闊歩するは天使   作:四ヶ谷波浪

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18話 到着早速

 道中、おばけきのこやらスライムベスやら見習い悪魔なんぞが邪魔してきたが、まぁなんとかなった。やっと気づいたんだが、相当向こうの頭に血が上っていない限りは睨めば退いてくれるらしい。魔物たちと俺との実力差はそこまであると思わないが……退いてくれるならそれでいい。

 

 だからまだ日の高いうちにセントシュタインに来れたのはなかなかいい滑り出しだ。

 

 ……うーん、来てみたはいいが、天使らしき人影……なんとも妙な表現だが……はいねぇな。そもそも俺はセントシュタインの守護天使の顔は知ってるんだが、名前は知らん。その程度の付き合いしかない。像もパッと見てわかるところにはないしな。

 

 しかもその天使、交友関係の狭い俺が広いセントシュタインについて愚痴を吐いていたのを知っているレベルの……やる気のあまりない天使だ。……考えておいてなんだが期待できそうにないな。異変にビビって降りる気が失せて何年か来ることは無い、と見ていいだろう。世界樹に星のオーラを捧げる必要も無いしな……ってこの説明何回目だ。

 

 ……んん? 突然俺のリッカたんレーダーが反応して……そうか! 俺、追いついたんだな! ウォルロ村以外にいるリッカたん! 新鮮なリッカたん! どこ? どこに……いた! もじもじして緊張してルイーダさんの後ろにいるリッカたん!

 

 ウォルロ村にはない、大きな建物を見てちょっとびっくりしちゃったらしい! 可愛いな! 可愛いな! 握りしめた手が緊張してぷるぷるって……はっはっは、俺ぐらいになるとこのぐらい離れていてもリッカたんの一挙一動がバッチリわかるんだぜ!

 

 リッカたんは幸いにも俺の熱視線に気づかずにルイーダさんと一言二言喋ると中に入っていった。うぅ、追いかけたいが……流石にストーカーみたいなことを見える状態でやって引かれたら立ち直れない。ここは引くか……?

 

 うぅ、後で……後でねリッカたん……。

 

「面白そーじゃん。知らない仲じゃないんだし見てこうよ」

 

 サンディッ! ケバいとか考えててすまんっ! 

 

 ナイス背中押し! お前さんいいやつだな! 手のひらクルックルだぜ! パタパタときらきらしいピンク色の羽をはためかせてリッカたんの後を追った姿はもう、リッカたんペロリストの俺には勇者にしか見えねぇ!

 

 よーし、じんわり勇気が湧いてきた、ヘタレてる場合でもないな、リッカたんの華々しい門出にちょっと顔を出して怒られても……怒られても悔いはないぞ! 緊張リッカたんぺろぺろするために! 俺は! 行く!

 

 とはいえ見知らぬ人間がいるであろう所だからな、リッカたんでも不安かもしれないだろ! 宿屋を営んでたリッカたんはちょっとやそっとで人見知りなんてしないが! ま、まぁ俺が見に行きたいだけだし? 今更だし? 俺がリッカたんの周りでうろちょろしてるなんて普通のことだし?

 

 覚悟を決めて飛び込んだ宿屋の中ではなんかリッカたんが小娘とか言われていて、ちょっとムカっとした。だからみみっちい仕返しに心の中でリッカたんが小娘ならあんたはおばさんだなと呟いたが、俺の年齢を考えると愛しい人間たちは皆孫よりも歳が離れているんだからただのブーメランになってしまったぜ。

 

 ……ジジイでも見た目が若けりゃリッカたんチャンスあるか?ワンチャンあるか? ダメか? 天使としてはまだまだ若いぞ。天使のジジイことオムイ様は数千歳とも一万歳とも呼ばれるお方! それに比べて俺は二百年も生きてない! よっしゃまだまだ若いぞ!

 

 なんてリッカたんを今日も今日とてガン見していると、周りはリッカたんのすんばらしい才能と世界一の健気さ、さいっこうにペロい可愛らしさに気づいたのかひれ伏していた。俺もひれ伏したい。リッカたんを下のアングルから見たい。

 

 だが空気を読んで何もしなかった! 今度階段の下からリッカたんに話しかけるんだ……ここデカいし二階ぐらいあるだろ……そんで、リッカたんがとたとたとたっと降りてくる……リッカたんが俺に話しかける……妄想甚だしいが、それだけでたぎってきたぞリッカたん!

 

「あら? アーミアスくんじゃない」

「あ! 早速来てくれたんだね!」

 

 おっ、流石に影を薄くしてたつもりなんだがバレたか。リッカたんの笑顔はセントシュタインでもまったく変わらず俺の心を揺さぶってくるぜ……。隣にナイスバディなルイーダさんがいても俺の目線はリッカたんに釘付けってわけだ。ただし敢えて言うならナイスおっぱい。

 

 ただし天使なので何故かテンションが上がる以外になーんもないのがなぁ。三大欲求は二つしかない、というわけだ。だがナイスおっぱい。

 

 もちろんリッカたんという大正義を前にすればなんだって霞む。ぶっちゃけキラキラ光ってた世界樹よりリッカたんの笑顔の方が眩しいしな。求心される感じがやばいぞ。

 

 俺、最近リッカたんに会うために天から遣わされた気がしてきたんだが!

 

「まだ来たばっかりで準備できてないの。せっかく来てくれたんだけど……」

「あらリッカ、アーミアスくんはそういうつもりで来たんじゃないわよ。……ねぇ、ちょっと協力してくれるつもりはないかしら?」

「勿論、何だって言ってください」

 

 今、俺何も考えずに返事したぞ。リッカたんと協力しか聞いてなかった。リッカたんのお手伝い? マジで? ウォルロ村でならいくらでも手伝えたし変じゃないだろうがここで従業員でもないのになんかしてたら目立つだろうと思ってたんだが。

 

 ルイーダさん、その話もっと詳しく。

 

 だってよお! リッカたんのお手伝いをするだろ、リッカたんが喜ぶだろ、俺嬉しい。または、リッカたんが俺の好感度を上げてくれる。俺嬉しい。あとリッカたんの隣にいれる、だろ? 俺、最高の気分になるぜ!

 

「気合は十分みたいね」

「ちょっとアーミアス! 帰るって言ってたじゃない、探さなきゃいけないんでしょ? 私の手伝いをしてる場合じゃないんじゃ……」

「俺の方が、やりたくてお願いしたいぐらいなんですが……」

 

 あぁ謙虚で健気なリッカたん! 俺なんて馬車馬のようにこき使ってくれていいのによ! リッカたん優しい! だが残念だったな! 俺は離れないぞ!

 

 リッカたん! リッカたん! 俺を掃除でも呼び込みにでも何でも使ってくれ! 荷物運び? 案内? ドアマン? 何でもやるからさ! リッカたんの為になるならば! 贔屓にうるさい師匠がいない今、俺はやりたい放題したいんだからな!

 

「ほら、彼もそう言ってるじゃない。もちろん暇な時だけでいいのよ。ほらリッカ、アーミアスくんには人を惹きつける何かがあると思わない?」

「そ、それはわかりますけど……」

 

 引きつけるオーラ?

 

 ……もしかして惹き付ける、か? ないわー、ないない。ウォルロ村での話をしてるならあの村の信仰心がすごかっただけだから! 俺が天使だったからあぁだっただけ! だが! リッカたんの役に立つ可能性があるなら別になんだっていい、出来ることならやる主義だからな!

 

「あのね、あなたには呼び込みを手伝って欲しいの。旅の邪魔にならない程度で構わないし。リッカの手伝い、やってくれるでしょ?」

「えぇ、もちろんです。なんならすぐにでも」

「……気が早いのはいいけれど、流石に今日は無理よ」

 

 お、おう。そこらの人間を根こそぎ連れてこようかと思ったがダメか。何、リッカたんは最強に可愛いだけじゃなく、宿屋の腕は超一流!ホコリ男の宣伝でもじゃんじゃん人が集まるさ、明日朝イチ手伝おうか?ダメか。

 

 こういうのはすぐ行くとリッカたんが気にしてしまうから何日か開けてから行くべき、だな。そしたら気分転換ですと言っておけばリッカたんは気を遣わない!俺はハッピー!……呼び込みってリッカたんの隣にいれないだろうが些細……でもないが、まぁ、リッカたんに益があるならいくらでもやるしな!

 

 とか考えていたら準備のため追い出され、すごすご街を歩く羽目になった。

 

 ……ん、防具屋だな。何にせよ魔物と戦う羽目にはなるだろうし、いっちょ揃えるか……。

 

 リッカたんの笑顔を思い出しつつリッカたんロスで俺はテンションがすこぶる低かった。

 

・・・・

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  • 旅の途中(仲間中心)
  • 旅の途中(主リツ)
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