CE71 3月5日 この日、インド洋を進む2隻の潜水艦がいた。
日本国海上自衛隊 第一潜水艦隊 第一潜水隊群に属するこの2隻には、他の海自潜水艦には無い特別な機能が備わっていた。
この2隻は、海上自衛隊の潜水艦で唯一”艦載機“が搭載されていたのだ。
それも、ヘリなどでは無い、水中用の戦闘機とでも言えるようなそれは、見た目には戦闘機とは程遠いものであった。
8式潜水戦闘艇。ザフトの潜水型MSに対処するため、水中作業用潜水艇を元に開発された戦闘用潜水艇であり、集団戦において能力を発揮するこの機体は、2隻合わせて8機搭載されている。
武装は、超小型誘導魚雷と40mm水中用機関砲であり、さらにはクローアームによる近接戦も可能なものとなっている。
通称八式、これを搭載し、今まさにインド洋を進む2隻の潜水艦は、海上自衛隊の新型潜水艦 迅龍、水龍、この2隻はある任務のため、この海を進んでいた。
「司令、もう間も無くアークエンジェルとの合流地点に到着します。会合予定まで2時間はありますが……」
「艦長、ここはザフトの勢力圏だ。アフリカでユーラシアが勝ったからと気を緩めたら、足元をすくわれかねん…八式は全機いつでも出撃できるよう待機、警戒を厳となせ」
「は、警戒を厳となします!」
このままザフト部隊と遭遇せずに任務を果たしたい…そんな思いが司令を始め、2隻の潜水艦の乗員達に共通していた。
しかし、彼らの思いは天には届かなかったのである。
「…艦長、ソナーに感あり!音紋照合…ザフト軍ボズゴロフ級、数は2隻、MS発進準備中と思われる音あり!」
「な、くそぅ…対潜戦闘用意!魚雷発射準備!」
「艦長!水龍に打電、直ちに八式の発艦を開始せよ!本艦はその間敵を引きつける!」
「了解しました!敵に先制攻撃を仕掛ける!照準合わせ!魚雷発射管1番、2番注水!下げ舵10度、目標、敵潜水艦!!」
「照準合わせ良し!魚雷発射準備完了!!!」
「1番2番魚雷、撃てー!!!」
海自潜水艦から二発の魚雷が発射され、ザフト潜水艦へと襲いかかる。
その時、ザフト潜水艦も、海自潜水艦からの攻撃に気づき、行動を始めていた。
「本艦の左舷前方、距離2000より突発音!同地点より小型の魚雷と思わしき音紋近づく!!!」
「MS発進中止!デコイ射出!機関最大、面舵一杯!!!」
「デコイ射出、魚雷なお近づく!弾着まで20秒!」
「魚雷一発デコイに向かう!もう一発はまっすぐ本艦へ近づく!弾着まで10秒!!!」
「…今だ!機関後進一杯!!!魚雷を本艦の脇を通過させる!」
「後進一杯!!!」
ザフト潜水艦に向かった魚雷は、ザフト潜水艦の艦長の思惑通り、ザフト潜水艦の側を通り抜けたところで信管が作動し爆発、ザフト潜水艦はなんとか一撃を凌ぐ、しかし、全てが上手くいったわけではなかった。
「……ッ!被害状況知らせ!」
「機関室、異常なし!」
「居住区、及び弾薬室異常なし!」
「MS発進不能!衝撃により隔壁、及び発進口に歪み、開閉装置破損!!!」
「な……何ということだ…」
彼らの悪夢は終わらない……丁度彼らが被害状況を確認していた頃、ザフトのもう一隻の潜水艦が、海自潜水艦の1隻へと反撃を仕掛けようとしていた。
「敵の潜水艦を捕捉、該当データなし…新型と思われる……くそ!なんて捕捉しづらいんだ!!!」
ソナーを担当するザフト兵が悪態を吐く。静寂性に優れた日本の潜水艦は、潜水艦の運用に不慣れなザフトにとって、捕捉するだけでも至難の技であり、しかも、今回は新型の潜水艦が相手であるから尚更である。
「きちんと集中しろ!ナチュラル如きの潜水艦が捕捉できないわけがない!」
しかし、このザフト潜水艦の艦長は理解していなかったのだ…現代において、どの国の潜水艦含む海軍艦艇の者達が口を揃えて『日本の潜水艦とは何があっても戦いたくない』とまで言わしめる日本の潜水艦の戦闘力を…。
「魚雷戦用意…1番から4番まで発射管開け」
「了解、発射管開きます」
「敵潜に動きあり、機関増速している模様!」
ソナーを担当するザフト兵は、ソナーの音に全神経を集中させるが、それでも、相手の潜水艦の音が余りにも小さく、いつ見失うか気が気ではなかった。
「気づかれたか!構わん、機関最大で追跡!!!照準完了次第魚雷発射!!!」
「了解!!!」
ザフト潜水艦が速度を速め、音を追いかける…然し、それも長くは続かなかった…。
「敵潜水艦をロスト!!!音が消えました!!!」
「な、何!?まさかナチュラル如きにしてやられたと言うのか!!!」
敵潜水艦をロストしたとの報告に、艦長は一瞬動揺してしまう。
その隙を突くように、背後に忍び寄った死神が鎌を振り下ろす。
「本艦の後方より突発音!!!小型推進音近づく!!!」
「回避!!!」
「間に合いませ……っ!!!」
最後まで言い切る前に、そのザフト兵は凄まじい衝撃と、同時に流れ込んできた海水に押し潰され、その生涯を終えた。
「敵潜水艦撃沈!」
「まさかデコイに引っかかるとはな……迅龍に打電、敵潜水艦1隻を撃沈、所定の行動に戻る」
「了解、
「……何はともあれ、八式の残りを発進させてしまおう…任務優先だ」
その時、僚艦が撃沈されたのを察知したザフト潜水艦は、急ぎ現場海域を離れることを決意し、行動に移すが、それもまた困難であった。
「敵潜水艦、1隻を水龍が撃沈、もう1隻は離脱を図る模様」
「……合流地点近くをうろつかれたら面倒だな。例の部隊では無いみたいだし……片付けるか…八式の部隊に連絡、先に発進していた敵MSを追跡せよ。また…水龍に打電。八式の収容のため、水龍は現海域に待機、敵潜水艦は本艦が仕留める」
「了解!!!」
「八式部隊、敵MSの追跡に入りました!敵潜水艦増速!海域を離れます!!!」
「機関始動、最大戦速!」
「了解、機関最大!!!」
「魚雷発射管、1番から3番に特式弾頭魚雷を装填、4番には通常の誘導魚雷を装填しておけ」
「は、了解しました…司令、特式と言う事は…」
「なぁに、研究用に出来ればと上から言われていてね…設計図だけではなく実物も欲しいらしい…」
「…成る程」
逃走を図るザフト潜水艦は、その様な会話が相手の潜水艦でされている事など知る由もなく、必死に、自衛隊の魔の手から逃れようとしていた。
「もっと速度は出ないのか!」
「…これで限界です艦長!そもそもこの艦は対潜水艦での直接戦闘なんて余り想定されてないんです!」
「技術部のアホどもが!!!敵潜水艦の位置は!?」
「ダメです!捕捉できません!」
その時、艦長の背筋に冷たいものが流れる感覚がし、嫌な予感がした艦長はその直感に従った。
「操舵手!取り舵一杯!メインタンクブロー!!!浮上しながら180反転!!!」
「か、艦長!?」
「急げ!!!早くしろ!!!」
「艦長、後方から突発音!!!魚雷接近!!!数は4!」
「デコイ射出!あとは先の指示通りだ!!!」
「デコイ射出!取り舵一杯!!!急速浮上!!!」
「敵潜水艦の魚雷爆発!!!」
「何!?…ッ!!!」
艦長が何かを言うより先に、衝撃波が艦を襲うと同時に、彼の意識も強制的に奪われることとなる。
「ザフト潜水艦、行動停止……そのまま海面に出ます」
「……回頭しながら浮上しようとされた時は焦ったが…何とかなったな…」
「はい、あれだけ急速に浮上されては特式の誘導が外れる可能性もありましたからな…なかなか優秀な艦長の様で…」
「多分、回頭が完了したら反撃してきただろう……そしてそのまま隙をついてさらに回頭し離脱か……まあ、失敗したわけだが……敵潜水艦に降伏勧告を。抵抗する場合撃沈するとな…」
「了解です司令」
特式弾頭魚雷、日本で開発された新型魚雷であり、敵潜水艦の近くで炸裂すると、特殊な電磁パルスを水中でばら撒き、敵潜水艦の動力、更には内部の魚雷などの武装の信管も故障させ行動不能にする兵器である。もし、ザフト潜水艦が潜行を選んだら、二度と浮上できなくなっていた可能性もあった。
かくして、海上自衛隊とザフトとの最初の戦闘は静かに自衛隊の勝利で幕を閉じ、海上自衛隊はアークエンジェルとの合流前に、敵潜水艦の鹵獲に成功するのだった。
ディアッカは、次回に登場します。
今回は書ききれませんでした…申し訳ありません。
ところで、潜水艦の用語てなんかの本とかで調べられませんかね?ネットで見ても余りわからなくて…。
感想、ご意見、お待ちしています。
完結も見えてきたので、今後についてアンケートを実施します。
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destinyルートへ行く
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宇宙戦艦ルートへ行く
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連載停止中のほかの作品を続き書けや
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新連載しつつゆっくり続きでOK
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徳田くんのR18