機動戦士ガンダムSEED〜日本国自衛隊〜   作:名無之助

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第五十一話・誇り〜ジョン・ガーフィールドの48時間の戦い〜後編

 あの会議の後、大西洋連邦陸軍参謀総長は最も信頼のおける部下に、ジブリールの発言に関しての調査を命令した。

 

 命令を受けた部下はすでにブルーコスモスに掌握されている陸軍情報部、憲兵隊により追跡を受けることになり、ブルーコスモスと半ば敵対していると言っても良い大西洋連邦空軍情報部に駆け込み保護と協力を依頼した。それを受けた空軍は、大西洋連邦空軍長官ビンセント・ハーリング空軍上級大将の指揮の元、大規模な調査を開始した。

 

 そもそも、ハーリングは不審に感じていたことがあった。

 

 それは大統領についてであり、現在の大西洋連邦大統領は、少なくとも東アジアが中立国家に対して攻撃を仕掛けた段階では、軍産複合体やブルーコスモスと距離を置こうとしていたのである。

 

 つまり、大統領の姿勢に矛盾が生じているのではないか…そう思えてならなかった。

 

 そのような状況で調査を急ぐ中、ハーリングの元にある情報が舞い込んできた。

 

 陸軍参謀総長が更迭され、ガーフィールド中将のいるミサイル基地に対し特殊部隊が送り込まれたというのだ。

 

 それを受け、もう一刻も猶予はないと判断したハーリングは決断した。

 

 自ら護衛として部下を率い大統領官邸に乗り込む事を……

 

 

 ーー

 

 同時刻

 

 ガーフィールド中将等がいるミサイル基地の地下、下水道から基地のガーフィールド中将らが占拠するエリアに侵入を果たした大西洋連邦陸軍特殊作戦部隊は、ミサイルサイロの内部を慎重に進んでいた。

 

 しかし、彼らは自分たちが既に捕捉されていることに気づけなかった。

 

 彼らがミサイルサイロの丁度中間に差し掛かった頃、彼らの頭上、ミサイルサイロの二階に当たる通路から、突如として多数の銃口が特殊作戦部隊に向けられたのだ。

 

 そして、ガーフィールド中将が現れる。

 

 

 「私はガーフィールド中将だ。お前たちは包囲されている、直ちに武器を捨てて投降しろ。勝ち目はない」

 

 ガーフィールド中将が険しい表情でそう告げると、包囲されている特殊作戦部隊の中から一人の人物が歩み出し、口を開く。

 

 「閣下、私はベックマン少佐です。この部隊の指揮官です。我々はあなた方を止めるためにここに来ました。なので、武器を捨てることは出来ません。アラスカの件に関しては私も聞き及んでおります。しかし閣下、我々は誓った筈です。内外の敵から祖国と国民を守ることを!あなた方が決起したのも気持ちは分かります。だが、だからといって、この様な手段が正しいわけが無い!!!閣下、閣下も分かっているはずです!!!こんなことは正しい訳がないと!お願いです閣下、鉾を納め、軍上層部ともう一度対話をしては頂けないでしょうか!」

 

 

 少佐の悲痛な、そして紛れも無い本心だった。

 

 それを聞いたガーフィールド中将は、それでも、それに応じることは出来なかった。

 

 「少佐、もうその段階はとうに過ぎたのだ!それに、我々は祖国を裏切ったのでは無い!!!祖国が我々を切り捨て、裏切ったのだ!!!少佐、部下に武器を捨て投降するよう命令しろ!!!差もなくば皆殺しになるぞ!!!」

 

 「閣下そればできません!!!全員武器を捨てるな!!!」

 

 「少佐いい加減にしないか!!!部下を犬死にさせる気か!?」

 

 「断じて武器を捨てることなど出来ない!そんな事できる訳がない!我々は祖国に、国民に忠誠を誓った軍人なのです!!!そこにいるお前たちも軍人だろ!?服務の宣誓を忘れたのか!!!」

 

 「少佐!!!お前たちは包囲されているんだ!!!諦めて投降しろ!!!」

 

 「断じてそれは出来ない!!!武器を捨てるな!!!」

 

 ガーフィールド中将と少佐の悲痛な言葉の応酬に、双方の兵士も緊張を高めていく。

 

 そんな張り詰めた緊張の中、とうとう緊張に耐えかねた一人の兵士が身を乗り出した際に、銃が手摺りに当たって甲高い音が鳴り響き、それが引き金となってしまった。

 

 双方とも予期した事では無い。

 

 不運だったとしか言いようが無かった。

 

 その音が鳴り響いた時、反射的に双方の兵士が発砲、銃撃戦となってしまう。

 

 

 「撃つなぁ!!!撃ち方やめ!!!撃つなぁー!!!」

 

 響き渡る銃声の中、ガーフィールド中将は必死に叫ぶが、銃声に掻き消され、戦闘を止めることは出来なかった。

 

 

 時間にして数分も経たずに戦闘は終わった。

 

 「…何という……」

 

 戦闘後、茫然としたガーフィールド中将の口から自然とそんな呟きが漏れる。

 

 その声には強い悔恨の念が滲んでいた。

 

 ガーフィールド中将の目の前には、その無残な姿を晒す特殊作戦部隊の兵士らの遺体が折り重なり、倒れ伏している光景が広がっている。

 

 そして、ガーフィールド中将は数名の部下とともに、特殊作戦部隊の兵士らの遺体のもとへ向かい、死亡確認を行う。

 

 ミサイルサイロの柱にもたれ掛かるようにして息絶えていたベックマン少佐を見つけ、そこに膝をつく、その開かれたままの眼をそっと閉じてやり、ガーフィールド中将は立ち上がり、その顔を憤怒に歪め、参謀本部がモニターする為に少佐が付けていたカメラを手に取る。

 

 「貴様らは何人の兵士を無駄死にさせれば気が済むのだ?この代償は必ず払わせるぞ。警告はしていたはずなのだがな……」

 

 カメラに向かいそう告げると、ガーフィールド中将はカメラを床に叩きつけて破壊する。

 

 そして、次にはミサイルの発射を命じるのだった。

 

 ーー

 

 ガーフィールド中将がミサイルの発射を命じたのと同時に、作戦の失敗を知った参謀本部…いや、ブルーコスモス派の軍人達と言った方が良いのか、その軍人達は次なる手を打っていた。

 

 彼らはもはや手段を選ぶことはない。

 

 ミサイル基地には、ミサイルサイロや管制室エリアが占拠されているだけで、他のエリアにはまだ基地要員である兵士らがいたが、アラスカの件で分かる様に、彼らはそれを気にしない。

 

 彼らの息のかかった者らにより、燃料気化弾頭を装備した陸上戦艦による攻撃が行われ、ミサイル基地に着弾するのと、ミサイル基地から3発のミサイルが発射されたのはぼぼ同時であった。

 

 3発ののミサイルのうち1発は、ワシントンに、後の二発は、ワシントン郊外の研究施設のような場所にそれぞれ着弾した。

 

 ワシントンへ向かったミサイルは、その上空で空中分解し、弾頭部に搭載された大量の紙の束など……アラスカで何があったか、そして、今までブルーコスモスや軍産複合体が何をしてきたかを記した詳細な資料や、映像記録が保存された記録媒体などが大量にばら撒かれた。

 

 他の二発のミサイルには核に次ぐ威力を持つ弾頭が搭載されており、細菌兵器や生物兵器、ブーステッドマンを研究する研究施設を文字通り消毒した。

 

 ガーフィールド中将が発射したミサイルによる市民の死者はゼロ

 

 ガーフィールド中将は、最後の最期、その命と引き換えに、その軍人としての矜持を示したのである。

 

 

 ーー

 

 ガーフィールド中将がミサイルの発射を命じたまさにその頃、大統領官邸に乗り込んだハーリング空軍上級大将は、ある事実を突きつけられた。

 

 それは…大統領が、アラスカでの作戦の時期から、大統領官邸にも、私邸にも居ない…つまりは消息を絶っていたという事実を……

 

 その直後、ガーフィールド中将のところへ派遣された特殊作戦部隊が失敗し、ガーフィールド中将がミサイルを発射したこと、陸軍参謀総長を追放した軍上層部が、ミサイル基地にまだ基地要員がいるにも関わらず、諸共にガーフィールド中将の殺害を敢行した事を報告される。

 

 ハーリング空軍上級大将はガーフィールド中将の死を悼む気持ちを抑え、即座に、空軍情報部に大統領捜索の指令を出し、自身も軍上層部への警戒を強めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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