召喚したらチートだった件   作:uendy

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とりあえずこんな感じに落とし込みました。
 

作中で
******* ←視点変更

――――――――――― ←場面転換を表しています

まあ場面転換と同時に視点変更もしてるんで一概に言いずらいんですけどね




六話~ 神殺しの魔王

「いや~、それにしても見事な技の数々、年齢に見合わぬ戦闘勘だったの。・・こんなことになったのは久しぶりだ」

「どちらにせよ負けているんだ。ある意味嫌味にしか聞こえねぇよ」

「端から勝気などなかったのだろう、おんしが持ち得る全てを出してはおらん(・・・・・・・・・・)のだしの」

「ハハッ、バレテーラ」

「と言うても、正確には把握したわけでは無いがの」

 

 零仁と白夜叉が話をしていると、4人が合流する。

 

「零仁さん お手のほうは大丈夫でございますか?」

「ああ、大丈夫だよ。皮膚がすべて焼けて、先っちょのほうが炭化して、手を動かすだけで痛みが走る程度だな」

「それは大丈夫とは言わないのですよぉぉぉ! ああ、早く応急処置をしなければ」

「何だったら、私が治そうか?」

「だから大丈夫だって、痛覚止めてるし、何よりコイツがあるからね」

 

 そう言うと零仁は緑色とオレンジ色の蓋をしている二つの小瓶を取り出し、緑のほうを腕に掛け、オレンジのほうを飲み込んだ。

 そうしてから呪符を取ると、確かに痛々しくはあるが治りかけの腕が現れた。

 

「あとは自己修復に任せておけば今晩には治ってるよ」

 

 そう言いながら取り出した包帯を腕に巻き付ける零仁は、何かを思い出したかのように声をあげる。

 

「白夜叉さっき店先をチラッと見たとき目についたんだが、お前の店で取り扱っている商品の中に治癒薬・・ポーションの類も置いていたよな?」

「あ、ああ確かにうちの調薬師が調合したものを取り扱っているが、それがどうした?」

「いやー、丁度良かったさっきのギフトゲームの掛け金なんにしようか悩んでたんだが、ほれさっき俺が使っていた薬の配合のメモだ渡してやんな。店のよりすごいぞ?」

 

 そう言いながら、メモ帳の切れ端を渡す零仁。

 

「いや、いくら何でも”サウザンドアイズ”お抱えの調薬師のものだぞ。そうそう簡単に超えられるものじゃないぞ」

「いや、このレシピは味付けをして飲み易くなってる」

「貰おう!」

 

「いや、それはおかしいでしょ」

 

 即答する白夜叉にツッコミを入れる飛鳥。だが、黒ウサギが説明を入れる。

 

「いえ、そうでもないのですよ、飛鳥さん。ポーションって瓶に入ってる分全部飲み干さないと効果がないのですが。その・・・・・・・・かなり不味いのですよ」

「え?」

「それこそ、青汁を煮詰めたような苦さと渋さ、梅干しやレモンとは違った酸っぱさが混然一体となっており、飲み干すのに多少の覚悟が必要なのですよ」

 

 力を込めて語っているあたり黒ウサギも経験者の一人なんだろう。かくいう白夜叉も頷いており

 

「ああ、ポーションを飲むときには味覚を消すギフトが必要だと言われるくらいだからの。そのせいで、効果や手軽さのわりに売れにくいいのだ。在庫は残らん程度には売れるが、商業コミュニティだからな、より売れるもののほうがいいのだよ。だが本当に良いのか?それこそ売り出せば一財産だぞ?」

 

 その言葉に黒ウサギが反応を示すが、零仁の考えは異なるようで、

 

「いや、どれだけ売れようと材料の安定確保ができなければ意味がないだろう。生憎うちでは難しそうだからな。だからこそ白夜叉だけだったコネを多少なりと”サウザンドアイズ”そのものと結べればいいからな。言わば先行投資ってやつだよ。」

「うむ。そういうことならばありがたく頂戴しておこう。ボスにも多少の口添えをしておいてやろう」

「ああ、頼むよ」

「それにしても、本当におんしは多芸だの。ますますギフトがわからんぞ」

 

 呵々と笑う白夜叉に黒ウサギが問う。

 

「え?白夜叉様でも鑑定できないのですか?本日はギフト鑑定をお願いしようと思ってきたのですが・・」

 

 ゲッ、と気まずそうな顔になる白夜叉。

 

「よ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいとこなのだがの」

「黒ウサギって空気読めないとか、話を聞かないとか言われない?」

「そ、それはいくら何でも失礼でございますよ。黒ウサギだってちゃんと空気を読み、話を聞いているほうが多いですよ!」

「してない時もあるんだな」

「はうぅ!」

 

 ここぞとばかりに黒ウサギを弄る零仁。そんな二人を見て、若干不機嫌になる(・・・・・・・・)白夜叉。

 とりあえず横に置いておくとして目の前の案件に頭を悩ませる。白夜叉はゲームの賞品として依頼を無償で引き受けるつもりだったのだろう。困ったように白髪を掻きあげ、着物の裾を引きずりながら三人の顔を両手で包んで見つめる。

 

「どれどれ・・ふむふむ・・・零仁はまあ言うまでもないだろうが・・・他の三人ともに素養が高いのは分かる。しかしこれではなんとも言えんな。おんしらは自分のギフトの力をどの程度に把握している?」

 

「企業秘密」

「右に同じ」

「以下同文」

 

「うおおおおい?いやまあ、仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのは分かるが、それじゃ話が進まんだろうに」

「べつに鑑定なんていらねえよ。人に値札貼られるのは趣味じゃない」

 

 ハッキリと拒絶するような声音の十六夜と、同意とばかりに頷く二人。

 対する零仁は

 

「ほぼ全部把握してるから鑑定の必要ないんだけどね」

「そうなのですか?で、そのお力は?」

「もちろん黙秘」

「ですよね~」

 

 またもや漫才を始める二人に機嫌を下落させながらも、困ったように頭を掻く白夜叉は、突如妙案が浮かんだとばかりにニヤリと笑った。

 

「ふむ。何にせよ”主催者”として、星霊のはしくれとして、試練をクリアしたおんしらには”恩恵”を与えねばならん。ちょいと贅沢なものだが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度良かろう」

 

 白夜叉がパンパンと柏手を打つ。すると四人の眼前に光り輝く四枚のカードが現れる。

 カードにはそれぞれの名前と、体に宿るギフトを表すネームが書かれていた。

 

 コバルトブルーのカードに、逆廻十六夜・ギフトネーム 「正体不明(コード・アンノウン)

 ワインレッドのカードに、久遠飛鳥・ギフトネーム 「威光」

 パールエメラルドのカードに、春日部耀・ギフトネーム 「生命の目録(ゲノム・ツリー)」 「ノーフォーマー」

 黒に銀の線が入ったカードに、夜刀神零仁・ギフトネーム ―――――――――――

 

******

 

『報告。何らかのギフトによる侵入を確認。≪神智核(マナス):ラフィー≫の秘匿に成功しました』

相も変わらず流石だなぁ。さてと、

・・・・・ラフィ―さん箱庭で天災呼ばわりされてんのってなんだっけ?

『”魔王”ですね』

・・・・・ラフィーさん”ノーネーム”崩壊の原因ってなんだっけ?

『”魔王”ですね』

・・・・・・・俺のギフトカードになんて書かれてる?

『”神殺しの魔王(カンピオーネ)”ですね』

あれ、これどーすんの?討伐されんの?俺

 

 そう、俺のギフトカードにはこう書かれていた。

 夜刀神零仁 ギフトネーム・「暴食之覇王(メルゼズ・ゼブル)」 「再現(パルフェクトゥス)

   「神殺しの魔王(カンピオーネ)

      《数々の偉業の果てに(キングス・オーダー)》 《雷霆を携えし者(ドミナートル・ケラウノス)

      《我が瞳に写すものは(アイヤン・アルシャシャムス)》 《流転すら手繰り寄せて(プラティ・パリット・サラスヴァティー)

      《陰陽分かちて、豊穣を成す》 《忘却の川の主(レテ・ミストレス)

      《鉄火場の主》 《我が手に勝利在り(グラシア・デ・ニーケー)

      《蒼天囲みし小宇宙(アキレウス・コスモス)

 

「零仁、お前の能力って結局なんだよ」

 

 そんなこんなで頭を悩ませていると十六夜が覗きに来る。

 仕方がないので、「再現(パルフェクトゥス)」を用いて「薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)」を発動し、「神殺しの魔王(カンピオーネ)」から下を隠す。ただこの手段少々問題があり、

 

「ハハッ、”打倒魔王”の覇王か中々イカすじゃねーか」

「・・・カッコいい」

「ほう、どれどれ―――――!」

 

 そう、「再現(パルフェクトゥス)」で再現する際、特殊な要因が必要な技は己の持つ他の技術で同等の効果を疑似再現するので、今回の場合幻術を用いることになる。

 しかし、幻術の場合 相応の強さの者には見抜かれてしまうのだ。今のように。

 

「それよりも私はもう一つのほうが気になるのだけど?」

「そっちは名前そのままだよ。いろんな術を再現できる」

「あの技の数々はそういった理屈だったのね」

「・・・・・しかし、零仁は恩恵に頼るのではなく、自らの肉体で技を発動しておった。恩恵で再現しながら習得したのではないか(・・・・・・・・・・)?」

 

 とりあえずは見逃してくれるようだ。少なくとも白夜叉に波風を立てる気はない様だ。

 

「ま、そういうことだ。あんたが称賛した技は殆どが、猿真似ってわけだよ」

「いや、人の技術はもともと伝承、即ち模倣から来ておるのだ、猿真似でないほうがおかしい。それに、ギフトの御蔭とはいえあれほどの技の数々をその身に落とし込んだのは、矢張り称賛することだよ。だから、いちいち気に病むことはない」

 

 そうやって俺を諭す白夜叉の姿は多くの者を守ってきた貫録が宿っていた。

 すると十六夜が何かを思い出したかのように白夜叉に声をかけた。

 

「そういえば白夜叉、戦う前に言ってたパターン分けではこいつはドコに入るんだ?」

「おいおい十六夜そんなの”相応の力がある”に決まっt―――――」

「もちろん”馬鹿”の部類だそれも飛び切りのな」

 

「だよな」

「そうよね」

「当然」

「当たり前にございますね」

 

「なんでだチクショウ!」

「「「「あんな顔しといて何言って(んだ)」」るのよ」るのですか」

「?」

「左腕焼かれて、満面の笑みで戦闘続行しておっただろう」

「・・・解せぬ」

 

え~、そんなヤバい顔だったかな?

『まあ、見慣れていない方ならそんなものかと。あとで記録映像見ますか?』

あー、また後で見るわ。とりあえずラフィーもお疲れさん。

『いえ、お気になさらず。それにしてもひどいですよマスター、私に戦闘に参加せず、記録を取り続けろ

(・・・・・・・・・・・・・・・・・)だなんて』

まぁまぁ、そう言うなって自らの最低限(・・・・・・)がどのくらい通じるか確かめておかないとどんな状況が待ってるかわからないしさ。

『ですがまさか、権能一つ使わないとは思いませんでしたよ』

最後に使ったけど?

『あれは使ったの内に入りませんよ』

 

 そんな会話を相棒と繰り広げていると、黒ウサギが質問してきた。

 

「そういえば、先ほど零仁さんが最後に放った魔法になんというか・・その・・・・懐かしさのようなものを感じたのですが。あれは一体?」

 

はて?そんな効果あっただろうか、確かにあれは《雷》をほんの少し混ぜただけ――――――あっ(察し)

 

「どうだろう、あの魔法は確かに”雷神の一撃”て感じをモチーフに編み上げたものだからね。一応黒ウサギもも雷神の眷属だしそういった部分に反応したのかな?だとしたら、ものすごい進歩だと喜べるんだけど」

「ああ、いえちょっとそんな気がしたなー、程度の勘違いかもしれませんしお気になさらないで下さい」

「そう?ならいいけど」

 

 とりあえず、ポーカーフェイスを磨いておいてよかったかな。ってか白夜叉めっちゃ見てるし。

 

「それでは皆さんコミュニティへ帰りましょうか」

「すまんが黒ウサギ。この零仁を少し借りるぞ。今日中にはコミュニティまで送り届けよう」

「へ? えぇと、私はかまいませんが」

 

 ちらりとこちらに伺い建ててくる黒ウサギ。俺もとりあえず無難な反応を返す。

 

「ああ、先に帰っておいてもらってもいいかな?俺も少し聞きたい事が出来てね」

「うむ、では先におんしらをおくろう。零仁は部屋で待っておれ」

「ほいほい」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「まず大前提として、おんしはこの箱庭に来た時点で〝魔王〟として認定されている」

「ですよね~」

 

 ゆったりとお茶を飲みながら話をする二人。ちなみに白夜叉は着替え終えている。

 その二人の間には零仁のギフトカードがある。

 

「しかし、安心してほしい。この”神殺しの魔王(カンピオーネ)”という恩恵元々はある二柱の神が作り出した対神霊用の(・・・・・)恩恵なのだが、言わば”功績”に分類される類の恩恵での。ある意味箱庭公認なのだよ」

「あ~、要は”神を殺したで賞”的な?」

「かなり馬鹿っぽくなったが概ねそんなものじゃの。だからこそ、討伐の心配はない。まぁあまりに目に余るようなら話は別だが、おんしなら大丈夫だろう」

 

 パッと見はのんびりしているのに、内容は中々物騒だな。あっ、このお饅頭うまい。

 

「ほうほう(梟)そういえば、”魔王”っていうのなら”主催者権限(ホストマスター)”も持ってるってことだよな?」

「確かにその通りだとは思うのだが、なんといってもおんしが箱庭初の”神殺しの魔王(カンピオーネ)”なのだ。私も詳しくはわからん。とりあえず、確かめてみたらどうじゃ?”主催者権限(ホストマスター)”ぐらいならわかると思うぞ?」

 

ん~、ラフィーそれっぽいのあるか~?

『丁度発見しましたが・・・これは・・・』

どれどれ・・・・・・・・・・・うわぁ

 

「確かにあったわ、でもこれは・・」

「ほう、どんな内容なのだ?」

「・・・・勇気を示せ」

「?」

「俺に対して”勇気を示せ”ってのが、一番簡単な奴だ。対象が魔王と神霊の時のみ

って付くけど」

 

 意味をしっかり理解した白夜叉は俺と同じ顔をした。

 

「それは・・・また性格が悪いの、本来は”試す側”を”試す”のか」

「ああ、大体俺に対してってのがまた、」

「ほとんど不可能じゃろうな」

「まぁ完全に強者殺し(ジャイアントキリング)前提だし、その条件だけ時間制限あるし」

「制限が切れたら?」

「この勝利条件が無くなって俺が超強化される」

「それで、一番簡単なのか?」

「他はめんどかったり、さっきので強化されて困難になったり」

 

 とりあえず、お茶で心を落ち着けよう、そうしよう。

 あー、お茶がうまい。

 

「まあ、恩恵についてもっと詳しく知りたいなら、上層のパンドラを訪ねると良い」

 

 白夜叉の言葉に、零仁はパチリと目を丸くする。

 パンドラ。

 その名に、言葉に、やっと頭の中で引っかかっていた何かが解けた気がした。

 そうか、時々やってきては助言をしてくれる・・・いや、まあ助言といっても何とも言い難い体育会系論法だったりもするが、そんなことをしてくださるカンピオーネの生みの親。

 確かに、その記憶を含めて思い出せる限りだと、カンピオーネへとなる為の呪法には彼女と、そしてエピメテウスが関わっているとかそんな感じのことを言っていた気がする。

 やはり、”神殺しの魔王(カンピオーネ)”について詳しいことを知りたいなら彼女に聞くのが一番なのだろう。

 しかし、ある意味ではようやく納得できた。

 

「・・・・つまり、瀕死の重傷や四肢欠損などからも回復する人間離れした生命力と回復力とか、ヒトを超えた呪力とか、魔術や呪術を一切受け付けない体質とか、梟並みの夜目とか、人間離れした直感力とか、闘争心に正比例して勘や反射神経とかの集中力とコンディションが最良に近づくのとか、全部この”神殺しの魔王(カンピオーネ)”のおかげだったと」

 

「改めて聞くと本当に人間離れした効果を発揮する恩恵じゃの。まあ、人間の身で神を殺すための力を与えられておるのだからそのぐらいは普通か・・・・むしろ足りないぐらいじゃしのう」

 

「いや~”再現(パルフェクトゥス)”の仕事っぷりで生き延びるだけなら割と何とかなってるけど、やっぱり殺すのは無理だな」

「本当に出鱈目じゃのおんし・・・・」

 

 白夜叉のもっともな感想を聞きながら、ふと疑問に思ったことを口に出す。

 

「そういえばさっき 箱庭初 的なこと言ってたけどどういうことだ?」

「なに、簡単なことよ。箱庭では”神殺し”が行えんのだよ」

「?、どういうことだ?」

「”神殺しの魔王(カンピオーネ)”に至るのにはいくつか条件があるらしくての。その中には”神格を帯びた恩恵の使用を禁止”と言うのもあるらしくての。ただでさえ、ギフトゲームによって 不意打ちと言うか奇跡というかな状況がおきんのに神格等の使用を禁止されたらまず不可能じゃ」

 

「それにの、”神殺しの魔王(カンピオーネ)”しか恩恵を持っておらん限り、この箱庭には、召喚出来んのだ」

「・・・・・・”神殺しの魔王(カンピオーネ)”が神の恩恵を、即ち召喚を拒否するからか?」

「おそらくは、という程度だがの」

 

 ふう、とりあえず聞きたいことも聞けたので本拠のほうに帰ろうとすると、白夜叉が新しいコートを投げ渡してきた。

 

「まあ、これくらいはさせてくれ。さすがに店を出たものがボロボロでは外聞も悪いしの」

「そうか?んじゃありがたく使わせてもらうよ」

「古い方はこちらで処分しておこう」

「悪いな何から何まで、んじゃとりあえずまたな、何か新商品が出来たら 茶をシバくついでに卸しに来るよ」

「うむ、待っておるぞ」

 

 そう言って俺は”サウザンドアイズ”を後にした。

 

『頑張ってくださいね。マスター』

?なんのことだ?

『秘密です』

 

――――――――――――――――――――――――――

 

”サウザンドアイズ” 白夜叉の私室にて

 

「はふぅ~」

 

 白夜叉はボロボロになった零仁のコートに包まって、とてつもなく嬉しそうな表情をしていた。

 

(あれほどの強さを持ちながら、心根は純朴、何より私を女性扱いする紳士さ、正直言ってドストライクじゃ)

 

 自らの技を猿真似と称した時のあの顔、まるでいたずらがばれた子供のような 

 相手を失望させてしまうと怯える様は、雨に濡れそぼった子犬のようで思わず撫でてしまったのは、白夜叉も少々焦ったが、本人も周囲も気に留めていなかったのは行幸と言えよう。

 

 しかし、と白夜叉は考える。

 

(あやつにどのように向き合うべきか、私は仮にも、非常に不本意だが”三大問題児”の烙印を押された身。下手に動けば、あやつはもちろん周囲にすら迷惑がかかることは明白いったいどうすれば)

 

 彼女は東側最強の”階層支配者(フロアマスター)”下手に色恋を嗅ぎつけられれば、増長した連中が東側を荒らすことが予想される。だからこそ、彼女はそれまでに鍛え上げられた表情筋を使って、彼の前でゆるみそうになる顔を引き締めていたのだ。

 ふと、彼女の頭を妙案がよぎる。

 

(あやつが私より強ければよいのではないか?東側、いや、箱庭最強夫婦となれば名実ともにつきあえるではないか!)

 

 この世に存在して幾億年、これでも女として生まれてきたのだ、色恋の一つぐらい味わいたい。しかし、その存在故彼女を女扱いするものも少なく、たとえ女扱いしてくれるものも、大半が戦友か好みではなかった。

 このチャンスを逃したら、それこそ後悔する。

 しかし、焦る必要はない。あやつならば間違いなく私を倒せるだけの力を付ける。それに、他人の機微にはかなり聡そうだ。誰かを惚れさせ、恋仲になる可能性も低いだろう。あの表情は闘い、そのうえで上回り彼をの本質を見抜いた私だからこそ気づけたのだ。

 

(だが、せめてこの位は・・・)

 

 そう思いながら今しばらくコートに包まれるのだった。

 

 

 それからしばらくの間、着物の上にコートを羽織るという少々変わった格好を白夜叉がしていたとかいないとか。

 

 

 

 

 

 




とりあえず明日は忙しそうなので更新できそうにありません


では、また次回

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