すいません。前回のカウントダウン、ミスりました...慣れないことはするもんじゃありませんね。
カランと鳴るはドアの音
コロンと鳴るはベルの音
悪魔の店には何でもあります
お客様の願いや要望を必ず叶えて差し上げます
はてさて、今日のお客様は?
〜ep87 謎〜
「本日はどういったご用件でしょうか? お客様」
「俺...いつもボーッとしてしまって...失敗ばかりで...うぅ」
「ああ、成る程。そういう...でしたら少々お待ちを」
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「こちらでございます」
「...パズル、ですか?」
「こちらを組み立てて完成させようとすればあら不思議! 頭が冴えて作業が捗る事でしょう」
「買います! 買っていきます!! 一体幾らでしょうか?」
「お代は結構ですよ。忠告を聞いてさえくれれば」
「忠告?」
「決して、完成はさせないように」
Side C
「しかし見れば見るほど奇妙な...」
平面とも、立体ともとれる様な...まるで4次元以上の物質を無理矢理ここに出現させたような...そんな事を考えている場合じゃないな...
「とりあえず...!」
少し動かしただけで、わかる! わかるぞ!! 頭がさえて、どうすれば効率よく作業を進められるかが!!
「早速書類に取り掛かろう!!」
今日は残業なしになるかもな!!
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「ん~、こんなに気分が良いのは久しぶりだな!!」
嫌、下手したらないかも...兎に角このパズルのおかげでいつも以上に冴えてた。どういう理屈化はわからないが、難解なあのパズルに比べれば自分がやっていることは如何に単純なのかって思って...
「...とりあえず、明日も頼むよ」
あの店員は完成させるなって言ってたけど要領が悪い僕だ...多分無理だし、毎回使っても大丈夫だろう。
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「部長、書類の整理終わりました!」
「ほう...どれどれ...ふむ...」
「...」
「うむ、文句なし」
「ありがとうございます!」
「最近どうしたんだ? まるで人が変わったみたいに仕事が出来てるじゃないか」
「そ、そんなに変わりました?...そうですね、ちょっと心境の変化があったんです」
「そうか...関心関心!」
部長に褒められた。いつもなら飽きられるか大目玉を喰らうのかのどちらかなのに。パズルを行っているとまるで謎を解く名探偵のように頭の中が良く働いている...気がする。
「では、私はそろそろ次の作業へ移りますので」
「ふむ...頑張るのは良いことだが、決して無理するなよ」
「大丈夫ですよ部長」
何せ軽いもんだから...
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「はははっ...軽い軽い...」
どんな事だろうとすぐさま答えがわかってしまう。パズルだけだ、俺を梃子摺らせるのは...
「軽い軽い...」
書類整理も、得意先への失礼にならない取引も、同僚との暇つぶし程度のなぞなぞも...
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「軽い軽い...」
時折見るテレビのクイズ番組の難問も、それよりさらに難しいであろう哲学も、趣味で見る博物館の芸術も...
「軽いな...」
あのパズルに比べれば...
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「軽い...軽い軽い...」
あれも、これも、それも
「軽い軽い軽い軽い軽いッッッッッ!!!」
どれも全部全部全部全部全部ッッッッッ!!!
...なんで他の奴はこんなことがわからないんだ。なんでこの世界はこんなにも単純なのに...
「なんでわかろうとしない? 他者を貶めるだけで進歩もしない...糞が...糞以下が!!」
最早私にはこのパズルしかなかった。所詮この世界に未練なぞ一切なかった。
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カチカチカチカチ...カッチ
「ついに出来た!! 完成した!!」
「ほう...それは自ら忠告を破るということですか? お客様」
男は正体を現す...
「...この世界に、つまらん場所に未練などない。それにパズルも解いてしまったからな...退屈よりはましだ」
男は答える...
「残念ながら、忠告を無視した場合...対価が発生いたします」
悪魔は笑い出す
「お代は、貴方の魂とさせていただきます」
「さらば...つまらない世界で生きる事しかできない人間どもよ」
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「ノコルタマシイハアトミっつ」
今日も彼は店を営む
ありとあらゆる商品が並ぶ悪魔の店を営む...