え?クリスマス?柱へし折って王様に殴りかかってましたが何か?
というか、久々に会った友人も実は始めていたらしく。盛り上がったのですが、無課金で☆5 10体って!? 青王・弓王・金時・邪ンヌって!?
何か負けた気分(有償のみ課金)
最初の変化は本陣営のバルコニーから始まった。
突如として白夜叉を黒い風が包み込み、彼女の周囲を球状に包み込んだ。
「なっ、何!?」
「白夜叉様!?」
サンドラは白夜叉に手を伸ばすも黒い風がそれを阻む。
さらには、猛威を振りまく黒風に白夜叉以外の全員が押し出される。
「きゃ・・・・・・!」
「チィッ―――――」
即座に零仁は空中の”ノーネーム” メンバーを《誓約》の空間支配にて回収し、着地する。
「”サラマンドラ”の連中は観客席か?」
「あぁ、”サラマンドラ”の二人の回収に失敗した」
”ノーネーム”一同は舞台側に
”サラマンドラ”一同は観客席側に
何が起こったのか把握しきれていない飛鳥を余所に十六夜が黒ウサギに問う。
「黒ウサギ、魔王が現れた。‥‥‥…そういうことでいいんだな?」
「はい」
黒ウサギが真剣な表情で頷くと、メンバー全員に緊張が走る。
舞台周囲の観客席に目を向けると混乱の渦が巻き起こっていた。我先にと魔王から逃げようとするさまは、まさしく蜘蛛の子を散らすごとき様相だった。
零仁はそれまで熟考の海に沈むために閉じていた眼を開け、行動を決定していく。
「黒ウサギ、一応聞いておくが白夜叉の”
「黒ウサギがジャッジマスターを務めている以上、誤魔化しは利きません」
黒ウサギの言葉に十六夜が軽薄な笑みを深める。
「ってことは連中は、ルールに則った上でゲーム盤に現れた訳だ。‥‥‥‥ハハ、さすが本物の魔王様。期待を裏切らねぇぜ」
「どうするの?ここで迎え撃つの?」
耀の疑問を答えつつ行動の指示を出していく零仁。
「却下だ。ここだと足手まといが多すぎる。これなら空中で迎撃した方が早いだろう。
一先ずは大本の指針が必要になってくる。黒ウサギ、お前の聴覚でサンドラ嬢の捜索と合流を」
「わかりました」
「耀、飛鳥、ジンの三人は一度バルコニーへと戻り白夜叉の話を聞いてこい。情報がほしい」
「わかりました」
即座に頷く三人とは対照的に飛鳥が不満げに頬を膨らます。
「ふん‥…また面白い場面を外されたわ」
「そういうな、飛鳥。少なくとも第一幕で幕引きするほど期待外れじゃあないさ。第二幕の出番、生かすも殺すもお前次第だぞ?」
「‥‥‥確かに今の状況なら情報の一つもほしいわね。…わかったわ白夜叉の所へ向かいましょうか」
「お待ちください」
一同は声のする方へ振り向く。 同じ舞台に上がっていた”ウィル・オ・ウィスプ”のアーシャとジャックだ。
「おおよその話は分かりました。魔王を迎え撃つというなら我々”ウィル・オ・ウィスプ”も助力させていただきます。良いですね、アーシャ?」
「う、うん。頑張る」
「承知した。ならば二人は黒ウサギと共にサンドラ嬢の捜索し、指示を仰いでくれ」
前触れもなく魔王のゲームに巻き込まれたアーシャに、零仁は笑いかける。
「何、気負う必要はない。このような状況だ迷子の子供も出てくるだろう、そんな子らを導くのは君たちの適任だと思うが?
できることをコツコツと、だよ」
「は、はい!」
不安に揺れる瞳に決意の炎が燈る。
そのことをしっかりと見とがめた後、零仁は最後の指示を出す。
「さて、十六夜、レティシア待たせたな。聞いての通りだ、空中で迎え撃つ。一番槍はくれてやる、派手に決めてこい!」
「あいよ」
「わかった」
「あと、レティシアこれをくれてやる」
「こ、これは?――――――――!」
零仁が懐から取り出したものは一本の長槍。全長2.4m、刃に至るまで見事な装飾の施されており、肝心の刃の部分は長さ50cm、幅8cmと槍と呼ぶには大きい―――――俗に言う大身槍と呼ばれる種類の槍だった。
現在残っている武具すら霞むような名槍を軽々しく渡されて、驚きにレティシアは目を白黒される。
しかし、驚きはそれに収まらなかった。
「そのままじゃ なまくらに劣る駄作だが、その技量が武器に認められ、その真価を引き出せた時こそ我が傑作の一本に類する槍だ」
「れ、零仁。さすがにそんなものをただでは貰えないぞ!?」
「誰がタダと言った?それは、前払いだ。お前の忠義が真実だと―――その覚悟が本物だというならばそれだけの槍働きを見せてみよ。
何より、その槍の真価俺では霞んでしまう。戦術的にお前に持たせるのが一番だからな。しっかり励めよ?」
「――!フフ、それだけ期待されているのならばしっかりと答えるのが最大の礼というものだ。
了解した。この槍有り難く頂こう」
これだけでも十分なものにも関わらず、零仁はなまくら以下と称した。何よりそれ以上の能力を備えている槍を
少なくとも今の会話を聞いていた”ウィル・オ・ウィスプ”の二人は敵対どころか菓子折りを持って同盟にしてもらうくらいの気構えに変わっていた。少なくとも、今回の戦いで少しでも目に留まろうと決意する二人であった。
「零仁さんはどうなさるのですか?」
「‥魔王の動きがあれだけと断言できない。反対方向で警戒に当たる。ついてこい茶々丸」
「かしこまりました」
「そういうわけだ、そろそろ行動を開始する。健闘を祈る」
その言葉と共に、零仁は右足の踵を踏み鳴らすと茶々丸と共にその場から消え失せた。
「いやはや、まさか空間操作の類を利用した転移も出来るとは、ますます敵対は避けるべきですね。では、我々も行きますか黒ウサギ殿、アーシャ」
「はい、急ぎましょう。皆さんもどうか、無理のないように」
一同も各々の役目に向かって走り出す。
逃げ惑う観客が叫びをあげたのはその直後だった。
「見ろ!魔王が下りてくるぞ」
上空に目を向けると四つの人影が下りてくる。
十六夜はそれを見るや否や両拳を強くたたき、レティシアに振り向いて叫ぶ。
「んじゃ、行くか!黒い奴と白い奴は俺が、デカいのと小さいのは任せた!」
「了解した主殿」
レティシアが冷静に返事をする。十六夜は嬉々として体を伏せ、舞台会場を砕かんばかりの勢いで境界壁に跳躍した。
―――――――――
「何ッ!?」
黒い軍服姿の男が声を上げた。
十六夜は男の身体を引っつかみ第三宇宙速度を凌駕した速度で男を境界壁に叩きつける。
巨大な亀裂が入ると同時に嘔吐いた男の獰猛な視線が向けられる。
「き、貴様ッ!?」
「会いたかったぜ魔王様。俺にも一曲恵んでくれよ」
ヤハハ!と笑いながら教会壁の岩壁を力任せに踏み抜いて水平に断崖を走る。
振り回された男は、無傷のまま怒号を上げる。
「舐めるな、クソガキ!」
聞こえてきた怒号と共に男が棍のような笛を一振りする。
すると、境界壁の岩壁が生き物のように蠢き十六夜の足を無理矢理止めさせた。
「やってくれるじゃねえか。まさか先手を取られるとは」
「そりゃどうも、『意外性に富んだ男の子』ってのが通知表の評価でね。良くも悪くも期待を裏切ることには定評があるんだ、昔から」
ヤハハ!と、笑う十六夜は脛辺りまで岩盤に岩盤に足を突っ込んで直立している。
互いに地面と平行に直立しながら睨み合っていると、もう一人の女が軍服に話しかける。
「ヴェーザー!早く片付けなさいな!」
「あぁ?ならお前の笛の音で捕まえればいいだろうが。そっちの方が早いだろ」
舌打ちをした白い女がフルートの根を鳴らすと、奏でられた不協和音。
逃げていた観客達がその音色を聞いたせいで膝を突き始めた。
流石にこの異常事態には驚いた十六夜だったが、不敵に笑って目の前にいる女に問いかける。
「へえ?今の音色が魔笛か。ならその女が本命の”
「こ、コイツ…!私の音色が効いていないの!?」
「ラッテン、お前は先に降りてろ。マスターを1人にしたら皆殺しにしちまうからな」
ラッテンと呼ばれた女は再度舌打ちをしながら降りていく。
十六夜はそれを何もせずに見送る。
それを意外そうにヴェーザーは怪訝な瞳を送る。
「解せねえな。何故見逃した?」
「別に?お前を倒してからゆっくり追うさ、
ヴェーザーの顔が驚愕にゆがむ。
そしてその顔に十六夜は確信をもって、嘲笑う。
「ふぅん…”
十六夜は笑いを噛み殺しながら双眸をヴェーザーに向ける。
獰猛な笑みを浮べつつ、頭の中ではその存在についての考察する。
調べた限りでは、”悪魔”という種はその霊格を”世界に与えた影響力・功績・代償・対価”などによって得るものだ。
故にグリム童話の”ハーメルンの笛吹き”が悪魔の霊格を得て顕現した理由は”130人の子供達”の代贄で生まれたのだろう。
「ハーメルンの伝承には数多の考察が存在している。人為的なものから神隠し、黒魔術の儀式、自然災害etc…その中に”ヴェーザー河”が含まれるのは自然災害からの天災。例えばアンタがこの岩壁を歪ませた力は土砂崩れや地盤の崩落などを形骸化した霊格だと推測できる。そしてクリア条件である『偽りの伝承を砕き、真実を掲げよ』というのはハーメルンの事件の真実を暴けという意味………どうだ?満点とは言わずとも80点はいってると思うんだが?」
ヤハハと十六夜が得意げに笑えば、ヴェーザーは値踏みするような視線で上から足先まで一瞥した。
呆れたように頭を掻いて苦笑いる姿は、普通の人間とあまり変わらないようにも見える。
「チッ…ただのガキかと思ったら、随分と頭が回るじゃねえか」
「そうかな?‥‥‥‥ところで、お前を合わせて4人組であってるか?」
「ん?ああ、俺たちは初めっから4人組だな」
「簡単に答えちまってもいいのかよ?」
「構わねえよ、人数ぐらいならな。………まっ、ルールがルールだからな。見所もあるし一応聞いておくが」
「断る」
「早ええなオイ!」
「分かりきってる問答なんてつまんねぇだろ?つーかゲーム早々に降伏リザインなんて求められたら興ざめだろ?お前がコッチに来るならまだしも……それに、此方は魔王会いたさに異世界からやってきたんだぜ?」
(正真正銘、命懸けの魔王とのゲームを俺ははずっと待ち望んでいた。それが夢の一つだったと、胸を張って言ってやる)
「………ほお?そりゃ失礼したな坊主」
この返答に何か思うところがあったのか、ヴェーザーは獰猛に笑い棍のような笛を大きく振り回す。
甲高い風きり音が一体に響き渡ると岩壁が大きく変動した。
足場を作り出し、そこに下りたヴェーザーは悠々と笑って臨戦態勢をとっている。
本気でやる気になってくれたという事実に、十六夜は口元が緩みそうなのを押さえ込む。
「坊主の期待に応える意味で、1つ誤りを正す。俺は魔王じゃねえ、只の木っ端悪魔さ。俺らの魔王閣下は先に落ちた2人のどちらかだ」
眼下へ視線を落せば巨大な陶器の化け物と白黒の斑模様のワンピースの少女の二体がレティシアが交戦している。
しかし様子を見る限りどうも形勢は芳しくないようだ…。
盛大に舌打ちをして、わざと倣岸な物言いで宣言する。
「そうかい。じゃあ前座をさっさと済まさないと魔王様に失礼って話しだ」
「馬鹿を言え。前座はゲームを盛り上げるのが仕事だ。いいクライマックスは良い前座がいるからこそ映えんだよ―――――何より俺にはちょいと仕事があるんでね、悪いが即退場してもらうぞ」
呵っと笑って2人揃って構えを取り、同時に走り出す。
十六夜が全力で振りかぶった拳を、ヴェーザーはその巨大な笛で受け止められる。
激突の衝撃で境界壁に巨大な亀裂が奔り、砂塵と共に岩塊が落ちていく。
拳の威力はさほど手加減もしていないのにヴェーザーは大きく後退しただけで四肢は踏みとどまっている。
真正面から俺の一撃を受け止めたのは〝ペルセウス〟にいた元・魔王のアルゴール以来のこと。
鬩ぎ合いのなかで嬉々として笑う。
「ハハッ!こりゃ確かにいい前座だ!」
「チッ、そりゃこっちのセリフだ!」
怒号一閃。棍術のような巧みさで巨大な笛を薙ぐ。
地上1000m地点での激闘の幕が切って落とされた。
******
「……貴女、ホントに純血のヴァンパイア?」
「手厳しいな!これでも精一杯戦っているつもりだが……!」
金髪を解れさせ、苦々しい声で返すレティシアだが、少女が何度か呼ぶ巨兵の名前を聞きながら、ある事実を認識していた。
(シュトロム……嵐か。ならば、あの巨兵は天災に関連する悪魔の類……!)
神格を失い、かつての力はほとんど失われてしまったが、その経験値は健在だ。どんなに些細な情報でも有益と成り得る魔王とのギフトゲーム。その中でも敵の名前は勝利への方程式の重要なピースに成り得ることも心得ていた。
(どうにかしてあの少女の情報も……!)
「もういいよシュトロム。その子いらない。本命を捜すから、殺そ」
無情な死の宣告をする少女。それが合図となったのだろう、シュトロムと呼ばれた陶器の巨人は、吸収した瓦礫の山を圧縮し、臼砲のように一斉に放出する。
「……!」
顔面に空いた巨大な空洞から、幾多の瓦礫が襲い掛かる。しかしその刹那。レティシアは翼を畳み、急加速して二人の懐に攻め込んだ。
「……あれっ」
「謝らないぞ。騙される方が悪いんだからな」
不敵に笑うレティシア。先程までの劣勢が芝居だったことに気付くがもう遅い。金と黒で装飾されたギフトカードから先ほど零仁から受け取った槍を取り出し、疾風の如き一刺しで少女の胸を貫く。
「やったか!?」
「やってないわ」
抑揚のない声で返す。驚くべきことに、レティシアの突き出した槍は少女の身体を持ち上げただけにとどまる。挙句に、少女の胸元を軽く傷つけただけに留まっていた。
「…いい槍ね。私を攻撃して壊れるどころか刃こぼれ一つしてないんですもの」
少女は無造作に槍を掴んでレティシアを引き寄せると、その手から黒い風を発生させてレティシアを捕縛する。
(な、何だ、この奇妙な風は……!?)
彼女の知識にもない、不気味な風。影のような黒さもなく、嵐のような荒々しさもなく、熱風のような熱さがあるわけでもない。
例えるなら、黒く、温く、不気味。生物のように蠢く風は、徐々にレティシアの意識を蝕んでいく。少女は、レティシアの胸倉と顎を掴んで薄い微笑を浮かべる、
「痛かった。凄く痛かった。だけど許してあげる……あ、あと前言撤回。貴女はいい手駒になりそう」
くすり、と笑う少女。レティシアを蝕む黒い風。
しかし、ほんの一瞬槍の刃に施されていた紋様が淡く、うっすらと光りレティシアを覆う風を弱める。
その一瞬を逃さずレティシアは槍を振るい少女の手から逃れる。が、力が入らず、その場で片膝をついてうずくまる。
「‥‥その槍は一体?―――――!」
少女が驚愕に動きを止めるさなか、紅い閃光がシュトロムを撃ち抜いた。
「……!」
撃ち抜かれた中心から溶解する陶器の巨兵。その場に崩れ落ち、土へと還った。斑の少女が天を仰ぎみる。
「……そう。ようやく現れたのね」
上空にある光はペンダントランプの輝きだけではない。轟々と燃え盛る炎の龍紋を掲げた、北側の階層支配者。サンドラが龍を模した炎を身に纏って見下していた。
少女は、斑模様のスカートを風でなびかせ、微笑を浮かべてサンドラを見上げる。
「待っていたわ。逃げられたのではと心配していたところよ」
「目的はなんですか。ハーメルンの魔王」
「あ、ソレ間違い。私のギフトネームの正式名称は、”
「……二十四代目火龍、サンドラ」
「自己紹介ありがと。目的は言わずとも分かるでしょう?太陽の主催者である白夜叉の身柄の拘束と、星海龍王の遺骨。つまり、貴女が付けてる龍角が欲しいの」
だから頂戴?とでも言いたげな軽い口調で、サンドラの龍角を指さす。
「……なるほど、魔王と名乗るだけあって、流石にふてぶてしい。だけどこのような無体、秩序の守護者は決して見過ごさない。我らの御旗の下、必ず誅してみせる」
「そう、素敵ね、フロアマスター」
轟々と荒ぶる火龍の炎を、黒々とした暴風で受け止める。二つの衝撃波は空間を歪め、強大な力の波となって周囲を満たし、境界壁を照らすペンダントランプを余波のみで砕く。砕けたペンダントランプの残骸は、両者の戦いを彩るかの如く煌めきを放って霧散した。
******
「コミュニティのリーダーとして……【春日部さんを連れて黒ウサギの元へ行きなさい】」
同士の心を支配した。ジンの瞳から意識が薄れていく。
「……わかりました」
ジンは言われるがまま、耀に肩を貸してその場を去っていく。普段の彼であれば断固としてこの場に残る事を譲らなかっただろう。
ジンは、無力ではあるが、その心根は誠実だった。それを理解していた。だというのに、飛鳥は、その誠実さを自分の身勝手で捻じ曲げてしまった。後にジンは、飛鳥を残した事を大いに悔むだろうと理解していながら。
(……本当にごめんね、ジン君)
逃げる二人の背をしばし哀しげに見つめ、背後から現れた敵に、溢れる怒りを以って振り向く。
「あらら……?貴女一人?お仲間は?」
「私に任せて先に逃げたわ。貴女程度の三流悪魔、私一人で十分ですって」
「……ふぅん?」
目を細めるラッテン。飛鳥の表情を勘繰るその瞳は一転して、朗らかに笑った。
「半分嘘ね。それは背負わされた瞳じゃない。自ら背負った人間の瞳……うん、凄く好みかも。あーもう、予想外にいい人材が転がっているじゃない!よかれと思って用意しておきました!とでも言ってるみたい!」
屈託なくケラケラと笑うラッテンを一瞥し、フルート以外の武器を持っていない事を確認する。
(笛吹き道化の伝承は、人とネズミを操る道化。その通りなら、他の種への強制力は小さいはず。条件さえ互角なら、私の支配力が勝るはず……!)
緊張を解すように、大きく息を吸って吐息を整える。仕掛けるなら先手必勝だ。相手を見くびっている今しかチャンスは無い。
飛鳥は、支配のギフトを発動させた。
「【全員、そこを動くなッ】!!」
手にギフトカードを持ち、全員を拘束する飛鳥。唖然としていたラッテンを含め、全員が動きを拘束され、その隙をついて飛鳥はギフトカードから白銀の十字剣を取り出し、一足飛びで懐に飛びこむ。正面から心臓を狙う一突き、それは――――――――
「この、甘いわ小娘!!」
――――――金属音が重なる。ラッテンは拘束を振り払い、圧倒的な後手をものともせず、剣を振り払う。
(……こ、この……!せめて、春日部さんの半分も動けたら……!)
弾き飛ばされた飛鳥は、壁に叩きつけられ、せき込む。
「驚いた……不意打ちとはいえ、数秒も拘束されるなんて。かなり奇妙な力を持っているのね、貴女。いきなり悪魔を服従させようなんていい度胸してるじゃない」
笑いながら強烈な蹴りを飛鳥の腹部に打ち込むラッテン。黒ウサギが用意した防御力に優れたこのドレスが無ければ即死だったかもしれない。
「……!」
こみ上げる嘔吐感を必死に抑える飛鳥。そんな飛鳥に向けて放たれる追撃の蹴り。それにより、飛鳥の意識はものの呆気なく切り取られる。
「綺麗な子。さっきの子もいいけど、総合では貴女の方が素敵かな」
飛鳥を腰から抱き上げ、白夜叉の元に戻るラッテン。気を失って項垂れる飛鳥を見た白夜叉は、白い髪を戦慄かせて睨み付ける。
「貴様……!」
「ふふ、どんなに凄んでも無駄よ。この封印は特殊な功績で得たマスターの主催者権限で作られている。如何に最強のフロアマスターでも、箱庭の力は破れないでしょう?」
「くっ……!」
「幻想魔道書群に所属していた時に貴女の怪物っぷりはよく耳にしたものよ。太陽の主催を争うギフトゲームに勝利した後、自らの力を抑えるために仏門に下った最強の太陽の星霊……世界の境界を預かる、太陽と黄金の魔王、クィーン・ハロウィンにさえ打ち勝つその実力。今後は我々、グリムグリモワ―ル・ハーメルンのために使って頂きましょう」
勝利を確信したかのように高らかな笑い声を上げるラッテン。ステップを踏むかのようにターンを繰り返し、バルコニーに立って両手を広げ、魔笛の旋律を奏でた。
それは、参加者達の意識を蝕み、支配していく。意識を乗っ取られた者たちは、暴徒と化し、同士討ちや破壊活動を始めた。
半ば勝敗が決したかと思われたその時―――――激しい雷鳴が轟いた。
「そこまでです」
「今の雷鳴は・・・・・まさか!」
黒ウサギは輝く三叉の金剛杵を掲げ、高らかに宣言する。
「審判権限の発動が受理されました!これよりギフトゲーム、The PIED PIPER of HAMELNは一時中断し、審議決議を執り行います!プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください!繰り返します!」
同志たちの苦戦をその耳で聞いていた黒ウサギは、はたと気づく。
(零仁さんと茶々丸さんの音が聞こえない!?)
******
「ふむ、飛鳥には少し大変な試練になったかな?」
「ですが、皆さん覚悟は決めて挑んでいられますので問題はないかと思います、
先日、十六夜が倒壊させた塔に腰を掛けてゲームを観戦していた零仁は、そばに仕える茶々丸に問う。
「まぁ、その通りだな。
「はい」
「とりあえず茶々丸、今回のオーダーだが―――――――――」
「かしこまりました、そのように致します。」
そう言って茶々丸は頭を垂れた。
(さて、お前らしっかりとやれよ?
クツリと笑みを浮かべる。
己の勘をかすかにくすぐるこの感覚に波乱の予感を感じながら。
うん、毎度のことながら七割近く原作と一緒とか泣けるな
ぶっちゃけると新しいの考えるの苦手なんですよね
やる気が出れば今年中に二章は終わらせたいなぁ(願望)
では、また次回に