二つの影がぶつかり合う。
何度も、何度も、何度も。
空を切るように動き、地を抉るようにぶつかり合う。
距離が開いて、流れる川が何度も二つの影の間を分けても、繋ぎとめるように、断ち切るように、二つの影はお互いに己をぶつけ合う。
二人の若き忍。その命と命の衝突。己の全力をかけた、ゆずれない意志を貫き通す戦い。
ここは、終末の谷と呼ばれる場所。
かつて、偉大な二人の忍者が、雌雄を決した戦いの夢の跡。
見上げるような滝を挟んで並び立つ天を突くような二対の石の巨象が、まさしくその忍達を象ったもの。
そこで今、新たな力が己を賭けて、戦っている。
全身を満たすチャクラが光のモヤのように両者を覆っている。
チャクラは生命のエネルギーの具現化。目に眩しい程の光は、両者が只ならぬ者である証。
それもその筈、両者とも明らかに異形の姿。
片や、全身黒紫色に染まった、肩甲骨当たりから巨大な手の如き翼をはやした少年。
片や、輝く黄金色のチャクラを獣の異形に変えた、猛獣が如き様相の少年。
二つの化け物の如き忍の争い。
うちはサスケ。
うずまきナルト。
五大大国の一つ、木の葉の里の忍たちだ。
獣の如き少年、ナルトが飛びかかると彼の周囲のチャクラも同時、意思をもっているかのように敵に襲い掛かる。
それを、サスケが尋常ならざる速さでかわす。
かわし切れない実体を持ったチャクラの腕の攻撃は翼を盾のように翳して受ける。
反撃に、翼を力任せに横なぎに振るい、ナルトを吹き飛ばす。背後の巨大な岩に激突する。岩が抉れるほどの一撃。
すぐに立ち上がり、再び飛びかかっていく。
鈍い音が響き続ける。
実力は伯仲している。
そして二人ともがまだ未熟。
互いが互いの攻撃を避けきれず、受けきれず、傷ついていく。
ただの忍ではない力を持ちながらも、その力に振り回されている。
故に、この光景は長くは続かないことは、二人が一番理解していた。
終わりは、すでに近づいている。
ナルトもサスケも、己の力に自分自身が削られていく。しかしそうなればなるほど、振り絞るように気炎を上げ限界を押し上げて力を増していく。
痛ましい光景だった。
戦いの熱は過熱していくというのに、二人の表情はまるで真逆。
そこには実力が近しい相手に対する敬意も、尊敬も、存在しない。
そこに胸が躍るような高揚はなく、昏い苦痛のみが、お互いの間に積み重なっていく。
己を傷つけるように、相手を傷つける二人。
自分も相手も否定する戦い。
姿かたちはまるで違えど、鏡合わせのように似通った両者。
違いがあるとすれば。
片方の瞳には明確な決意があったが、もう片方には僅かに迷いが揺れていた。
それが決定的な違いだったのかもしれない。
両者のぶつかり合いは、やがて終わり。
最後の力を振り絞った一撃が繰り出され。
―――そして、片方が堕ちた。