召喚したらチートだった件   作:uendy

23 / 27
守れなかった(時間)

というわけで、皆さんあけましておめでとうございます。
ガキ使は楽しかったですね。



二十話~ 終わりと始まり

「………は?」

「お?目、覚めたか」

 

 ポカン。

 目を覚ましたペストの表情はまさにソレが正しいだろう。

 

「あ、あんたっ……ぅ」

「おいおい、無理矢理搾取されてたんだ、無理に動くなよ。

 さ~て、ぶちころがしに行くか」

 

 ペストが目覚めたのならば、もう心配ない。

 すぐにエレシュキガルの元へ向かおうとすると、ペストが呼び止める。

 

「なんで、私に止めを刺さなかったの?」

「・・・・俺が自らを参戦不可にしてまでフェアにしたゲームだ。

 それを乱入者に壊されるのは心底腹立たしい。

 それなのになんでお前を倒してゲームの幕を引かねばならんのだ?」

 

 俺は本心を述べる。

 

「腹が立つから、か・・・フフ、ハハハハ。

 ねぇ、アイツを倒しに行くんでしょ?

 私も連れて行って」

 

 意を決したように告げるペストの目は俺の目を捉える。

 

「…理由を聞いても?」

「アイツがムカつくから」

「OK、着いてこい」

 

 さて、存外楽しくなってきた。

 

―――――――――――――――――――――――

 

「『あの程度がこの妾に通じるとでも?』」

 

 確かにドレスは多少煤けているが、それだけ。

 無傷といっても過言ではない状態である。

 

「いや?ただ時間稼ぎさえできれば良かったからな。

 そう意味では、十二分に通じたな」

  

 俺がコロリと笑みを深めると、エレキシュガルの顔が険しくなる。

 しかし、その厳しさも俺の腕に抱かれるペストを見て嘲笑へと変わる。

 

「『なんだ?そんな食いカスを大切そうに抱きかかえて・・・ 

  そういう趣味か?ならば、妾でも救いようもないよなぁ」

 

 クスクスと笑みを浮かべるエレキシュガルに、ペストは怒りを灯す。

 俺はそれを宥め、ハッキリと言い捨てる。

 

「救う?いやいや今から俺にぶち殺されるお前に、救う救われるの話をされてもなぁ」

 

 別に、挑発のつもりはなかったのだが・・・・

 うん、まあいいか。

 

 とりあえず、先程設置していた”雷雲”を起動して、撃ち落しを狙う。

 

「『同じ手が――――』」

「通じると思っているなら”神殺し”にはなってないよ」

「『―――っ!?』」

 

 『瞬動』を用いて一瞬で間合いを詰め、”旭刀・残火”を振るう。

 腕の中のペストが急激な移動に、短い悲鳴を上げる。

 

 予想外の一撃を受け、エレキシュガルは思わず防御に回る。

 ペストが行っていたような”疫病”による防御。しかし――――

 

「それは、悪手だろ」

 

 《偉業》の権能を発動しているため、どのような体勢で振るった一太刀でも、渾身の一撃へと変換する。

 それにより、防御を容易く切り裂き、その腕を切り飛ばした。

 腕を切り飛ばされて出来た一瞬の隙、俺が見逃すはずがなかった。

 

「『――――ぐぅぅぅぅぅ!!』」

 

 落雷が閃き、エレキシュガルを再び牢獄に閉じ込める。

 エレキシュガルは防御しかできず、その場を動けずにいる。

 

 俺たちはすぐさま地上に降りて、切り札(ジョーカー)を切る。

 奴との再戦から、すでに右腕に貯めていた”雷”を構える。

 

「覚悟しろよ。これは、()()()()()()()

何より人の憎悪を、可能性をなめるなよ。

それらは、神様すら喰らい尽くすからな」

 

 

 

―――――『雷樹』と呼ばれる現象がある。

この現象は、様々な気象条件が噛み合うことにり、地上と上空の電位差が普段の落雷と、正反対になることで発生する。

その名の通り、天へと枝を広げる大樹のごとく、雷が空へと広がって行く現象である。

 

俺はその『自然現象』を《誓約》の力を使って、『神話的概念』へと引き上げる。

 

  それこそが《誓約》の本来の使い方、水路を思い浮かべると分かりやすい。

  幅の広い物よりも、狭い物の方が水の流れが速くなる。

  同じように『万全の十』を、『必殺の一』へと書き換える。

 

  地から天へと落ちる、それはまさしく神への憎悪と反逆。

 雷の形状をした、"神殺し"という概念そのもの。

 しかし、これはあくまで神に対する憎悪を、反逆を必要とする。

 それは、俺には出来ない。

 どこまでいっても、俺は"神殺しの魔王(カンピオーネ)" 理不尽側の存在。

  いつだってそうだ、理不尽に怒りを向けるのは、人間でなくてはならない。

 

「みんなの仇 今、ここで・・!」

 

  ペストが俺の右腕を強く握りしめ、魔力を、怒りを込める。

 

「『神殺しぃぃぃぃぃぃ!!』」

 

神滅雷呪(かみ のろい、ほろぼす いかずち)

 

 

 

黒い稲妻が、天を焼いた――――――――

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

「ヤッホー、零仁。本当に久しぶりだね☆」

「‥‥いや、マジで久しぶりですね、母さん」

 

 

 灰色一色の世界。曰く生と死の境界だ。ここに来るのは本当にに稀だ。

 目の前で相も変らぬ体育会系のノリだけの謎ポーズを取る 母・パンドラに何とも言えない表情をする。

 

「ああん、そんな顔をしないでよ~」

「ん~、まぁあんたには感謝しているよ、母さん」

 

 ただただ、本心を吐露する。欲しい時に欲しいヒントを残してもらえるため、感謝はしていた。

 物心ついて以来、世話になり育ててもらったシスターはいるが、母は居なかった。

 そのため、パンドラには本当に感謝していた。

 

「・・・・」

「…?母さん?」

「・・・素直にお礼されるとなんか照れくさいわね

 そこまで素直な子なんて居ないし」

「相変わらずみたいだね」

「そういえば、新しい子が生まれたのよ~」

「俺の後輩か・・・

 でも、そんなことを言うためにここに呼んだんじゃないんでしょう?」

「あら、思ったより無関心?」

「もう、これから先も出会うことすらないような相手にせっかくの時間を潰されるいわれはないよ」

「あら、嬉しい。

 それじゃ、早速本題に・・・今日レイジが倒した相手に取りつかれた子居たでしょ?」

「ああ、それで?」

「その子に、その神様の力付与できるから」

 

 ・・・・・・はい?

 はぁ~本当にいきなり爆弾を投下するなこの人は。

 

 パンドラは目の前で楽しそうにツインテールを揺らしながら、話を続ける。

 

「というより、あのまま放置するとまずいことになるからしっかり使ってあげなさい。

 あなたならうまく使えるだろうし。

 何よりあの子のためよ」

「・・・神様の事情には深く突っ込まないよ」

「うん♪ そうしてくれるとありがたいわ」

 

 満面の笑みで頷かれ、頭を抱える。

 さて、どうしてくれようか

 

「それじゃあ、レイジ頑張ってね。戦いも青春も♪」

 

 見送りをそんなよくわからない言葉で良かったのか。

 

 

――――――――――――――――――

 

「・・・・・・終わったの?」

「ああ、エレキシュガルの反応は消えているな」

 

 零仁が、生と死の境界より返って数十分、建物の屋上からペストを膝枕してゲームの様子を俯瞰していた。

 

「…そう、ならもういいわ」

「・・・今から妨害に行くなら、力を回復させてやるぞ?」

「いいえ、もう疲れちゃった。

 ねぇ、もう少しこのままで居させて・・・・・・・・

 

 

 

 

―――――――ふ、ふぐぅ。うあぁぁぁぁぁぁぁん。あぁぁぁぁぁぁ、ありがとう。()()()

 

 付き物が落ちたように、降参したペストは大粒の涙を流した。

 

 

 『お嬢さん、おぬしはもう自らの道を歩むべきじゃ』

 今だって、これまでだって私は本心で動いてきた!

 『でもお姉ちゃん、あのお兄ちゃんのこと好きなんでしょう?」

 『そうよ、せっかくの優良物件なんだからさっさと捕まえに言っちゃいなさいな』

 なら、みんなはどうするの?これからも・・・・

 『わしらはもう持たん。今にもあの女神に食われそうじゃわい。

  お前さんだけならまだ間に合う。さあ、早く!』

 ダメ!それなら私も戦う。私たちはこれまで一心同体で居たじゃない!

 『・・・なら、生きておくれ。わしらが居たという事実を残すために』

 『私うれしかったよ。一人で泣いてたときお姉ちゃんが声かけてくれて』

 『私も嬉しかった。死んだときはいろいろなもの呪ったけど、

  今となってはそれも良かったと思えるし』

 『少なくともお前さんを除く我々すべての総意じゃ。

  ありがとの、お嬢さん』

 いや!だめ!!私を一人にしないで!!

 

 『お前さんは一人じゃない。胸を張って前を向くんじゃ』

 

 

 

 

「そう言って、みんなあの女に食われていった」

「・・・少しは落ち着いたか?」

「うん」

「そんじゃ、とりあえずコレ飲みな。あったまる」

 

 そう言いながら零仁はカップにココアを注ぐ。

 

「ありがと・・・・・・・暖かい」

「にしても、”太陽への復讐”、か・・・」

 

 ココアを啜りながら呟いた零仁の言葉に、ペストは睨み付ける。

 

「何、おかしい?」

「いや、ただ――――――――――豪胆だと思ってな」

 

 カラリと笑ってのけた零仁にペストは、

 

(あぁ、そうか私は――――――)

 

 嘲笑や侮蔑、同情の念など一切挟まず、本心から彼は豪胆だと感心しているのだろう。

 

「そんなこと言ったら、俺だって太陽神ぶっころころしてるし

 復讐の一つや二つ、今更喚かないよ」

「そう・・・」

「ああ、そういえば。

――――――今うちのコミュニティは再建に乗り出していてな。

    ”打倒魔王”を掲げて、魔王すら配下に加えようって言いだすぐらいに人手不足でな・・・・・

 

 なあ、ペスト、”ノーネーム(うち)”に来ないか?

 三食おやつ付き、今なら多少の条件をのむだけで神様の《権能》まで付きついてくるんだが・・・」

 

 にやりと、笑みを浮かべたペストは聞き返してくる。

 

「・・・そのおやつって、たまに食べ歩きに変えてくれるんでしょうね?」

「・・かしこまりました、お嬢さん」

 

―――――――――――――――――

 

「というわけで、この子”ノーネーム”で引き取るから。

 で、今から”首輪”付けるから」

「「「「「はぁ!?」」」」」

 

 零仁は宮殿に戻ると、それだけ言って、ペストを連れ屋上へと向かった。

 もちろん引き止められ、質問攻めにあったが

 

「うちの目的はそれなんだから文句を言われる筋合いはない」

 

 とキッパリと言い捨てた。

 

 

 

 そして、今周囲には聞こえないくらいの声量で呪文を紡ぎながら、水銀で魔法陣を描いていく。

 

「よし、これでオーケーっと。あとは契約を交わすだけなんだけど・・・・ 

 なぁ、お前等ホントに見てんの?」

「ええ、先程零仁が仰ったように”ノーネーム”の今後を左右しかねないものに欠席などありえません」

 

 そこには黒ウサギの他にもジン、十六夜、飛鳥、耀。さらにはサンドラとマンドラ、白夜叉の姿もあった。

 彼女らが何を言っても無駄なのがハッキリと理解できた零仁は深いため息をつき、契約を進める。

 

「はぁ~、まぁいいけど。あとで文句は受け付けんぞ。

 

 さてと、とりあえず契約内容の確認から・・・

 『ノーネームへの加入』だな。」

「仕事内容は?」

「基本はメイド系の雑用。有事の際にはプレイヤーとして戦ってもらう。

 何か不満や要望は?」

「不満は特にないわ。ただ、”グリムグリモワール・ハーメルン”の旗印は残してほしいわ」

「ん~、何か装飾品でいいか?」

「ありがとうそれでいいわ」

「んじゃ、これで契約内容の確認は完了と。

 次はこのナイフで陣に、血を一滴落としてもらって――――」

 

 そうして、零仁とペストが血を落とすと、魔法陣が輝き始める。

 そして、零仁は深呼吸をするとペストを肩を抱き寄せ―――――――――

 

 

「は?」

「えっ・・・」

「ほへ?」

「なっ!?」

「きっ」

 

 

「………ん」

 

 唇と唇を重ねた。

 しかし、それは軽いもので終わることは無くだんだんと深く絡まり合うようになっていく。

 ペストも目を見開き、だんだんと顔を赤く染めていく。

 

 周囲の人間の絶叫が上がるが、一切気にせず続ける。

 

「ふ‥‥…んっ‥‥」

 

 微かな水音と共に、二人は深く深く何かを繋ぐかのように舌を絡める。

 陣が一際輝くと、二人は唇を離す。

 唾液が細い糸となり、二人の間に短い橋を架けた。

 

 初めは蕩けたような顔をしていたペストだが、だんだんと羞恥でその表情を変えていく。

 何か抗議の一言でも入れようとしたとき、フッと魔法陣の光が消える。

 そして―――――――――

 

「グっ…‥ぁぁぁ…」

 

 ペストが苦しげにうめきながら、その場にうずくまる。

 己の血液の全てが灼熱の溶岩に変わったかのような感覚。

 心臓が脈打つたびに激痛が全身に駆ける。

 

 しかし、ペストは直感した。

 これは”力”だと。

 気を抜けば、(自ら)すら壊しかねないほどの膨大な”力”。

 それが、体中を駆け巡っているという実感。

 その、事実にペストは―――――――――

 

 

 

 

「ふむ、・・・・失望させてくれるな。と言おうと思ったが、

 その表情が出来るならば問題ないか・・・死ぬなよ」

 

 零仁はそれを何かの見世物でも眺めるかのように、冷酷に見下ろす。

 

 そんな零仁の態度にペストは

 

 ―――――――顔を狂喜に歪めて見上げる。

 

 

「…っ‥‥…ぁっ―――」

 

 グラリと糸の切れた人形のようにその場に倒れ伏すペスト。

 零仁はそれをポケットに手を入れながら見終えると、茶々丸を呼ぶ。

 

「コイツの看病を、あと俺は明日の昼頃まで目を覚まさん。

 目を覚ました後は、魔力の欠乏から大量の食事を要求するから準備しておけ」

「畏まりました。ごゆっくりとお休みください」

「ああ、頼んだ」

 

 零仁は必要な要件を伝えると、即座に”転移”で自らの部屋に戻った。

 茶々丸ははそれを見送った後、主の命を達成するべく行動を開始した。

 

――――――――――――――

 

 その晩、零仁の部屋に来客があった。

 

(ひどい有様だのう)

 

 彼女は零仁の姿を見て心の中で呟いた。

 

(ポケットに手を入れたままだったから、何かあるとは思ってはおったがこれは・・・)

 

 身体に軽く触れながら、零仁の容態を看破していく。

 

(マヒした全身を細く見えにくく紡いだ魔力の糸によって強制的に動かすとは・・・

 随分と無茶なことを) 

 

 それらは全て《雷》の代償だった。

 右腕は、神の雷を放つ触媒代わりに用いたのだ。こうならない方がおかしい。

 全身のマヒは、権能の使用電力の超過によって起こった代償だった。

 

 零仁はペストを運んだ時すでにそれが起こっていたが、先程彼女が診たように、

 自らで自らを操るという芸当でその体を動かしていたのだ。

 

(ほかにも、細かい傷が大量に…どれ、治療の一つでも・・・――ッ

 そうかそういえばこやつの身体はこういったものを弾くと言うておったの)

 

 彼女が零仁の身体に治療をかけようとすると、その力が弾かれる。

 ”神殺し(カンピオーネ)”の肉体は様々な魔術はもちろん、簡単な恩恵の効果すら無効化してしまう。

 

(大きな術式を使えば気づかれる、か。

 ええい、やむ負えん)

 

 意を決すると、彼女は零仁の唇を自らのものでふさいだ。

 ゆっくりとだが、確実に癒えていく。

 

 先ほどまで、苦悶の表情を浮かべていた零仁も、だんだんとその寝息を穏やかなものへと変えていった。

 

 零仁の頭を自らの膝に乗せ、顔にかかった前髪を透く。 

 穏やかな寝息を立て、彼女の膝に気持ちよさそうに頭を預ける零仁を見ていると、どこか落ち着いてきた。

 

(お疲れ様、そしてありがとうの 零仁) 

 

 スッと額に口づけを一つ落として、彼女は部屋を後にした。

 

 

 




少し、終わらせ方が強引すぎたかな?


どうしよう、次の構想が全く湧いてこない!!



まぁ、また次回に

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。