東方紫藍談  ~紫と藍の幻想談~   作:カテサミン

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 今回はタイトルの通り、彼女の東方紫藍談での在り方等が明かされるお話となっております。
 初登場は今回のお話ではないのですが、他のお話を読んでなくても大丈夫ですし、四コマ仕立てにするのでサクサク読めると思います。

 もっと冴月麟を知りたい方は『もう一人のプリズムリバー』を読んでいただければと願います。

 彼女の存在は東方ファンでもあやふや……さて、読書の皆様に彼女はどんな風に見えているのでしょうか。


 また、鬼形獣キャラのお披露目も致します!


 それでは始まります。




《第19談》幻想郷の影の巫女 冴月麟

 

 

 

 【マヨヒガ】

 

 《私は概念、概念は私》

 

 

 

八雲 紫「お願いっ! 仕事の次いででいいから私の代わりに言って来て…この通りだから」

 

 

冴月麟「この通りってどういう通りなのよ、頭も下げてくれないじゃん」

 

 

紫「頭下げたら私が私じゃなくなりそうだし…」

 

 

冴月麟「まーた変なこと言って…てか自分で言いに行けば良いじゃん」

 

 

紫「だって私が言いに行くとあいつら『うーわ来たよ』とか『げっ…』とか『お帰り下さい』みたいな雰囲気出しやがるんだもん!」

 

 

冴月麟「えぇ…」

 

 

紫「つれぇのよマジで、そういう…なに…? 空気? 出して来やがるのよ本当に」

 

 

冴月麟「……」

 

 

紫「最近じゃ私の霊夢にですら似たような空気出されちゃうし……あぁつれぇわぁぁ…」オヨヨ

 

 

 

冴月麟「なんか辛そうっていうか可哀想って思えてきちゃうんだけど」ヒソヒソ

 

 

摩多羅 隠岐奈「言ってやるな、だが日頃の行いのせいではあるだろうな」ヒソヒソ

 

 

魅魔「まぁ人徳が無いって訳じゃねぇんだが…『うわ来たよ』みたいな感じになっちまわせる何かがあんだろうな」ヒソヒソ

 

 

八雲 藍「常に色んな人に思い付きの娯楽と言う名の勝手気ままな迷惑掛けてますからね…」ヒソヒソ

 

 

冴月麟「なんかもうちょっと静かに…違うね、落ち着けばいいのにねとは思うよ」ヒソヒソ

 

 

隠岐奈「それには同感だ」ヒソヒソ

 

 

魅魔、藍「同じく」ウンウン

 

 

 

紫「……な~にを四人でヒソヒソとお話してるのかしらねぇ!? このゆかりんも混ぜなさ」

 

 

隠岐奈「いやぁ何でもないぞ? 何てことない今日の予定の確認だ、そうだろ?」

 

 

藍「そ、そうですね!」

 

 

魅魔「あ、あぁ…」

 

 

紫「……」ムスッ

 

 

紫「私を除け者にして?」

 

 

魅魔「してないだろ…つーか何度も何度も打ち合わせしたじゃないか」

 

 

藍「話はまとまってますし、後は行動に移すだけですよ」

 

 

紫「そりゃあそうだけどさぁ…」チラッ

 

 

隠岐奈「……誓ってお前に隠していることはないぞ?」

 

 

紫「…」ムッスー

 

 

冴月麟(怪しんでるのか不貞腐れてるのか寂しいからなのか……あ、全部ね、きっと)

 

 

冴月麟「……ねぇ、私は華扇と天魔の所でいいの?」

 

 

紫「! えぇ、その二人だけで良いわ、他の賢者クラスの住人達には私と藍で言うから」

 

 

魅魔「定時の報告が終わったら博麗神社最上空まで来てくれ、そこで落ち合おう」

 

 

冴月麟「うん、分かったよ♪」

 

 

魅魔「私は外側からだけどな、まぁもう慣れたけど」

 

 

冴月麟「ふふふっ♪ 私も慣れたよ、もう何年とやってますからねぇ♪」スッ

 

 

紫「あ、ねぇ麟」

 

 

冴月麟「うん? なぁに?」

 

 

紫「妖怪の山に行く前に人里に寄っていってみなさいな♪ もちろん能力は使ったままでね」

 

 

冴月麟「へ? 何で?」

 

 

紫「良いから良いから♪」

 

 

冴月麟「うーん…? まぁ良いけど」

 

 

冴月麟「それじゃ♪ また後でね~♪」スッ

 

 

 麟は音も無く四人の目の前から姿を消した

 

 

藍「……! う…!」クラッ

 

 

魅魔「藍坊、まだ慣れてないのか?」

 

 

藍「は、はい…まだ麟への妖力調節が不安定でして…ふぅ、よし…! 今回も忘れることはなかったな」

 

 

隠岐奈「だが大した物だ、麟の能力に少なからず抗えて記憶に留めておけているのだからな、前にうちの里乃と舞に麟と話をさせたが今は存在すら覚えていない、幻想郷の影の存在として生きているのだから忘れるのは通りではあるのだがな」

 

 

魅魔「自分だけの博麗大結界を纏わせてる様なもんだしなぁ…また会わせたらその喋った時の記憶って戻るんだっけか?」

 

 

隠岐奈「あぁ、会えば…な」

 

 

紫「それ突発的に会わせたんでしょ? それじゃあ無理もないわよ、大事なのは『冴月麟と言う名の存在を忘れたくない』って気持ちの問題なんだから」

 

 

隠岐奈「気持ちで概念そのものである存在を自由にコントロール出来るのはお前ぐらいなものだろ」

 

 

紫「そこはゆかりんが強い! って意味も含まれてるのよね♪」

 

 

隠岐奈「そこまでは言ってない…まぁ私も似たような物か、神力と概念を掴むコツで何とか出来ているからな」

 

 

魅魔「『概念を自由に操る程度の能力』だもんな、端から見たらやべぇ能力だよ、ホント」

 

 

隠岐奈「未だに人間なのが信じられん」

 

 

紫「あらら? あの子は昔もこれからも変わらずずっと人間なんですけど?」

 

 

隠岐奈「人間が持てる能力の域を超えているということだ、現にソレで自分が人間であるのかないのか悩みを抱えていた時期があっただろう」

 

 

藍「……彼女が十三代目博麗の巫女に正式になる少し前の話ですね、懐かしい」

 

 

魅魔「あぁ、そんなときもあったなぁ…ガキの頃ここにいたアイツもよく覚えてるよ」

 

 

紫「えぇ、懐かしいわね……」

 

 

隠岐奈「……お前が何処からか見つけて来た霊夢を影から見て『この子なら私の代わりに幻想郷の心を背負っていける! 素質あるよ!』と言った後に『巫女を辞めて裏から幻想郷を支えたい! だって私の能力って巫女っぽくないじゃん♪』と笑顔で言い出した時は正直驚いた、自発的に巫女を辞めると笑顔で言ったのは歴代で冴月麟だけだったからな」

 

 

紫「……」

 

 

藍、魅魔「…」

 

 

隠岐奈「今では麟も立派な幻想郷賢者の一人…幻想郷が出来てから賢者になった人間、幻想郷を裏から護ると心に決め、博麗大結界を内側、影から護る存在となった」

 

 

紫「……何よ急に語り出して」

 

 

隠岐奈「いやなに、先の言葉を言われた時のお前の顔を思い出してな」

 

 

紫「! ……」

 

 

紫「……巫女にしようとして連れてきた人間の子が幻想郷を影から支えたいって心の底から言ってくれたのよ」

 

 

紫「嬉しくないわけないじゃない……♪」ニコッ

 

 

隠岐奈「…ふっ…そうか」ニコッ

 

 

藍「…ふふっ♪」

 

 

魅魔「…ふっ♪」

 

 

藍(紫様のあの時の顔、今でも覚えている)

 

 

藍(麟を抱きしめながらずっとありがとうって言い続けていた、麟に見えない様に涙を流していた紫様を)

 

 

魅魔「……さて、お喋りはここまでだ、行こうぜ隠岐奈」

 

 

隠岐奈「あぁ」スッ

 

 

 キュオン…の音と共に扉が出現した

 

 

紫「じゃあ、私たちも…行くわよ藍」スッ

 

 

 ギュオン

 

 

藍「はい」スッ

 

 

隠岐奈「…! おい、紫」

 

 

紫「うん? 何よ」

 

 

隠岐奈「今度の『幻想郷会議』畜生界の奴らも呼ぶのか?」

 

 

紫「はぁ!? 呼ぶわけないじゃないあんな危なっかしい奴等なんてさぁ!」

 

 

隠岐奈「……そうだよな」

 

 

藍「それは議題として挙がる程度だと思いますよ」

 

 

紫「そうよ、呼んだとしてもあの鶏ちゃんぐらいだしヤバい所の動物園の園長先生二人組なんて呼べる訳ないでしょうが!」

 

 

魅魔「あの鶏一応閻魔の部下だよな、鶏ちゃんてお前」

 

 

藍「動物園の園長…? 組長の間違いでは?」

 

 

紫「どっちでも良いでしょ」

 

 

魅魔「まず動物園否定しろよ」

 

 

隠岐奈「……」

 

 

紫「言っておくけどあの造形神も駄目だからね!」

 

 

隠岐奈「……そうか」

 

 

魅魔「お前あいつと絡みあったのか?」

 

 

隠岐奈「神としての交流が少しな、お互いの存在を確認しあったぐらいの話だ」

 

 

魅魔「つっても私も名前しか知らないしなぁ、畜生界の奴等とは絡んだことないなぁ…」

 

 

隠岐奈(彼奴は発想力等は天才と呼べる物があるが天才過ぎるが故に自我が強く、人の話を聞かないからな…会議には不向きか)

 

 

隠岐奈(野蛮な畜生界も今は霊夢達の活躍で多少大人しくなったと聞くが…実際のところは分からんな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【人里 清鈴屋】

 

 《玉兎の気苦労》

 

 

稀神 サグメ「では…ここからここまでの団子を4本ずつ貰おう、頼めるか?」

 

 

鈴瑚「は~いっ!」スッ

 

 

清蘭「かしこまりました~!」スッ

 

 

ルーミア「おぉ~♪ やる気がすげぇのだー♪」

 

 

物部 布都「中々に気合いが入っておるの」

 

 

堀川 雷鼓「繁盛しているみたいだしね♪ それともサグメさんがいるからかしら、ふふっ♪」

 

 

サグメ「ふっ…♪ 二人とも頑張っているみたいだな」

 

 

レイセン「わ、私の時と対応が全然違う…」

 

 

サグメ「そうだったのか?」

 

 

レイセン「そうなんですよ、私の時なんて団子の押し売り状態でした」

 

 

ルーミア「そーなのかー♪」

 

 

レイセン「そーなのかーじゃないよぉ! 酷かったんだから、頼んでもない団子が皿に次々と乗っかってくるし、その分のお金は取られるし全部食べなきゃ帰さないとか言うしで…もう」

 

 

雷鼓「お友達相手だと接客も緩んじゃうものよ、きっと」

 

 

レイセン「私の財布の紐は固かった筈なんですけどね、見事にそっちが緩められてしまいましたよ、えぇ」

 

 

布都「ははっ♪ ……で、お主の名前はなんじゃったかの」

 

 

レイセン「…! あぁ、すみません挨拶まだでしたよね、えっと…」

 

 

レイセン「月の都中心街出身及び所属であり、綿月依姫様、綿月豊姫様を主人とし、稀神サグメ様の側近兼ボディーガードを務めさせていただいております、玉兎No.3314xx、レイセンです! よろしくお願いします!」

 

 

ルーミア、雷鼓、布都「………」キョトン

 

 

レイセン「……? な、なんですか?」

 

 

布都「ぎょくとな、なんばー…? とはなんぞ? しかも4から聞き取れんかったぞ?」

 

 

レイセン「あ、月語は地上の人聞き取れないんだっけ、忘れてた…」

 

 

サグメ(月語は月での周波数に合わせているからな…昔は番号で呼び会うのが規則だったらしいが、今の玉兎達はそれぞれ名を持っている)

 

 

ルーミア「主人が何人もいて世知辛そうなのだ」

 

 

レイセン「真顔で言うの辞めてよ…玉兎って結構大変なんだから…」ズーン

 

 

サグメ(そういえばレイセンは自分から休暇を取ろうとしないな…たまには英気を養ってほしい物だが)

 

 

布都「おぉそうじゃ、お主能力は?」

 

 

レイセン「あ…! えっと『自分の波長を操る程度の能力』です! ……サグメ様、こっちでは程度って言った方が良いんでしたよね?」

 

 

サグメ「あぁ」

 

 

サグメ(自分で自分の波長を操り、身体能力を高めたりすることが出来る…豊姫は『自分の体を自分で騙してドーピングしている』と分析していたな)

 

 

雷鼓「ふ~ん、魅力的な兎さんねぇ…♪ それよりも気になるのはサグメさんのボディーガードって所よねぇ♪」ニヤリ

 

 

レイセン「…!? な、なん…です…?」ビクッ

 

 

雷鼓「月では付きっきりって事だからサグメさんが月でどんなことをしているのか、どんな暮らしをしているのか…知ってるわよね♪ 教えて?」

 

 

レイセン「へえぇ!?」

 

 

サグメ「雷鼓、私の月での暮らしなぞ面白くも何ともな」

 

 

雷鼓「面白くなくても知りたいの♪ ねぇ詳しく教えてくれない?」ニッコリ

 

 

レイセン「!? だ、ダメです! 例えサグメ様のご友人の方でもプライベートな事はお答え出来ませんよ!?」

 

 

雷鼓「えぇ~…少しも?」

 

 

レイセン「少しもです!」

 

 

サグメ(雷鼓、月での私は書類整理をしているか休んでいるか、それぐらいしかしてないんだ)

 

 

ルーミア「なーなー♪ 次は~」

 

 

布都「月語も気になるのぅ、それの事も教えてくれんか?」

 

 

レイセン(えぇ~! ま、まだ質問するの~!?)

 

 

 

 

清蘭「……ねぇ鈴瑚」

 

 

鈴瑚「うん? どうしたの清蘭…ってほら、最後の出来たからサグメ様のところ持っていってよ」コロコロ

 

 

清蘭「今日あの人うちの店に来ないよね?」

 

 

鈴瑚「えっ? ……あ~」

 

 

清蘭「サグメ様がいるから来たらヤバくない?」

 

 

鈴瑚「いや来ないでしょ、昨日も来たじゃん」

 

 

清蘭「そ、そうだよね…流石に二日連続で来たことなんてな」

 

 

 ガララッ…!

 

 

清蘭「あっ! い、いらっしゃいま……せっ!?」ビクッ

 

 

鈴瑚「…? どうしたのせいら……んっ!?」ビクッ

 

 

 

純狐「さぁうどんげちゃん♪ 今日はどのお団子にしましょうか♪」

 

 

鈴仙・優曇華院・イナバ「い、いやぁ~…もうなんでも良いですよ純狐さん……あの…もう、あの…腕回して抱き寄せるの辞めてもらってもいいですか」

 

 

純狐「何故?」ジロッ

 

 

鈴仙「ひっ…!? い、いえ…な、なんでも…ない…です」

 

 

純狐「………そう♪」ニッコリ

 

 

鈴仙(恐いっ…!! ギンギンに見開いたあの目が恐い、真顔で私の顔を覗き込んでくるのは二千歩譲ってまだいいけど光の無いあの目が恐過ぎるのよぉ…!)シナシナ

 

 

 

鈴瑚「う、うわー…また鈴仙耳がシナシナになってる」

 

 

清蘭「そ、そんなことより止めないとサグメ様の近く行っちゃ」

 

 

 

純狐「ふふっ、うどんげちゃん♪ またあの席に座り……うん?」スタスタ

 

 

 

サグメ「ルーミア、布都、前の宴会の時に酒が抜けるのが早かったのはどうい……うん?」チラッ

 

 

サグメ、純狐「……」

 

 

サグメ、純狐「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

純狐、サグメ「あ」

 

 

雷鼓、布都「…?」チラッ

 

 

ルーミア「! おー、純狐なのかー♪」

 

 

レイセン「えっ…!? えぇぇー!?」

 

 

サグメ、純狐「……」

 

 

サグメ、純狐「…」

 

 

 

サグメ、純狐「っ…!」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

 

鈴瑚「あちゃー…こりゃちょっとヤバいかも」

 

 

清蘭「かもじゃなくてヤバいよ! 二人ともオーラ出しちゃってるし!」

 

 

 

鈴仙(何でもいいから誰か私を助けて下さい)シナシナ

 

 

 

 

 

 

 《サグメと純狐》

 

 

 

サグメ、純狐「……」

 

 

サグメ、純狐「…」

 

 

鈴仙「……」シナシナ

 

 

 

 

ルーミア「なー、何で私たちこっちにいるのだー?」

 

 

布都「いきなり引っ張られて何事かと思ったぞ?」

 

 

雷鼓「何か訳ありなのかしら?」

 

 

レイセン「シッ…今は黙って机の影に隠れてて下さい…! 後で説明しますから…!」ヒソヒソ

 

 

清蘭「咄嗟の判断だったけどこれで良かったの…? ここじゃ何話してるかさえ聞こえないけど…」ヒソヒソ

 

 

レイセン「こうするしかないでしょ、私達が敵う相手じゃないし戦うにしてもサグメ様の邪魔したら駄目じゃん…!」ヒソヒソ

 

 

鈴瑚「でも二人とも嫌なオーラは出してるけど戦う気はないっぽいよ?」モグモグ

 

 

レイセン(鈴瑚この状況でよく団子食べれるね……本当にマイペースは変わらないな)

 

 

清蘭「確かに戦意は感じないわね……二人とも向き合ったまま何も喋らないけど」

 

 

鈴瑚「ていうかさ、良いの?」

 

 

清蘭、レイセン「何が?」

 

 

鈴瑚「鈴仙もこっちに引っ張ってこなくて」

 

 

レイセン、清蘭「………」

 

 

レイセン、清蘭「あ''っ!!」

 

 

レイセン、清蘭(あぁー!! わ、忘れてたぁー!!)

 

 

鈴瑚(鈴仙…ごめんね♪)

 

 

鈴瑚(……)チラッ

 

 

鈴瑚(てか鈴仙…白目向いてない? また無の境地にいるのかな)

 

 

 

雷鼓「うーん…気になるわねぇ」

 

 

布都「何がじゃ? 雷鼓殿」

 

 

雷鼓「あの金髪の人とサグメさんの関係よ♪ なんかこう…ゾクゾクするものを感じるの♪」

 

 

布都「ふむ? 知り合い…には見えるのぉ」

 

 

ルーミア「友達じゃないのかー?」

 

 

雷鼓「そんな感じじゃなくてスリルのビート、かしらね♪ それを感じるの」

 

 

布都、ルーミア「す、スリルのビート…?」キョトン

 

 

 

 

 

純狐「何故お前がここにいるのかしら」

 

 

サグメ「それはこちらの台詞だ、まさか幻想郷の人里にある団子屋…しかも玉兎が営む店に来るとはな」

 

 

純狐「そんなものは私の勝手だろう、何処に行こうと何をしようと私の自由」

 

 

サグメ「そうか、なら私も同じだな…何処で何をしようと私の自由だ」

 

 

鈴仙(二人には自由があって良いですね、私には今自由が無いんですけどね、自由ほしい)シナシナ

 

 

純狐「穢れが蔓延し、嫌悪している地上でか? ふっ、月の民らしくない行為だな」

 

 

サグメ「…! あぁそうだろうな、だがその行為をしたお陰で得た物がある」

 

 

純狐「それは?」

 

 

サグメ「人との繋がり…地上で友人が出来た事だ」

 

 

純狐「っ!?」

 

 

純狐「……」

 

 

サグメ「……」

 

 

純狐「そんな妄言でこの私を」

 

 

サグメ「妄言ではない、それに貴方を誑かそうとも思っていない」

 

 

サグメ「私の本心だ」

 

 

純狐「…!」

 

 

純狐「……」

 

 

純狐(……嘘を言っているようには見えないわね)

 

 

鈴仙(あれ、今日の純狐さんおとなしいな、いつもこうなら良いのになぁって心の奥底で思うようにしてますハイ)

 

 

純狐「…そう」

 

 

サグメ「あぁ、そうだ」

 

 

純狐「……」

 

 

純狐(店に入った時にルーミアちゃん達がいたわね、楽しそうに話をしていた…たぶんそういう事なんでしょうね)

 

 

純狐(友人…か)

 

 

サグメ「…?」

 

 

純狐(邪魔なのは私ね)スッ

 

 

純狐「…今日は帰るわ、何も注文しないで悪かったわね」

 

 

清蘭「へっ!? い、いえ…」

 

 

鈴瑚「あ、ありがとう…ございました」

 

 

レイセン(えっ…!? か、帰るの…?)

 

 

純狐「……あ」クルッ

 

 

清蘭、レイセン、鈴瑚「?」

 

 

サグメ「…?」

 

 

純狐「うどんげちゃん♪ 今日はごめんね、私先に帰るから♪ 今度は一緒にお団子食べましょうね♪」

 

 

サグメ、レイセン「!?」ビクッ

 

 

鈴仙「ハイ、コノワタシ鈴仙ハイツデモ純狐サント一緒デスヨー」

 

 

サグメ、レイセン「!!?」

 

 

純狐「ふふっ、良かったわ♪ それじゃあねうどんげちゃん♪」スッ

 

 

 スタスタ

 

 

レイセン「な、何ですかあの変わり様は…あんな声出してるあの人見たの始めてです」

 

 

サグメ(輝夜から『純狐は鈴仙に何とも言えない好意があるみたいよ♪』と聞いていたが…本当に何とも形容し難いな)

 

 

ルーミア「! なー純狐ー」

 

 

純狐「! ルーミアちゃん…」

 

 

ルーミア「純狐はサグメの友達なのかー?」

 

 

純狐「! ……」

 

 

ルーミア「…お?」

 

 

純狐「…いえ、友達ではないわね」

 

 

ルーミア「違うのかー…」

 

 

布都「ならなんなのじゃ? お主とサグメ殿の関係は」

 

 

雷鼓「気になるわ、良ければ教えてくれないかしら」

 

 

純狐「……」

 

 

純狐「…」

 

 

純狐「あなた達は稀神サグメの友達、でも私は違う…深く考える必要はない簡単な事よ」

 

 

ルーミア、布都、雷鼓「!」

 

 

純狐「それで良いの…♪ またねルーミアちゃん、チルノちゃん達によろしくね♪」ニコッ

 

 

 スタスタ

 

 

ルーミア「お、おー…」

 

 

布都「うむぅ…何やら難しい間柄のようじゃな」

 

 

雷鼓「…そうね、今回ばかりは私も詮索するのは止そうかしら」

 

 

 カツンカツン

 

 

サグメ「純狐は…」

 

 

ルーミア、布都「!」

 

 

雷鼓「サグメさん…」

 

 

サグメ「……純狐は優しい人間だった、それだけは言える…今もきっとそうなんだろう」

 

 

ルーミア「! 純狐はとっても優しい奴なのだー♪ 私たち寺子屋の皆と遊んでくれるしなー♪」

 

 

サグメ「! ……ふふっ、そーなのかー♪」

 

 

ルーミア「そーなのだー♪」

 

 

布都、ルーミア、雷鼓、サグメ「わはー♪」

 

 

布都、サグメ「ふっ…♪」ニコッ

 

 

雷鼓「ふふっ♪」ニコッ

 

 

ルーミア「わーははー♪」ニコッ

 

 

サグメ「……」

 

 

サグメ(悲しみや憎しみは本来優しさや愛情が無ければ生まれない感情だ、そして怨みでさえも)

 

 

サグメ(その優しさ…彼女は神霊になった今でも持っているはず、ルーミアに対する接し方からも見て取れる)

 

 

サグメ(ヘカーティア・ラピスラズリやクラウンピースは純狐をどう思っているのだろうな)

 

 

 

 

鈴瑚「鈴仙、大丈夫?」モグモグ

 

 

鈴仙「ウンウン大丈夫大丈夫、イツモノ事ダシネー」ユラユラ

 

 

清蘭「また半分魂抜けかけちゃってる…」

 

 

鈴瑚「すぐに復活するでしょ、それもいつもの事だしね♪」

 

 

清蘭「まぁ、うん…」

 

 

レイセン「いやいやいやいや! もっと心配してあげなよ! 鈴仙大丈夫!? ねぇ!?」

 

 

鈴仙「ダイジョウブダヨー、アハハハ♪」

 

 

レイセン「全然大丈夫じゃなーい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冴月麟「……♪ ははーん、そういうことか♪」

 

 

冴月麟「月の人また幻想郷に来てくれたんだね、嬉しい♪」

 

 

冴月麟「今日は忙しいからお話出来ないけどいつかまた会えたら話したいな♪」

 

 

冴月麟「でも二人きりになれる時なんてあるかな…? ……あ、時間の概念を切り取ってみたら出来るかな? うーん…難しいなぁ…そういう使い方したことないし」

 

 

冴月麟「……ま、良いか♪」

 

 

冴月麟「さて、と…先ずは華扇の所に行きますかー♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 【妖怪の山 華扇の屋敷】

 

 《仙人として》

 

 

 

茨 華扇「……ふぅ、今回の修行はここまでにしておきましょうか」

 

 

華扇「……」グッ

 

 

華扇(右腕の再構築は以前と遜色なし、だけど力の制御がどうもまだ)

 

 

華扇(……弱音ばかりでは駄目ね、今は仙人として天への道を極めることが私の夢なのだから)

 

 

華扇(しかし私は今不安定な存在なのかもしれない、そんな事もたまに深く考えてしまうのも事実)

 

 

華扇(……私は一体何者な)

 

 

冴月麟「華扇が私に気付かないこともあるんだね♪」

 

 

華扇「へ?」

 

 

冴月麟「え?」

 

 

華扇「…」

 

 

冴月麟「…」

 

 

 

華扇「なっ!? あ、あなたいつの間に」

 

 

冴月麟「今入って来たんだよ~♪ 久し振りだね、華扇♪」

 

 

華扇「今、ですか?」

 

 

冴月麟「うん、今♪ あぁでも能力は使ってたよ、あなたの飼ってる動物に見付かったら不審者扱いされちゃうしね♪」

 

 

華扇「ふふっ♪ 私のペット達は邪な感情を持っていない人には危害は加えませんよ…そんなことよりも」

 

 

華扇「本当に久し振りですね麟、少し背が伸びましたか?」ニコッ

 

 

冴月麟「ん~背? 伸びたかなぁ?」キョトン

 

 

華扇(前に私と会ったのは確か……一年前ですね)

 

 

冴月麟「ん~……んん? 私って背伸びるの…? 謎だ…」

 

 

華扇(幻想郷の賢者になったとしてもあなたは人間、自分が実感しておらずとも日々成長しているものなのですよ、ふふっ♪)

 

 

華扇「…ところで麟、あなたは私に用事があってここまで来たのではないのですか?」

 

 

冴月麟「あっ、そうそうその事なんだけどね♪ 華扇も幻想郷会議に出席してほしいの」

 

 

華扇「…!」ピクッ

 

 

冴月麟「紫から頼まれたの、華扇にも報告してってさ」

 

 

華扇「……」

 

 

冴月麟「自分で言いに来ればいいのにさぁ…全くもう、何でも人任せにしてるから藍も疲れちゃ」

 

 

華扇「それは」

 

 

冴月麟「! うん…?」

 

 

華扇「……」

 

 

冴月麟「……」

 

 

 華扇は俯きながら麟に聞いた

 

 

華扇「それは幻想郷の賢者として出席しろということ、ですか…?」

 

 

冴月麟「へ? 何でそんなこと聞くの?」

 

 

華扇「…!」

 

 

冴月麟「華扇は華扇として出れば良いじゃん♪ 深く考える必要ないと思うけどな~♪」ニコッ

 

 

華扇「………麟、あなたはここ一年の私を知らないからそのようなことを言え」

 

 

冴月麟「紫から聞いてるから全部知ってるよ」

 

 

華扇「!!」

 

 

冴月麟「あなたは幻想郷が出来た時からの古参の賢者だった、辞めた理由は自分が自分でなくなるのを恐れたから」

 

 

冴月麟「『中途半端な気持ちで賢者なんて名乗れない』そう思ったあなたは自分の秘密と正体を封印して今まで暮らしてきた」

 

 

冴月麟「でもあなたは変わる事が出来た、現在の博麗の巫女、博麗霊夢の手によって」

 

 

華扇「……」

 

 

華扇「…八雲紫に隠しておくと言うのも無理な話でしたね、彼女から『こっち側』と言われた時から覚悟はしていました」

 

 

冴月麟「覚悟?」

 

 

華扇「彼女からお節介を受ける覚悟ですよ」

 

 

冴月麟「! ぷっ♪ な~るほどね♪」

 

 

華扇「紫から他にはなんと?」

 

 

冴月麟「霊夢ともう一人、天人さんの天子って人に救われたって事…あなたを長い間縛っていた『茨木』という名の呪縛から解放してあげたって」

 

 

華扇「……はぁ全く、何もかもお見通し…ですか」ニコッ

 

 

冴月麟「自分で自分に決着、つけれたんだね♪」

 

 

華扇「えぇ、色々と誤算はありましたが今はこの通り、前と同じように生き、日々修行に励むことが出来るようになりました」

 

 

冴月麟「それは華扇として?」

 

 

華扇「! ……」

 

 

華扇「……あなたの目に私はどう映っていますか?」

 

 

冴月麟「えっ? 華扇は華扇でしょ」

 

 

華扇「そうではなく種族として、です」

 

 

冴月麟「……華扇」

 

 

華扇「はい?」

 

 

冴月麟「なんか右腕の邪気が取れてスッキリしたら面倒くさいお説教成分に加えて面倒くさい自問自答成分が加わってない?」

 

 

華扇「は、はい!?」

 

 

冴月麟「華扇は華扇なの、私の目にはそうとしか映らないの!」

 

 

冴月麟「何者でもいいでしょ? 華扇は華扇じゃん♪」

 

 

華扇「!」

 

 

華扇(私は私…)

 

 

冴月麟「てか逆に聞くけど華扇は周りの人にどう見られたいのさ」

 

 

華扇「! ……そうですね」

 

 

華扇「……」

 

 

華扇(私が周りに望むこと…)

 

 

華扇「……私の過去や正体を知る者もいるでしょう、ですがさっきもあなたが言った通り、呪縛から解放された今……私は」

 

 

華扇「『茨木 華扇』ではなく『茨 華扇』として見られたいです」

 

 

華扇「仙人の…茨 華扇として」

 

 

冴月麟「! ……そっか♪ そうだよね♪ そりゃそうだ♪」

 

 

冴月麟「それじゃ今度から私もそう思う事にしようかなぁ♪ 仙人だろうと何だろうと華扇は華扇だって事は私の中ではブレないけどね♪」ニコッ

 

 

華扇「ふふっ…♪」ニコッ

 

 

華扇(私は何を深く悩んでいたんだろう…霊夢たちに救ってもらった時から心に決めていたのにブレるところだった)

 

 

華扇(賢者であった…そして妖怪でもあった…でも、でも今は)

 

 

華扇(仙人として幻想郷で生きていく、茨 華扇の名の元に)

 

 

華扇(……ありがとう、麟)

 

 

 

 

 

 

冴月麟「じゃあ『仙人の茨 華扇』として幻想郷会議に出席♪ よろしくね♪」

 

 

華扇「えぇ、分かりました」

 

 

冴月麟「日程とかは藍に聞いてね♪ よ~し、華扇には報告したし後は天魔ね♪ それじゃあね、華扇」

 

 

華扇「! あぁ麟、あなたは出席しないのですか?」

 

 

冴月麟「私? う~ん…私はいいや」

 

 

冴月麟「私も賢者の身だけど幻想郷の裏の巫女だもん、それに私の事を知らない霊夢たちに説明すると混乱しちゃいそうだし」

 

 

冴月麟「まぁでも近くで見ようかな、幻想郷会議っていうのを見るの初めてだし、能力使ってたら誰にも文句は言われないだろうしね♪」スッ

 

 

華扇「ふふっ、そうですね」

 

 

冴月麟「うん、だからそうする♪ それじゃあね華扇♪ また会おうね~♪」スッ

 

 

 麟は音も無く姿を消した

 

 

 

華扇「……麟、本当に不思議な子」

 

 

華扇(霊夢が居なければ今の博麗の巫女にはあの子がなっていた筈、もしなっていたとしたら幻想郷はどうなっていたのでしょうか)

 

 

華扇(霊夢と似通ったところがあるあの子に救われた私がここに存在していたかもしれませんね、ふふっ♪)

 

 

華扇「…」

 

 

華扇「また会いましょう、麟」

 

 

 

 

 

 

 

 【妖怪の山 天魔の屋敷】

 

 《三番目の賢者》

 

 

天魔「…」

 

 

天魔「…!」ピクッ

 

 

天魔「……おい」

 

 

烏天狗A、B「! はい」

 

 

天魔「急用だ、貴様ら少し席を外せ」

 

 

烏天狗B「? いきなりどうしたというのですか、天魔様」

 

 

天魔「説明を求めるな、今は護衛もいらん」

 

 

烏天狗A「し、しかしあなた様の警護をするのが我々の」

 

 

天魔「なら別の任を与えてやる、ここに射命丸、姫海棠、犬走を呼べ、来ないのならば引っ張ってでも連れてこい」

 

 

烏天狗A、B「!」

 

 

天魔「……どうした、早く行け」

 

 

烏天狗A、B「は、はい!」スッ

 

 

 バサッバサッ…!

 

 

天魔「……」

 

 

天魔「…」スッ

 

 

天魔「冴月麟」

 

 

冴月麟「うえぇっ!? な、何でいるって分かったの!?」ビクッ

 

 

天魔「姿を能力で消していようと私の前では無意味だ、風の流れが変わったからな」

 

 

天魔「消えている様に見せ掛けているだけでその場に貴様が存在している、見抜くのは容易い…それに冴月麟がここに来ると風が騒いでいた」

 

 

冴月麟「おぉ~…さっすが『風の声を訊く程度の能力』」

 

 

天魔「……で、私に何の様だ、貴様が態々ここに来た理由は何だ」

 

 

天魔「手短に話せ、出払わせた私の部下が戻って来る前にな」

 

 

冴月麟「え、えぇ~…うんまぁ…は、話すけど」

 

 

冴月麟(魅魔が『昔から絡み辛ぇ頭せっかち天狗』って言ってたけど…まぁせっかちは分かるかな、うん)

 

 

冴月麟(隠岐奈と紫も『堅苦しい出不精』って言ってたっけ…外交もあんまりしないみたいだし)

 

 

冴月麟(でも三人とも『意外と根は素直で部下思いで妖怪の山と幻想郷大好き』って所は同調してたなぁ)

 

 

天魔「…おい、麟」

 

 

冴月麟「あぁごめんごめん…! サッと話してサッと帰るからね♪」

 

 

冴月麟「ズバリ! 今度行われる幻想郷会議に出席して下さいって話だよ♪ よろしくね~♪」

 

 

天魔「! ……ふん、やっとやる気になったのか」

 

 

冴月麟「え?」

 

 

天魔「言葉通りの意味だ、前に行われたのは何十年も前になる」

 

 

冴月麟「へぇ~そうなんだ…それは知らなかったなぁ、てかやる気の問題なの?」

 

 

天魔「会議をする必要がないほど幻想郷に変化が無かったからな」スッ

 

 

 スタスタ

 

 

天魔「……」スッ

 

 

冴月麟「…どうしたの? 急に空を眺めて」

 

 

天魔「ここ数年で幻想郷は随分変わったと聞く」

 

 

冴月麟「誰から聞いたの?」

 

 

天魔「風たちが噂でな、昔とは違う心地好い風が幻想郷に吹くようになった」

 

 

冴月麟「……風、ね♪」

 

 

天魔「…ふん」

 

 

天魔(今まで様々な風が幻想郷を吹きすさんで来たがこんな風は初めてだ…変化に変化を重ねた現在を幻想郷は望んでいるのだろうか)

 

 

天魔(思えば八坂と洩矢が私に交渉をし、奴等を受け入れた時から私自身も変化を望んでいたのかもしれないな、山の為、山に住まう者の為、幻想郷の一角を担う為…全ては妖怪の山の為)

 

 

天魔(…伊吹様が望まれていた人間との新たな歴史、私は賢者として、山の長として貢献できているのだろうか)

 

 

天魔(……)

 

 

天魔(幻想郷の台風の目…博麗霊夢、か)

 

 

天魔「……私の目で見定めてやるか、紫が見出だした十三番目の風を」

 

 

冴月麟「…♪ 霊夢はいい子だよ♪」ニコッ

 

 

天魔「それは私が判断することだ」

 

 

冴月麟「そういう風の噂は聞かないの?」

 

 

天魔「聞く必要のあるものと私自身が直接見たいものは違うからな」

 

 

冴月麟「…ふふ~ん♪ 霊夢の事、好きになっちゃうかもね♪」

 

 

天魔「ふん…さて、な」

 

 

冴月麟「ふふっ♪」スッ

 

 

冴月麟「さてと♪ じゃあ私そろそろ行くから、会議の日程とかは藍に聞いてね♪」

 

 

天魔「あぁ」

 

 

冴月麟「それじゃあね~♪」スッ

 

 

 麟は音も無く姿を消した

 

 

天魔「……」

 

 

天魔「会議、伊吹様や星熊様も出席なさるのだろうか」

 

 

天魔(まぁなるようになるか、華扇様ですら今回は出席されるやもしれん、腕の件もあるしな)

 

 

天魔「しかし紫の奴、なぜ冴月麟に報告しに来させたのだ…? 自分で来ればいいものを、奴は本当に昔から面倒を嫌がるな」

 

 

天魔「……もうそろそろ射命丸たちも来るか」

 

 

天魔「奴には説明不要だろうが姫海棠と犬走には言っておく必要がある」

 

 

天魔「会議の護衛、奴等三人に任せるとしよう」

 

 

天魔「……」

 

 

天魔(飯綱丸は独自に動いているようだな、虹龍洞の件もある…奴には連絡はいらんな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冴月麟「さて、次は博麗神社の上空ね♪」

 

 

冴月麟「今回も結界管理の時間掛かりそうだなぁ、なんたって」

 

 

冴月麟「霊夢にバレない様にやらないといけないから…ね♪」

 

 

 

 

 

 

 【賽の河原】

 

 《素敵な河原で過ごしましょ♪》

 

 

戎 瓔花「キョンシーですか?」

 

 

霍 青娥「そうです♪ 興味ありませんか?」

 

 

瓔花「えっと…芳香さんみたいになるんですか?」

 

 

青娥「はい♪」ニッコリ

 

 

瓔花「私が?」

 

 

青娥「はい♪」ニッコリ

 

 

瓔花「……」チラッ

 

 

宮古 芳香「うおーここは綺麗なところだなー青娥ー」

 

 

瓔花「……いや、私骨が無いんですけど」

 

 

芳香「そーゆー問題かー?」

 

 

青娥「骨なんて仙人の力を使えばどうとでもなると思います♪ その積み上げている石を骨の代わりにしてみたりとか…♪ 水子としての新たな扉、開いてみませんか?」

 

 

瓔花「キョンシーになった時点で水子じゃなくなってしまうじゃないですか! それは嫌ですよ!」

 

 

瓔花「私は水子としてここに居たいんです、他の子達も私を慕ってくれてますし」

 

 

青娥「……ずっと?」

 

 

瓔花「はい、ずっとです」

 

 

青娥「……ふふっ♪ そうですか♪」

 

 

青娥「これはフラれてしまいましたねぇ…♪ でもまぁ仕方ないですね、帰りましょう芳香ちゃん」スッ

 

 

芳香「おー、もー帰るのかー」スッ

 

 

 スタスタ

 

 

芳香「なー青娥ー」

 

 

青娥「何ですか?」

 

 

芳香「あいつはー本当に水子かー?」

 

 

青娥「! あらあら芳香ちゃんにしては鋭いわねぇ♪」

 

 

芳香「私にしてはとはどういう意味だー! 青娥ー!」

 

 

青娥「あら、私を怒ってくれるの? 成長したのね、嬉しい♪」

 

 

芳香「うがー!」

 

 

青娥「ふふっ♪」

 

 

青娥「……」

 

 

青娥(まぁ噂を聞いたから確かめてみたかったというのが本音ですかね)

 

 

青娥(もしもあの子が水蛭子だったとしてもそれはそれで面白いですし…♪ ふふふっ♪)

 

 

 

 

瓔花「……変な人だったなぁ」

 

 

瓔花(でも噂を知って私に会いに来てくれたのは嬉しかったな…♪ 私も水子のアイドルとして名前が売れて来たのかなぁ♪)

 

 

瓔花(……まぁ骨のある体はちょっと憧れるかも、なんてね♪)

 

 

 

 

 

 【三途の河】

 

 《釣れない二人と、つりたい鶏》

 

 

牛崎 潤美「……」

 

 

 潤美は小舟の上で釣糸を垂らしている

 

 

潤美「…うーん」

 

 

潤美(今日はボウズか? 珍しい事もあるもんだ)

 

 

潤美「……? おや」

 

 

 

 ギィ… ギィィ……

 

 

 

小野塚 小町「ほら久佗歌、もうすぐだからしっかりしな」

 

 

庭渡 久佗歌「……」ドヨーン

 

 

小町「はぁ、こりゃあ女将の所に着く前にどうにかなっちまいそうだねぇ……うん?」スッ

 

 

潤美「やぁ小町、今日はちゃんと仕事をしているのかい?」

 

 

小町「おぉ潤美の旦那か! ってその言い方はあたいが毎日仕事をしてないみたいじゃないか」

 

 

潤美「真面目にやってるとこを見たこと無いが」

 

 

小町「死神ってのは閻魔様の縁の下の力持ちでいいのさ♪ それにあたいは自分の仕事ぶりを威張ったりしない質でねぇ♪」

 

 

潤美(至極真っ当だとは思うが、サボっているのを良く見掛けるのはどういう事なんだ)

 

 

小町「そう言うそっちはどうなんだい? 釣れてるかい?」

 

 

潤美「! あぁ今日は引きが悪くてね、小一時間粘っているけどまだ一匹も釣れちゃくれない」

 

 

小町「ありゃあ、珍しいねぇ」

 

 

潤美「そうなんだよ、うーん……引き上げるか…?」

 

 

潤美(……いや、もう少し粘っ)

 

 

小町「お! なら潤美の旦那も一緒に行かないかい?」

 

 

潤美「…? どこにだ?」

 

 

小町「夜雀の女将の屋台さ、女三人で日頃の疲れを酒で癒そうじゃないか♪」

 

 

潤美「! ……」

 

 

潤美「…嬉しい申し出だが、今回は断るよ」

 

 

小町「えぇ~…」

 

 

潤美「もう少し粘ってみようと思うんだ、こういう時は思わぬ大物が釣れそうだからさ」

 

 

小町「釣れないねぇ……ふぅ、しゃあないか…なら旦那が大物を釣りあげるのを祈っておくとするかね」

 

 

潤美「ふっ…♪ ありがとうな、また今度誘ってくれ」

 

 

小町「あいよ♪ じゃああたい達行くから」スッ

 

 

潤美「あぁまたな…って、ん? 三人…?」チラッ

 

 

久佗歌「……」ドヨーン

 

 

潤美「……居たのか」

 

 

潤美(舟に横になってたから気付かなかった、てか目が死んでる…)

 

 

小町「? あぁ…ほら久佗歌、シャキッとしなって」

 

 

久佗歌「……」

 

 

小町、潤美「…?」

 

 

久佗歌「……もう…動き…たく…ないです」

 

 

小町、潤美「えぇ…」

 

 

潤美「…どうしてこうなった」

 

 

小町「働き過ぎたらしい、久佗歌の同僚に聞いたんだけど妖怪の山にある自分の家に帰らずにずっと関所に缶詰だったんだと、二十日間もだよ? あたしゃ信じられなかったね」

 

 

潤美「…」

 

 

小町「だからあたいが有休取らせて無理矢理引っ張って来たのさ、定期的に休まないと体に毒だってね」

 

 

潤美「お前が言うと謎の説得力はあるな、というか既に猛毒状態な気がするが…」

 

 

久佗歌「猛毒…? ふっ…毒がなんだって言うんですか、風邪だろうがなんだろうが仕事はしなくちゃいけないんですするべきなんですその筈です、まぁ風邪なんて私の能力の前では無力ですけどもね」

 

 

小町、潤美(何でいきなり饒舌に…)

 

 

久佗歌「大体さっきから何なんですかお二人は、つるだのつれないだのと…ふふっ、なんなら私が自分自身を『つりたい』ぐらいですよ」

 

 

小町、潤美「……つりたい?」

 

 

小町、潤美「……」

 

 

小町、潤美「…」

 

 

小町、潤美「吊りた…!?」

 

 

潤美「おいお前ぇ! 早まっちゃいけないぞ!?」

 

 

小町「あたいが言うのもなんだけど命は大切にしな! そんなこと考えるもんじゃないよ!?」

 

 

久佗歌「? 早まるな…? 命…? 何の話ですか…?」

 

 

小町、潤美「え」

 

 

久佗歌「ほら、私が何処かでもう一匹釣れたら良いなぁって……でも庭渡神が二人に増えるのはどうかと思いますけ」

 

 

小町、潤美「紛らわしいからやめろぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 【地獄 畜生界 霊長園】

 

 《天才にしか理解が及ばない偶像》

 

 

 

杖刀偶 磨弓「……」

 

 

磨弓「…」チラッ

 

 

埴安神 袿姫「ふんふふ~ん♪ ふふ~ん♪」ゴリゴリ

 

 

磨弓「袿姫様」

 

 

袿姫「今私は作業中だよ、話なら後にしなさい」

 

 

磨弓「……」

 

 

磨弓「今回から出来た新しい埴輪部隊、私が率いないと駄目ですか?」

 

 

袿姫「何を言っているんだ、埴輪兵達を統率し、管理することがお前の役目であり使命だろう」

 

 

磨弓「……そう…なのですが……」チラッ

 

 

 ヒョコッ ヒョコッ

 

 

袿姫「……」チラッ

 

 

袿姫「やはり思う所があるか、磨弓」

 

 

磨弓「えっ…?」

 

 

袿姫「私は生身の人間達に負けた時に悟った、生気溢れる生き生きとした造形こそが私の部下として相応しく、そして美しい偶像になり得るのではないのか…? とな」

 

 

磨弓「は、はぁ」

 

 

袿姫「……だが些かやり過ぎたのやもしれん」チラッ

 

 

磨弓「…」チラッ

 

 

 

 

ミニミニ八千慧A、B、C「キッチョー♪ キッチョー♪」チョコチョコ

 

 

ミニミニ八千慧D、E、F「ヤッチエー♪ ヤッチエー♪」チョコチョコ

 

 

ミニミニ早鬼A、B、C「クロッコマー! クロッコマー!」ヒョコヒョコ

 

 

ミニミニ早鬼D、E、F「サッキー! ササッキー!」ヒョコヒョコ

 

 

 

 

袿姫「奴等をモデルにし、デフォルメして造り上げたは良いが人間霊共から可愛い可愛いと言われる様になってしまった、何故だ? 戦闘力なら他の埴輪兵士の倍以上はあると言うのに…やはり目や鼻、口も再現して造ってしまったからなのか…?」

 

 

磨弓「何ででしょうね」

 

 

磨弓(可愛さと言う名の戦闘力がかなり上がってしまっているような)

 

 

袿姫「…はぁ……しかたがない、しかたがないねぇ…」

 

 

袿姫「造り直すか、顔のパーツを従来の埴輪兵士と同様の物にしてやろう、そうすれば少しは可愛さも薄れるだろうしな、生気も薄れてしまうのが難点だが」

 

 

袿姫「……ふふっ、しかし兵士としての最高傑作は磨弓だけだからなぁ…♪ これ以上の物を望むのは欲張りやもしれん」

 

 

磨弓「っ!? ……///」カアッ

 

 

磨弓(そんな埴輪が嬉しくなる事をサラッと言わないで下さい、仕事が捗っちゃうぅ…///)

 

 

 

 

 

 

 

 【畜生界 鬼傑組屋敷、組長の部屋】

 

 《その選択は幸か不幸か》

 

 

 

吉弔 八千慧「最近早鬼の様子がおかしい?」

 

 

オオカミ霊「はい、譫言の様に『みこ様が~』とか『みこ様に会いたい~』だとか口走る毎日で」

 

 

八千慧「ふむ…『みこ』? とは」

 

 

オオカミ霊「さあ…私たちにもさっぱりなので」

 

 

カワウソ霊「『みこ』と聞くと博麗の巫女さんを思い出しますね♪ 懐かしいです」

 

 

八千慧「…ふっ、あの博麗の巫女に懐柔でもされたのではないですか?」

 

 

オオカミ霊「そ、そんなことあるわけが…」

 

 

八千慧「まぁ無いでしょうね、早鬼が誰かの下に着くなどありえないです、それに博麗の巫女とはあの件以来接触していない筈」

 

 

オオカミ霊「…」

 

 

カワウソ霊(で、出た組長のいじり…! 敵に対して容赦しないなぁ…♪)

 

 

カワウソ霊「…ですがその『みこ』と言う者が何者なのかは気になりますね」

 

 

八千慧「確かに、ふぅむ…」

 

 

八千慧「…」

 

 

八千慧「……分かりました、いいでしょう」

 

 

オオカミ霊「!」

 

 

八千慧「先程の貴方の案通り、早鬼に直接会って話を聞くとしましょう」

 

 

カワウソ霊「! き、吉弔様! それは」

 

 

オオカミ霊「…! 恩に着ます、八千慧殿」

 

 

八千慧「では行きましょうか」

 

 

カワウソ霊「し、しかし……! 組長、お耳を」スッ

 

 

八千慧「…?」スッ

 

 

カワウソ霊「組長を嵌める罠という可能性もあるのでは…?」ヒソヒソ

 

 

八千慧「あの猪突猛進ペガサスが罠を使う等ありえません、私と争いたいのなら堂々と乗り込んで来るでしょう」ヒソヒソ

 

 

カワウソ霊「…!」

 

 

オオカミ霊「…?」

 

 

八千慧「そういう事です…私がいない間、留守は任せましたよ」スッ

 

 

カワウソ霊「! はっ! 行ってらっしゃいまし!」

 

 

 

 

 

 【畜生界 勁牙組屋敷 組長の部屋】

 

 《聖徳太子だけの天馬》

 

 

 

驪駒 早鬼「あぁぁ~…♪ 神子様ぁ~♪ まさかご存命だとは…! しかもあの幻想郷近くの世界におられるのですね♪」

 

 

早鬼「会おうと思えばすぐにでも会いに行けるけど私には今立場が……あぁでも会いたい! 会いたい……けど」

 

 

早鬼「組を離れて神子様に会いに行くのは職務放棄に同じ…もしそんなことをしてしまったら『職務を全うできない者が豪族と共に歩めると思っているのか』とお叱りを受けるに決まっている! 私が神馬だった頃の失敗を繰り返してはだめだ!」

 

 

早鬼「……はっ!? 主から長く離れていた私が神子様等と言うのはおこがましいか…? やはり太子様とお呼びする方が良いのか…!? でもそれだと距離感があって私は嫌なんだよなぁ…今も物理的に距離感あるのも嫌だけどさぁ」

 

 

早鬼「はぁぁぁ……神子様ぁ…早く会いたいなぁ」

 

 

 

八千慧、オオカミ霊「……」

 

 

八千慧「何ともまぁ悶えながら長い一人言を…」

 

 

オオカミ霊「最近本当にこんな調子で…」

 

 

八千慧「しかし良い情報は得られましたね『みこ、みこ』と言うから何だと思えば……『太子様』ですか、ふふふっ…」ボソッ

 

 

オオカミ霊「…?」

 

 

八千慧(かの聖徳太子…本当に存在していたとは驚きましたがこれは都合が良い)

 

 

八千慧(昔に早鬼の素性を調べたことが実になって来ましたね、その太子の側にいて足となって働いていた、そして今も忠誠心は捨てきれてはいない…これだけ分かっていれば充分)

 

 

八千慧(今の状態の早鬼を利用すれば勁牙組を弱体化出来るかもしれない……だがしかし早鬼の決断力と組の団結力を侮るとこちらが血を見ることになりますね)

 

 

八千慧(太子側が早鬼に味方する可能性も十分にありえる話…ここは冷静に)

 

 

八千慧「……早鬼」

 

 

早鬼「……? っ!? や、八千慧!? どうやってここに」

 

 

八千慧「私がここに居ることが不思議ですか? 同盟を組んだ仲だというのに」

 

 

早鬼「そんなものはもう解消されているだろうが! 一人でカチコミとは…! お前らしくないが喧嘩なら受け」

 

 

八千慧「会わせてあげましょうか? というより私と共に会いに行きましょう」

 

 

早鬼「…?」

 

 

オオカミ霊「!?」

 

 

早鬼「な、何の話を」

 

 

八千慧「貴方が今一番会いたい人、聖徳太子…♪」ニヤッ

 

 

早鬼「なっ!? 何故その事を」

 

 

オオカミ霊(全部丸聞こえでしたよ驪駒様…)

 

 

八千慧「私と行けば自分の組が後ろから狙われる心配も不要でしょう、畜生界の住人は動きがなければ皆怠惰を貪り尽くす毎日、正直退屈していたのですよ」

 

 

八千慧「如何です? 早鬼」

 

 

早鬼「わ、私は…どうしたら」

 

 

八千慧「……」

 

 

八千慧(私が知りたいのは聖徳太子の素性と思想…そして早鬼への関心)

 

 

オオカミ霊「お、落ち着いて下さい驪駒様!」

 

 

早鬼「わ、分かってる! 分かってる…けど」

 

 

八千慧(ふふふっ、この様子だと会いに行くのも時間の問題…♪ あぁ私の思うように事が運ぶ…♪)

 

 

八千慧「……!」ハッ

 

 

八千慧(……私の方が早鬼よりもその太子に会いたいと強く想っている様に見える、と思われたら嫌ですね…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【深夜 幻想郷 遥か上空】

 

 《幻想郷の裏の巫女 冴月麟》

 

 

冴月麟「よ~し、異常な~し♪ 魅魔、そっちはどう?」

 

 

 『おう、こっちも異常はねぇぞ、幻想郷の結界は今年もド安定だぜ』

 

 

冴月麟「うんうん♪ 外側の方も大丈夫みたい、良かったね紫♪」

 

 

紫「……」

 

 

冴月麟「……またそんな顔してさ、どうしたの? 何か悩み事?」

 

 

紫「ねぇ、麟」

 

 

冴月麟「うん? なぁに?」

 

 

紫「…」

 

 

冴月麟「…」

 

 

紫「……」

 

 

冴月麟「……」

 

 

紫「あなたは賢者になる前に私たちに言ってくれたわよね、幻想郷を影から支えたいって」

 

 

冴月麟「うん、言ったね」

 

 

紫「何故そう思ったの? 霊夢がいたとはいえ、あなたが表で『十三代目博麗の巫女』として居続ける事も出来たし霊夢と協力して『二人の巫女』として生き続ける選択肢もあった」

 

 

紫「でもあなたは幻想郷の裏の巫女としての路を選んだ、選んでくれた」

 

 

冴月麟「…」

 

 

紫「その理由って、何?」

 

 

冴月麟「……」

 

 

冴月麟「…」

 

 

冴月麟「私と全然…うん、全然関係ないけど世界から忘れられたかも知れないある一人の少女とその少女を救ってくれたとある一人の妖怪さんの話をしていい?」

 

 

紫「………聞かせて」

 

 

 

 

 

冴月麟「記憶を失っていて右も左も分からなくなっていた幼い少女がいた、何処から来て何処へ向かおうとしていたのかも分からない少女は何故か博麗神社の前にボーッと立っていた、無から生まれた様な感覚を持ったその存在は虚無の様だった」

 

 

冴月麟「そんな少女に声を掛けた一人の妖怪さんがいた、その妖怪さんは少女に『名前』を与え、自分の住処で育てる事にした」

 

 

冴月麟「少女はその妖怪さんの元で幻想郷のあらゆる物を見て、学び、そして数々の人との出会いの中で成長していった」

 

 

冴月麟「少女は記憶は戻らなかったけどそのお陰で感情と自己を手にする事が出来た、一生忘れられない新しい思い出と記憶をも手にした」

 

 

冴月麟「そんな少女は妖怪さんとの生活の中で度々あることを思うようになったの、妖怪さんを近くでずっと見てたからだと思うの、偽りなんかじゃない、その少女の心からの想いであり本心」

 

 

 

 

 

 

 

 

  『私はこの妖怪さんみたいになりたい』

 

 

 

 

 

 

 

紫「……」

 

 

冴月麟「その妖怪さん、昔は『私は幻想郷の管理人だ~幻想郷の管理人だ~』って言うのが口癖だったらしくてさぁ♪ 少女にしつこく言ってたんだって、少女も『また同じこと言ってる』とか『冬眠しちゃうのにその間の管理はどうするの』とか不思議がってたなぁ~♪」

 

 

冴月麟「でもそんな妖怪さんに救われて、育てられて生きる意味を貰ったから…なのかなぁ、少女がそう思うようになったのは」

 

 

冴月麟「あ! 憧れとか育ててくれた恩を返したいとかそういう想いもあったのかもね♪」

 

 

冴月麟「少女の思い描く管理人さん像は『そこに生きる人や動物、植物に至るまでありとあらゆるもの全てが豊かに生きられる様に影から支える存在』なの、妖怪さんはどう思ってるのかは分からないけどね♪」

 

 

冴月麟「そう……そうなのよ、だからええっと…つまり、さ」

 

 

冴月麟「……///」カアッ

 

 

冴月麟「…う~んと、ね…? ……///」

 

 

冴月麟「よ、妖怪さんと同じ賢者になればその妖怪さんとずっと…うん、たぶんずっと一緒にいられるし、少女にはそれを叶えられる強さと能力も持ってたし、なる予定だった博麗の巫女も代わりが見つかるしで、さ……なれるものならなってやるって決めたんじゃないかな、たぶん……うん、たぶん」

 

 

紫「…」

 

 

冴月麟「そ、それに…ね、たぶんその少女その妖怪さんのこと好き…なんだろうし」

 

 

冴月麟「うん……きっと、きっと大好き…///」カアッ

 

 

冴月麟「な、何で私こんな話してるんだろうね、あ~あ~…! は、話して損しちゃったかなぁ! こんなの人から聞いた作り話かも知れないのにね」

 

 

冴月麟「ま、参っちゃうなぁ…本当に……」

 

 

紫「……」スッ

 

 

紫「…麟」

 

 

冴月麟「へ…? …わっ!」スッ

 

 

 紫は優しく麟を抱き締めた

 

 

冴月麟「うえっ!? ちょ、ちょっと紫!?」ギュッ

 

 

紫「……」ギュー

 

 

冴月麟「いきなりな、何を…/// 何…するのさ……は、離れてほしいかなぁ…なんて、あははは…」

 

 

紫「…」ギュー

 

 

冴月麟「…ははは…はは……」

 

 

冴月麟「……」

 

 

冴月麟「…」

 

 

冴月麟「……っ!」スッ

 

 

 麟は紫を抱き返した

 

 

紫「! ふふっ…♪ 全くあなたは」ギュッ

 

 

冴月麟「……」ギュー

 

 

紫「本当に昔から素直じゃないわよねぇ、麟ちゃん反抗期ぃ~♪」

 

 

冴月麟「! ま、まだそれ言うの…? 辞めてよ、私もう子供じゃないのに~…///」

 

 

紫「私からみたら子供みたいなものよ、特にあなたと霊夢はね♪」

 

 

冴月麟「! …ふふふっ♪ はいはい、私はまだまだ子供ですよーだ…♪」ニコッ

 

 

 紫と麟はお互いの目を合わせる

 

 

紫「…♪」ニコッ

 

 

冴月麟「…♪」ニコッ

 

 

 

紫「話してくれてありがとう 少女さん」

 

 

冴月麟「こちらこそありがとう 妖怪さん」

 

 

 

紫「ふふっ♪」ニコッ

 

 

冴月麟「えへへへ…♪」ニコッ

 

 

 

 

  おしまい……!

 

 

 






 お疲れ様でした! ここまで読んでいただいてありがとうございました♪




 冴月麟という名の幻想郷の裏の巫女…如何でしたでしょうか、説明不足な所は多々あると思いますので少し補足をここに書かせていただきます、鬼形獣組もです。


 【冴月麟の能力について】

 麟の能力は『概念を自由に操る程度の能力』です、簡単に言ったら錯覚系の能力者です、人間は物事を理解するときに無意識に共通な所を見付ける…と説明すると分かりやすいでしょうか
 例えば猫…ペルシャとかメインクーンとかマンチカンとかの種類を見ても猫だと理解する『猫とはこういうもの』と物事に対する共通の思考内容…抽象的ですけど多くの人が必ず頭の中に描ける物が概念だと思います。
 それを操れるので冴月麟という人物の概念を消して姿を隠したり記憶から抜いたり(麟の事を知っていて尚且つ妖力等がずば抜けて高い人には効きません、恐らく無意識状態の古明地こいしにも効きません)出来る筈です、自分が概念という概念その物になることも出来ます。

 この能力にした理由は読者の皆様が二次創作では有名ではあるものの、冴月麟を知っているかいないかで印象がかなり変わるキャラなので採用しました、原作で登場する筈だったかもしれない幻の没キャラクターである彼女……あなたの頭の中にいる麟と他の方が思い描いている麟は同じ格好をしているでしょうか、六角二胡を持った金髪の謎巫女さん…? もしかしたら『さつきりん』ではなく『さえつきりん』かもしれないですね。


 【霊夢と紫との関係】

 冴月麟は霊夢を知っていますが、霊夢は麟の事を知りません。 霊夢は麟の能力によって麟という存在を知る事が出来ないだけです、本編で語った通り麟もそれを望んでいるので深く考えなくても大丈夫です、因みに霊夢との年齢差はありません、同い年です。
 紫とは本編での語りが全てです、麟の事を知っているのはサグメとレイラを除き、幻想郷古参の賢者クラスの住人のみです。

 それと紫、今回冴月麟ラブになってますが麟が珍しくデレたのでちょっとからかっているだけです、一緒に住んでいたので藍と橙並みに家族だと思っています。



 【鬼形獣組について】

 瓔花は元ネタと二次設定モリモリです。

 潤美と久侘歌は小町と知り合いであること以外そんなに…いえ、社畜侘歌は二次設定です! 個人的に久侘歌はミスティアと組ませてみたいですね

 袿姫と磨弓は畜生界で楽しくしてます、何れ幻想郷に出てくるかもですが人間霊とかどうしましょう…他の神様たちと組ませてみたいです。

 八千慧と早鬼は…何処かで神子に必ず会わせてみます、布都たちとの絡みも楽しみです。

 (オオワシ霊さんを出せなくて申し訳ありませんでした)



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