闊歩するは天使   作:四ヶ谷波浪

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7話 豪胆不敵

 見習い天使の優等生アーミアスだぜ! 俺の自慢は遅刻や違反をしたことがないってことだ! ま、翼切り刻み事件でかなり上級天使の頭かったい奴らに目ェ付けられたからな、大人しくすること早百数十年、だぜ!

 

 まー、それがなくても大人しくしてたけどな。天使界屈指のイケメンと美女に逆らう勇気はちょっとないわー。マジモンの天使だぜ、上級天使。まだ見習い天使はなりきり天使って感じするもんな。

 

 見た目もだがマジで子供。全然オーラが違う。その点俺の師匠は親しみやすいハゲだからな、配慮に尊敬するわ。あの翼、すっげぇモサモサしてるけどあれが力の象徴なんだぜ! つまり今の俺は天使としてはカスに等しい! だからなんだ! リッカたんがいる方が大事に決まってる。

 

 ってことで優等生でちょっと真面目な俺は熟睡してもばっちりぱっちり昼前に起きたぜ!

 

 たとえニートだろうと、リッカたん大好きな俺から見たら敵なニー()でもウォルロ村の人間、俺の大事な可愛い可愛い守護対象の人間には違いないからな。まぁ鉄拳……もとい天罰は積極的に食らわせたいところだが。俺がやったら天罰でいいよな、な! ハゲ師匠もいねーし俺の勝手!

 

 てか取りに行きたい物があるから師匠早く迎えに来てくれねぇ? パッと行ってパッとウォルロに帰りたいが。流石にパラシュートなし落下はもう勘弁だが。

 

「……リッカ」

「あら、もうアーミアス大丈夫なの?」

「えぇ。ちょっと行ってきますね」

「気をつけてね、また倒れたり、怪我しないでよ?」

「大丈夫ですよ」

 

 あーーーーーー、ああああああっ! リッカたんとお喋りいいいいい!!!! 

 

 思わず荒ぶるぜ、最高。やばい。それしかねぇ。でもおくびにも出さずに喋り方とか俺クールじゃね? 感情をあまり見せずに、でも安心させるように微笑むかっこよくない? 駄目か?

 

 ……駄目だな。そういうのは匂い立つようなイケメンじゃなきゃダメなんだよなー。シショーッ! 顔面だけ交換してくれッ! この際師匠の男前があればホコリぐらいなんとかなるぜ!

 

 あーー、こんな俺にもリッカたん優しい。すげぇ可愛い。可愛いけど普通に接しててくれてる。ありがたいが普通だ。普通のリッカたんとか超可愛いけど普通だ。俺を意識してくれそうにない。やっぱ顔がダメだと何をやってもダサイからな、クソッタレ。

 

 リッカたんって俺より純真無垢な完璧天使だから、オムイ様が蒸発レベルの天使だから! うっは笑顔が目にしみるううううううっ! 眩しすぎてリッカたんの前でにやけたけどリッカたんは楽しそうね、なんて勘違いしてるううう!!!! リッカたんまじ……純粋……可愛い……。ニードなんてほっといてここにいたい……。

 

 だがしかし、誠実な俺は来いと言われたらホイホイ行ってやるぐらいにはニートの更生に燃えている。

 

 ついでにあいつの腐った根性叩き直してリッカたんが楽できるように馬車馬のように働かせてぇ……。俺も働くけどな!今までと違って堂々と手伝えるからそれとなくやるような微妙な手伝いじゃねぇ。最高。やっぱ光輪なんて無用の長物だったんだな。ケッ、早めに壊せれば良かったのによ。

 

 ま、そんなこたァどうでもいい。

 

 村をてくてく歩いて村長の家に向かってるだけでもたくさんの人間たちが話しかけてくれる。さっきは大丈夫だったかって聞いてくれる。クゥーッ! 天使より天使かよ、いい人ばっかりか! ほんと俺ウォルロ村大好きだわ。

 

 天使どもは俺が何してても、疲労困憊ヘロヘロでも無関心だぜ? 野郎はそこそこ絡んでくるけどな! ……主に師匠。べ、別にぼっちちゃうわ! 天使どもより俺は人間と居たかった、それだけだ!

 

 俺の話せる知り合いなんて師匠を抜いたら……上級天使の何人かと……無邪気な子どもの天使が何人か。うん、友だちはいないな! だからなんだ!

 

 ない愛想振り絞って対応しているといつも頭を撫でてから帰ることにしている子供がいた。……なんか期待の眼差しだな。俺天使だけど翼がないと飛べねぇし、せいぜい幽霊や人ならざる存在……妖精とかしか見えねぇよ? いいのか? しかもここに来てから見たのは幽霊ひとりになんかピンクの光だけだぞ?

 

 つうことで出来ることといえば頭を撫でてやる事だけだ。ほら大きくなれよ、健康に育てよ、本物の天使からの加護だぞー。……効くかわからんけどな。多分意味は無い。

 

「やっぱり、アーミアス様はアーミアス様だ!」

「……?」

 

 おう。ごめんな、おにーちゃんそれ理解出来ないんだわ。で、誰が誰だって?

 

「すみませんアーミアス様。この子はアーミアス様に頭を撫でてもらって本物か確かめるって言って聞かなくて……疑うなんて本当に失礼なことを」

「いえ、怪しいのは俺の方ですからね。……ぼうや、俺のことを覚えていてくれたんですか?」

 

 子供特有の大きくてきらきらした瞳が俺に向いてるのって新鮮だぜ。だが不純な俺は溶けそう。てか覚えてたのかよ。折角風にまぎれてぽんぽんって感じにやってたのに。しょうがないなー、高い高いしてやろうか?って、今はダメだ。背中の傷が開いちまう。ごめんなー。

 

 なんかリッカたんの家からついてくる犬っころを従えて村長宅に到着。

 

 おっ、いたいたニート。今日もリーゼントだっせェな! よう元気? 風邪ひいてない? 怪我ないか? ニートにも神のご加護がありますように! 

 

「来たのか」

 

 来たのかっておま。呼んだのはニートだろうが! 何意外そうにしてからにやけてんだ……?怖っ。

 

「えぇ、呼んだでしょう?」

 

 ポーカーフェイスのレベルが高い俺でも声がやれやれって感じになるのは止められねぇな。ニードのメンタルは強靭な合金らしいからその程度でビビらないからこそ出来ることだ。俺は人間に不快感を与えたくないからな! ただしニートは天罰(しばく)

 

「とりあえずここじゃ駄目だ。家に入って中で大人が話し合いをしてるんだが……それを盗み聞きするのを手伝って欲しいんだ」

「盗み聞き、ですか?」

 

 言わないって事は聞かせらんねぇ話ってことだろ? ニートのくせに何イキってんだこいつ。……そういうの、嫌いじゃないけどな。いいぜ。聞いた結果やる事はロクでもないことではなさそうだしよ。

 

「あぁ。じゃ、入るぞ」

 

 俺が止めねぇって分かったからか最高に悪そうな顔して……おいニート。悪いことじゃなさそうだから加担してるだけだからな? 調子に乗ったら分かってるだろうな?

 

 玄関先で息を殺して中で話してる大人の話を盗み聞きする。ふむふむ……あー、あの道土砂崩れしてんのか。翼があったら余裕だがそういうわけにはいかんよな。だからリッカたんの宿屋にお客がいなかったんだな。人が来れねぇならそりゃな。リッカたんの宿屋世界一だもんな。

 

 ……何ニードお前こっち見てんだ? あ? なんとか出来ねぇか見に行くだと? 自然災害には人間も天使も勝てねぇよ、大量に連れていかなきゃな。時間が解決するぞ? セントシュタインが威信をかけてやってくれっだろ?

 

 ハァーーッ! 聞いてねぇな! 聞けよ!

 

 こいつ俺の話聞く気がねぇ。仕方ねぇな……ホント仕方ないやつだ。俺がついていってやるよ。まだあまり動き回れねぇがニード一人で村の外の魔物と戦うとなりゃ俺が休まらねぇ。あの地震の後凶暴化してるみたいだから最悪死ぬだろ。守護天使が黙ってねぇよ。

 

 ……。なんかそういうこともあろうかと銅の剣を装備してきてよかったぜ。さーてニード。お前から言ったからにはそれなりに腕に自信はあるんだろうな? 怪我人より弱いなら話になんねぇぞ?

 

 ま、安心しろ。俺はこれでもウォルロ村の守護天使だ。この身に代えても守ってやるから安心しろよ。まぁ怪我の保証はしないがな。そこまでお人好しじゃねぇーし、ゴーヤに腹を刺されてホイミ沙汰の俺が怪我がひどい状態でそこまで立ち回れるかっつったら無理だからな。ともかく薬草を買い込んでから行くか。

 

 ちゃーんと守ってやらねぇとな、お前も可愛い神の子だ。

 

・・・・

・・・

・・




アーミアスの顔の好みはイザヤールやケンシロウやゴルゴなどの眉毛と顔の濃い男で、そうでなければアーミアスはイケメンだとは思っていません。

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