機動戦士ガンダムSEED〜日本国自衛隊〜   作:名無之助

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第八話・クリスマスの奇跡

CE70年 日本の年号では明星30年 平成で言った所の平成150年にあたるこの年、世界はプラントと地球連合との戦争状態にあり、人々は明日への不安を抱えながら生活していた。

 

そして、それは日本も同じで、プラントの軍、ザフトの投下したNJにより数百人近い死傷者が出た他、その後には、不当な要求をしてきた地球連合宇宙軍と航宙自衛隊が武力衝突と言う最悪の事態とまでなっている。

 

そんな時代。

 

しかし、それでもあの武力衝突以来、特に日本は変わりなく、強いて言えば、警察や政府がスパイ摘発に本気を出し始めた事くらいで、その他は、日本や日本の同盟国だけは少なくとも平和であった。

 

12月24日 この日はそんな日本の国民達が楽しみにしていた日であり、街は色鮮やかなクリスマスの飾りに彩られて美しい輝きを放ち、恋人、夫婦、家族がそれぞれ思い思いに楽しんで過ごしている。

 

とある病院のある病室、その病院でもクリスマスの行事などがあるが、その病室には関係無いかのようであった。

 

飾り付けはしてあるが、個室の病室の主人は未だに目を覚まさず、深い眠りの中にあった……まるで、死んでいるかのように、少女は眠り続けている。

 

この病室の主人 徳田 小春(とくだ こはる)16歳 彼女は、熊本駅でNJが直撃し崩れた所に居たが、母親が庇ったためか奇跡的に生還した少女である。

 

そんな少女の傍で、優しく彼女を見つめるのは、彼女の兄、徳田 新 で、クリスマスを妹と共に過ごすため休暇を取り、ここに来ていた。

 

徳田 新は妹の頭を優しく撫でながら、妹の失われた片足の事、一緒にいてたぶん妹の目の前で死んだ両親の事を想い、唇を噛み締めた。

 

そして彼は、ゆっくりと、まるで懺悔するかのように口を開いた。

 

「小春、兄ちゃんな…航宙自衛隊のすごい部隊に配属になったんだ…周りの仲間もみんないい人たちでな、たまにワルやったりするのもいるけど、でも、いい人たちなんだ、上官は不器用だけどよく部下の事を気にかけてくれるし、仲間もそれぞれが支え合ってる。

兄ちゃんな、この部隊で小春や、もっと多くの人たちを守れるように死ぬ気で頑張るから、だから小春…目をな、覚ましてくれないかなぁ……っ」

 

彼の頬を一筋の水滴が流れた、彼はそれが涙であると直ぐに気づいたが、それは溢れるばかりでまるで止まる気配が無い。

 

「……っくそ、何だよこれ……小春、ごめんな、兄ちゃんお前や母さん達を守れるはずの仕事をしてるはずなのに、守れなくって、ごめんな……父さんや母さんの仇を取ることも、兄ちゃんな…出来ないんだ、兄ちゃんな自衛隊だから、人を守る為に戦う人間だから敵討ちは兄ちゃんには出来ないんだ…ゴメン…ゴメンな…小春」

 

 

ーー

 

何か不思議な感覚……ここが現実で無いかのような…。

 

「小春、どうしたの?ぼーっとして、電車におくれるわよ?」

 

「母さん、まだ時間はあるよ……小春、どうした、具合でも悪いのかか?」

 

母と父が心配そうにこちらを見ている……思い出した。

 

今日は父、母、わたしの三人で旅行してきた最終日だった。

 

生憎とお兄は仕事でこれなかったんだっけ…。

 

「……ううん、何でも無いよ、行こう?」

 

「そうか、なら良いんだが…」

 

それから暫くして、熊本駅で電車を待っていた時…突然アナウンスが鳴り響いた……。

 

『ご利用のお客様に連絡します!現在、政府よりザフトが正体不明の兵器を投下し、その一つがこちらへ落下してきているとの事です!お客様は係員の指示に従い直ぐに避難してください‼︎繰り返しますーー』

 

何が起きたのかは分からなかった。

 

その時頭にあったのは兄は大丈夫なのか?と言う事だけだったから。

 

そして、避難する為に指示に従い移動していた時、凄まじい衝撃に襲われたのと同時に、父、母の声が聞こえた…。

 

「「小春‼︎」」

 

「え?」

 

声が聞こえた瞬間、わたしは突き飛ばされ、とっさに目を向けると、安堵したかのような表情の母の顔が見えた。

 

そして、その母の顔が瓦礫に潰される瞬間がとてもスローモーションに見え、とっさに叫ぼうとした瞬間、わたしの視界は黒く塗りつぶされたように見えなくなり、意識が遠ざかるのを感じたのが、わたしの最後の記憶だった。

 

 

ーゴメン…ゴメンな…小春

 

誰かの声が聞こえた気がした

 

とても懐かしい声

 

ー守れなくってゴメンな

 

大好きな兄の声だ

 

でも、泣いているように感じる

 

ー小春…ゴメンなぁ

 

謝らないで、泣かないでお兄ちゃん

 

そっか、泣いてるんだ、大好きな兄が

 

ー眼を覚まして、目を開けてくれ、小春

 

わたしが寝てるから兄は泣いている?

 

大丈夫だよ、直ぐに起きるから

 

「小春、今日はクリスマスだ、プレゼントもあるんだ、起きてくれないと、見せれないじゃ無いか…」

 

今度ははっきりと兄の声が聞こえた。

 

薄っすらと視界が広がる。

 

そこに居たのは、驚いたようにこっちを見つめる眼を真っ赤にした大好きな、大好きなお兄ちゃんだった。

 

「…お…兄?」

 

「ああ、そうだ、お前の兄ちゃんだ、小春!」

 

そう言って兄はわたしを直ぐに抱き締めてきた。

 

それはとても懐かしい、そして暖かかく感じた…。

 

 

その日、クリスマスに、小さな奇跡が起きた…外ははらはらと雪が降るホワイトクリスマスだった……。




シリアス回でした……。

感想お待ちしております。

次回予告

囚われの技術者、実験台の少女、救いの手、それは日の丸を背負いし影の者、指名を果たせ!特戦群!

完結も見えてきたので、今後についてアンケートを実施します。

  • destinyルートへ行く
  • 宇宙戦艦ルートへ行く
  • 連載停止中のほかの作品を続き書けや
  • 新連載しつつゆっくり続きでOK
  • 徳田くんのR18

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