これにて、劇場版スペシャルは終了です...こんな作者の自己満足に付き合ってくださり本当にありがとうございました!!
「今となっては昔の話だ...あれから私と...嘗ての腐れ縁は自分らの教会に戻った」
そう言って、店員は戸棚から紅茶の葉を一つまみ取り出す。
「私と彼は依頼主に全てが終わった事、別れのことを言った」
香ばしい香りが店内を包み込む。
「...仕方のない事だった。彼女がどんなに願おうとも、生きる時間も、世界も違う。だから突き放そうとした。だけど...私は中途半端だった。未熟だった...」
−時は遡り−
「...お前とは、此処でお別れみたいだな」
既にミロクは先に立ち去っている。残っているのはノイマッド...そして、彼に願いを言った1人の少女であった。
「私も連れてって下さい! 魔法はまだ出来ないけどきっと覚えます!!」
彼女は恩人にそう言った。それでも彼は振り向こうとはしない。
「駄目だ。お前には世話になったがその願いだけは受け付けない。俺はお前と住む世界が違うんだ」
それは彼が人ではないから。世界そのものを憎むものであるから故の吐き捨てであった。指を翳して一つの魔法陣を出現させる。
「でも...」
それでも彼女は引き下がろうとしない。それは2人と共に過ごした日々が、生まれて初めての仲間との日々が思い出としてあるからだろう。
「ここに居るのはわかっているぞ!! カーム・ジェイク・ノイマッド!!」
外からそんな声が聞こえる。それは、時間がない事を暗に示していた。
「クソ、ファミリアの連中もう来てしまったか...さっさと逃げろ! 俺と一緒に居た事がバレれば死ぬぞ!」
当時の彼に微かに残っていた情。それが彼女を引き離そうとする。
「嫌です!! 例え死ぬことになっても私は貴方と一緒に旅をしたい!!」
だけど、彼女はそれでも良いと手を掴み取ろうとした。目で見ようとはしなかったが、何をしようとしてたかわかって居た彼はもう一度口を開く。
「......わかった。それじゃあ、約束だ。俺はひとまず此処から逃げる。そして何年かしたらもう一度此処を訪れる。その時までに俺を驚かせる様な凄い魔法使いになれば」
それは約束だった。その言葉を聞き頷き返事をする少女。
「はい! 何年でも!! 何十年でも待ちます!!」
それを見て、背中の向こうで彼は微かに悲しみを浮かべる。
「いい返事だ。それじゃあ、またな」
その言葉を最後に、カーム・ジェイク・ノイマッドという人物はこの世界を去った。後に残ったのは少女と、2人が交わした約束だけだった...
−そして時は現代に戻る−
「...果たせなかった。何時もそうだ...私は自分で約束をしておいて守る事が出来ない...あの時もそうだった」
店員が脳裏に浮かべるは遠い昔に出会った人間...最初で最後の契約者。悪魔が唯一愛した者。
「...だから、あの日の約束を破ってから...神を殺す事は出来ても人を守る事が出来ないと悟った私は捨てた」
紅茶には、店員の笑顔が映っていた。
「...それが原因で彼とも別れてしまった」
悲しい筈なのに、店員は笑い出す
「...だが、それで良い。最初から私は1人だ...情けをかけたところで、親切にしたところで、怒ったところで...本当の笑顔を見せたところで無駄になる」
笑い出す...笑い出す...
「...................今や私は道化師。心を失った、笑う事しか出来ない道化師...」
店員は紅茶を飲み干す
「...さて、仕事に戻りましょう。今宵はどんな願いが叶うのか?」
悪魔は笑い出す
「楽しみで仕方ありませんねぇ」
出演
ノイマッド(若かりし頃の店員)
ミロク(若かりし頃のアンノウン)
少女(若かりし頃の◾️◾️◾️ズ)
ゲスト出演
ザイ
エヌ/ソル(アンケート結果)
ネモ(アンケート結果)
シアン(アンケート結果)
ED〜孤独月〜
最後に...折角のUA10000突破記念+読者の皆様からのアンケートで書いた話がこんな内容になってしまい本当申し訳ありませんでした!!