召喚したらチートだった件   作:uendy

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お待たせいたしました。
やはりうp主はオリジナルを創造するのは苦手なようです。


なんか、お気に入りとかがまた増えててびっくりしたよ。



二十二話~ 百鬼夜行

 白夜叉の依頼を受け、零仁達がやってきたのは かの古都と似て非なる、されどもそれと劣らぬ雅な都だった。

 提灯や行燈がその街並みを飾り、祭囃子がその活気を囃し立てる。

 人妖入り混じって醸し出す活気の中にどこか郷愁を覚えるのは、零仁が日本人だからだろうか。

 

「いいね、いいじゃないか!やっぱり祭りはこうじゃないと」

「あら?御主人様(マスター)はこういった雰囲気が好みなの?」

「まぁな、俺の故郷の祭りって言われるとこんな感じだからな。どっちかと言うと懐かしいかな。

 何よりこの街並みは面白いだろ?

 この提灯は提灯お化けだし、行燈は鬼火それも色取り取りときた。他にもあるがこういったものはなかったからな」

「でもマスター、新しい景色とか好きよね?」

「うん?そりゃそうだろ。

 初めて見る景色・景観・文化。それらを楽しめるなら楽しまないと損だろう?

 ってことで屋台荒らしと行きましょうか!」

 

 いそいそと屋台並びに乗り込んでいく零仁に、呆れながらも付いていくペスト。

 茶々丸はそれを楽し気に見守りながらも依頼について尋ねた。

 

「ところでロード、今回白夜叉様のご依頼を受けられましたが何か理由が御有りで?」

「モッキュモッキュ 理由って言っても大したものじゃないぞ?

 とりあえず参加者足んねーから出てくれって感じ」

「モチモチ あなたが動いてるのにそれだけの理由なわけないじゃない。

 さあ早く教えてくださいますか?」

 

 手首に容器の入った袋をぶら下げ、ソフトボールサイズの巨大な串団子を片手で三本持ちながら、イカ焼きを頬張る零仁と、

 同じ店で大福数種を購入し、美味しそうに啄みながら言及するペスト。

 この二人を見比べて、

  (気付かぬうちに彼女も毒されて来ていますね)

 と、どこか他人事のように微笑まし気に眺めながら、零仁から貰ったたい焼きを食べる茶々丸。

 

 信頼がどこか明々後日の方向に向いている従者二名に、団子にかぶりつきながら答えを返す。

 

「ムッチムッチ いや、あのね。

 何でもかんでも俺が暗躍してる的な考えやめてもらえませんかねぇ?

 今回ホントに大した理由じゃないぞ?ただ面白そうってだけだからな」

 

((あっ、これは何かあるわね)ありますね)

 

「オイィ!? 今何か失礼なこと考えなかった!?」

「「いいえ、全く」」

 

 そんなこんなで楽しみながらも屋台通りを抜けて先に現れたのは巨大な屋敷だった。

 

「ほら見えてきたぞ、”百鬼夜行”の本拠 夜行殿(やぎょうでん)だ」

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「では、こちらでお待ちください。まもなく頭首が参りますので」

 

 案内役の天狗が述べた。

 夜行殿に入った零仁達に待っていたのは下らない諍い、ではなく歓待の意だった。

 

 

 門番に零仁が名を名乗ると即座に門が開かれ、案内役が恭しく頭を垂れる。

 炎にも似た赤目に、少し朱色の入った黒髪をサイドテールにまとめ、大きな黒の羽をもった烏天狗だった。

 

 彼女に連れられ、豪華とは言わないが華美でありどこか荘厳な門を抜け、屋敷の中に入ると客間まで通された。

 客間に来る途中までに見られた中庭のなんと優美なことか。

 遠目からは一面水鏡の中に大きな岩や古木がそびえ立ち侘び寂びを感じさせるが、水面に目を凝らすと水底が見事な石庭と枯山水を望むことができる。

 水中でもなお生き生きと映える樹木は箱庭ならではのものだろう。

 

 日本文化に疎いペストと茶々丸でもその美しさに目を奪われている。

 そんな庭園を一望できるこの客間に通されたということはまさしく最上級の歓待と言えるだろう。

 

 

「門前払いとまではいかなくても多少何かあると思っていたんだけどな」

「まさか!白夜叉様から直接推薦された方を侮るようなものなど、少なくともこのコミュニティにはいませんよ」

「何かやらかしたのか?白夜叉」

「えぇ、私は詳しくは知りませんけど。

 ‥…あぁっと、そういえば自己紹介がまだでしたね。

 コミュニティ”百鬼夜行”所属、愛宕 楓(あたご かえで)と申します。

 以後お見知りおきを」

「あぁ、知っているとは思うが己の口で名乗るのが礼というものだろうな。

 ”ノーネーム”所属、夜刀神零仁だ。よろしく頼む」

「同じく”ノーネーム”所属、零仁様の従者 姫神茶々丸です」

「同じく従者ペストよ。よろしくね」

 

 各々自己紹介する中、零仁は油断ならぬと笑みを浮かべる。

 

 なぜなら、楓の腰に下げているのは()()()()()()()()()()()なのだから。

 

「どうかな御客人、庭は気に入ってくれたかな?」

 

 部屋に一人の男が入ってきた。

 狩衣にも似た白を基調とした和装束を身に包み。

 頭上からぴょこりと生えた獣の耳に、己の背丈にも届こうかといった尻尾。

 そして髪の毛から尻尾の先までを覆う、どこか透き通った月を思わせる銀毛。

 耳と尾の形からおそらくは妖孤だろうか、彼はキツネとは似ても似つかない透き通った眼を細めて零仁達に挨拶をした。

 

「ようこそ、我らが夜行殿へ。

 私の名前は月夜(つくよ)だ。

 しがない銀毛の妖孤だが、よろしく頼むよ」

 

 月夜の手を握り返しながらも、零仁はクツクツと笑う。

 

「楓嬢と言い、月夜殿と言い、”ノーネーム”相手にしては随分な歓迎だな。()()殿()

 

 客間より一段上がったそこは、本来ならば、頭首本人が座すであろうが今は無人である。

 そこに零仁は何の疑問もなく声を投げかける。

 

「ええ、それだけするに値する御仁であると思っていたからですわ」

 

 パチン、と扇子を打ち鳴らす音とともにそれまで無人であったそこに気配と像が結ばれる。

 現れたのは、少女の様でもありながらどこか大人びた色香を持ち、

 宵を思わせる紫紺の長髪の、毛先をいくつか束にしてリボンで結んだ 満月のような黄金色の眼の女性だった。

 

 

 ペストと楓はそれぞれ異なった理由故に驚愕し、

 茶々丸はそれを見抜けなかったにせよ、主の言動に疑問を持つに能わず、

 そして、零仁、月夜そして頭首の女性はころころと笑んだ。

 

(ゆかり)、彼自己紹介してた時には気づいてたみたいだよ?

 というよりお前自身も気づいていただろう?」

「そうだけどそうじゃないわ!だって、第一印象って大切だもの。

 あなたもそう思うでしょう?」

「確かにその通りだが、それを口にすべきではないんじゃないか?」

「それはそれ、これはこれよ。

 もし期待通りに動かなければ私が姿を見せること自体なかったんだもの。

 さて、では改めまして”百鬼夜行”頭首 出雲 縁(いづも ゆかり)よ。よろしくね」

「あぁ、宜しく頼むよ。縁殿」

「あら、殿なんて堅苦しいわ。

 どうせならユカリンって呼んで欲しいわ」

 

 縁が茶目っ気たっぷりに微笑んで見せる。

 が、そんなことで狼狽えるほど零仁は可愛いげはない。

 

「了解したユカリン。それにしても流石は西側有数の五桁コミュニティだな、ユカリン」

「え、えぇそうでしょう。

 月夜はもちろんのこと、楓だってここの第九席に居るんだもの」

「ほう?楓嬢クラスでも九席か!いやいや、人材豊富そうで何よりだな、ユカリン」

「‥……ッハハハ」

 

 月夜が堪えきれないとばかりに哄笑を上げる。

 

「ちょっ! ちょっともう勘弁して!

 月夜も笑ってないでフォローしてよ!」

「ッハハ、いやすまない。

 だけど半分以上お前が悪いんだろう」

「そうだけど!そうだけど!」

 

 どこか、少女のように頬を膨らまし月夜をポカポカと叩く縁。

 

「ククッ申し訳ないな。で?呼び捨てで構わんだろう?」

「ええ、それで結構ですわ!」(プイッ)

「いやいや、ユカリンはユカリンで愛らしいと思いマスデスヨ?」

「・・・ハァ 楓のことを娘っこ扱いしてくれる訳ですわ。

 白夜叉から聞いていた通りの方ですわね」

 

 不貞腐れてそっぽを向く縁だったが、

 零仁の のらりくらりとした態度故に、それまでのやり取りに疲れた様にため息をついた。

 

「そういう時は、『聞いていた以上に』って言うんじゃないのか?」

「いいえ、聞いていた通りですわ。私共が過分じゃないかと思うくらいでしたもの」

「そいつはなんとも‥‥」

 

 少々照れ臭そうに頬をかく、零仁に意趣返しに成功したとばかりに浮かべた笑みを広げた扇にて隠す。

 パチリ、と再び扇を閉じそれまでとは一変して頭首としての顔を表していた。 

 

「まぁ、友好も深まったことですし、今回の宴のお話と参りましょうか」

 

 そう縁が述べるとともに一枚の”契約書(ギアスロール)”が現れた。

 

【ギフトゲーム名”童子狂宴(わらべのうたげ)

 

 ・勝利条件

   ‣ 一日おき、計六日間開催されるミニゲームの総合得点で勝者を算出する。

  ・ミニゲーム参加条件

    ‣ 一チーム三人一組でなければならない。

 

 ・諸注意

   ‣ 参加中に参加者同士のゲームを認めます。

   ‣ ただし、一切の注意は負いませんので悪しからず。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、ギフトゲームを開催いたします。

                            ”百鬼夜行”印】

 

「こいつはまた、随分と豪胆なルールだなぁ」

「ちよっとマスター、冗談いってる場合ですか」

「わかってるわかってる、『喧嘩は宴の華』ってことだろ?」

「違うそうじゃない」

 

 けらけらと笑う零仁に、ペストは今後の行く末が不安になった。

 

「あらあら、この調子なら大丈夫そうね」

「うーん、うちの連中は血の気が多いって訳じゃ無いんだけど・・・

 それに零仁君は大丈夫だろうけど・・ねぇ・・・・?」

 

 どこか言葉を濁す月夜に、ペストは自信たっぷりに、茶々丸は当然のように返す。

 

「どんなやつでもぶっ飛ばしてやるわよ!

「まぁ、護身もメイドの嗜みですから」

「うーん、そういう訳じゃ無いんだけどなぁ」

「まぁまぁいいじゃないの、月夜。

 うちのコミュニティの者ならどうとでも出来るじゃない」

「いやいや、そういうことをいってるんじゃなくってだね・・・」

「まぁまぁ、どちらにせよ起きるみたいなのだしその時はその時で『高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に行動すればいい』のだよ」

「別名プランBってやつね」

「実質何もないって言いたいのかい!?」

「アッハハハハ!」

 

 流れる様にツッコミ役に放り込まれる月夜。

 そんな月夜に抱腹しながら倒れ混む縁。

 

「フフフ、確かに月夜は苦労人気質だけどツッコミ役じゃないのにねぇ。これだけ弄られる月夜なんて何時ぶりかしら」

「勘弁してくれ、いやほんとに」

 

 縁はひとしきり笑った後に、パンと手を叩き話を締める。

 

「さてと、それじゃあ必要なことは大体話しましたし始めましょうか」

「?なにか前夜祭のゲームでもあるのか?」

「いいえ、ゲームはありませんが我らがこれから行うのは『宴』。なればこそ宴には酒盛りが当然でしょう。

 ‥‥もちろん参加なさいますよね?」

「…いいね、楽しみだ」

 

 お互いイイエガオでサムズアップする零仁と縁に、従者諸君はやれやれと頭を抱えるのだった。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 そんなこんなで前夜祭(宴会)が開始された。

 というのは形式上だけで零仁たちが宴会場となる夜行殿の特設会場に向かうと、もう既に空となった酒樽が積み上がっていた。

 そんな光景まだ序の口と言わんばかりに、あの月夜すらスルーして開始された辺り流石は”鬼”や”天狗”の所属するコミュニティと言ったところだろうか。

 

 

「それにしてもすごいペースね。‥‥また空いた」

「このままでも、小屋くらいならあの酒樽で作れそうですね」 

「あはは、まだまだ始まったばかりですよ。

 まだアレが始まってませんし(ボソッ)」

「何か言った?」

「あっ、いいえなんでもありませんよ」

「そう?」

 

 そんな中でもペスト 茶々丸 楓の三人は姦しい、とまではいかなくても賑やかにおしゃべりして楽しんでいた。

 見目麗しい美女(美少女)の三人組。そんな三人組に熱視線が注がれないわけがない。

 宴の喧騒の中にあってもその浮ついたものは外から眺めていると存外わかりやすい。

 

 

 会話に花が咲く三人組を横目に捉えながらも、零仁は盃をゆっくり傾けながら喧騒に耳を傾ける。

 

 『おい、楓さんと一緒にいる二人って?』

 『あの白夜叉さんの推薦で来たって人の同士だそうだ』

 

 ―――それは純粋な興味だったり

 

 

 『あんな風に笑ってっと楓さんも見た目相応のお嬢さんって感じだな』

 『あぁ、普段はあんなに冷静でお淑やかって感じだからな』

 

 ―――普段とは少し違う同士の様子であったり。

 

 

 

 『それにしてもあの茶々丸って人かわいくね?

  ニコッと笑いかけてくんねぇかなぁ』 

 『それを言うなら、あのクールな瞳だろ。

  是非、椅子として使ってほしい』

 『お前天才か!?』

 

 『俺はあのペストちゃんだな。

  膝の上で”お兄さん”とか呼ばれてみてぇぜ』

 『ちょっとイタズラして怒らせてみたい』

 『むしろ蔑んでほしい』

 『『わかる』』

 

 ―――‥‥残念な欲望の 趣味であったり。

 

 

 そんな喧騒を肴に、用意された様々な酒を飲み比べていると月夜が声をかけてきた。

 手には月夜のお気に入りのものであろう酒瓶とそれによく合う肴が握られていた。

 

「いやぁ、楽しんでもらっているようで何よりだ」

「あぁどれもこれもいい酒ばかりだ」

「そりゃあ、ここは百鬼夜行の只中だよ?『酒は百薬の長』なんて言葉を本気で使うような連中ばかりだ。

 これくらい揃えてくるさ」

「…相当苦労人だな、あんた」

「‥‥言わないでくれ、自覚はあるから」

 

 穏やかに話しながら、持ってきた酒を促す月夜に

 からからと茶化しながら杯を飲み干し、空の杯に並々と注がれるのを受け止める零仁。

 

「…あぁ、強くはないが旨いな。今んとこ一番だな」

「やっぱりわかってくれるかい?

 私も飲めないってわけじゃあないんだがね、どうも酒精の強いのは苦手でね。

 他の連中は強いものを好むから話が合わないんだよ」

 

 そのまま手酌しようとする月夜の手から酒瓶を取って、月夜の杯に注ぐ。

 

「――っとと、これがこの酒によく合うよ」

「―ンむ、山菜のお浸しか 酒と合わせると確かにどこか懐かしい、で合ってんのかね。この感覚」 

「・・・・」

「うん?…あぁ、わかってるよ。年不相応だってのは」

「いや、すまない。ただ、実年齢には合ってないが不相応かと言われれば否と答えるだろうね。堂に入ってる」

「そいつはどうも」

「―――――つーくよ!」

 

 湖面を揺らす雫のごとく、静かに杯を傾ける二人の間に割って入るかのように月夜の背に一人分の重みが掛かる。

 月夜の背にもたれ掛かるようにしながら(ゆかり)が声をかけた。

 

「・・・縁、重い」

「ちょっと?ひどくないかしら?」

「ひどくはないよ。ほら頭首殿、威厳はどこに置いてきたんだい?」

「あら、宴の席では無礼講よ?月夜。それにこんなもの皆見飽きているでしょ?」

「お前軽く酔ってるね、どれだけ飲んできたのやら」

 

 ころころと笑いながら、手遊びのように銀の尾を梳く縁に、月夜は深いため息をつきながらもしょうがないとそのまま遊ばせる。

 縁もそれ以上言葉を返すこともせずに尾を静かに撫でる。

 また静かに飲みなおそうとしたところで、隣から

 

「むぎゃぁ!!」

 

 という声と中身の入ったグラスが飛んできた。

 零仁は危なげなくグラスの中身ごとキャッチし、発生源に目を向けるとペストが 濃縮された苦虫をうっかり噛み潰したかのようなしかめっ面で、水で口を濯いでいた。

 

「申し訳ありません零仁殿。衣服などに汚れはございませんか?」

「ああ、問題ないよ。で?どうしたの、アレ」

「それが、モノが気管に入ってせき込んでいたので、私がソレをお茶だと思って渡してしまい・・・」

「で、驚いてコレを投げ飛ばしたと」

「はい」

 

 あはは、と苦笑いをしながら説明する楓に、零仁もまた苦笑いを返すしかなかった。

 それでもなおペストは鼻の詰まった声でヒーヒー叫ぶ。

 

「うっわ、喉が焼ける!!全然治んない!!!」

「いや、匂いだけでもキツイってわかるぞ」

「あらあら、飲めなくはないけど、その酒は私も強すぎてどうかと思うわ」

「仕方ないじゃない焦ってたんだから!

 早く処分しちゃってよ!!」

「あーあー、もったいね」

 

 そう言いながらクイッとグラスを飲み干す零仁。

 

「クッは!確かに少し度数が高すぎるな。普通水とか氷で薄めるもんだろコレ」

「いや、ソレを原液で飲み干す連中だよ、うちのは」

 

 なんて話をしていると、喧騒の中から

  『『『『『『そ、その手があったか!!!!』』』』』』

 と、大声が聞こえた。ぽつぽつと

  『ああすれば、ペストちゃんと合法的に間接キスが!』

  『いや、そうやった後に優しく看病するのも!』

  『良さが過ぎる!!』

 などといった声も聞こえる。酔いが回ってきてタガが外れてきたのだろう。

 

「ペストちゅぁん!、こっち酒は甘くて飲みやすいよ!!

 だからこの酒をイッキのぐげらぁ!!」

 

 鼻息を荒くしながら、ペストを手招きする若い烏天狗(男)が、復活したペストの渾身のとび膝蹴りを顔面に受け、縦に三回転しながら吹っ飛ぶ。

 膝蹴りの勢いを美しい三回転で殺し、着地したペストはそのまますっ飛んでいった烏天狗の顔を踏んづけて追撃する。

 

「汚らわしいことを考える頭はここ?いっそのこと潰してしまいましょうか」

 

 ごみを見るような目と、100%の嫌悪を含んだ声音。それどころか少し黒風すら纏っている。

 縁からも言われていたように圧倒的な力で一方的に語り合おうとする肉体言語至上主義的な考えの妖怪が多いここでは、先の行動は正しいと言えるだろう。

 

 しかし残念ながら、ペストは”蔑称―紳士”という生命体を甘く見ていた。

 彼らが一度蹴り飛ばされた程度で、己の信念を曲げるようなことはない。

 

 ――――否、曲げないだけならばよかった。

 

「あの、もう少し強めに踏んでくれません?」

「―――――――」

 

 側頭部を踏みつけられながらも、至って真面目な表情と口調で述べられた発言にペストは絶句した。

 それどころか、

 

「できれば次は私も」

「さっきの目もっとローアングルからいただきたいのでもう一度」

「私は座布団のように下に引いてほしいです」

 

 

 ――――――ぞぞぞぞぞぞぞぞぞ、と全身の肌が一気に泡立つのが遠目からでも分かった。

 

 笑顔を引きつらせ、大きな身震いを行ったペストは、右腕に黒風を集中させ―――――――

 

 

「いいいぃやああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

『ぎいぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁ!!? ありがとうございまぁぁぁぁっす!!!』

 

 

 ―――――ペストの悲鳴と”紳士”達の断末魔が響き渡った。

 

 

 

 その様子を見て、月夜は少しでも頭の痛みを抑えようとコメカミを抑えつつ、

 

「基本的にはいい奴らなんだ。偶におかしくなるけど・・・」

「うちの参加者が減った理由の一つですよ」

 

 とゲンナリしたように言う楓。

 

「いやいや、うん。悪い奴らではないんだろうさ

 茶々丸それに楓嬢もペストがやりすぎないように見ていてやってくれんか?

 やりすぎない程度は君たち女性の見解で頼む」

「「かしこまりました」」

 

 そうやって打撃音と断末魔が鳴り響く黒い嵐の中へと二人は消えていった。

 

 

 

 余談だが、他の女性の方も加わったせいで音が増幅した。

 

 

 

 

 

 

 

 §

 

「で、()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 騒動の音を遠音に、零仁 月夜 縁の三人は穏やかそうに杯をあおっていた。

 零仁は懐から取り出した封筒を弄びながら答える。

 

「うーん、それこそ出てきたやつによるぞ?

 こう、話聞いて郊外でひっそりと、って奴もいれば、

 知ったこっちゃないとそのままおっ始める奴もいるからな」

 

「それは流石に勘弁してほしいね」

 

「どちらにしろ、取り合えずは周囲に何もない場所とか無いの?

 余波だけで吹っ飛ぶよ」

 

「もちろんありますわ」

 

「よっし、じゃあまたあとで教えてくれ。

 うまくおびき寄せたら結界張って人とか入ってこれないようにするから」

 

「了解した」

 

「というか月夜殿たちも結界張り手伝ってよ。

 基本的に集中したいし」

 

「かしこまりましたわ。ではケース・バイ・ケースで」

 

 物騒な内容の話でもなお余裕を崩さない三人。

 

 

 零仁が白夜叉から受けた依頼は「祭りの盛り上げ」だった。

 

 

 

 が、そのときに()()()()()()()()()()()()()()()()()こう書かれていた。

 

 

『神は再びまつろわず、百鬼の宴で舞い踊る』

 

 

 

「さてと、今回はどうなるのかねぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 




信じられるか?
この程度の構図考えんのに二か月弱、描写等に年末までかかってんだぜ?


先に言っておきたいのが、

今後もこのレベル or 文字数少な目のうっすいの(ダブルミーニング)だろうから期待せずにいてください。

では、また次回に。

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