ユーラシア連邦は、ラズホア大佐が某国と通じて何らかの行動を起こそうとしているのに気づくと、アフリカ派遣部隊の指揮官として、ある男を現地に送り込んだ。
アルベール・エーデルハルト中将 ユーラシア連邦最年少の将軍であり、元特殊部隊隊長で、数々の極秘作戦等に参加した経歴を持つ。
さらに大統領をテロリストから命がけで守り抜いたというユーラシア連邦特殊部隊における伝説級の活躍をした人物であり、その際に負った怪我のために前線を退き、現在は後方にてユーラシア連邦第1士官学校の校長をしている。
その彼をユーラシア連邦上層部はアフリカ派遣部隊の指揮官として現地に送り込んだのである。
尚、本人は最後まで着任を拒否していたが、説得に当たった陸軍大将が、昔彼が奥方と付き合っていた頃、とある任務中に別の女性と関係を持ったことがある事を奥方に話すと言ってきたため渋々したがったのである。
アフリカに向かう軍用機の座席に座る精悍な顔立ちの男性が窓から外を眺めながら溜息をついている。
「不幸だ…なぜ私がまたアフリカに行かなきゃならんのだ……」
そう嘆く男性…アルベール・エーデルハルト陸軍中将の隣に座る青年が困ったような顔をしながら彼がアフリカ着任を嫌がっていたその理由を思い出していた。
出発前、彼はアルベール・エーデルハルト中将の副官として、彼に随伴するように指示を受けていた。
アフリカへ向かうのは、自分と、アルベール・エーデルハルト中将、さらに、中将の直属として、自分たちが出発する前日に一個混成大隊がアフリカへ出発していることも聞かされていた。
そして、中将と軍用機に乗り込んで少しして、先程と同じような事を中将がボヤいていたため、気になり、つい中将へなぜそれほど中将はアフリカへ行くのを嫌がるのか尋ねてしまったのである。
掻い摘んで説明すると、かつて中将が特殊部隊にいた時、アフリカでとある人物を暗殺する特殊任務についており、その際に、街へ潜入していた彼は何度も街へ潜入を繰り返すうちに、度々出会う現地の女性と恋に落ちてしまう。
そして、ついに一線を超え一夜限りではあったが関係を持ってしまう。
女性は彼がユーラシア連邦の特殊部隊の隊員であることを打ち明けると、翌日には彼の前から姿を消していた。
そこまではまだよくある悲恋話であったのだが、彼は本国に帰った後、様々な伝手を使い女性を探し出したのである。
それが4〜5年ほど前、探し出した時、女性は娘を出産しており、その娘はもう10歳程度まで成長していた。
彼はその時は既に現在の奥方と結婚しており、女性のことはせめて安否だけは知りたいと探していたにすぎなかったが、娘が産まれていた事に驚き、情報部の友人に頼み、極秘裏にDNAを調べたのである。
結果、自分の娘である事を彼は知る事になり、それからは、奥方に知られないように秘密裏に彼は女性に対し生活費を送る様になる。
ザフトのNJ投下時に、その女性がその影響による事故に巻き込まれて亡くなった事は直ぐに彼の耳に入るが、彼にできた事は、娘の安否を調べる事と、娘が生きている事を祈る事だけだったのである。
そういう事情があり、中将はアフリカへ着任し、万が一実の娘と出くわしてしまったらどんな面を下げて顔を合わせれば良いのか……と悩んでいたのである。
青年はそんな中将の内心に同情していた。
そして、中将自身も、アフリカの現状は知っていたし、何より不穏な雰囲気が軍内にある事を察していた。
ただ、娘に出くわすリスクを考えてしまったのと、現在の職務が気に入っていたがために拒否していただけであり、さらに付け加えれば、いずれは折れて引き受けるつもりもあったので、タイミングを見ていたというのもあったかもしれない。
そのため、中将は大将が説得時に持ち出したあの話があっても、しようと思えば断る事が出来たのを断らずに、そろそろ頃合いかと考え、引き受けたのである。
それに、別に中将は奥方に昔のことが知られても構わなかった…というか、どちらにしろいつか話す腹づもりであったのだが……実は奥方は既に全て知っていたりする。
だが、わざわざ問い詰める事もないし、いつか中将自身から話してくるまではそっとしておこうとしか思っていなかったのだが、中将も、説得に当たった大将もそれに気づいていなかっただけである。
そして、アフリカについて早々に、自分たちは特大の貧乏クジを引かされたのではないか……と思わされる事件が起こるのだった…。
かくして、アフリカ派遣軍司令官は着任した。
中将の実の娘…さあ誰でしょう?
あと、変なところがあれば遠慮なく指摘して下されば幸いです。