「今回は少し昔話でもしましょうか。この店を立ち上げる前、私は様々な世界へ旅をしていたのです。その時とある実験をしました。人の欲望を試す実験を。」
悪魔は話すよ奇妙な話
悪魔は話すよ恐ろしい話
これから暫くの間
貴方の目は貴方の体を離れ
不思議な物語の世界に入っていくのです
~ep35 押しますか?~
「本当にこれが噂の押すと幸運になるというボタンなのか?」
「ええ。こちらを押していただくと、その先の人生貴方は幸運まっしぐらとも言えるでしょう。」
「うーん。とはいえ実例もあるみたいだしな...よし買った!!幾らなんだい?」
「お代は無料です。但し、このボタンを押すうえで一つ注意があります。」
「注意?一体なんだい?」
「このボタンを押すと、どこか遠くにいる、貴方の知らない人が死ぬこととなります。良く考えて使ってください。」
「そうですか...」
「あ、因みに押した場合は私がボタンを取りに行ってまいりますので、そこの所もよろしくお願いします。」
「わかりましたよ。」
Side C
「遠い何処かの...誰かが死ぬねぇ...」
なんか不気味だな...でも押そうかな...
「...やめた。誰かを殺すことになるんだからそう易々と押せるわけないだろ。」
とりあえず押入れの仕舞っておいてと...
「ふぁ~。もうこんな時間か...明日は大事な日だし、早く寝ないとな...」
..................................
....................
............
「えっ、今なんて言いましたか?」
「確かに受け入れがたい現実かもしれないが、もう一度言おう。君にはわが社を立ち去ってもらう。」
「一体何でですか!?私は会社の為一生懸命に...」
「それは私も良く解っている。しかし、ここのところわが社は経営難に陥っているのだ。どうしても人員を減らさないと潰れてしまうんだ。」
「そうですか...」
..................................
....................
............
あれから、俺は路頭に迷うこととなった。住んでいたアパートを追い出され、路上生活を強いられる毎日。手元にあるのは小銭と
「...」
ボタンだけだ。
「このまま俺は死んでしまうんだったら...」
嫌々、駄目だ。押したら誰かが死ぬことになるんだ。俺は人殺しにはなりたくない。
「それに小銭がここに、あっ!?」
チャリン コロコロ...ポチャン
「しまった...これじゃあおにぎり一つ買えやしない。」
一体どうすれば...
..................................
....................
............
「...」
もう限界だ...3日も我慢した。それでも何も変わらない。だったらボタンを押してこの生活から抜け出したい。
「どうせ死ぬのは何処か遠くの、俺の知らない人なんだ。何を迷う必要があったんだ。相手は赤の他人。だったら押したところで何の悲しみも無いじゃないか。」
カチッ
「これで...!」
「押しましたか。やはりそうなるだろうとは思いましたよ。」
「あ、貴方は...」
「とりあえずこちらは現金一億円となっております。」
一億...!?
「もしかして幸運って?!」
「ええ。こういうことでございます。これで貴方は晴れて貧乏生活から脱却できるという訳です。」
「...やった!!ありがとうござ...あれ?あの人は一体どこに?」
..................................
....................
............
あれから、俺は一戸建ての家を買うことが出来た。いい就職先も見つかりまさに順風満帆。人一人を殺してしまったことにはほんの少し罪悪感は残るけど、今はこの生活を楽しもう。
「あのボタンは...幸せを呼ぶボタンだ!!」
..................................
....................
............
「と、いうお話でございます。え?全く恐ろしい話ではない?いえいえ、この話には続きがあります。」
悪魔は笑い出す
「あの後私は何処か遠くの、見知らぬお客様にそのボタンを売ったのです。」
今日も彼は店を営む
あらゆる商品が並ぶ悪魔の店を営む...