闊歩するは天使

天使編 １話 大胆不敵

剣士さんからの方、さっきぶりでございます。
初めての方、どうぞお手柔らかにお願い致します。
もし別サイト様でアーミアスが主人公のドラクエ9小説読んだことあるという方がいらっしゃいましたらパクリではなく本人でございます。しかし内容はまったくかすっておりませんので名前だけです。

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　知る人ぞ知る、星空の守り人。そう謳われる存在はかつて……天使と呼ばれていた。姿は人には見えず、影でこっそりと人々を助け、そして悲願を期して星空に帰っていった……それが天使。

　しかし中にはその身を人間として現世に残り、今度は人間達と力を合わせて世界の安寧をもたらした天使……人物がいるという。噂にはイザヤールという名前がよく挙がるが。

　イザヤール本人にもし問うことが出来ればそれは違うと言われることだろう。真の守り人とは……灰色の天使と呼ばれた存在だと。そして彼は今日も愛しき人を守り、世界を守り、人の身になってもなお……自分と違って……最初から最期まで心を天使であり続ける。そういう存在なのだと言われてしまう。

　そしてもしも貴方が幸運で、灰色の天使と出会うことが出来たなら。貴方は間違いなく天使の存在を疑うことがなくなるだろう。灰色の天使の麗しき瞳にその身を映すことを恥じるかもしれない。

　天使と紛う、ではなく本物の天使。黒い瞳には慈愛が、唇には愛が、その手には剣が。天使故に性別なんてわかりそうもないが、彼(・)でもかつては人を愛したらしい。それでもなお今は平等に愛を与え、時折見せる悲愴すらも美しさのスパイスであり、彼の前ではかの堕天使すら我を忘れた、とまで言われている。

　彼の手には女神の言葉を綴ったとされる古い時代の手記があり、敬虔なる下僕である彼はその言葉に従って今日も剣を振るい、かつての師と秩序を守るのであった。

　彼の名前はアーミアス。天使であると一度も公言したことのない、だが誰もが彼の正体を疑わなかったという……英雄であり、守り人である。

　そして天使の身でありながらある人を愛した……そんな存在である。

　……

「……」

　仏頂面で空を飛ぶ、俺。我ながら背中に翼、頭に光輪がなかったら到底天使に見えないだろうと思ってる。髪の毛なんてホコリみたいな色だぜ、笑っちまう。いっそ師匠みたいにハゲにするのもテかもしれないが、それをやったら今度はこのブサイクが露見するのでやってない。

　なにしろ忙しくて(脳内リッカたんぺろぺろしてて)睡眠不足だからな。隈もできれば目つきも最悪、唇もガサガサだぜ。この天使フェイスが台無し……って前から顔面蒼白って感じのブスメンだが。シショー！　眉毛太い男前分けてくれ──っ！　……天使だから性別なんて気にするなって言われそうだな。クソッタレ。

　たしかにその通りだが。なにしろナニがあろうとナニができない生物として失格、遺伝子を残すという意味ではウイルスにも劣るのが天使だからな！　人間大好きな俺は泣いた。俺も人間になりてぇ！　人間の中で人間と過ごしたい！　そしたらフラれるかもしれないがリッカたんに愛を叫べるし、何より存在を認めてもらえる！　

　人間になったらあれだろ、天使としての嗜みとやらで清らかたれと微笑みを浮かべて手を広げる宗教から抜けられるんだろやってらんねぇーッ！　人助けは崇高なもんじゃねぇよ、やりたくてやって感謝見返り求めんなっての！　ちなみに俺は星のオーラと友達だけど？　人間好きだからな、気づいたら星のオーラが頭に刺さってんだぜ、それぐらいがプロだぜ。

　あ──人間になったら結婚しよ、天使の悲願って人間になることだから、少なくとも俺は！　麗しのリッカたん……たぶん歳は百歳ぐらい下……みたいな可愛い天使っ子と結婚して子供三人の幼い頃の夢は、去年師匠が赤ん坊天使抱えてた時点で潰(つい)えたからな。

　おっ隠し子ですかって聞こうとしたら新たな天使が神より遣わされた、だと。木の下に置き去りってまじかよ！　

　神様マジ適当だなおい！　二人いたら双子とかほんと適当だな！　つまり師匠は俺の兄貴かよまじねぇーわ！　ハゲが伝染るわ！　

　つうことは俺のブサイクは誰を恨めばいいんだチクショウ！　同世代天使が皆顔逸らすレベル！　おんにゃのこはみーんな俺と話したがらないし野郎どもは色白ってだけで女扱い軟弱扱い。おいおいテメーのほうが天使らしい金髪蒼眼天パだろうがチクショ────ッ！　性別不詳野郎め。あん？　俺に言われたくない？　ハッ黙れ。モヤシは自覚してるからな！　

　あ────、憤りが止まらねぇ。もうこのアーミアス様が全力でリッカたんペロリストになって星のオーラガンガン貢がせるしかねーわ。貢がせるけど俺が一生幸せに平穏にしてもらうしかねーわ。リッカたんまじ天使に敬虔、俺がそれでも馬鹿にはされないのは星のオーラ回収率の高さだろうな、頭が下がる！　

　おっと──？　リッカたんとジジイが魔物に襲われそうだぜけしからん！　俺がスライムときゅうりごとき滅してやらァ、天罰食らえや！　リッカたんにタッチするとか絶対許さん！　

「守護天使アーミアスよ、ひとりで挑もうとするなっ！」

「ですが師匠、村人が……ッ」

　ええい邪魔するなハゲ！　リッカたんに何かあったら俺もう癒しがなくなって死んじまう！　青いおかっぱの天使ぞ？　彼女こそ天使ぞ？　天使界にはラフェットさんみたいな母性の塊みたいないいおっぱいな方はいらっしゃるけど見た目同世代の健気系女子はいねぇだろ師匠マジ見る目ねぇな！！！！　へへ……母性のお零れとして頑張ったわねと抱きしめてもらった時のふにっは忘れない。

　え、違う？　ふたりで倒せばいいって？　ヘッ、リッカたんを守るのは俺だけで十分！　……じゃないですありがとうございます師匠。実はさっきも村人守って魔物と戦ってたらきゅうりに脇腹刺されて割と血が止まらないっていう。天使なのに失血死とか笑えねぇ──ッ！　リッカたん守ったら天使界で光あれェ！　してもらおっかな。あれ肩こりに効くんだよな。

　いざゆかん！　

　あっ今の俺の表情痛みをこらえて立ち向かうっていう男前じゃね？　

　スライムとヘチマをぶっ倒したらリッカたんから星のオーラをゲット。そんな気はなかったが棚ボタだよな、これ。あ──、綺麗だ。リッカたんの清浄な心が伝わってきてもっと守らなきゃって思えるな。ふふん、俺はウォルロ村の住人はニートでも守る天使様だからな、もっとキリキリ頑張るか！　

　……って師匠？　俺ひっつかんでどこいくんですか師匠──ッ？　このハゲ触んなセクハラア────ッ！　

　光あれではなくハゲ師匠のホイミでがっつり治されて説教バリバリとかマジないわー……。俺そんな時間があったらウォルロでお婆ちゃんの荷物をそれとなく軽くしたいんだが！　あのお婆ちゃん子供のとき可愛かったよな、リッカたんの次ぐらいに！