機動戦士ガンダムSEED〜日本国自衛隊〜   作:名無之助

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第四十一話・東京動乱 1

日本海にて東アジア共和国と海自護衛艦隊が戦闘を開始する直前より、日本の首都東京で異変が起こり始めた。

 

日本政府は、無用な混乱を避けるために避難勧告などは出しておらず、自主避難を呼びかけ、シェルターを解放するにとどめていたが、殆どの国民は避難をしていなかった。

 

最初の異変はある一本の警察無線から始まる。

 

『新宿08より本部、現在ナンバープレートを付けていない白の大型トラック3台が千代田区方面へ向け信号を無視しながら逃走中!現在追跡している。至急応援の手配を要請する!現在位置靖国通りの電話局前を通過!』

 

『こちら本部了解』

 

『警視庁より各局、警視庁より各局、新宿区靖国通りにて不審車両が逃走中、不審車両は白の大型トラック3台でナンバープレートを付けていない模様、現在新宿08が追跡中!不審車両は千代田区方面へ向かっているとのこと、付近を警戒中の車両は直ちに急行せよ!』

 

この無線の直後、更に別の緊急連絡が入る。

 

『警視庁より各局、警視庁より各局、千代田区水道橋付近にて白の不審な大型トラック4台が通行人を跳ね逃走中との通報あり、現在警邏121、113が追跡中、応援要請あり、付近の車両は直ちに急行せよ、不審車両は皇居方面へ向かって逃走中!また、内調より、G事案の可能性ありとの情報提供あり、警戒せよ』

 

同時刻、首相官邸前

 

「戦争やめろ!内閣退陣!!!」

 

「「戦争やめろ!内閣退陣!!!」」

 

「自衛隊解散!!!殺人集団!!!」

 

「「自衛隊解散!!!殺人集団!!!」」

 

数百人のデモ隊が官邸前でシュプレヒコールをあげていた。

 

そして、警備の警察官が拡声器で警告している。

 

『直ちに解散しなさい!!!無許可でのデモ活動は法律に抵触します!!!直ちに解散ーーっ!!!』

 

警告していた警察官が突如として倒れる。

 

倒れた警察官からは血が流れ出ていた。

 

そして、デモ隊から数十人の人間が前に出てきて、突然警備の警官隊にサイレンサー付きの拳銃を発砲し始める。

 

デモ隊はパニックになり、逃げ始めるが、警察官を撃った犯人達はそれを意に介さず警察官に発砲を続ける。

 

警官隊は機動隊が前面に出て反撃をするが、突然の事態に未だに混乱があり、負傷した警察官を後ろへ引きずり、機動隊は盾を構え、拳銃を抜き撃ち返す。

 

『こちら首相官邸前、第1機動隊第2中隊!!!G事案発生!!!首相官邸前で警察官が撃たれた!!!現在数十名からなる武装集団による攻撃を受けている!!!応援を要請する!!』

 

機動隊が本部へそう連絡した直後、本部からもたらされたのは最悪な状況を伝えるものだった。

 

『こちら本部!!!現在各所にて発砲事件発生中!!応援は少し待て!!また、各局へ緊急連絡。七瀬内務大臣が拉致された模様!!!犯行グループは日本教育連合組織委員会本部に立てこもっている!!!追加連絡。警視庁より各局、警視庁より各局。新宿駅前にてG事案発生。警察車両が銃撃を受け大破。ロケット弾が使用されたとの未確認情報。現在、新宿駅前交番が犯人グループと交戦中。付近のPCは至急急行せよ!!!尚、これは千代田区方面へ逃走していたのとは別のグループと思われる』

 

新宿駅前

 

大勢の民間人が逃げ惑う中、駅の入り口にて交番の警察官たちは必死に犯人グループを阻止しようと戦っていた。

 

「くそ!撃て!撃ち返せ!!!」

 

「皆さん伏せてください!!!伏せて!!!」

 

「狩野警部!!!本部から状況を報告せよと…」

 

「そんな暇は無い!!!状況は切迫!応援の1人でも寄越せと伝えろ!!!」

 

「はい!」

 

犯人グループは自動小銃を乱射しながらも動きは素早く、少なくとも素人のそれではなかった。

 

しかも、大型トラック3台分、約30人が自動小銃を装備し、リボルバー式の拳銃しか無い交番の警察官たちに牙を剥く。

 

反撃をしようとした交番警察官が、首から鮮血を吹き出し倒れる。

 

「田中!!!」

 

「……ごぷっ!」

 

田中と呼ばれた若い巡査は、自分を気遣う上司に目でポケットの辺りを示すような素振りを見せる。

 

「これか?…おい田中?田中っ!!!」

 

狩野警部は田中の胸ポケットから一枚の写真を取り出し、田中の家族の映るそれを田中に見せようとするが、田中の目からはすでに命を感じることはできなくなっていた。

 

「……くそ、応援はまだか!!!」

 

その時、応援のパトカーのサイレンが聞こえ、銃器対策部隊の車両が二台のパトカーと共に駅前へと近づいてきた。

 

狩野警部ともう1人の巡査は、ほっとするのもつかの間、犯人グループの何人かが筒状のものを向かってくる車両に向けるのを見て叫ぶ。

 

「や、やめろぉぉぉ!!!

 

その叫びと同時に筒から放たれたそれは、二台のパトカーと輸送車に命中し、爆発。輸送車は横転。なんとか車両から這い出してきた隊員が見えるが、犯人グループは黒いソフトボール大の物体…手榴弾をその隊員の方へと投げる。

 

隊員は助かるはずもなく、原型を留めている車両へも容赦なく手榴弾が投げられ、跡形もなく破壊される。

 

狩野警部はその光景に呆然とするしかなく、犯人グループが自分たちの方向へ手榴弾を投げ込む。側にいた若い巡査は硬直したように動かない。

 

狩野警部は巡査を守るため手榴弾の上に覆いかぶさり、衝撃を感じると共に意識を手放した…。

 

東京を襲う動乱はまだ始まったばかりである…。

 

 


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