戦国時代に傭兵1人   作:長靴伯爵

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ものすごい亀投稿

原作も完結してしまった。
寝かせに寝かせ、まだ読んでいる途中ですが・・・





と、思っていたら完結してなかったでござる
関ヶ原編が完結ってそんなー(´・ω・`)
あ、読み終わりました


第十二話

 

 

 

 

 紅い朝日が森全体を照らし出し、古城も赤く染まっていた。その姿は古さを感じさせぬ威風堂々とした雰囲気を醸し出していた。

 

「この城も捨てたもんじゃねぇな」

 

「ここで戦えりゃ織田になんて負けねぇよ」

 

「次の荷運びは何時だっけ?」

 

「四半刻後だってよ。街道封鎖してからいつもだよなぁ」

 

 そんな古城で数人の足軽達が駄弁っていた。殆どの兵は寝静まっているのだが、彼等は今しがた休憩に入ったばかりである。それぞれ手に竹の水筒やおにぎりを携えて随分気が抜けた様子だった。

 

「だがな~。この石垣はもう少しなんとかならなかったのかね?」

 

「急いで整備したから仕方ねぇだろ」

 

「そこはほらよ。織田から銭を奪い取ってそれで補修すりゃあ」

 

「そりゃいい考えだ!」

 

 ゲラゲラと下品な笑い声を上げる彼等はすでに織田を倒したつもりでいるようだ。確かに織田家は国人衆達の街道封鎖で窮地に立たされてはいるが・・・織田家が負けるのはありえないだろう。

なぜなら・・・。

 

 カタンッという物音が足軽達の近くで鳴り、彼らの視線がそちらの方に集中した。だがそこには何の影も形もなく、すぐに足軽達の関心は薄れてしまい取り留めの無い話に戻ってしまった。

 織田家を救う一手に城に潜入されてしまったとは夢にも思わずに・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初手は問題無し・・・」

 

 石垣内に積まれた物資の陰に隠れ、仙波は小さく溜息を吐いた。

 

 古びた石垣には至る所に亀裂や歪があり、よじ登るに大した苦労はいらなかった。太陽が昇り始めた頃合を見計らって森から走り出し、石垣に取り付く。走る勢いそのままに石垣の上まで登りきった所で、そっと顔を出し石垣の下を窺った。

 油断しきった足軽達を確認した所で、すぐ近くに落ちていた小石を拾って近くの物資の陰に投げ込む。彼らの注意がそちらに向いている間に音も無く着地し、すぐ傍の物資の山に飛び込んで・・・今に至る。

 

「結構警備が甘いな。すでに織田家が動いているはずだが・・・まだ気付いていないのか?」

 

 潜入用に装備の配置を変えた今の仙波は、AM69を刀のように腰にかけて動き易くしている。たが、長秀から渡された脇差だけは腰に差したままで変わってはいない。お世辞にも潜入に向いているとは言えない脇差は森の中で待たせている馬の所に置いておくべきなのだが、どうもその気はおきなかったのだ。

 

「・・・さて、さっさと済ませるか」

 

 腰の脇差を一撫でし、仙波は物資の陰から飛び出した。

 スニーキングの技術はスネークや先達のMSF隊員から徹底的に叩き込まれている。物を投げて音を立てることによる視線誘導や周りの物と気配の波長を合わせて気配をけすことなど、もはや容易いことだ。まして、周りには沢山の物資が積まれているのだ。本丸に接近することなど造作も無かった。

 

 ここから少しだけ難しくなる。

 

本丸から程近い天幕に影から覗くと、本丸には入り口で番をする足軽が2人いた。彼らをやり過ごすのは簡単だが、そうしてしまえば後の仕事がしにくくなる。

やるべきは、静かに、確実に、そして速く。

 

 仙波から見て一人挟んだ奥の足軽を越えた先に石を投げ込み、その直後音を立てぬまま手前の足軽に接近した。そして、石が地面に落ちて音を立て足軽達の注意がそちらに向いた瞬間・・・。

 

「すまん・・・な!!」

 

「ん?おま・・・」

 

 足軽が仙波を認識した時には、仙波の拳が彼の体に突き刺さっていた。そのまま目にも留まらぬ速さで次々と拳が突き刺さり、徐々に体を押し出していく。やっと奥の方の足軽が異変に気付いた時、仙波は足軽を掴み背負い投げの要領で投げ飛ばした。奥の足軽の目に入ったのは投げ飛ばされてくる隣にいた足軽の姿。

 

「・・・な!?」

 

 そうして足軽2人は仲良く気絶する羽目になった。だが、このまま放置している訳にもいかない。仙波は2人を担ぐとそれぞれ本丸の壁に寄り掛からせ、刀を使って体勢を固定させた。ついでに槍を持たせればパッと見たら分からない・・・はずである。

これで、準備は十分に整った。

 

「さてと、次は・・・お?」

 

 木偶の坊とかした足軽達の横を通り、本丸への侵入を果たした仙波。本丸の大体の構図は長秀から提供された情報から把握している。そして、今しがた見つけたこれ(・・)を使えば完璧に潜入できるだろう。

 敵が異変に気付く前にここの棟梁を確保するべく、仙波は静かに本丸の潜入を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 本丸の中にも当然見回りの兵がいる。

 その武士も腰の刀に手をかけつつ巡回をしていた。味方の報告で織田軍が動き出してはいるが、ここから距離がある地点に布陣しており攻撃する気配はない。だが、警戒を怠らないように指示が出ていた。

 ここまで敵がくることはありえないだろうが、形だけでもしておかなければならない。

 

「さて、もう2,3周すれば交替か・・・おっと」

 

 少しだけ気が抜けていたのか、廊下の曲がり角の所で大きな竹籠に足をぶつけてしまった。何か重いものでも入っているのか竹籠の方はビクともしなかった。

 

「誰かに運ばせなければな・・・」

 

 後で通りかかった女中にでも言っておくか・・・と思いつつも、武士は竹籠については意識から外れてしまっていた。そのせいで、彼の後ろで竹籠が忽然と消えていたのも全く気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボスがダンボールを使うのも分かるな・・・」

 

 既に5人目の警備をやり過ごした仙波は、そっと竹籠から抜け出し城主がいるであろう最上階まで到達した。障子で仕切られた部屋の中からは数人の話し声とカサカサという紙がこすれる音が聞こえていた。どうやらここの城主を含めた高い位にいる武将等が集まって会議しているようだ。気配を探った限りでは・・・3人はいる。

 仙波は必要になる時間をざっと計算し、手袋で隠された腕時計を見て・・・AM69の予備弾倉に手を伸ばした。隠密性、確実性、迅速性を考えればこうするのが一番だった。

 障子を開けてからは一瞬の勝負。

極力静かに開け、部屋の中へ一歩踏み込む。3人が視線をこちらに向けた時には、仙波は予備弾倉をアンダースローで次々と投げ込んだ。

 

「貴様!何や・・・」

 

 何事かと武将たちが声を上げるが、その瞬間唐突に彼らの声が途切れた。仙波が投げ込んだ予備弾倉が見事3人の顔面にクリーンヒットして意識を刈り取ったのだ。

 あまりに気持ちの良い命中振りは聞こえるはずのない快音を幻聴してしまう程だった。

 

 昏倒した3人の顔を検分し、長秀から教わった目標の城主を確認する。

 

 後は邪魔な2人を何処かに隠して、目標をここらか連れ出すだけだ。

周りには数百の敵兵。捕虜を担いでの脱出。こんな任務を毎回やってのけるボスの凄さが改めて分かるものだ。

 

「確か・・・四半刻後だったな」

 

 目の前には竹籠と捕虜。やることは1つだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・おい!見張りが2人して何寝ているんだ!!」

 

「・・・へ?」

 

 城の入り口にもたれて寝ていた2人の見張りは、巡回中だった別の足軽に起こされた。見張りは自分が何をしていたかを悟り、慌てて立ち上がって周りを見渡した。幸い、侍大将達には見つかっていないようだった。見つかっていたらただじゃすまない。

 

「あぶねぇ・・・。助かったぜ」

 

「ったく。しっかりしろよ・・・。そこの籠も運ぶんじゃないのか?」

 

「え?ああ。そうみたいだな」

 

 見張りが慌てて振り返ると、入り口のすぐ脇に大きな竹籠が鎮座していた。縄で厳重に蓋を閉じられている。蓋の上には次の荷運びに出すようにと書かれており、すぐにでも運んだ方が良さそうだ。

 

「じゃあ、俺がここを代わっとくから持っていけよ」

 

「すまねえな。おい、手伝ってくれ」

 

「おう。って結構重いな。この籠」

 

 足軽に入り口の見張りを任せて、2人は荷物の集積場所に竹籠を運んでいった。重い籠を運ぶ2人の影を何かが通り過ぎたが、運ぶことに集中している2人勿論視界の死角を突かれた足軽も気付くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「荷車を引け!移動を開始する!」

 

 明け方の足軽達の会話から四半刻後。

 彼らの会話通り、街道封鎖地点への荷運びが開始された。この部隊が運ぶ物資は主に食料と矢玉といった消耗品である。封鎖を突破しようとするであろう織田軍への迎撃には絶え間ない補給が不可欠だ。

 食料や矢玉を満載にした荷車を馬で引き、足軽達が荷箱を担いで歩く。半刻程歩けば休憩というペースではあるが輸送は滞りなく進んでいった。

 

 

 3度目の休憩時。

 道の脇にある開けた場所で周辺に警戒の歩哨を配置し、足軽達は思い思いの休憩を取っていた。戦場への道すがらではあるため緊張感はあるようだが、中には雑談に興じる者達もいた。

 

「ったくよ~。やっぱり長いよな~」

 

「文句言うな。これで銭が貰えるんだ」

 

「聞いたか?なんか織田家が兵を動かそうとしているらしいぞ」

 

「本当かよ。戦になるならどうしようかね・・・」

 

 地面に座って今しがた背負っていた荷物に背を預けて会話する足軽達だったが、そこに突如馬の足音と共に鎧武者が乱入してきた。背中に掲げる旗が味方だと示しているが、何だ何だと歩哨たちは集まり、休憩していた足軽達もざわつく。鎧武者は荷運びを指揮する侍大将を見つけると、馬上から侍大将によく通る声で言い放った。

 

「織田勢が街道ではなく、直接城へ兵を向けた!すぐに城へ戻られよ!」

 

 この一言で、足軽達の休憩は取り消されてしまった。腰を下ろしていた者達は慌てて立ち上がって地面に置いていた荷物を持ち上げる。ここでノロノロしていれば織田が攻撃してくるかもしれないのだ。

 荷物に背を預けて座り雑談に興じていた者達も周りと同じように自分達の荷物に手をかけた。

 

「な、なぁ。あの城に篭れば織田なんて目でも無いよな?」

 

「そんなの俺が知るわけなぇだろ」

 

「城攻めなんて簡単に出来るもんじゃねぇよ。城主がしっかりしてりゃあ、斉藤家の援軍だってくるさ」

 

「だ、だよな・・・。って、ありゃ?」

 

 不安げに周りに話しかけていた足軽が自分の荷物を持った時、唐突に驚きの声を洩らした。周りの足軽達は自分達の荷物を準備し終えており、驚きの声を洩らした足軽を不審げな目で見た。

 

「どうした?」

 

「い、いや。さっきよりも荷物が随分軽くなったような・・・?」

 

 足軽が背負った竹籠を揺らして不思議がっていると、後ろに居た別の足軽が何かに気付いた。

 

「おい。その籠。蓋が開いているぞ」

 

「なんだって!?」

 

 慌てて荷物を地面に下ろすと、しっかり蓋を固定していた縄が切られていた。蓋を開けてみれば中身は勿論もぬけの殻である。

 

「何時の間に・・・。休憩するまではあったよな!?なぁ!?」

 

「あ、ああ・・・。けどよ・・・。中身って何だったんだ?」

 

「それは・・・。何だったんだ?」

 

 呆然とする足軽達。そんな彼らが森の中に消える人影に気付くことはなかった。

 

 

 

 

 

 森の中を気絶した城主を肩に担いで進む仙波は、荷運びをする敵部隊から十分距離を取った後でようやく溜息を吐いて緊張を僅かに解いた。

 

 潜入自体は難しいものではなかった。城壁の突破、城内での侵入、棟梁を含めた3人を無力化まで全くと言っていいほど問題がなかった。

 城主の輸送が懸念だった。

 人を抱えたままでは城壁を素早く乗り越えるという手段は難しい。そもそも、人を担いで動けばどうしようもなく目立ってしまい、潜入する所ではない。ボスならば可能だろうが、仙波の潜入技量はその域までは達していなかった。

 だが、1日分かけた情報収集が功を奏し、敵城主の輸送の糸口を見つけることが出来た。

 それが、情報収集中に発見した街道封鎖への補給部隊である。街道の封鎖線に向かうということは即ち織田領に近づくことと同義である。ならばと、敵城主の運び出しは敵自身にやってもらうことにしたのだ。

 城主以外は物置らしき部屋に押し込み、城最上階から入り口まではなんとか城主を抱えて突破した。気絶したままの見張りの傍に箱詰めした棟梁を置いて近くに潜伏。ちゃんと見張りが荷箱を輸送部隊の所へ持っていくのか内心ハラハラしていたのだが、しっかりと運び始めたことを確認して一足先に城外へ脱出。

以降は、輸送部隊と距離を取りつつ棟梁を回収タイミングを計っていた。

 

 早馬が来たのは全くの予想外だったが結果的には上手くいった。

当初の予定では適当なタイミングでスモークグレネードを投げ、混乱している間に運び出すはずだった。だが、早馬が上手く足軽達の注意を惹いてくれたので、スモークグレネードを節約して城主を回収することができた。

 あの早馬の侍には感謝である。

 

「回収も完了。織田の姫様も動き始めたようだし、さっさとこいつを運ぶか」

 

 いきなり目を覚まされても困るので、馬を停めてある拠点まで戻ったら城主に猿轡と追加の縄を用意しておこうと考える仙波だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かくして、仙波の初仕事は無事達成された。

 馬に完全に拘束した棟梁を乗せて織田家の陣に近づいた時、どデカイ朱槍を持って頭に虎の皮を被った少女が出てきた時は流石に驚いたが、陣中の天幕の中で無事棟梁を引き渡した。功績を認められ、信奈から正式に長秀に家臣として仕えることも許された。

 

 敵に全く気取られることもない、ノーキルノーアラート。

この世界での初任務は万々歳の結果である。

 

「さすがに少し疲れたか・・・」

 

 織田軍本陣の天幕から少し離れた貯水場。

 仙波は信奈から休息を取るように言われ、天幕から追い出されてしまった。すぐにでも古城の攻略に手を着けるらしい。

 天幕には初対面となる姫武将や自分と同じ未来人だという相良良晴らしき少年もいたので話してみたかったのだが、いきなり自分の上司の上司に逆らうわけにはいかず大人しくここまで来たのだった。

 

 水を飲み、顔を洗うとようやく人心地がつけるものだ。

 大きな装備を近くにまとめて置き、身軽になった仙波は水瓶に寄り掛かりポケットを弄った。皺くちゃになった煙草の箱を取り出し、残り少ない貴重な1本を抜き取った。

 

「こんな日ぐらいいいだろう」

 

 仙波はそう独りごちるとライターで火をつけ、ゆっくりと紫煙を吸い込んだ。任務明けの体に久しぶりの煙草が染みわたるようで、惜しむように吐き出す。MSFでも任務開けにはマザーベースでこうやって煙草を吸っていたものだ、と携帯灰皿に灰を落とした。

 その時、地面に人影が写ったのに気付いた。

 

「ここにいらしたのですね」

 

 視線を上げると、穏やかな笑顔を向ける長秀の姿が。

新しいボスの登場に仙波は吸いかけの煙草を灰皿にしまおうとするが、それは長秀に止められた。

 

「気を遣わなくていいですよ。私は仙波殿を従える立場になりましたが、それはあくまで建前で、私には毛頭そんなつもりはありません。90点です」

 

「丹羽がそれでいいなら構わないが・・・」

 

「それに・・・その煙管も残り少ないのでしょう?」

 

「・・・お心遣い感謝する」

 

 丹羽の言葉に甘えて、しかし急いで煙草を吸いきると改めて携帯灰皿にしまい長秀と向き合った。

 

「待たせたな」

 

「お気になさらず。それよりも、今回の依頼達成、ご苦労様でした。姫様も大変満足しています。100点です」

 

 そう言う長秀の表情は本当に嬉しそうにほころんでいる。仙波としても文句なしの結果であったため、その言葉を素直に受け取ることが出来た。長秀の笑顔に釣られるように、仙波も頬を緩める。

 

「お互いに満足できる結果だ。織田の姫様にも俺にも」

 

「そうですね。ですが、それは60点です」

 

「そうなのか?」

 

 あまり高くない点数を付けられ、疑問符を浮かべる仙波。長秀は微笑みながら心なしか仙波との距離を縮めた。仙波の顔を見上げて、恥ずかしげに小さく首を傾げて言う。

 

「姫様と仙波殿、そして私も満足が出来る結果でした。仙波殿を召抱えることが出来て・・・これであなたに救われた恩を少しでも返すことができます。120点です」

 

 そんなことを言われて嬉しくない男がいるだろうか?

 仙波は温かい感情が湧き上がるのを感じながら、腰の脇差を鞘ごと手に取って胸の前に持っていった。

初任務の中でこの脇差は確かに自分の気持ちを支えてくれたのだ。

 

「この脇差があったお陰で任務に集中できた。ありがとう」

 

「はい・・・!」

 

 仙波の感謝に、長秀はより一層笑みを深めた。

 

 

 

 

 

 

 

 このまま少し話をしてもよかったのだが、長秀はすぐに信奈に同行して出陣するらしく一礼して去っていった。

 仙波もいつまでもここにいる訳にもいかず、移動しようと置いていた装備に手を伸ばした。何気無くAM69に手を伸ばし、掴んだ瞬間だった。

 

『お前は今何を感じていた?』

 

 臓腑を震わせる程の寒気と脳髄を痺れされ程の熱が体を襲ったのだ。

目が明滅に眩み、思わず片膝をついてしまう。

 

『お前の仲間は皆、死んだんだぞ』

 

 誰が話しかけているのか?

 幻聴なのか?

 

『怒りを忘れるな』

 

 地面が揺れていると思った途端、体が地面に向かってしまう。何とかこらえようと近く似合った水桶に手をかけるが、体を支えるには至らず盛大に水を零す羽目になった。水溜りになった地面にAM69を持ったまま手を突くと、丁度水面に写る自分の顔を覗き込む形になった。

 

『復讐を忘れるな!!!』

 

 血みどろの顔に額から突き出る黒く鋭い角。

 その姿はまさに鬼のようで・・・。

更なる恐怖が仙波を貫いた。

 

「ああああああ!!!」

 

 自分の感情に突き動かされるままに、持ったままのAM69を振り上げて銃床を水面に叩きつけた。荒い呼吸のまま、もう一度水面を見ると、そこには脂汗を垂らす自分の顔しかなかった。

 

「・・・クソ。なんだったんだ・・・」

 

 体の調子も元に戻り、聞こえていた声も止んでいた。仙波は訳が分からずとも粘りつくような嫌悪感に顔を顰め、改めて装備を取って貯水場から離れた。

 長秀と共にいて感じていた感情など消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 反織田家の国人衆が篭る古城の攻略は瞬く間に進み、僅か半日で達成された。これにより街道の封鎖も解かれ、織田家は斉藤家攻略に再び傾注することのできる態勢になった。

 

 そして・・・。

 この日を境に、丹羽長秀の家臣となった仙波利孝は本格的にこの世界の戦いに身を投じることになるのだった。

 




で、メタルギアの新作は・・・・あ(察し)

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