悪魔の店   作:執筆使い

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毎度おなじみリクエストスペシャル。本日は元ネタ的にも店員と共通点が多い、D.Gray-manのとあるキャラとのコラボです。
時系列的には店員がまだ店を開く前(助手に出会ってない頃)の話です。なので結構ややこしいですが、彼は店員と名乗っていません。
また、リクエストした方には悪いですが...その...ご期待に添えない内容になったというか...一応リクエスト通りにはなっています。ただちょっとコラボ作品としては納得いかねーよと思うかもしれません。
それでもよろしいという方は、どうかお楽しみください。







リクエストスペシャル『伯爵』

 

 

 

 

 

 

 

昔々、そこには幸せな国がありました。

誰もが助け合えるほどの優しさを持ち、誰もが命を懸けてでも守る者がいる。

皆幸せで、皆愛に溢れていた国がありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜SP67 悪魔の店の前の話〜

 

 

「すいません。こんな雪の日に上がらせてもらうどころか、こんな温かいものを...感謝してもしきれません!」

 

 

「いえいえ、こんな雪の日に配達なんて感心な人だなと思ってね...そう思った瞬間に身体が勝手に動いたのさ。昔からそういう性分なのだよ」

 

 

帽子に、長袖長ズボン、黒いマントの様な羽織を更に上に来ている配達員は家の主人が出してくれた温かい飲み物を快く受け取った。親切な人だという事もあったのかわからないが、初対面にも関わらず配達員は目の前の男に疑いのないような眼差しを向けていた。

 

 

「しかしこんな時期に、こんな場所に、一体何を配達するんだい?」

 

 

そう言って、主人が見つめるは配達員の足元にある黒いトランク。恐らくこの中に配達物が入っているのだろう。チラと彼も足元に目線を向けたのち、頭をかきながら笑顔を見せて口を開く。

 

 

「すいません。それは流石に言えません」

 

 

確かに主人には感謝もしているし、気軽に話せる程好感を持っているがそれとこれとは話が別。中に入っているものを教えるという事は企業秘密を教えることと同義であるからだ。だから、主人はそれ以上言及はしなかった。

 

 

「では、そろそろ僕はおいとまさせて...いた...だき...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

否、訂正しよう。主人にとって、中身など興味の範疇ではない。先程の質問はただ単に場を違和感なく持たせるための何の意味も利益もない会話。眠りについてしまった配達員の頭に右腕を翳す主人。

 

 

「余所者は、この街から消えて下さいね」

 

 

()()()()()()()()と共にその腕が大砲へと変わる。

轟音。家の床ごと頭を撃ち抜く主人だったもの。彼女は配達員だったものには目もくれず後処理をしようとした所で、ふと、トランクに興味を持った。黒く、それなりの大きさのトランク。そもそも幸せだったこの街にどうして配達員がやって来たのだろうか? 中を確認しようと手を伸ばし────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ひとりでに開いた口から現れた右腕に、彼女は首根っこを掴まれた。

 

 

「そういえば自己紹介がまだでした」

 

 

「ガァッッ!?」

 

 

現れたのは一人の男。常に笑みを浮かべている筈なのに、何処か異物感を思わせる出で立ち。未だ店員ではなく、だが商売人である。悪魔であるが、未だ店を営んでいない。

 

 

「私の名前はサン・ジェルマン。本日はあなた方を救う為に参りました」

 

 

「殺ッ!! 殺、殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺」

 

 

首根っこを掴まれた彼女...否、最早兵器と成り果てたAKUMAは身体を無数の大砲に変化させて、悲痛な叫び声と共に無数の弾丸を放つ。一発一発がヒトを容易く殺せる弾丸を悲痛な叫び声と共に放つ。

 

 

「殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺──殺、シテ」

 

 

悲痛な叫び声と共に、AKUMAと成り果てた妻は撃ち続けた。死なないでくれ。殺したくない。主人を殺してしまった。嫌だ。もうこれ以上悪魔になりたくない。助けて、助けて。彼女は涙を流していた。

 

 

「心配しなくても、これ以上貴方が悲しむ事はありませんよ。何故かって?」

 

 

 

 

「アアアアアアアアアアアア!! ァァァァァァァァァァァァ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が来た」

 

 

握り拳による一撃が兵器の胴体に突き刺さる。鳴り響く轟音。その強烈すぎる一撃は兵器の全身を粉々にするには充分だった。

旅人は彼女を救った。無残な死体とボロボロに崩れた床に屋根。何処に救いがあるとのたまう人もいるかも知れないが、確かに彼女は救われたのだった。その証拠に安らかな笑顔だったのだ。まるで幸せな夢を見るかの様に。

 

 

 

 

 

トランクと、ここに来る前からから死体だったものが羽織ってた黒いマントを自らに身に付け直し、空いた屋根から飛び出す伯爵。まだ依頼は終わっていない。見渡すは上空。

 

 

「ひぃ、ふぅ、みぃ...ははっ、地獄を味あわせてでも愛する者を蘇らせたいといったところですか。つくづく人間というのは誰もが同じ考えを持つ程のお馬鹿さんですねぇ」

 

 

 

昔々、そこには幸せな国がありました。

誰もが助け合えるほどの優しさを持ち、誰もが命を懸けてでも守る者がいる。

皆幸せで、皆愛に溢れていた国がありました。

ある日、疫病によって国の半数が死にました。

多くの人が、悲しみました。

その国を訪ねた伯爵は言います。

生き返らせてあげようと。

そして多くの人々は──

 

 

 

..................................

 

....................

 

............

 

 

「ふぅ...いるんでしょう? 千年公」

 

 

旅人の呟きと共に一人の男が現れる。ずんぐりむっくりした体型に仕立てのいいスーツとシルクハット。極め付けにコウモリ傘を開いており怪しさ満点の風貌をしている。

 

 

「やはりバレちゃいますか、お久しぶりですねぇ♡ 聖なる君子(詐欺師)さん」

 

 

「あれだけの雰囲気を出せば嫌でもわかりますよ」

 

 

旅人の呟きもどこ吹く風。彼はすぐさま次の言葉を伯爵に投げかけた。

 

 

「それにしても、まさか100以上を無傷で全部倒すとは思いませんでしたよ」

 

 

「はっ、私に傷を付けたいのでしたら、趣味の悪いTシャツをいつまでも来ているような駄女神を1000以上連れて来る事ですよ。可能ならばですが」

 

 

そう言って、その場を去ろうとする旅人。しかし男の次の言葉で立ち止まる。

 

 

「どうです、使ってみる気はありませんか? 何時までもお一人だと寂しいでしょうしね♡」

 

 

「...前にも言いましたが、()()()()()()()()()()()()()。片方を犠牲にした所で喜ぶ訳がない。私はね、そういう馬鹿な思考回路の持ち主を見ていると...反吐が出るんですよ」

 

 

しかし少し止まった後再び歩き出した旅人はやがて、男の人外じみた目でも見えない程に遠く

 

 

遠く

 

 

遠く

 

 

 

 

 

 

嘗て幸せだった国から遠く離れたのだった...

 

 

 

 

 

 

 

 






折角のコラボキャラが最後にちょちょいと出ただけで終わりな感じになってしまい本当に申し訳ありません!!


悪魔七つ道具
【飲んだくれのマント(原典)】
悪魔が所有する七つの最強の道具のうちの一つ。効果としては、それを装着した者を店員の意のままに操れる。誰であろうと、どんな存在だろうと。因みに生きていようが死んでいようが関係ない。やりようによっては倫理からかなりかけ離れた使い方も出来るチート道具であるが、店員は専ら忠告を破った客の死体を用いて囮捜査に使う程度である。

...今イヤラシイ使い方やエグい使い方を想像したやつ正直に言いなさい。今なら店員による魂引きずりの刑で許してやる。




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