東方紫藍談  ~紫と藍の幻想談~   作:カテサミン

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 活動報告にも書かせていただきましたがUAが10000を突破いたしました、この場でもお礼を述べさせていただきます、読者の皆様ありがとうございます、これからもよろしくお願いします!





 今回はサクサク読めるタイプの物語を一つ書かせていただきました。

 ですが今回、私なりにちょっと紫に思うところがあったので物語に少し含みを持たせております

 紫(藍と、東方キャラ全員)が存在しているお陰で『東方紫藍談』が書けていますので紫にちょっとした設定をまた追加したかったのです


 このお話はコメディとシリアスが5:5で構成されてます、そして四コマ要素も少々あります。

 物語の副主人公として旧作キャラを出しました。


 それでは始まります♪




《第14談》八雲紫の秘密と幻想大学

 

 

 

 【幻想郷 博麗神社】

 

 

八雲紫「ねぇ、霊夢」

 

 

博麗霊夢「なに?」

 

 

紫「『生まれ変わってみたい』とかって思ったこととかある?」

 

 

霊夢「…は?」

 

 

紫「生まれ変わってみたいなぁって」

 

 

霊夢「……なんなの突然」

 

 

紫「なんか聞いてみたくなっちゃって」

 

 

霊夢「……」ジーッ

 

 

紫「…! きゃっ♪ 霊夢ったらぁ♪ そんなに見つめちゃイ~ヤ♪」

 

 

霊夢「質問に答えなさい」

 

 

紫「ええっ!? 質問してたの!?」

 

 

霊夢「あんたなら私の目を見れば分かるんでしょ?」

 

 

紫「…」

 

 

霊夢「…」

 

 

紫「他意はないわよ」

 

 

霊夢「本当かしら」

 

 

紫「私、嘘つかない」

 

 

霊夢「…」

 

 

紫「答えてくれる?」

 

 

霊夢「まぁいいけど、でもちょっと考えさせてもらうからね」

 

 

紫「そ…ありがと、霊夢」

 

 

霊夢「お礼は別にいらないでしょ」

 

 

霊夢(怪しすぎるけどまぁいいか)

 

 

 

 

 

霊夢「生まれ変わってみたい…か」

 

 

紫「どう?」

 

 

霊夢「う~ん……」

 

 

霊夢「…」

 

 

霊夢(生まれ変わる…私が…?)

 

 

霊夢(先ず最初に浮かんでくるのは何に生まれ変わりたいかってこと、空を見上げて鳥は自由で良いから生まれ変わってみたい…とかは良く聞く話だけど)

 

 

霊夢(鳥が自由なわけないじゃない、鳥は野性の世界で生きてるんだから意味もなく行きたいところを飛び回ってる訳じゃない…群れを成し、繁殖し、子育てする…鳥も人と同じでそれぞれだけど忙しいもんだわ)

 

 

霊夢(でも文とかミスティアとか…あっいやいや、あれは妖怪じゃないの)

 

 

霊夢(となると生まれ変わってみたい対象は自分? 私は私に満足してるんだから私に生まれ変わりたい…のかしら…? 転生…阿求みたいね)

 

 

霊夢(後は理由)

 

 

霊夢(生まれ変わりたい程の理由…様は一度死んで、死んだけどもう一度蘇ってみたいと思わせる何か)

 

 

霊夢(紫は生まれ変わってみたいかと思ったことはあるか…と聞いてきてる…私がもう一回自分に…?)

 

 

紫「…」

 

 

霊夢「…」

 

 

霊夢「…」

 

 

紫「…」

 

 

霊夢「……紫、私は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「そんなの思ったこと一度も無いわ」

 

 

紫「…」

 

 

霊夢「そして私はこれからもそんなことは思わない筈よ」

 

 

紫「…どうして?」

 

 

霊夢「最初に転生すること自体に意味があって、それを義務づけられてる阿求を参考にして自己分析してみたんだけど、私には阿求みたいに転生してまで何かをしたい、しなきゃいけないなんて思わない人間なのよ」

 

 

霊夢「今の私には生まれ変わって何かしたいってものが無い、そしてこれからもこの思いは変わらないから一生そんなことは思わない」

 

 

霊夢「私は今の日常が好きだしこの日常が変わるのが嫌いだから私は転生とかには全然興味ないわね」

 

 

紫「……今は思ってないかもしれないけどまだまだあなたには無限の未来が待っているのよ? 色んな異変があなたを待ち受けているだろうし、様々な人種との出会いがあなたを待っている…喜び、悲しみ、無限の可能性…数えきれない程の感情があなたをこれから先包んで行くの」

 

 

紫「それなのにあなたは自分は変わらない、心変わりしないと言い切れるの?」

 

 

霊夢「言い切れるわよ」

 

 

紫「何故?」

 

 

霊夢「私が『心の底から生まれ変わりたい!』って言ってる姿をあんたが望んでいないから」

 

 

紫「!!」

 

 

霊夢「あんたさぁ、私が見抜けないとでも思ったの? ここに何日と、何年も顔を出してる奴の心の中なりなんなり見抜くのなんて簡単なの」

 

 

霊夢「まぁ…その…///」カアッ

 

 

霊夢「生まれ変わってみたい…なんて大抵悲劇とかから来るもんでしょ? その悲劇をあんたが黙って私に背負わせるとは…ええと…/// お、思えないのよ…!」

 

 

霊夢「だから生まれ変わってみたいなんて思ってないしこれからも思わない、思えない、思わせてくれない」

 

 

紫「…霊夢」

 

 

霊夢「それだけのことよ」

 

 

紫「…」

 

 

紫「そっか」

 

 

霊夢「そうよ」

 

 

紫「そうよね、あなたの日常は壊させないし誰も壊せない、それは私の気持ち…望んでいること…ふふっ、もしかしたらあなたの友達もそう望んでいるのかも」

 

 

紫「何で私こんなことあなたに聞いているんでしょう…ごめんなさいね霊夢、変なことを聞いてしまったわね」

 

 

霊夢「…」

 

 

霊夢「…あんたまさか私がこう答えるの分かってて質問してない?」

 

 

紫「ふふっ♪ さぁどうかしら♪」

 

 

霊夢「まぁ、別に興味ないけどさ」

 

 

紫「…」

 

 

霊夢「…あんたはどうなのよ」

 

 

紫「私?」

 

 

霊夢「生まれ変わってみたいとか思ったことあんの?」

 

 

紫「あるわよ、何百と…数え切れないわね」

 

 

霊夢「即答すんの? てか何でそんなに思ったのよ」

 

 

紫「だってゆかりんだし♪」

 

 

霊夢「答えになってない」

 

 

紫「それもまたゆかりん♪」

 

 

霊夢「一回殴っていい?」

 

 

紫「グーは勘弁して下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「よっ…と、そろそろ帰ろうかしら♪ それじゃあね霊夢、また明日♪」

 

 

霊夢「明日も来るんかい、まぁお茶ぐらいなら出してあげるわよ」

 

 

紫「ふふっ♪ 楽しみにしてるわ」

 

 

紫「じゃあね、私の霊夢♪」スッ

 

 

 ギュオン…!

 

 

霊夢「…」

 

 

霊夢「本当に何でいきなりあんなこと聞いたのかしら…?」

 

 

霊夢「変な奴…って元から変か」

 

 

霊夢「ズズッ…! はぁ、お茶が美味い♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【スキマ空間】

 

 

紫「久し振りに会いに行こうかしら、あの子…元気かしらね」

 

 

紫「会いに行くのは良いんだけど時間がかかっちゃうのよねぇ…何せ」

 

 

紫「外の世界のちょっと先の未来だからね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【先の未来 外の世界の幻想大学】

 

 

 ここは幻想大学。

 

 まぁ幻想と言っても名ばかりで本当の幻想に存在してる訳じゃない、普通に京の都に存在している何の変鉄もない普通の大学である

 

 

 そう、大学は…

 

 

 大学自体は普通の大学であるのだがここに入学、そして教職に付いている人の何人かは普通じゃない

 

 

 

 

北白河ちゆり「…」

 

 

 

 

 

 この私、北白河ちゆりも普通じゃないらしい、私は普通に生きているつもりだったんだが、どうも普通の生き方…いや、人生を歩んでいない

 

 私は十二歳で中学を卒業、十三歳で高校を卒業、そして大学院を十五歳で卒業した。

 

 

 私は普通に学校生活を送っていくつもりだった、普通の年齢で普通の卒業をして友人関係もそこそこ、大学では遊んでバイトなりなんなりして友達作ってワイワイ遊ぶ。

 

 これが私の理想だった

 

 

 でもそんな私の理想を大人たちは聞いてはくれなかった、耳を傾けようともしてくれなかった、教師からの質問の受け答え、テストで点をとる度に職員室という入りたくもない場所に連れていかれ、親と私と教師で面談

 

 

 『この子は普通じゃない』

 『この子は普通じゃない』

 『天才だ!』

 『天才です!』

 

 

 聞き飽きたっつーの

 

 

 

 私の親も親だ、その言葉に感銘でも受けたのかなんなのか知らないけど私を一人ほっぽりだして大学院からは一人暮らし、言う言葉は決まって娘の為、私の為だから

 

 

 

 おい、本当に私の為を思うなら少しは私の話を聞いてくれ、私はあんたらの操り人形なんかじゃねぇんだから

 

 

 

 ……でも私はそれを受け入れてしまった、普通じゃないなら普通でいなきゃいい、天才と呼ばれるなら天才でいてやろう

 

 

 何でそうしたかって? そうした方が楽だからさ、余計な事を考えると私が私で無くなるからな、だから普通でいることを辞め、天才として生きることにしたんだ

 

 望むのならその望まれた通りに、色々考えんのめんどくせぇし、望みに反発すると倍になって返ってくる可能性もあるからな。

 

 

 だが…今の私はこの考えを捨てている、捨てることが出来たって言い方が正解だな

 

 

 

 

 

 

 

 話を戻そう、大学院を卒業した私は幻想大学の物理学研究所で仕事として、物理学の研究をするようになった。

 

 配属初日から物理学研究所の准教授としてだ

 

 

 まぁ最初、ここに来る前は正直ここでも私は普通扱いされないんだろうなと思ってた、優秀な成績で飛び級を重ねた北白河ちゆりが研究所准教授としてやって来る…そう思う大人達の巣窟だと思ってたからな

 

 

 

 でもその考えは研究所に配属されてから一日で変わってしまった…いや、変わってくれたんだ。

 

 

 

 上には上がいるなんて言葉は嘘くせぇと昔から思ってたんだが幻想大学の物理学研究所…そう、今私がいるこの場所

 

 

 

 

 ここには私よりも普通じゃない人がいた

 

 いてくれたって言った方がいいのかもしれない

 

 

 

 幻想大学物理学研究所の教授

 

 

 岡崎夢美

 

 

 

 この人は私よりも天才で

 

 

 

岡崎夢美「んふふふ♪」

 

 

ちゆり「…」

 

 

 

 私よりも普通じゃなくて

 

 

 

 

夢美「よぉし♪ 出来たよる~こと」

 

 

る~こと「あの…夢美様」

 

 

ちゆり「…」

 

 

 

 私よりも馬鹿だ

 

 

 

夢美「なんだいる~こと、どうかしたのかい?」

 

 

る~こと「私は家事専門のメイドロボです」

 

 

夢美「そんなことは製作者の私が一番良く分かっているよ~♪」

 

 

る~こと「でしたら」

 

 

 

 

 

 

る~こと「何故私にロケットパンチ、腕を射出する機能を付けたのでしょう?」

 

 

夢美「子供たちの夢だからだよ、る~こと」

 

 

ちゆり「いや、いらねぇだろ」

 

 

 

 私はこの人の側にいると自分が普通なんだ、という感覚を肌で感じることが出来るようになった

 

 この大学でなら私は普通でいられる…私が小さい頃から思い描いていた理想の北白河ちゆりになれるんだ

 

 

 

 

 

 

 【フリーダム岡崎 その一】

 

 

 

夢美「何を言うんだいちゆり君、ロケットパンチは子供たちの夢なんだよ?」

 

 

ちゆり「いやここ大学だから、それにる~こと研究室しか掃除しないからここから出ないじゃないですか」

 

 

夢美「いつかはこの研究室に子供たちが見学に来るかも知れないじゃないか、その為の機能なんだよちゆり君」

 

 

ちゆり「…聞くけど、そのロケットパンチの威力は?」

 

 

夢美「んふふふ♪ 鋼鉄だろうがダイヤモンドだろうがどんな硬いものでもぶち抜くスーパーロケットパン」

 

 

ちゆり「アホかぁぁ!!」

 

 

夢美「何を言うんだいちゆり君」

 

 

ちゆり「場所だよ場所を考えろってんだ! 危ねぇだろうが!」

 

 

る~こと「…後でこっそり外しておきましょう」

 

 

 

 

 

 【フリーダム岡崎 その二】

 

 

夢美「んふふ♪ 出来たよちゆり君」

 

 

ちゆり「…なんすかこれ」

 

 

夢美「鉛筆型ミミちゃん」

 

 

ちゆり「は?」

 

 

夢美「鉛筆型ミミちゃんだよ♪」

 

 

ちゆり「二回も言わなくていいっすよ」

 

 

夢美「だって、は? って君が冷たく言うから」

 

 

ちゆり「冷たくは言ってないんですけどね、で? これの使い道は?」

 

 

夢美「うん! よくぞ聞いてくれたねちゆり君!」

 

 

ちゆり(聞くしか道がねぇもん)

 

 

夢美「これはミミちゃんを小型化したものでね♪ 鉛筆に似せて作ってあるんだ」

 

 

夢美「この鉛筆の芯の部分がスイッチになっていてね、ここを押すと…?」スッ

 

 

 カチッ! ヒュッ! ペシッ!

 

 

ちゆり「いってっ」

 

 

夢美「と! こういう感じで中に入っている小型ミミちゃんが射出され、指定した相手に当たるわけだ♪」

 

 

ちゆり「…なぁ、私の手の甲に当たったんですけど」

 

 

夢美「前に作ったペットボトル型ミミちゃんでは威力が強すぎたからねぇ、んふふふ♪ まさか大学の中庭に風穴開けるとは思わなかったよ」

 

 

ちゆり「当たったつってんだよ、なぁ」

 

 

夢美「でねちゆり君、これの有効活用なんだけど」

 

 

ちゆり「謝れよ」

 

 

 ミミちゃんってのは教授が趣味で作る小型のミサイルだ、ミサイルの先端には可愛い顔が(教授談)描かれている

 

 ん? あぁ聞かないでくれ、教授の趣味なんだから考えたって無駄なんだ、なんでそんなもん作るのかって質問はな

 

 

 

 

 

 

 【フリーダム岡崎 その三】

 

 

 

 前言ったかも知れないけど岡崎教授は私より天才だ、何せ大学の物理学教授を十八歳という若さで勤めている

 

 聞いた話によると大学院は十二歳で卒業したらしい

 

 

ちゆり「…」

 

 

夢美「んふふふ♪ はい、出来たよる~こと♪」

 

 

る~こと「あの…夢美様」

 

 

夢美「ん? どうしたんだいる~こと」

 

 

 

 

 

る~こと「何故私に目から瞬間冷凍ビームを射出する機能を付けたのでしょう」

 

 

ちゆり「おい、いい加減る~ことを武装兵器にするのやめろよ」

 

 

夢美「ちゆり君、君は何を言ってるんだい」

 

 

ちゆり「逆にあんたは何を作っているんだ」

 

 

夢美「こんな素晴らしい発明が理解されないなんてねぇ…しかもちゆり君に…私は悲しいよ」

 

 

ちゆり「る~ことだって理解してねぇって、なぁ?」

 

 

る~こと「はいちゆり様、私は家事専門メイドロボ、ビームを射出する必要性が分かりませんもの」

 

 

夢美「なんで分かってくれないの?」

 

 

ちゆり「逆に分かってくれる奴がいたとしたら私はそいつの側には近寄りたくねぇよ、危ねぇんだよビーム」

 

 

る~こと「同じく」

 

 

夢美「仕方ない、取り外すか…」

 

 

夢美「一匹いたら無限湧きするGと呼ばれる黒い生物を視認すると瞬間冷凍ビームで凍らせる素晴らしい発明なのに」

 

 

ちゆり、る~こと「!?」

 

 

ちゆり「る、る~こと! 取り外さなくても良いよな! なっ!?」

 

 

る~こと「は、はい! 私もあの生物には手を焼いておりましたから!」

 

 

夢美「おぉ♪ 分かってくれたかい二人とも!」

 

 

ちゆり「やるじゃん教授」

 

 

る~こと「見直しましたよ♪」

 

 

夢美「んふふふ♪ 嬉しいよ♪」

 

 

 

 たまに役に立つ発明をする

 

 

 

 

 

 【岡崎教授の素敵な食癖】

 

 

夢美「ん~ふふ~んふふ~ん♪」スッ

 

 

 ドバッ! ドボボボッ!

 

 

ちゆり(うっわまたアレ食うのかよ)

 

 

夢美「おや、ちゆり君、君もお昼かな?」

 

 

ちゆり「うん、まぁ…うん」

 

 

夢美「ちゆり君は…ほう、トマトサラダにおかかのおにぎりだね、コンビニの物とはいえ栄養とエネルギーはしっかり入るからね、そのトマトとおかかには疲労回復の成分の」

 

 

ちゆり「あのさぁ」

 

 

夢美「ん? なんだいちゆり君」

 

 

ちゆり「教授…またそれ食うの?」

 

 

夢美「また? 何を言ってるんだいちゆり君、いつも私はお昼はこれしか食べてないじゃないか、というかこれをお昼に食べないと蕁麻疹が出るんだよ?」

 

 

ちゆり「いやうん、知ってるんだけどさ」

 

 

夢美「ちゆり君? どうしたんだい?」

 

 

ちゆり「…その食べ方やめてくんない?」

 

 

夢美「食べ方? はて?」

 

 

ちゆり「そんな食べ方してる奴いないっての!」

 

 

ちゆり「なんだよそれ! どんぶりに山盛りに盛った練乳! それとその中に入っている大量の刻んだ苺!」

 

 

ちゆり「それをシリアルを食べるが如きのスピードで食うなって言ってんだ!」

 

 

夢美「あぐっんぐっ!」ムッシャムッシャ

 

 

ちゆり「食ってんじゃねぇって! 話聞けよ!」

 

 

夢美「んぐっ…! 食べ方と言うがねちゆり君、苺に練乳をかけて食べるのを練乳の海の中に苺を入れて食べる事に置き換えただけの事なんだよちゆり君」

 

 

ちゆり「絵面ぁ! 絵面がキツいんだよ! それに甘ったるい匂いが研究室覆ってて嫌なんだよ!」

 

 

夢美「部屋の中まで苺と練乳の匂い…んふふふ♪ 最高じゃないか♪」

 

 

ちゆり「嫌だっつってんだろ、人の話聞いてんのか」

 

 

夢美「なら君も苺を食べなさい♪ ほら、あーん♪」

 

 

ちゆり「マジでやめろ? 甘ったるい匂いと特盛練乳苺のダブルパンチなんかされたらどうなるか分かったもんじゃない」

 

 

夢美「幸せに…なれるんじゃないかな♪」

 

 

ちゆり「教授だけだバカ野郎」

 

 

 

 

 

 【教授の嫌いなもの】

 

 

ちゆり「教授、教授が一番嫌いなものってなんかあるんすか?」

 

 

夢美「嫌いなものかい? う~ん…毒だね」

 

 

ちゆり「毒? なんの毒すか?」

 

 

夢美「なんの? 何を言ってるんだいちゆり君」

 

 

ちゆり「ん? いや、だからどんな種類の毒が」

 

 

夢美「毒は毒だよ、毒という漢字だよ」

 

 

ちゆり「は? 漢字?」

 

 

夢美「苺と毒…」

 

 

ちゆり「…」

 

 

夢美「字面が似ていて紛らわしいのだよ!」

 

 

ちゆり「いやそんなに似てねぇだろ!」

 

 

夢美「毒と苺を書き間違えたり読み間違えたりして苦渋を飲まされた人間がどれ程いると思ってるんだいちゆり君! あぁ紛らわしい!」

 

 

ちゆり「居ねぇだろそんな奴!」

 

 

 

 

 【ちゆりの気になる人達 その一】

 

 

 私はこの大学の物理学の准教授になって本当に良かったと思っている。

 

 何故ならこの幻想大学には教授以外にも私を良い意味で普通だと思わせてくれる人がたくさんいるのだから

 

 順番に紹介していこう、先ずはこの人、幻想大学物理学研究所の研究員、メガネの人、二十歳、クールビューティー、朝倉理香子先輩

 

 

 

 

朝倉理香子「ちゆり、これ見てもらえる?」

 

 

ちゆり「はい? おっ、これは…」

 

 

理香子「えぇ、あなたの研究データから作り出してみたんだけどどうかしら?」

 

 

ちゆり「すげぇ、これならデータベースと合わせて効果的なレベルまで質量を高められますね」

 

 

理香子「ふふっ、お役に立てたかしら♪」

 

 

ちゆり「えぇとっても! ありがとうございます」

 

 

 

 この人は私が初めて尊敬という感情を抱いた人である、だから幻想大学に在籍中のこの人のことを私は敬意を表して先輩と呼んでいる

 

 え? 教授? 教授は二番目に尊敬したよ

 

 

 

夢美「理香子君、まだ足りないよ」

 

 

理香子「何がですか?」

 

 

夢美「分子の破壊エネルギーだよ、これじゃあどう頑張っても二分は掛かるよ?」

 

 

 

 まぁたまに恐ろしいもの作る人でもあるんだけど

 

 

 

理香子「入れた物を分子レベルでバラバラにする箱なんて作って意味があるんですか?」

 

 

夢美「書類処理が楽になるよ~♪」

 

 

ちゆり「そういうのはシュレッダーさんのお仕事だろ」

 

 

夢美「ちゆり君!」

 

 

ちゆり「な、何だよ」

 

 

夢美「私はねぇ…! シュレッダーさんのお仕事は奪うつもりはない!」

 

 

夢美「でも私はシュレッダーさんが最後に残していくあの紙のチリチリが大嫌いなんだ! 何故分子レベルでバラバラにしないんだ!? 私には理解できないんだよちゆり君!」

 

 

ちゆり「私には紙のチリチリが大嫌いな理由が理解できねぇんだよ教授」

 

 

理香子「分子レベルでバラバラにする箱なんて需要ないと思います」

 

 

 

 

 【ちゆりの気になる人達 その二】

 

 

 次は人…だった人だ

 

 名前はカナ カナ・アナベラル

 

 まぁ、なんつったら良いのか…

 

 

 

カナ・アナベラル「教授さん、これは?」

 

 

夢美「これは被ると透明になれる帽子だよ、こいし恋しい帽子というんだ」

 

 

カナ「へぇ~♪ でも私最初から透明だから意味ないなぁ」

 

 

夢美「そうだねぇ、まぁでもこれは凄い発明なんだよ? 透明人間にだったら工夫すれば誰にでもなれるものだけど、これは物質を透過させることで壁をすり抜ける事が出来るんだからね」

 

 

カナ「それも私出来ちゃうなぁ♪」

 

 

夢美「むむむ、物理学の難問を平然とやってのけるのは素晴らしい、けど私の努力が無駄に感じてしまうね…」

 

 

ちゆり「…」

 

 

 

 この女、騒霊である

 

 一時、研究所がポルターガイストに悩まされてた時、教授が二時間で完成させたスコープで正体を見破り、実体化させられたのがカナである、ポルターガイストの正体がこの女だなんて思いもしなかったよ

 

 見た目は…まぁ可愛いのか? 都生まれじゃなくて遠い海外の生まれらしい

 

 それと若くして死んだらしいけどどうやって死んだかは覚えてないみたいだ、年齢も不明。

 

 

 

夢美「カナ君を材料にしたら何か凄い物が作れそうな気がするんだけどね」

 

 

カナ「ちょ、ちょっと! 私の何処を材料にする気なの!?」

 

 

夢美「その半透明で消えかかっている服の切れ端を少々」

 

 

カナ「嫌だよ! お気に入りの服なんだから破くの禁止! こ、こらっ! 引っ張らないでよぉ!」

 

 

夢美「良いじゃないか、減るものでもないし」

 

 

カナ「減るよ!? 霊成分が!」

 

 

 

 何故か成仏せずにカナはここに居座っている、しかも教授が変にスコープをいじって壊したせいで私と教授と理香子先輩とその他知人にしかカナは見えていない、でもそれが救いなのかもしれない、カナが他の人にまで見える様になったら大変だからな

 

 

 

夢美「ちゆり君、ちゆり君からも言ってやってくれないかな、ほんの少しビリっと破いていただくだけなんだけど」

 

 

カナ「ち、ちゆり! 服破かれたら私外出歩け無くなっちゃうよ! 助けて!」

 

 

ちゆり「…教授、聞いていいっすか」

 

 

夢美「なんだいちゆり君」

 

 

ちゆり「確かにスコープでカナの事が見える様になったの良いんですよ、けど」

 

 

 

 

 

ちゆり「何で教授普通にカナの体に触れてんの?」

 

 

夢美、カナ「…」

 

 

カナ「えっ、ちゆり私の事触れないの!?」

 

 

ちゆり「触れる訳ないだろ! お前仮にも幽霊だろうが! ほらみろ」スッ

 

 

 ブゥンブゥン!

 

 

カナ「わぁ本当だ、すり抜けちゃうんだね」

 

 

夢美「ちゆり君、私がカナ君に触れられる理由はね」

 

 

ちゆり「…?」

 

 

夢美「……」

 

 

夢美「気合いだよ♪」

 

 

ちゆり「物理学しろよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 【ちゆりの気になる人達 その三】

 

 

小兎姫「夢美! お願いよ、助けてほしいの」

 

 

夢美「嫌だよ、私は警察が大嫌いなんだから」

 

 

小兎姫「そんなこと言わないでさぁ…! お願い今回だけでも協力してっ! この通りっ…!」

 

 

夢美「嫌だと言っているだろう、それに君の今回だけはこれで三十三回目だよ? ねぇちゆり君」

 

 

ちゆり「私に振らないでくれ」

 

 

 この人は小兎姫さん、端から見れば赤い和服を着たイイトコのお嬢様みたいな感じの人

 

 

 なんだけどこの人、こんな格好してるけど職業はなんと警察官である

 

 

 

小兎姫「捜査協力してほしいのよ! お願いします!」

 

 

夢美「あのねぇ、私も暇じゃないんだよ小兎姫君」

 

 

小兎姫「そんな他人行儀で名前呼ばないでよ、私たち友達でしょ?」

 

 

夢美「君それ本名じゃないだろう? それに親しき仲にも礼儀有りだよ、ねぇちゆり君」

 

 

ちゆり「振るなっつってんだろ」

 

 

 

 そう小兎姫ってのは本当の名前じゃない、この人は警察の中でも特殊な任務を請け負う部署に配属している、秘密捜査官の一員らしい

 

 本名と、年齢は教えてくれなかった

 

 裏で仕事を請け負うからか普段は警察官として見られてはいけないという理由から小兎姫と名乗り、和服姿でいつも出歩いているらしい

 

 

 仕事中も和服でいるのは秘密よ♪ ってこの人から聞いたけど良いのか? 色々と

 

 教授との関係は友達、何度か捜査協力してるうちに仲良くなったらしく三年来の友達みたいだ

 

 ということは十五歳で教授はこの人の捜査協力をしていることになる

 

 

 

夢美「悪いけど私はこれから『いちごとうふ』の製作に着手しなければならないんだよ、今回は諦めてくれ小兎姫君」

 

 

小兎姫「そんなぁ…」

 

 

ちゆり(またあの気味の悪い豆腐作るのかよ)

 

 

夢美「それじゃあね小兎姫君、たまには自分の力で頑張りなさい、ちゆり君、私は調理室でいちごとうふの製作をしてくるから後は頼んだよ」

 

 

ちゆり「うっ~す」

 

 

ちゆり(また調理室の人達に迷惑掛けなきゃ良いけどな)

 

 

小兎姫「はぁダメかぁ…やっぱり自分の力で頑張らないとダメなのかなぁ」

 

 

ちゆり(警察ってそういうもんなんじゃねぇの?)

 

 

ちゆり「…あの小兎姫さん、私で良かったら力になりますけど」

 

 

小兎姫「! 本当!?」

 

 

ちゆり「まぁ私が出来る範囲で、ですけど」

 

 

小兎姫「わぁ! ありがとうちゆりちゃん!」キラキラ

 

 

ちゆり「お、おう…」

 

 

ちゆり(この人絶対警察官じゃねぇだろ…でも手帳はマジもんだしなぁ……あ、私とかにこう思わせるのも仕事か?)

 

 

ちゆり「…協力する前に一つ聞いてもいいっすか?」

 

 

小兎姫「あら、何かしら?」

 

 

ちゆり「前々から気になってたんすけど教授に聞いても教えてくれなかったんです、何で教授警察が大嫌いなんですか?」

 

 

小兎姫「あぁ…ふふふっ! その事ね」

 

 

小兎姫「話してあげても良いけど私から聞いたなんて夢美に言わないでよ?」

 

 

ちゆり「分かってますよ、それで?」

 

 

小兎姫「ん~と三年ぐらい前かな、夢美が公園で警察に職務質問されたことがあってね」

 

 

ちゆり(十五歳で職質されたのかよ)

 

 

小兎姫「公園で火薬と薬品の匂いがする女の子を放っておけないでしょ?」

 

 

ちゆり(確かに十五歳で火薬と薬品の匂いがするのはやべぇな)

 

 

小兎姫「それで持ち物検査をされたらしいんだけどね、その時夢美が持ってた物が…ふふふっ…!」

 

 

ちゆり「…? !! ま、まさかその頃にはもうペットボトルサイズの小型爆弾ミミちゃんを所持していて…」

 

 

小兎姫「いちごパック三十個」

 

 

ちゆり「…は?」

 

 

小兎姫「いちごパック三十個を手提げバッグに入れて持ち歩いてたの」

 

 

ちゆり「…」

 

 

小兎姫「…いち」

 

 

ちゆり「言い直さなくて良いですよ」

 

 

小兎姫「そう? それで持ち物検査した警察官の人驚いて夢美がそれしか持ってなかったから立ち去ろうとしたんだけど、やっぱり火薬と薬品の匂いがする女の子を放っておけないから署まで補導の名目で連れてきたの」

 

 

ちゆり(驚いたんじゃなくてドン引きしたんだろうな、火薬の匂いが甘ったるい苺になったわけだし)

 

 

小兎姫「私その時に夢美と出会ったのよ、女の子なら女性警官にって私に頼んで来たの」

 

 

ちゆり「へぇ…」

 

 

小兎姫「それでね? 話をしようとしたんだけど凄く不機嫌な態度だったから『どうしたの?』って聞いてみたの、そしたら…」

 

 

ちゆり「?」

 

 

 

 ホワンホワン

 

 

夢美『私はこれからこの苺たちを使って公園をいちご畑にするという素晴らしい実験をしようとしてたのだよ! それなのにあなた方警察は私の言うことに耳も傾けず、薬品、火薬臭いからと補導し、権力を盾に私の研究を邪魔したのだ! 断じてこれは許されることではないぞ! 公園をいちご畑にしようとして何が悪い!』

 

 

 ホワンホワン

 

 

ちゆり「うっわぁ…」ドンビキ

 

 

小兎姫「何とか私が宥めて落ち着かせたの」

 

 

ちゆり「犯罪一歩手前だぞおい、何やってんだよバカ教授…」

 

 

小兎姫「教授も若かったのよ」

 

 

ちゆり「若かったで済めば警察いらないですって」

 

 

 

 

 【ちゆりの気になる人達 その四】

 

 

エレン「ふわぁ~♪ 綿飴買ってくれてありがとうございますぅ♪ ちゆりちゃん大好き~♪」

 

 

ちゆり「うん、どういたしまして」

 

 

エレン「ふわふわ~♪ 甘くてとってもふわふわですぅ~♪ おいすぃ~♪」

 

 

ちゆり「…」

 

 

 

 こいつの名前はエレン、頭の中がちょっとお花畑の女の子だ。

 

 幻想大学一年生にして年齢十五歳、エレンも天才と呼ばれるタイプの奴なのだ

 

 お花畑って言っても別に私はこいつの事をバカにしてるつもりは無い、私はこいつと良く話が合う友達…なのかもしれないな

 

 

 

エレン「あまあまですぅ♪ ちゆりちゃんも食べますか?」

 

 

ちゆり「わりぃけど甘いものは研究室だけで充分なんだよ…一人で食って良いぞ」

 

 

エレン「ほぇ? 研究室?」

 

 

ちゆり「気にすんな、気にしたら負けだ」

 

 

エレン「気になりますねぇ、でもわかりましたぁ♪」

 

 

 聞き分けが良くて素直なのも良いとこだな

 

 あ、そうそう、エレンは大学生である傍ら『ふわふわエレンの魔法のお店♪』という菓子屋を経営しているんだ、大学の近くにあるから私も良く通っている、菓子はどれも美味くて絶品なんだ

 

 ソクラテスって名前の看板猫も居てそいつのジトッとした目に心奪われて入店したって話もよく聞く

 

 因みにその店の開店資金等の援助をしたのは他でもない岡崎教授、苺に並々ならぬ情熱を注いでいるあの人とお菓子職人エレンが会ったらそりゃ仲良くなるさ

 

 

エレン「あ! そうだちゆりちゃん」

 

 

ちゆり「ん?」

 

 

エレン「最近新しいパチパチを覚えたんですけどぉ♪ 見てもらえますか?」

 

 

ちゆり「おう、良いぞ、今度はどんなんだ?」

 

 

エレン「えへへぇ♪ いきますよぉ♪ せーのっ♪ パチパチ~♪」

 

 

 パチパチッ☆

 

 

ちゆり「うおっ」

 

 

エレン「えへへ♪ はい♪」

 

 

ちゆり「ん?」

 

 

エレン「綿飴の味が変わってるはずですぅ♪ 食べてみてください♪」

 

 

ちゆり「おい、お前さっきの私の話…まぁ我慢して食うよ」

 

 

 パクッ…

 

 

ちゆり「お、すげぇ…桃の味になってる」

 

 

エレン「おぉ~♪ 成功ですぅ♪ また新しいお菓子のレパートリーが増えますねぇ♪ えへへ♪」

 

 

ちゆり「…」

 

 

 

 エレンが普通じゃないと私に思わせる理由は何も天才的な頭脳を持ってるってだけじゃないんだ

 

 エレンは謎の魔法が使える…いや、使えてしまうと言った方が聞こえは良いのかもな、現代的には

 

 手のひらから火の玉を出したりとかそういう物は使えないらしい、さっきのパチパチってのは食べ物の味を変える魔法だ、他にもふわふわってのがあってこっちは食べ物を食ったときの食感を変えてしまう魔法なんだ

 

 他にも変な魔法が使えるらしいけど試した事が無いから分からんらしい。

 

 因みに自分が信頼している人にしか魔法を見せたことが無いらしい…私を信頼してくれているのは…まぁ嬉しいな、うん

 

 

ちゆり「…」

 

 

 

 

 ホワンホワン

 

 

夢美『私は非科学的な物は信じる方だよちゆり君』

 

 

ちゆり『え? そこは普通信じないもんなんじゃないんすか?』

 

 

夢美『エレン君や理香子君の魔法の原理をどう説明しろと言うんだい? いくら私でもそれは不可能なのだよ、マジックパワーだよマジックパワー』

 

 

ちゆり『物理学の教授が言っていい言葉なのか分からないけど意外にそういうの許容出来るんすね』

 

 

夢美『私の頭は常に柔らかいからねぇ♪ 無理なものは無理! 切り替えが大事なのだよちゆり君、分からない物に拘り続けていては前には進めないのだよ、君がどう思うかは君の自由だが常に前を向いて物事に着手し続けてほしいと思っているよ♪』

 

 

ちゆり『…』

 

 

ちゆり(へぇ~…カッコいいとこあんじゃん)

 

 

ちゆり(…ん? 理香子先輩の魔法…?)

 

 

 ホワンホワン

 

 

 

 

 

エレン「次はどんなお菓子を作りましょうかねぇ♪ ちゆりちゃん、何かアイデアありますかぁ?」

 

 

ちゆり「…いちごとうふ」

 

 

エレン「お豆腐はいちごではありませんよぉ? それにお菓子でも無いと思いますよぉ」

 

 

ちゆり「…わりぃ、今の無しで」

 

 

エレン「ほ~?」

 

 

ちゆり「やっぱりねぇよなぁ♪ いちごとうふなんて、さ♪」

 

 

 エレンといると不思議と笑顔になってる自分がいる

 

 

 

 

 【ちゆりの気になる人達 その五】

 

 

宇佐見蓮子「教授! 頼んでいた資料作ってくれましたか!?」

 

 

夢美「うん? あぁ、出来ているよ蓮子君♪ はいこれ」スッ

 

 

ちゆり「…」

 

 

 この人は宇佐見蓮子さん、この大学のオカルトサークルである秘封倶楽部の部長さんだ

 

 超統一物理学専攻でちょくちょくこの研究室に訪れている、最近ひも理論の研究をしているらしい

 

 『星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる能力を持っている』

 

 って教授が言ってたけどマジなのかな…? だとしたらこの人も普通じゃない

 

 

 

蓮子「! おぉ~…こ、こんなにたくさん…!」

 

 

夢美「物理学的な統計、心理学的な統計とあらゆる学問からの観点から導き出したデータだよ♪ きっと君の助けになるだろう」

 

 

蓮子「ありがとうございます! 本当に助かります! うおぉぉ…! こ、これだけあれば…! これだけでも捗りそうだなぁ♪」

 

 

ちゆり(? そういや…なんのデータだ?)チラッ

 

 

 

 『マエリベリー・ハーンを口説き落とす二百の方法とその実践方法、及び、その後の対応と婚約に至るまでのプロセス』

 

 

 

ちゆり「お``っ…!!?」

 

 

蓮子「教授、その…このデータの報酬の事なんですが」

 

 

夢美「あぁ、それなら無料で良いよ♪ 私も人間観察をしてデータをとるのは久し振りだったからね、私自身とっても良い刺激になったからお礼も込めてタダで良いよ~♪」

 

 

蓮子「いいえ! せっかくですけど教授がここまでしてくれたんだから私も何かお礼をさせてください!」ゴソゴソ

 

 

蓮子「これ、秘封倶楽部で調査してる物をデータ化して資料にしてみました、良かったら読んでみてください」

 

 

夢美「お、嬉しいね♪ こういう見たことないデータは大好きだよ、ありがとう蓮子君、目を通しておくよ」

 

 

蓮子「はい! それでは教授、ありがとうございました!」

 

 

夢美「うん、君の想いが成就することを祈っているよ」

 

 

蓮子「はい♪ ちゆりちゃんもまたね♪」

 

 

ちゆり「お…おう…」 

 

 

ちゆり「…」

 

 

夢美「幻想郷…? と読むのかな? ほうほう♪ 中々興味深いね」

 

 

ちゆり「教授…あのさぁ…」

 

 

夢美「ちゆり君、私は恋愛経験が無いから愛だの恋だのは表面的なデータからしか情報を得られないけど」

 

 

夢美「恋愛の対象は人それぞれだよ♪ 中には物、建築物そのものを本当の夫や妻の様に見立て愛してしまう人間もいるのだからね、それを病気と判断する者もいるけど私はそんなことはしない、恋愛は自由で良いんだよ♪」

 

 

ちゆり「…」

 

 

夢美「んふふふ♪ ちゆり君もいつかは素敵な恋愛が出来ると良いねぇ♪」

 

 

ちゆり「…」

 

 

ちゆり(で、出来れば普通の恋愛を…! い、いや…うん)

 

 

 

 

 【ちゆりの気になる人達 その六】

 

 

マエリベリー・ハーン(メリー)「教授さん! 私が頼んでいた資料作っていただけましたか!?」

 

 

夢美「うん? あぁ出来ているよハーン君、はいこれ」

 

 

ちゆり「…」

 

 

 この人はマエリベリー・ハーン

 

 

 通称メリー…メリーさんだ

 

 メリーさんっつっても電話のアレじゃないことだけは断言しておく、名前から分かると思うけど外国の人で出身国は分からないけど日本語はペラペラだ

 

 大学の専攻分野は相対性精神学、この人もあのオカルトサークルの秘封倶楽部の部長さんなんだ、蓮子さんと二人でやってるみたいだな

 

 『境界の境目が見える能力』を持っているらしい…

 

 言い方は悪いけど人間が持っていい能力のレベルを越えている様な気がするな

 

 

 

メリー「! わぁ♪ こんなにたくさん調べていただいたんですね」

 

 

夢美「物理学的な統計、精神学的な統計とあらゆる観点から導き出したデータだよ♪ きっと君の助けになるだろうね♪」

 

 

メリー「ありがとうございます! 本当に助かります! うふふっ♪ これだけあれば…ふふふっ…あぁ、これだけでも捗りそうね♪」

 

 

ちゆり(…えっ、なんかデジャブなんだけど)

 

 

ちゆり(い、一応なんのデータなのかを…!)チラッ

 

 

 

『宇佐見蓮子と婚約後、家庭を円満に導く二百の方法と対策、十年後、二十年後と続く家庭の問題、その他対応マニュアル(おしどり夫婦バージョン)』

 

 

 

ちゆり「い``っ…!!?」

 

 

メリー「教授さん、あの…このデータの報酬の件なのですが…」

 

 

夢美「あぁ、それなら無料で良いよ~♪ 私もいつか家庭を持つのかなぁと妄想しながらデータ化したお陰で良い脳の運動になったからね、そのお礼も込めてタダで良いよ♪」

 

 

メリー「いえ、教授さんがここまでしてくださったのですから私も何かお礼をさせていただきます」ゴソゴソ

 

 

メリー「これなんて如何でしょう、私と蓮子が秘封倶楽部で調査している物をデータ化して資料にしたものなのですが」

 

 

夢美「おぉ、私は読み物が大好きだからね、せっかくだからいただいておくよ、ありがとうハーン君」

 

 

メリー「はい! こちらこそありがとうございました!」

 

 

夢美「うん、君の想いが成就することを祈っているよ」

 

 

メリー「はい、それじゃちゆりちゃんもさようなら♪」

 

 

ちゆり「お、おう…」

 

 

ちゆり「…」

 

 

夢美「ふむふむ、なるほどねぇ…過去の境界の綻びが幻想の扉を…? いや、これは興味深い」

 

 

ちゆり「…教授」

 

 

夢美「ちゆり君、この場合私は愛のキューピッドになってしまうのかな? んふふ♪」

 

 

ちゆり「…」

 

 

夢美「ハーン君と蓮子君の結婚式は何時だろうね♪」

 

 

ちゆり「そう遠く無い…のかな?」

 

 

 

 周りが個性的過ぎて天才天才言われてた私が霞むんだよ、それが私には心地いんだ

 

 北白河ちゆりは幻想大学の准教授

 

 あぁ、これがちょうど良い

 

 

 

 

 

 【理香子先輩の秘密】

 

 

ちゆり「理香子先輩もエレンみたいに魔法が使えるんすか?」

 

 

理香子「!?」

 

 

ちゆり「なんか教授がしれっと言ってた様な気がするんすよ、で、どうなんすか?」

 

 

理香子「…」ダラダラ

 

 

ちゆり「? 理香子先輩?」

 

 

理香子「つ、つつっつ使えるわけないじゃない! 本当にあの人は何を言ってるのかしらね! オホホホ!」

 

 

ちゆり(動揺を隠す努力が見受けられねぇだと!?)

 

 

 

 

 【る~ことの秘密】

 

 

ちゆり「る~ことってさ、何でる~ことって名前なんだ?」

 

 

る~こと「ルンルン楽しそうにお仕事してくれたら良いなぁ♪ という理由で教授が付けたそうですよ」

 

 

ちゆり「『ルンルンお仕事』…で、る~ことか」

 

 

る~こと「はい♪」

 

 

ちゆり「安直だけど可愛いよな、名前」

 

 

る~こと「ふふふ♪ ありがとうございます♪」

 

 

 

 

 【エレンとカナ】

 

 

カナ「エレン! 教授が私の事を研究したがるのをやめさせたいんだけど何か良い方法ない?」

 

 

エレン「う~ん、そーですねぇ」

 

 

ちゆり「…」

 

 

エレン「…」

 

 

エレン「あっ♪ カナちゃんが成仏すれば良いんじゃないですかぁ?」

 

 

カナ「えぇっ!? そ、そんなぁ~!」

 

 

エレン「お日様にふわふわ~って飛んで行くだけで良いと思うんですけどぉ♪」

 

 

カナ「い・や! まだまだここに居たいの!」

 

 

ちゆり「天然で言ってるんだよな? エレン」

 

 

ちゆり(てか何でマジで成仏しないんだよ、未練か何かあんのか?)

 

 

ちゆり(…未練があったからポルターガイストしてた、ってことも考えられるか)

 

 

 

 

 【教授ちゃん】

 

 

理香子「ちゆり、ちゆりの思う教授の子供っぽいところって何処?」

 

 

ちゆり「…」

 

 

ちゆり「子供用のいちご味の歯みがき粉で歯磨きするとこです」

 

 

理香子「あぁ…」

 

 

夢美「凄いよね♪ 歯磨き中も口いっぱいに苺だよ♪ ほら♪ ちゆり君もこれで歯を磨こう♪」

 

 

ちゆり「居たのかよ」

 

 

理香子「聞いてたんですか?」

 

 

夢美「なんか冷たいね、君たち」

 

 

 

 

 【秘封倶楽部は相思相愛】

 

 

蓮子「はい♪ メリー、あーん♪」

 

 

メリー「あ~ん♪ んむっはむっ…ん~♪ 美味しい~♪」

 

 

メリー「はい、蓮子も♪ あーん♪」

 

 

蓮子「あーん♪ んむんむ…ん~♪ 美味しいわ♪」

 

 

ちゆり、夢美「…」

 

 

ちゆり「何で朝っぱらから研究室でパフェの食べさせ合いを見せ付けられにゃあならねぇのよ」

 

 

夢美「…」

 

 

ちゆり「甘い物と空間は練乳いちごでこりごりなんだよなぁ…教授、教授からもなんか言ってやってくれよ」

 

 

夢美「何故…」

 

 

ちゆり「ん?」

 

 

夢美「何故いちごパフェで食べさせ合わないんだ!」

 

 

ちゆり「そこじゃねぇよ言うと思ったけどさぁ!」

 

 

 

 

 

 

 【フリーダム北白河!? その一】

 

 

ちゆり「ん?」

 

 

 

 『押してはいけないよちゆり君、絶対に押してはいけないボタンだからねちゆり君』

 

 

 

ちゆり「あっはっは…押せってか? あぁん?」イラッ

 

 

ちゆり「良いよ押してやるよ! どんとこいだ!」スッ

 

 

 ポチッ!

 

 

ちゆり「…? ……あれ?」

 

 

 シーン…

 

 

ちゆり「……何だ? 珍しいな、何も起き…!」

 

 

 ドクンッ!

 

 

ちゆり「!? な、なん…!」ユラァ

 

 

ちゆり(い、意識が……うっ…)

 

 

 ドサッ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢美「んっ……あ、あれ?」

 

 

夢美「私どうしたんだ…何でこんなとこで寝て…」

 

 

夢美「…確かあの変なスイッチを押し」

 

 

ちゆり「おぉ! これがちゆり君の感覚かぁ♪」

 

 

夢美「…えっ?」

 

 

ちゆり「んふふふ♪ ちゆり君、押したね? 押してしまったんだねちゆり君♪」

 

 

夢美「は…? えっ…!?」

 

 

ちゆり「入れ替わりスイッチだよ~♪ いやぁ、まさか本当に成功するとはねぇ♪」

 

 

夢美「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢美「はあぁぁぁぁ!!?」

 

 

 

 

 

 【フリーダム北白河!? その二】

 

 

夢美(INちゆり)「ふざけんなよ教授くらぁ!!」

 

 

ちゆり(IN夢美)「教授? どうしたんすか? 私みたいな言葉使いして」

 

 

夢美「さっそくなりきるんじゃねぇよ! 適応し過ぎだろ!」

 

 

ちゆり「…ちゆり君、君ちゃんと食べてるのかい? この年でこの体はちょっと細すぎるよ、あっでも意外に胸は」

 

 

夢美「やめろやめろ! おいこらぁ! 勝手に人の体に触んな!」

 

 

ちゆり「ちゆり君…せっかく成功したんだから少しはこの状況を楽しもうじゃないか、んふふふ♪」

 

 

夢美「喋んなバカ教授…! 私の体でちゆり君って言うな…! なんか気持ちわりぃ…」プルプル

 

 

ちゆり「そんなことよりさぁちゆり君♪ 入れ替わった原理なんだけどね?」

 

 

夢美「人の話聞けっての!」

 

 

ちゆり「このスイッチは押すとその人間の脳波と電波を登録するという機能が備わっているんだよ、そして押す回数に仕掛けがしてある、一回目は登録、二回目は登録と登録した物二人へ登録した電波と脳波を放出」

 

 

ちゆり「ちゆり君の電波と脳波を私に、私にちゆり君の電波と脳波を放出したんだよ、人間の脳は電気信号でやり取りしてるからねぇ♪ 入れ替わりなんて簡単簡単♪」

 

 

夢美「……で?」

 

 

ちゆり「うん?」

 

 

夢美「そのスイッチ何処にやった」

 

 

ちゆり「…」

 

 

夢美「…」

 

 

ちゆり「…」

 

 

夢美「…」

 

 

ちゆり「んふふふ♪ そんなことを教える教授が何処に」

 

 

夢美「右ポケットか!? …! 左!」

 

 

ちゆり「! ちゆり君!!」

 

 

夢美「あぁん!?」

 

 

ちゆり「ダメだ!! 左ポケットはダメだ!」

 

 

夢美「はぁ!?」

 

 

ちゆり「少しでも力の加減を間違えたら爆発するよ!!」

 

 

夢美「なにがだよ!!」

 

 

ちゆり「わ…私の…い、いちごとうふ!」

 

 

夢美「……ふんっ…!!」ズボッ

 

 

ちゆり「ああっ!!?」

 

 

 

 

 【フリーダムだった北白河 その三】

 

 

理香子「それで左ポケットにスイッチ入ってたのね、良かったわね、元に戻れて」

 

 

ちゆり「マジで悪夢でした…」

 

 

夢美「そんな酷いこと言わなくたって良いじゃないかちゆり君♪ 私はちゆり君にほんの数分なれただけでも凄く嬉しかったんだよ♪ しかも実験は大成こ」

 

 

ちゆり「!!」ギロッ

 

 

夢美「うっ…! そ、そんな怖い顔しないでほしいなぁ…♪」

 

 

ちゆり「…」

 

 

理香子「少しは反省なさってください、教授」

 

 

夢美「……すまなかったねちゆり君、君の同意を得てから試すべきだったね」

 

 

ちゆり「…」

 

 

夢美「ごめんね…ちゆり君」

 

 

ちゆり「…ふん」

 

 

夢美「…」

 

 

理香子「…」

 

 

ちゆり「…」

 

 

ちゆり「…ったくよぉ」

 

 

夢美「…!」

 

 

ちゆり「教授っていつも口の中甘いのか? 喋ってる時常にいちごの味がしてたぞ?」

 

 

ちゆり「それと教授、私のこと細すぎるとかなんとか言ってたけど教授だって細すぎるからな? 練乳いちご丼をあんなに食くってるのに体が太らないのが不思議だよ」

 

 

夢美「ちゆり君…」

 

 

ちゆり「…/// 少しはいちご以外の食い物も食えよ…体壊すぞ…///」

 

 

理香子「…」ホッ

 

 

夢美「…」

 

 

ちゆり「…」

 

 

夢美「…ちゆり君」

 

 

ちゆり「…?」

 

 

夢美「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢美「ごめん、いちごを食べないとそれこそ本当に体を壊してしまうよ」

 

 

ちゆり「だと思ったよちくしょう!」

 

 

理香子「ふふっ…♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【?????】

 

 

 ここは 幻想大学の屋上

 

 

 

 

メリー「あ、あのっ!!」

 

 

紫「……」

 

 

メリー「あ、あなたは誰…なんですか…?」

 

 

紫「…」

 

 

メリー「あなたは…あなたは境界の境目が不安定になると決まって私の目に前に現れる、その境界の綻びを私は感じ取れてしまう」

 

 

メリー「そしてあなたは私と会話をする…それが何回もあった、数えきれない程たくさんの話をした…筈」

 

 

紫「…」

 

 

メリー「あなたと会って、あなたと何か会話をしたという断片的なものしか思い出せないのよ」

 

 

メリー「まるで…境界の境目に切り取られたみたいに…」

 

 

紫「…」

 

 

メリー「正直あなたの顔も名前も知らない…でも」

 

 

メリー「あなたが現れると会わなければいけない…! この得体のしれない感情はなんなんですか!?」

 

 

メリー「あなたは私の……私の…」

 

 

メリー「…」

 

 

紫「…」

 

 

紫「私の顔、名前、交わした会話…何一つ覚えていないのに…あなたの何が私を覚えているのかしら」

 

 

メリー「!」

 

 

紫「あなたの言う境界の境目が不安定な事と何か関係があるのかしら」

 

 

紫「その得体のしれない感情、何処から沸き上がってくるの?」

 

 

メリー「だ、だからそれを」

 

 

紫「知ってどうするつもりなの? また忘れてしまうかもしれないわよ?」

 

 

メリー「…」

 

 

紫「知ることに意味はない、けど知りすぎるとその意味を持つ」

 

 

紫「意味は形を成し、あなたの事を蝕んで行く…耐えられない苦痛と恐怖」

 

 

紫「なら忘れた方がいいでしょう? それがあなたの心を蝕む膿であるのなら出し切らないと」

 

 

メリー「……なら、何であなたは私の目の前に現れるんですか」

 

 

メリー「あなたが私に意味と苦痛と恐怖を与える者であるなら…あなたは私をどうしたいんですか」

 

 

紫「…」

 

 

メリー「…」

 

 

紫「あなたのことを苦しませて弄ぼうなんて考えたことは無いわ」

 

 

紫「私はあなたに会いに来た、それだけよ」

 

 

メリー「!」

 

 

メリー「会いに来た…? なら何で…私は…」

 

 

紫「境界の境目が不安定になると決まって現れる者、そんなものの存在を覚えていてはいけないのよ」

 

 

メリー「何故…ですか」

 

 

紫「あなたは考えたことはある? 自分が何者なのかを」

 

 

メリー「えっ…?」

 

 

紫「カードには表と裏があるのよ、愛や憎しみ、生と死の様に、すべては同じ物なの」

 

 

紫「あなたは自分を否定したことがあるかしら、得体のしれない私を否定してみたい?」

 

 

紫「私は自分を否定しない、あなたのことも否定しない」

 

 

紫「私を否定することは自分を否定することと同じ、私が私を否定しても同じこと」

 

 

メリー「な、何を…」

 

 

紫「私は罪を犯したけれど代わりに得たものがある」

 

 

メリー「罪…?」

 

 

紫「得たものは隔たりの無い愛情…そして犯した罪を否定したらあなたたち二人の否定に繋がる」

 

 

メリー「! れ、蓮子の…ことですか!?」

 

 

紫「私は罪と向かい合わなければならないの、死ぬまでずっとね」

 

 

メリー「質問に答えてください! 蓮子もあなたに関係があるんですか!?」

 

 

紫「……ごめんなさいね」スッ

 

 

メリー「えっ…!? きゃっ…!?」

 

 

紫「もう行かないといけないの…」

 

 

 紫はメリーを優しく抱き締めた

 

 

メリー「…! …!! あ、あなたは…!」

 

 

紫「何でこうなっちゃうのかしらね、私はただあなたに会いたかったから会いに来てるだけなのに」

 

 

紫「普段の私からは想像も付かないわね♪」

 

 

メリー(! 雰囲気が変わった…!)

 

 

紫「でも罪は罪…私はこれからも罪と向き合う、その戒めを自分でしたいだけなのにね」

 

 

メリー「戒め…?」

 

 

紫「…」

 

 

メリー「あなたの言う…罪って…?」

 

 

紫「許されない罪…私の大切な人との約束を破った罪」

 

 

メリー「大切な人…?」

 

 

紫「私が心から愛した人間よ」

 

 

メリー「人間…」

 

 

紫「さぁそろそろお別れ…」

 

 

紫「ごめんなさい…そしてありがとう」

 

 

紫「マエリベリー・ハーン…あなたの大切な人といつまでも仲良くね」

 

 

メリー「!!」

 

 

紫「…」

 

 

紫「お休みなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おーい

 

 

メリー「…」

 

 

 おーいって…

 

 

メリー「んっ…」

 

 

 ちょっと? メリー?

 

 

メリー「れ、蓮子ぉ…そこはぁ…んっ…」

 

 

 !? ちょっとちょっと! メリーってば!!

 

 

 起きなさい! メリー!

 

 

メリー「!? はっ…!?」ガバッ

 

 

蓮子「お、起きた? メリー」

 

 

メリー「れ、れん…こ?」

 

 

蓮子「はい、正真正銘の蓮子さんですよ」

 

 

メリー「…ここは?」

 

 

蓮子「大学の屋上だよ、てかメリー…あんたよくこんなところで寝られるわね」

 

 

メリー「…寝てた?」

 

 

蓮子「そうよ、寝てたのよここで」

 

 

メリー「…」

 

 

蓮子「まったく、あんたがいないから心配して探してたのにこんなところでお昼寝とはね…あ~あ心配しちゃって損しちゃったかなぁ」

 

 

メリー「…」

 

 

蓮子「…! な、な~んちゃって! 冗談よメリー」

 

 

蓮子「マジで心配したのよ…? 大丈夫? メリー」

 

 

メリー「…ねぇ、蓮子」

 

 

蓮子「う、うん?」

 

 

メリー「私から否定されたら…悲しい…?」

 

 

蓮子「えっ…私メリーに否定されてたの…? うっわぁ…つれぇわ…」

 

 

メリー「ち、違うわよ! もしもの話よ!」

 

 

蓮子「もしもの話だとしてもその質問はキツイわ」

 

 

メリー「真面目に答えてよぉ!」

 

 

蓮子「そりゃあ悲しいわよ」

 

 

メリー「!」

 

 

蓮子「逆に聞くけど私がメリーのこと否定したら?」

 

 

メリー「か、悲しいわよ! あなたに否定されたら生きてけないもん!」

 

 

蓮子「少し大袈裟な…まぁそういうことよ」

 

 

蓮子「何でいきなりそんなこと聞いたか知らないけど、あんたを否定するなんてありえないっての」

 

 

メリー「ほ、本当?」

 

 

蓮子「信用してよ」

 

 

メリー「…」

 

 

メリー「…うん、信用する」

 

 

蓮子「…ねぇ、本当に大丈夫なの? いきなり変な質問したと思ったら急にブルー入っちゃってるけど」

 

 

メリー「大丈夫だよ…」

 

 

蓮子「そんな風には見えないんだけど」

 

 

メリー「だ、大丈夫大丈夫! ほら♪ メリーさんだよぉ♪」

 

 

蓮子「…」

 

 

メリー「わ、私メリーさん! 今あなたの目の前にいるの♪」

 

 

蓮子「…うりゃ」スッ

 

 

メリー「あいたっ!?」トスッ

 

 

蓮子「そんなもの当たり前でしょ、現に今いるんだから」

 

 

メリー「う、うおぉぉ…! れ、蓮子にチョップされた…痛い…!」

 

 

蓮子「…ねぇねぇメリーさん?」

 

 

メリー「は、はい?」

 

 

蓮子「あんたはこれからずっと…何処に居たいですか?」

 

 

メリー「! …ふふっ」

 

 

メリー「私、メリーさん♪ これからも蓮子の側にずっと…ずーっといるの♪」

 

 

蓮子「…ふふっ、そうなのね」

 

 

メリー「そーなのよー♪」

 

 

蓮子「…だったらさ」

 

 

 

 

 

蓮子「屋上で寝るなんてバカな事はしないでよ?」

 

 

メリー「うっ…! き、気を付けます…!」

 

 

蓮子「ふふっ…♪ ほら、帰ろっ! メリー!」

 

 

メリー「! うんっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつまでもお幸せにね

 

 

 メリー 蓮子

 

 

 さようなら 私の───── ふふっ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おしまい!

 

 

 

 






 ここまで読んでいただいてありがとうございました! お疲れさまでした!


 夢美たちは直接幻想郷と関係ありませんが、蓮子とメリーから幻想郷のデータを貰っているのでいつか時を越えて幻想郷に遊びに来るかもしれません

 夢美ならタイムマシンぐらい簡単に作れるでしょう。



 紫とメリーの関係は二人の会話のシーンで何か含みを持たせるためにわざとなんだか良く分からないように書きました、ヒント的な物を下の方に置いておきますが『ある意味完全に東方紫藍談の裏設定です、本編には一切影響しません』






































 紫とメリーには同じ血が流れているがメリーの血に妖怪としての血は一切流れていない、メリーが紫に会うたびに記憶を消されているのに紫を感じて接触出来るのはその為で境界の綻びを見つけられるのも同じ。

 紫が罪を犯すのは紫の元居た時間から八十年後、その時、一度外の世界に出てあることをしてしまった。

 紫の大切な人間とメリーの大切な人にはある共通点が存在している。

 紫は境界を操る程度の能力を持っている事をメリーは体で覚えている。

 メリーとメリーの大切な人はある意味被害者であり、存在自体が現在の幻想郷にとって望ましくないものであり有り得ないことでもあり、掟やぶりでもある。

 現在の紫は未来の世界に存在しているメリーとメリーの大切な人との関係が羨ましい。

 紫がメリーに会いに行く理由は自分を戒めるため。

 紫はメリーの大切な人に接触することを自分で禁じている。

 

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