・・・・
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ天使様ァァァァァァァァァア!!!!」
「?!」
「なんまいだぶ……なんまいだぶ……ありがたや……」
待機室から出てびっくり! 目の前で出迎えてくださったのか、こちらを見ているのは夢にまで見たリアル天使様!!!! やはり、やはり存在なさっていたのか!!!! 私たちは間違っていなかった! 間違ってない!! 麗しい、なんて麗しいんだ! 夜空の星星のような煌めく瞳に映りたい!
唇ピンクうううううううっ! 肌白い!!!! 髪の毛顔埋めてスーハー……させて! させて私に! 私に!!!!
うわぁぁあ私の邪な想いに気付かずきょとんとなさってる!! 無垢!! すごい、すごい、あんなに綺麗なのに煩悩の一つも湧いてこない、流石は天使様! 見つめていたいだけ、いつまでもおそばにいたいだけ! やましい気持ちがない! この私にやましい気持ちがないなんてさすがは! 天使様!
蹴られとうございます!
あ……申し遅れました、私、僧侶のガトゥーザと申します。幼なじみで妹のような存在を連れてどうしようもなく身勝手な家を出、というかあんな街ごと飛び出してしばらく経ちます。
代々長男を僧侶にする我が家にて例外なく僧侶にされた哀れな者でございます。幼い時から魔法使いに憧れ、幼なじみのメルティーをそれはそれは羨ましく思っておりました。
ええ、運命と言いますか……メルティーは私が申し訳なくなるほどに敬虔な者でして。魔法使いになるようにと英才教育を受けつつも神、天使にいつも祈りを捧げておりました。そうすれば夢が叶うと。
しかし、私たちは無理やりそれぞれの職業にされてしまいました。親にとってはそこそこ戦えるように育てて自慢の種にでもしようという魂胆だったのでしょうが……私たちは手を取り合って逃げてしまい、すべてをおしまいにしてやりました。そもそも、私たちのことを道具としか思っていなかったですし。
私たちはさまよい、ようやっとこのセントシュタインにたどり着き……そしてそれぞれの職業をダーマに行って変えたいと願いつつも修行を積み、ダーマへ連れて行ってくださる依頼主を探していたのです。もちろん短期依頼なら今までも受けましたが。
ええ、いやいやなったとはいえ私たちの腕はまぁまぁ評判となりましてね。才能は……悔しいですがあったのでしょう。
日々天使様を信じ、奇跡が訪れると信じてメルティーと頑張っていた甲斐があったようですね……!
あぁ天使様! そのお美しいお顔を、その慈悲あふれる眼差しを、溢れ出るオーラを! もっと私めに! 私めに!
お名前は? なんとおっしゃるのですか天使様! いえいえ、分かりますよ、天使様、ご謙遜なさらないで天使様! 私には貴方様が天使様であるとわかります! 翼の幻覚が見えますとも、翼がなくたって貴方様は天使様! 私には、わかりますとも!
はぁ……天使様……。瞬かれるまつ毛が美しい……鼻先の角度の筋の通った形、頬から首へのラインの優美さ、いかにもさらさらとした灰色の髪の毛は窓からの光に輝き、見開かれた瞳の中には星々が宿っているように複雑な光を宿していて、美しい。存在から、美しいのです、この方は。
こんなにも無礼に迫ってしまっているのに……彼は嫌な顔一つせずにいるのです。
「私、ガトゥーザと申します! どうか宜しくお願いしますね!」
「私、メルティーといいます! 天使様、馬車馬のようにこき使ってください、天使様!」
「どうして……こう……」
流石に驚いてしまわれたのか、天使様はなにやら呟かれましたが、すぐに自己紹介なさりました。
「俺はアーミアス。ただの旅芸人です。……あの、目立ちたくないので騒がないで頂けますか」
「……あ、はい」
困り果てたように目を細めてこちらを見られたらもう、もう私従うしかないじゃないですか!! なんですがあなた! 天使様ですか! 天使様!!
……そういえば天使様には性別、ありませんよね? 契約書には、あれ? 男性? 男性の天使様? こんなに中性的なのに!
「おれ、マティカ。一緒に黒騎士倒そうね!」
「あぁアーミアス様……人助けをなさるわけですね……」
「様付けもやめてください……」
「じゃあ、アーミアスさん! 私たち、沢山使ってくださいね!」
メルティーと私は交互に彼に迫れば、おされてしまったように彼は頷きました。……ちょっと無理やりだったかなとは思います。ですが、この機会は逃してはならないのです!
あぁ……あぁ。夢にまで見たお方が目の前に……。
「あの……俺は男ですし、そうありがたがるような存在でもありません。そうやってエスコートされるのはやめて欲しいんですが」
困り顔も……いい。素晴らしい。
・・・・
やばい。まじやばい。やばいなんてもんじゃねぇかも……。なんで俺身の危険感じてんだ? いやいや、やばい意味ではない。天使バレはやはり俺は別種族だということもはっきり示してくれているからそういう危険はいっさいねぇ。当たり前だ。
なにこれ?! なんなのマジで! 目の前にいるのは線の細いなよそうな男。聞いたところ僧侶らしい。雰囲気からして手練だ。手練多いなセントシュタイン。人間が沢山いるだけある。
そうじゃねぇよ。
反対側の隣にはメルティーという女の子。珍しい紫色の髪の毛をショートカットにした可愛い子だ。その子が手を合わせて一心不乱にお祈りをしている。俺を見つめ、なんか……表情がぶっ飛んでいる。
俺は……天使だからな。こういうことをされる側なもんで、されたことがないってわけじゃない。ただし、こうもはっきりとされたのは翼がもげてからはねーよ。なんでだよ。なんでバレたし。
メルティーはそりゃあもう可愛らしい笑顔で俺のことをアーミアスさんといい、兄だかなんだかしらねぇがそりゃあもう出会った中で一番やばい男とついてくる。……着いてこさせたのは俺だが。そうだ、メルティーみたいにかわいい女の子を仲間にするとこいつがついてくる。有能そうで、しかも心は清いだろうところが断れないのが、まじやべぇ。
やばい。ガトゥーザは本当にやばい。なにしろこのホコリ男をものすごい勢いで天使と看破しただけではない。凄い勢いで、ものすごい声量で叫んだ。やめて欲しかった。それだけではない。俺のリッカたんペロリズムも真っ青な勢いで近寄り、俺のことリッカたんペロリストっぷりが可愛いと思えるほどに崇拝した。
ウォルロ村はいいところだなぁ……俺帰りたくなってきた。こいつ怖い。だいたい、ご利益はないから意味は無いことなんだが……。しかし俺にはわかる。こういうタイプから信仰物を取り上げてはならない。
俺にはわかる。暴走する。リッカたん抜きとか死ぬ。そういうものだ。わかる。わかるんだが……。怖い。リッカたんも……こんな気持ちだったんだろうか……こんな気持ちなのに信仰心にあついから耐えて……うっうっリッカたん健気……ごめんねリッカたん……。これからはちょっと控えめになるぜ……。
天使ってのはいくらいかにも軟弱そうななよいやつでも天使に見えるらしい。翼がなくても。こういう一歩間違えたら狂信者なやつに見つかったら……割と怖いな。幸いなのは危害を加えるどころか段差ひとつひとつまで気を使われている、というところだろうか。
あぁ神の子よ。正直うざい。
ちらっちらっとこちらを困ったように伺うマティカ。恍惚とした顔のメルティー。どっちが癒しかってそりゃあマティカだろう。相変わらず純朴そうな顔をしている。そのままでいてくれ。
さっさと王様のところに行くということになっている今、頼みのリッカたんはもちろん宿屋にいるのだからいないし。リッカたんぺろりたいのに無理だからマティカという唯一のまとも枠に縋りたい。
気性つーか、心が悪い奴らではないのははっきりわかってるんだ。だから、引きはがせないのが辛いところだ……。あぁ師匠、弟子ここで困ってますよ!
それにしてもだな、都会といえど、というか都会だからかゴミが落ちているのを必死で拾いたいのを抑えつつ、なんとも鬱陶しいのをなんとかあしらう。
よーし……急ぎじゃなかったら、終わったら大掃除してやろう。ふふん、俺ってな、百年以上天使界の掃き掃除担当のベテランなんだぜ? 俺にかかれば広いセントシュタインも綺麗さっぱりにしてやるよ!
目標できたらちょっと心も軽くなったぜ!多分。
・・・・
アーミアス「変態枠は俺じゃねぇんだよ……」
良心枠にマティカ。暴走枠にガトゥーザ。パルプンテ枠がメルティーです。よろしくお願いします。
不快に思われたら言い訳できないんですが、ガトゥーザは人の話を聞いてないだけなので(聞いたところで実際天使に性別なんてあったもんではないのですが)こんなことになっていますが、アーミアスが言っているように天使に対して性的な何かを感じる事はありませんのでボーイズラブにはなっていません。
どの閑話が読みたいですか?
-
幼少期、天使(異変前)時代
-
旅の途中(仲間中心)
-
旅の途中(主リツ)
-
if(「素直になる呪い」系統の与太話)
-
その他(メッセージとか活動報告コメントとかください)