召喚したらチートだった件   作:uendy

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お・ま・た・せ♪

思ったより難航したな、今回(結局前作準拠だし)



というか、ドスケベ公のドスケベたる由縁をしっかり味わったよ。

全くでないんですけど~


十四話~ 造物主たちの決闘

―――――境界壁・舞台区画。”火龍誕生祭”運営本陣営 

 

 

 白夜叉とノーネームの煩悩入り混じった作戦会議を終えて一夜、”ノーネーム”一同はサンドラが用意したバルコニーで決勝の開幕を待っていた。

 十六夜たちが”ジャッジマスター”の必要性ついて語っている中、零仁は横でそわそわしている飛鳥に声をかけた。

 

「どうした?飛鳥。随分と落ち着きがないな」

「‥‥昨夜の話を聞いて落ち着いてなんていられないわ。相手は格上なのでしょう」

「”ウィル・オ・ウィスプ”も”ラッテンフェンガー”も本拠を六桁に構えるコミュニティ。今回はおそらくフロアマスターから得るギフトを欲して降りてきたのだろう」

「……白夜叉から見て春日部さんの勝てる可能性は?」

「ない」

 

 白夜叉の断言に飛鳥は肩を落とす。それに彼女が心配しているのはこのゲームに勝てるかどうかだけではない。昨夜のジンの話では”ラッテンフェンガー”は魔王のコミュニティの可能性がある。場合によっては舞台の上で魔王に襲われる可能性だってあるのだ。

 そんな皆の反応に零仁は 否と 返す。

 

「結構なことじゃないか、少なくとも格下や同格に”挑む”よりかはよっぽどマシだ。それに勝率が無いのは耀()()()()の話だろ?実践なんてあるものしか使えんのだ、相手は格上 それなら盛大に利用してこそ戦いというものだ」

 

 そんなバルコニーの様子を余所に決勝の準備が整い、黒ウサギが開幕宣言を始める。

 

『長らくお待たせ致しました!火龍誕生祭のメインゲーム”造物主達の決闘”の決勝を始めたいと思います!進行及び審判は”サウザンドアイズ”の専属ジャッジでお馴染み、黒ウサギがお務めさせていただきます♪』

 

 黒ウサギが満面の笑みでそう言うと、会場からは熱狂的な歓声と言うには生温い奇声が起った。

 

「うおおおおおおおおお月の兎が本当にきたあああああああ!!!」

「黒ウサギいいいいいいいい!お前に会うために此処まできたぞおおおおおおおお!!!」

「今日こそスカートの中を見せるぞおおおおおおおおおおお!!!」

 

 あまりの歓声に黒ウサギはうさ耳を折って怯んでしまった。ついでにバルコニーの飛鳥の手の中にいたとんがり帽子の精霊も怯えてしまった。飛鳥は内に秘めた情熱を全開にして歓声を上げる観客と、一際異彩を放つ『L・O・V・E黒ウサギ♥』の文字にゴミを見るような目で見ていた。

 すると十六夜が思い出したかのように白夜叉の方を見た。

 

「そう言えば白夜叉。黒ウサギのスカートの中が見えそうで見えないってのはどういう了見だ。チラリズムなんて趣味が古すぎるだろ」

 

 十六夜は昨日、黒ウサギと壮絶な鬼ごっこを繰り広げたが、その中で黒ウサギに勝利する事が出来ず、またスカートの中も見れずとあって若干だが内心は荒んでいた。白夜叉とは昨夜同好の友として認め合っていただけに、落胆の表情を顕していた。

 しかし、白夜叉もそれは同様だったようで十六夜に失望の色が見え隠れしていた。

 

「おんしもその程度の漢じゃったか。おんしは真の芸術を理解を解するものだと思っておったんだがのう」

「‥‥‥へえ?言ってくれるじゃねえか。つまりお前には、スカートの中身を見えなくすることに芸術的意味があるってことだな?」

 

 白夜叉は大きく凄んでみせて続けた。

 

「考えてもみよ、おんしら人類の最も大きな動力源はなんじゃ?エロか?成程それもある。だが時にはそれを上回るのが想像力ッ!未知への期待!小僧よ、貴様ほどの漢ならさぞかし数多くの芸術品を見てきたことだろう!!その中にも未知という名の神秘があったはずだ!!それらの神秘に宿る圧倒的な探求心は、同時に至ることの出来ない苦渋!その苦渋はやがて己の内においてより昇華されるッ!!何物にも勝る芸術とは即ち――――――――――――――――己の宇宙の中にあるッ!!」

「なにッ…………己の宇宙の中に、だと…………!?」

 

 ズドォォォォォォン!!という効果音が聞こえそうな雰囲気で十六夜は硬直してしまった。それが十六夜が受けた衝撃の大きさを物語っていた。

 

「そうだ!!見えてしまえば只の下品な下着達も見えなければ芸術だッ!!!」

「見えなければ、芸術かッ!!」

「今こそ確かめようぞ、その奇跡の一瞬を」

 

 二人は幾星霜の時を共にしたかのように呼吸を合わせて双眼鏡を手に取った。二人はの様子は真剣そのもので余人が入り込むことなど不可能であった。

 

「いや、お前等注目すべき点はまったくもって違うだろ」

 

 そんな二人にしっかりとツッコミを入れる零仁。ならば、と十六夜が切り返す。

 

「なんだよ、芸術品巡りが趣味っつってもそんなもんかよ?」

 

 十六夜の一言に大きくため息をつき、こめかみを抑えた零仁は続けた。

 

「‥‥…二回だ」

「は?」

「黒ウサギが壇上に上がってから二回ほどあの丈のスカートなら二回ほど危ない行動があった。そうでなくともあの純粋な黒ウサギのことだ、それなりに気を使って動くだろう。にもかかわらずそれをやっていない」

 

 白夜叉がハッとした表情になる。

 

「別に俺は黒ウサギの下着を大衆に晒したいわけじゃないし、白夜叉の言う見えそうで見えない健全と非健全の境目ギリギリのロマンも認めよう。だがそれは見られたかもしれないという”女性の恥じらい”があってこそだろ?つまりそういうことだ」

 

 ドゴォォォォォォォォォォォン!!!!という効果音が似合いそうな雰囲気で固まる二人。

 

 

「私は……私はなんてことを」

 

 白夜叉は悔やんだ。見えないスカートは黒ウサギから恥じらいを奪った。結果、今まで一体何度彼女から生まれたであろう芸術を潰してしまったのか。それは決して許されることではない。

 

「何というか、零仁君がそういうこと言うと違和感を感じるわね」

「そうか?まぁ、俺だって男だからな

 さて、そろそろ真面目に応援に戻るぞ。そこの二人」

「「はーい」」

「ふざけているという自覚はあったの!?」

 

――――――――――――――――――

 

 耀は観客席から見えない舞台袖で、三毛猫と戯れていた。

 セコンドについたジンとレティシアは、次も対戦相手の情報を確認していた。

 

「―――――”ウィル・オ・ウィスプ”に関して、僕が知っている事は以上です。参考になればいいのですが…‥‥」

「大丈夫。ケースバイケースで臨機応変に対応するから」

 

 どこかのキャッチフレーズのような返答に苦笑いするジン。

 会場では黒ウサギの手によりゲームが進行し、とうとう試合の開始が近くなる。

 

「さてそろそろですね、耀さん」

「うん、今回はよろしく茶々丸」

 

 そう、耀は今回のギフトゲームのサポートを茶々丸に頼んでいたのだ。

 そんな耀にレティシアが言う。

 

「少々意外だったよ」

「何が?」

「君は助勢を断ると思っていたのでね」

「うん、少し前ならそうだったかもしれないけど 出来ないことは人に頼るってことを教えてもらったから」

「そうか、なら頑張ってくると良い」

「うん、ガンバル」

 

 若人の成長を嬉しく感じつつ、激励を送るレティシアに、耀はいつも通りの調子で答えた。 

 

 

『それでは入場していただきましょう!第1ゲームのプレイヤー、”ノーネーム”の春日部耀と”ウィル・オ・ウィスプ”のアーシャ=イグニファトゥスです!』

 

 

 入場口から中に入れば、黒ウサギが舞台の真ん中で両手を広げている。

 2人が舞台に続く道に出た、瞬間。

 耀の眼前を高速で駆け抜ける火の玉が横切り、仰け反ったのを茶々丸が受け止める。

 

「YAッFUFUFUFUUUUUUuuuuu!!」

「わっ…!」

「おっと…大丈夫ですか?耀さん」

「う、うん…」

 

頭上を見れば、火の玉の上に腰掛けている人影。

強襲した人物――”ウィル・オ・ウィスプ”の少女・アーシャはつまらなそうにゴスロリの派手なフリルのスカートを揺らしながら言う。

 

「なんだよ!無様に尻餅ついてるところを笑ってやろうと思ったのに!」

 

 しかし、耀はその言葉を気にするような性格ではない。

 むしろ彼女の視線は火の玉の中心に見えるシルエットに釘付けだった。

 

「その火の玉‥…もしかして‥‥」

「はぁ?何言ってんのオマエ。アーシャ様の作品を火の玉なんかと一緒にすんなし。コイツは我らが”ウィル・オ・ウィスプ”の名ずつ幽鬼!ジャック・オー・ランタンさ!」

「YaッFUUUUUUuuuuuuuuu!!」

 アーシャが合図を送ると火の玉は取り巻く炎陣を振りほどき、その姿を顕現させる。

轟々と燃えるランプと、実体のない浅黒い布の服.

人の頭の10倍はあろうかという巨大なカボチャ頭。

 

 その姿にバルコニーの飛鳥は狂喜した。

 

「ジャック!ほらジャックよ二人とも!本物のジャック・オー・ランタンだわ」

「ハイハイ分かってるから落ちつけよ、お嬢様」

「飛鳥のそういう姿は珍しいね。とりあえず仲良くなって、祭りのゲストになってもらおうか」

 

 そんな らしくない熱狂的な飛鳥に下の声が聞こえなかったのは幸いだろう。

 舞台の上ではアーシャが耀を見下して笑っていたからだ。

 

「フンッ!”ノーネーム”のくせに私たち”ウィル・オ・ウィスプ”より先に紹介されるとか名前きだっつの。私の晴れ舞台の相手をさせてもらえるだけで泣いて感謝しろよ、この名無し」

「YAHO YAHO YAFUFUuuuuuu~~~~♪」

 

 もしもこの場に飛鳥が居たら、ジャックに抱いていた夢が壊れていたかもしれない。

 黒ウサギとて審判の役目が無かったら、とっくに激怒していただろう。

 

『せ、正位置に戻りなさいアーシャ=イグニファトゥス!あと、コール前の挑発行為は控えるように!』

「はいは~い」

 

 小ばかにしたように元の位置に戻るアーシャ。

 耀は円状の舞台をぐるりと見渡し、最後にバルコニーにいる飛鳥に小さく手を振った。

 飛鳥もそれに気がついて舞台に手を振り返す。

 アーシャはその仕草が気に入らなかったのか、舌打ちをして皮肉げに言う。

 

「大した自身だねーオイ。私とジャックを無視してホストに尻尾と愛想ふるってか?何?私達に対する挑発ですかそれ?」

「うん」

 

 カチン!と来たように唇を尖らせるアーシャ。どうやら効果はテキメンらしい。なにか言い返そうとするも、黒ウサギによって中断させられた。

 

 

『―――それでは決勝戦第一ゲームの開幕前に、白夜叉様から舞台に関してご説明があります。

 ギャラリーの皆さまはどうかご静聴の程を』

 

 ―――刹那、会場からあらゆる喧騒が消えた。

 バルコニーの前に出た白夜叉は静まり返った会場を見渡して緩やかに頷いた。

 

「うむ。協力感謝するぞ。

 私は何分、見ての通りの『お子様体型』なのでな。大きな声を出すのはちと苦手なのだ。

 ―――さて、それではゲームの舞台についてだが…………まずは手元の招待状を見て欲しい。其処に『ナンバー』が書いておらんかの?」

 

 観客席では個々様々ながら、招待状を手にしてナンバーを見ていた。

 ある者は、慌てて招待状を探し、

 ある者は、招待状を置いてきた事を悔やんでいた。

 そんな観客席を温かく見詰める白夜叉は説明を続けた。

 

「では其処に書かれているナンバーが、我々ホストの出身外門―――”サウザンドアイズ”の『三三四五番』となっている者はおるかの?

おるのであれば招待状を掲げ、コミュニティの名を叫んでおくれ」

 

 しばらくざわざわとした後に一人の少年が招待状を掲げた。

 

「こ、ここにあります!!

コミュニティ”アンダーウッド”が三三四五番の招待状を持っています!!!」

 

 おぉっ!!という歓声が上がった。

 白夜叉は少年にニコリと笑いかけ、バルコニーから霞のように姿を消すと次の瞬間には少年の前へ立っていた。

 

「ふふ。おめでとう、”アンダーウッド”の樹霊(コダマ)の童よ。

 後に記念品でも届けさせて貰おうかの。

 宜しければおんしの旗印を拝見しても宜しいかな?」

 

 そういった白夜叉は少年から木製の腕輪を見ると、微笑んだ。

 そして、いつの間にかバルコニーへと戻っていた。

 

「今しがた、決勝戦の舞台が決定した。

それでは皆の者、お手を拝借」

 

 白夜叉が両手を前に出す。それに習って全観客が、両手を前に出した。

 茶々丸と耀も互いの顔を見合わせながらも、両手を前に出した。

 

 ―――パン!と会場一致で柏手一つ。

 

 その所作一つで―――

 

 ―――全ての世界が一変した。

 

――――――――――――――――

 

 劇的な変化の後バフンと少し意外な着地音と共に樹木の上に降り立つ。否―――――

 

「この樹……ううん、地面だけじゃない。

此処、樹の根に囲まれた場所……?」

 

 上下左右、その全てが巨大な樹の根に囲まれている大空洞。耀はその強力な嗅覚によって土のにおいを嗅ぎ取り答えにたどり着いた。

 耀の独り言を聞いていたアーシャが小馬鹿にしたように耀を笑う。

 

「あらあらそりゃあ教えてくれてありがとよ。

そっか〜此処は根の中なのね〜」

 

 そんなアーシャの発言にフィ、っと無関心そうに顔を背ける耀。この行動に挑発的な意味はなかったのだがアーシャを苛立たせるには十分だったらしい。

 ジャックと共に臨戦態勢に入るアーシャを、耀は小声で制した。

 

「まだゲームは始まっていないよ」

「はぁ?何言って……」

「勝利条件も敗北条件も提示されていない。これじゃあゲームとして成立しない」

 

 耀の言葉にむっとしたアーシャだったが、正論なので何も言い返せない。

 ツインテールを振り回し、根の大空洞を見回しながらぼやいた。

 

「しっかし、流石は星霊様ね〜。

私ら木っ端悪魔とは比べ物にならねぇわ。

こんなヘンテコなゲーム盤まで持ってるんだもん」

 

 

 突如空間に一筋の亀裂が入った。

 亀裂の中から現れたのは輝く羊皮紙を持った黒ウサギ。

 黒ウサギは地面に降り立つと、”契約書類(ギアスロール)”を振りかざし、書面の内容を淡々と読み上げた。

 

「【ギフトゲーム名”アンダーウッドの迷路”

勝利条件

一、プレイヤーが大樹の根の迷路より野外に出る。

二、対戦プレイヤーのギフトを破壊。

三、対戦プレイヤーが勝利条件を満たせなくなった場合。(降参含む)

 

敗北条件

一、対戦プレイヤーが勝利条件を一つ満たした場合。

二、上記の勝利条件を満たせなくなった場合。】

 

 

―――”審判権限(ジャッジマスター)”の名において、以上の内容に両者不可侵で有ることを、御旗の下に契ります。

御二人とも、どうか誇りのある戦いを。

 

此処に、ゲームの開始を宣言致します!」

 

 黒ウサギの宣誓が終わる。それがゲームの開始を告げるコールとなった。

 互いを睨みながら相手の動向を伺う。 

 先に動いたのはアーシャだった。

 

「睨み合っても先に進まねぇし、先手は譲るぜ」

「‥‥‥…?」

「ま、さっきの一件があるしね。あとでイチャモンつけられるのも面倒だし?」

 

 相変わらずの余裕の表情に耀は試合開始前から気になっていた事を尋ねた。

 

「貴女は………”ウィル・オ・ウィスプ”のリーダー?」

「あ、そう見える?なら嬉しいんだけどなあ♪けど残念なことにアーシャ様は」

「そう。わかった」

 

 アーシャはリーダーと間違われたのが嬉しかったのか満面の笑みで答えていたが、耀はそんな彼女を放置して背後の通路を疾走していった。

 アーシャが無駄に喋っている間に、耀は優れた五感を駆使して正しい通路を探すことをしていた。その為、耀にとってこのゲームは迷路としては機能していないも同然だった。アーシャがリーダーでないこともわかったのでさっさとゲームをクリアするつもりで耀は走っていた。

 

「って、え?………ちょ、ちょっと…………!?」

 

 そのアーシャを完全に勘定に入れていない行動は、アーシャの堪忍袋を炎上させるには十分過ぎた。現に、彼女のツインテールは重力を無視して天へと反り上がっていた。

 

「オ…………オゥゥゥウウケェェェェイ!とことん馬鹿にしてくれるって訳だ!行くぞジャック!樹の根の迷路で人間狩りだ!!」

「YAッFUFUUUUUUUUUuuuu!!」

 

 アーシャとジャックは怒りながらも決して油断なく炎を木の根に走らせるが、耀はグリフォンの風のギフトを使って華麗に躱した。

 ジャックの炎を躱されたことに舌打ちするアーシャ。

 

 対する耀はまったく違うことに舌を巻いていた。

 

(いきなり動いたのに、しっかりと着いてきてる!?)

 

 そう、試合開始直前 耀は茶々丸からこう言われていた。

 

―――私はあくまで脇役です。お気になさらずご自由に動いてください。しっかりと引きだたさせれ頂きますので―――

 と、だからこそ耀も茶々丸のことすら引き離す気で不意打ち気味のスタートダッシュをかけたのだ。

 しかし、茶々丸はしっかりと着いてきている。むしろ、彼女はメイド服のため耀よりも動き難そうなのに、だ。

 

(さすが。零仁に作られただけはある)

 

 そんな余計な思考をしていながらもアーシャの攻撃を躱していく。

 

「あーくそ!ちょろちょろ同時に動きやがって!三発同時に打ち込むぞジャック!!」

「YAッFUUUUUuuuuuu!!」

 

 先ほどよりも勢いの増した三本の炎。対する耀は耀はギフトを使うこと無くくぐり抜けた。

 

「な…………!?」

 

 絶句するアーシャ。今度こそ耀は業火の正体を確信する。

 それは即ち”ウィル・オ・ウィスプ”の篝火の正体――――大地からあふれ出た、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。

 耀が鷲獅子のギフトで炎の軌道を曲げられたのも、噴出したガスを霧散させていたためである。

 アーシャは種が見破られたことに歯噛みする。

 

「くそ、やべぇぞジャック‥‥‥!このままじゃ逃げられる!」

「Yaho‥‥…!」

 

 走力では俄然耀が勝っていた。

 アーシャはどんどんと離れていく背中を見つめ―――――――諦めたようにため息をついた。

 

「‥‥クソッタレ。悔しいが後はあんたに任せるよ。本気でやっちゃって、()()()()()()

()()()()()()

 

 え?と振り返る。遥か後方にいたジャックの姿はなく、二人のすぐ前方に霞のごとく姿を現した。

 巨大なかぼちゃの陰に驚愕した耀は思わず足を止める。

 

「嘘」

「嘘じゃありません。失礼、お嬢さん」

 

 ジャックの真っ白で大きな手が耀を、強烈な音と共に薙ぎ払う。

 

―――――――バンッ―――――――

 

 ――――――はずだった。

 耀が目を開けたときその目に移った光景は、目の前には優雅にほほ笑む茶々丸と その茶々丸に蹴り飛ばされたジャックの姿だった。

 

「本当に失礼ですよ。まとめて吹き飛ばそうというその考え方も、女性を殴り飛ばそうというその行動も。

 お詫びに、私と一曲踊っていきなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 




来週中には投稿します。

では、また次回に

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