溜め込んでたみたいね、暴走しないのが不思議なくらい」

 

 

藍「ま、まぁ…わ、私は我慢が得意だからな」

 

 

雛「我慢は身体に毒よ、精神厄にとっても良い栄養を与えてしまう事に繋がるんだから」

 

 

藍「あぁ、気を付けるよ…ふぅ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「隙あり」

 

 

 パチン ギュオン!

 

 

藍「あ」

 

 

雛「へ?」

 

 

に、は、鈴、て、輝、妹、妖「あ…」

 

 

紫「…」ニタァ

 

 

藍「…! !!?」

 

 

藍「……」プルプル

 

 

 

藍「お…」

 

 

に、は、鈴、て、輝、妹、妖「お?」

 

 

藍「お腹痛い…」

 

 

紫「やったぜ♪」

 

 

永琳「薬出してあげるからさっさと帰りなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして雛、にとり、はたての戦いは終わった…

 

 

 

 【妖怪の山、麓】

 

 

 

はたて「それじゃあね、私は帰って精神厄の記事を書くから、明日の新聞楽しみにしてなさい♪」

 

 

にとり「いや、私たちが解決したのにはたての新聞読む意味は」

 

 

はたて「新聞でしか伝わらない魅力があるでしょ! つべこべ言わず読みなさい!」

 

 

にとり「へぇへぇ」

 

 

雛「ふふっ…はたて」

 

 

はたて「?」

 

 

雛「手伝ってくれてありがとう」ニコッ

 

 

はたて「! …/// そ、それじゃあね!」

 

 

雛「またね♪」

 

 

にとり「バイバ~イ」

 

 

 

雛「さて、私は厄神としての務めを果たさないとね」ズオオ

 

 

にとり「あれ? 量は少ないね」

 

 

雛「厄の量は少なくても濃さはあるのよ、近付いたら危ないわよ?」

 

 

にとり「分かってるって」

 

 

にとり「…今回の流し雛は何日かかりそう?」

 

 

雛「う~ん、明日の夜には帰ってこられると思うわ」

 

 

にとり「そっか…」

 

 

雛「あら、寂しいの?」

 

 

にとり「そんなんじゃないよ…///」

 

 

雛「ふふっ、そう…なら安心して飛び込めるわね」

 

 

にとり「…帰ってきたら家に来なよ、一緒にご飯でも食べようよ」

 

 

雛「えぇ、楽しみにしてるわ♪」

 

 

 スタッ!

 

 

雛「行ってくるわね、にとり」ニコッ

 

 

にとり「行ってらっしゃい、雛」ニコッ

 

 

 クルクルクルクル… ザバァ…!

 

 

 

にとり「…」

 

 

にとり「さてと…私も帰るか」

 

 

にとり「なんか今日はグッスリ眠れそうだよ、雛」

 

 

 

 

 

 

 その後

 

 

 はたての新聞がバカ売れして文が少し落ち込んだり

 

 衣玖と天子が仲睦まじく人里を歩いていたり

 

 星が宝塔を一週間無くさない事に成功したり

 

 胃もたれ妖怪二人が一日、博麗神社で面倒をみてもらったりしたのだがこれはまた別のお話

 

 

 そして雛が帰ってきてから一週間後『今日も一日お疲れ様でしたの会』がミスティアのお店に集まり、そこに雛、にとり、はたて、天子が加わって『雛を労う会』が行われた事も、また別のお話…

 

 

 

 

 

紫「おかしいわ…!」ズキズキ

 

 

博麗霊夢「何が」

 

 

紫「なんで藍と幽々子は治って私の胃もたれが治らないのよ!」ズキズキ

 

 

霊夢「藍に胃もたれ移した罰が当たったんじゃないの?」

 

 

紫「そんなぁ…! あ、そもそも私胃もたれなんかじゃ無いんじゃないの!? あのヤブ医者めぇ…!」ズキズキ

 

 

霊夢「あんた最近人のせいにしてばっかじゃない?」

 

 

紫「はっ…!? ま、まさかの厄!? 雛~!助けてー!」

 

 

霊夢「ダーメだこりゃ…」

 

 

 

 

 おしまい!

 

 

 

 






 雛たちが巡る順番を逆にした方が物語的には良かったのかもですね、でもオチを藍にやらせる事に決まった瞬間から 衣玖さん→とじー、ナズ→藍、妖夢、鈴仙になっちゃいました。

 宴会シーンは文字数的にカットしました、雛の為に会のメンバーが集まって労う…藍の胃もたれの愚痴や衣玖とナズのその後の経過を聞く話も考えましたが泣く泣くカットしました。



 諏訪子が天子を叱咤したのは外の世界で苦労した早苗をずっと見て来たから…という設定がありますが諏訪子は早苗が自分の子孫だとは気付いていません、神奈子は気付いていますが誰にも喋った事はありません。


 それでは、ここまで読んでいただいてありがとうございました! お疲れ様でした!


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