悪魔の店   作:執筆使い

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第68話

 

「...ふむ。どうしてこんな状況になってしまったのやら、理由が思いつきません」

 

 

店員の両手には手錠がはめられている

 

 

「黙ってろ。貴様をここに連れて来たのは上からの命令だ」

 

 

 

 

 

カランと鳴るはドアの音

コロンと鳴るはベルの音

 

 

 

悪魔の店には何でもあります

お客様の願いや要望を必ず叶えて差し上げます

 

 

はてさて、今日のお客様は?

 

 

 

 

 

 

〜ep68 拷問〜

 

店員が連れて来られたのは地図にも載っていない場所。如何にもな感じの一室であった。

 

 

「確か貴方と私は初対面の筈ですが?」

 

 

「...コードネームサンジェルマン。一部の者は貴様の存在を知り、そして余程を除き不可侵を契約している」

 

 

「あー、そういえばそんな事もありましたっけねぇ。意外と覚えておいでで、多くの人間は代を重ねるごとに約束を破りやすくなりますので」

 

 

「正直、私も上から言われなければ貴様の様な不審者すぐさま」

 

 

男は首を切るジェスチャーをとる

 

 

「不審者...これでも歩く聖人君子と呼ばれているんですがねぇ」

 

 

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「此方ですか」

 

 

「知らねぇ顔だな! 前の奴、とうとう根を上げた様だ!!」

 

 

「しかしまぁ拷問とは...」

 

 

ー我々はとあるテロ組織を追っていてな...命からがら幹部の一人の拘束に成功した。だが、どんな拷問にかけても口を割る気配がなくてな...

 

 

「さて...あの時と違って、ユダのゆりかごや鉄の処女やファラリスの雄牛はありませんからねぇ」

 

 

歩く聖人君子? はとりあえず備え付けの刃物を一つ手に取り近づく

 

 

「まぁ、殺れるだけ...失礼。やれるだけやってみますか」

 

 

店員は笑い出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side T

 

「ふむ...やはり駄目ですか」

 

 

「無駄だ...どんなに痛めつけようとも俺は絶対に口を割りはしないんだよ!!」

 

 

殺されでもしない限りはだがな。最も、そんな事をすれば組織の情報は闇に葬られてしまう。

 

 

「さぁどうする? 火あぶり、水攻め、それとも急所を外しつつ銃弾を撃ち込むか? ギャハハハハハハハハハハハッハ」

 

 

「...あまり調子に乗らない方が良いですよ」

 

 

「あ?」

 

 

「私をそこらの素人と思わない方がいい、と言ってるんですよ」

 

 

「そうかい、じゃあせいぜい頑張ってみるんだな」

 

 

「では、今日は遅いので明日からにしますか」

 

 

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次の日、奴は俺に対して何もせず、ただただ本を眺めているばかりであった。表紙が真っ白なのでどういった内容なのかは推測できないが、大方拷問の方法でも調べているのだろう。

 

 

「どうした? そこらの素人とは違うんだろ?」

 

 

「...」

 

 

「...ちっ、だんまりか」

 

 

その日は何もしてこなかったので正直拍子抜けであった

 

 

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今日は何かを作っている。自白剤のつもりか? 組織にいたころからそういった類の薬は嫌というほど飲まされ、慣れているから無駄だが。

 

 

「言っとくが、そんなので俺を「できました!!」

 

 

鼻に付く匂い...紅茶...? 嫌、似た匂いの毒薬は幾らでも存在する。自白剤もな...!!

 

 

「うーん、この香りと味が何とも...」

 

 

...自分で飲んだ? 訳が分からない

 

 

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...........

 

 

結局、昨日は紅茶を作っただけ。何かがおかしい。何か妙な違和感を感じる...

 

 

「おい」

 

 

「今日は何をしましょうかねぇ「おい!」何せ出来ることが「おい!!」限られ「おい!!!」ますからねぇ」

 

 

「おい...返事しやがれ...」

 

 

「折角ですしぬいぐるみでも編んでみましょうか。助手が最近欲しがっていたみたいですから」

 

 

「返事をしろ!!」

 

 

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怖い...わからない...何なんだ...一体...

 

 

「何故返事をしない...何故俺を見ない...」

 

 

何でだ...何で...

 

 

「もう少しですかね...苦労しました。何せ桃色の糸が中々見つかりませんでしたから」

 

 

何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で...

 

 

「頼む...頼むから...返事を」

 

 

「きっと喜ぶでしょうねぇ」

 

 

「あ...あぁぁぁぁぁ...」

 

 

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....................

 

...........

 

 

「と、いう訳で拷問は完了いたしました」

 

 

店員の傍らには最初とは比べ物にならない程やつれていたテロ組織の幹部の姿

 

 

「一体何をした...? 普通の拷問ではこんなこと「あり得ますよ」

 

 

「私がやったことは唯一つ。こちらの方が見えない風に演じていただけです」

 

 

「だからそれだけで「解っていない様ですねぇ」

 

 

「どこまで行っても人というのは、かまってちゃんなんですよ。自分を見てもらいたい、誰かが自分を知ってくれたらそれでいい。そんなものです。だから私は彼の目の前でそれを全部、ぜーんぶ否定してやったのです」

 

 

「頼む...俺の話を...」

 

 

「おかげさまでこのように、どんな事だろうと話すようになりましたよ。良かったじゃないですか!」

 

 

「だからと言って「くどいですねぇ」

 

 

男は正体を現す

 

 

「確かに貴方がたは人道を守るためにこういった事をしている。ですが所詮、」

 

 

悪魔は笑い出す

 

 

「他者を拷問し、人の心を捨てたと思いこんでいる時点で同じ穴のムジナなんですよ」

 

 

明日も彼は店を営む

例え邪魔があろうと彼は店を営む...

 

 

 






本編に関係ないような、どうでも良い(裏)設定

店員のやっていることは一部を除いて不能犯扱いとされる為、仮に人間の裁判にかけられたとしても死刑になることはまずない(呪殺扱いとされる)
そういった理由があってか(又、昔痛い目にあった為)世界に存在する警察組織や諜報機関の多くは彼に対して余程を除いての不干渉、不可侵の契約を結んでいる。






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