召喚したらチートだった件   作:uendy

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待たせたな(ドヤァ

ってか、呼び符八枚でオルタ様お二人がお越し下さったんだが・・・・・

もう今年の運は完全に使い果たしたな(歓喜)


十三話~ 笛吹き道化

 謁見の間にて魔王襲撃の際の段取りを決めた後、俺は三人と分かれて一人 煌炎の都を散策していた。

 やはり主な理由は知的好奇心のせいでもあったが、”ゲームに向けて土地を知っとく必要がある”とか言ったら一発でOKが出た。

 

 

うん やっぱりいいな、新しい土地っていうのは。ワクワクしてくる。

『ええ、やはりこれだけ距離が離れると環境も変わるためか、文化様式も東とは全く違いますね』

このガラスの歩廊も見事だな。昼間の夕日に照らされたような朱色に染まったものも良かったが、夜だとまた違った美しさがある

『何よりこの歩廊が芸術品ではなく、あくまで日常の一つとして組み込まれている点は素晴らしいですね』

あの”魔法世界”にも驚かされたが、美術品的な見応えならば負けていないな

『あの世界は一種の異世界でしたからね。何より科学技術ではなく魔法技術が主流の世界なんてそうそう考え付きませんよ』

確かにな~ おかげでいい経験が出来たよ。

それにしてもステンドグラスが多いな。モチーフは 川・嵐・疫病・ネズミ 作者が不在そして、これらの製作様式は――――――

 

 

「ルネサンス調、か・・」

「よく知ってるわね。あなたは芸術家や職人の類なのかしら?」

「ん?」

 

 声を掛けられたほうを見ると斑模様のスカートの幼女が立っていた。

 

「・・・・ふむ。いいや別段そういった創作関係のものはやっていないよ、ただただ博識なだけさ」

「そう、でもそれなりの数の美術品を見てきたのね」

「まぁ、そうだね。そういうの嫌いじゃないし。それよりお嬢さん、君はこのあたりの人かな?」

「いいえ、違うわよ。どうして?」

「いや、ただこんな時間に一人で出歩くのは感心しないなと思ってね」

「・・・あなた。それ少し失礼よ」

 

 ジト目で睨んでくる彼女に苦笑交じりの謝罪を言う。

 彼女は彼女で「仕方ないか」とすぐに気を取り直す。

 

「それに、地元の子なら暇があったら案内してもらおうと思っただけだよ」

「あら、こんな時間に観光?それに下調べもしてないの?あなたならそういうのしっかりしてそうだけど」

「いや~そういったこともやるにはやるんだけど、今回はアクシデント続きでね。そんな時間すら取れなかったんだよ」

「そう・・・・いいわ、案内してあげる」

「ん?いいのか?俺としては願ったり叶ったりな訳だが・・」

「いいのよ、それにただじゃないわよ?とりあえずあれが食べたいわ」

 

 そう言って彼女は、ワッフルの店を指さした。

 

「かしこまりました、お嬢様。僭越ながらエスコートさせていただきます」

 

 俺はクツリと笑って、芝居がかった口調で彼女に言った。

 

 

*******

 

「うん、美味い。ローストしたピーナッツのクッキーにほろ苦いキャラメルがけか、良いセンスだ」

「私の方もおいしいわよ」

「お、じゃあ半分ずつな」

 

 零仁は自分のクッキーを半分に割って口をつけていないほうを彼女に差し出す。彼女も同じように零仁に渡す。

 それを零仁は口で受け取った。

 

「っ! 行儀悪いわよ」

「大丈夫大丈夫 気にすんな気にすんな。あっ、こっちも美味い

 ビスケットにチョコレートがけ、ナッツはカシューナッツに変えてる辺りこだわりを感じるな」

「・・ええ、見た目は少しアレだったけど良いものを作るわね」

 

 そんな風に談笑しながら、二人は美術品や街並みの散策そして屋台で買い食いをしていた。

 

「ちょっと喉乾いたな。丁度いいからあの屋台でなんか買うが、お前は?」

「うーん・・・・紅茶ラテにするわ」

「うお、鴛鴦茶がある・・だと・・・俺これにしよ」

「何それ」

「簡単に言うと、コーヒーと紅茶のブレンドにシロップとミルクたっぷり入れた飲み物だよ」

「それは・・・・」

「いや意外とイケるんだって、これが――――とりあえず、鴛鴦茶・アイスと紅茶ラテのー・・・」

「・・ホットで」

 

 店員さんから飲み物を受け取って、近くのベンチに腰掛ける。

 今もなお鴛鴦茶に疑念のまなざしを向けてくる彼女に零仁は飲み物を差し出す。

 

「そんなに気になるなら、とりあえず一口飲んでみろよ。少なくとも売り物に出来る味なんだからさ」

「それもそうね。・・・・・ホント意外とおいし――っ!」

 

 飲んだ瞬間にカッと頬を赤くする彼女を訝しんだ瞬間に、その答えに只りつく。

 

「すまん、ストロー抜くかしないとダメだったな。なんか妹みたいな感じで扱ってたから忘れてたわ」

「・・いえ、それはいいの。いや、レディとしては見過ごせないけど

 それにしてもあなた妹いるの?」

「いや、正確には”妹分”って感じだな。元々俺は孤児院育ちでな、妹 弟いっぱいいたよ

 それに今の”ノーネーム”もちびっ子たちがいっぱいだからな似たような感じだしな」

 

 零仁の言葉に彼女は驚いたように尋ねる。

 

「あなた”ノーネーム”なの?」

「ああ、何所にも旗印がないだろ?つまりそういうことだ」

 

 コミュニティに所属する者は、通常は自分のコミュニティの旗印の入った何某かを身に着けている。

 しかし、コミュニティの名と旗印を奪われている”ノーネーム”にはそれがないのだ。

 

「・・・・そう。ねえ、一つ提案があるんだけど」

「なんだ?」

「あなた、私のコミュニティに入らない?」

()()コミュニティか、・・・悪いけど辞退させてもらうよ」

「驚かないのね」

「それを言うなら、この大祭の主賓も一緒だろ?

人の上に立つのに力は要らないよ。要は下の者が認めればいいんだからな」

「力ならあるわよ?」

「いや、あくまで一般論だよ。でも、それで"ノーネーム"を引き入れようとするなんて随分と人手不足なんだな」

「私のコミュニティは最近出来たばかりなのよ。

そんなわけでどんな立場であれ、()()()人材はいくらでも欲しいのよ」

「なるほどな。だかすまんな、存外今が気に入ってしまっているんでな」

「そう、・・・・・まぁ、機会はまだあるし」

 

 彼女のポツリと呟いた言葉に、反応を示さずに続ける。

 

 

「だか、そう言うことならそろそろ帰るべきじゃないか?というか、俺もそろそろ戻らんと面倒なことになりそうだしな」

「それもそうね。では、さようなら」

「ああ、()()()

 

 

すっと人混みの中の消えていく彼女を見送って、俺もその場を後にした。

 

 

『マスターも人が悪いですね』

そういうなよ、()()()()()だぞ?

なら、ありがたく利用させて貰おうじゃないか

『彼等も大変ですね』

遅かれ早かれこうなったんだ。むしろ、ラッキーな部類だな

さて、()()()()()()()()()()()()

 

 

――――――――――――――――

 

 

「ああ、この店ですか?別に移動してきたわけではありません。”境界門(アストラルゲート)”と似通ったシステムと言って分かります?」

「いや全然」

「要約すると、数多の入り口が全て一つの内装に繋がるようになっているの。

 例えば蜂の巣・・・・・ハニカム型を思い浮かべてくれればわかりやすいですよ」

 

 来賓室の近くを通ると十六夜といつもの女性店員の話し声が聞こえた。

 

「随分面白そうな話をしているな」

「お、戻ったか零仁」

「あ、零仁さん 戻りましたか。皆さんお風呂に入られてますよ」

「あぁ、もう皆上がるだろうし またすぐに話し合いもあるだろうからその後にするよ」

 

 ん?と疑念の表情を浮かべる女性店員に、人差し指を口元に当て、ウインクする。

 

「あら、そんなところで歓談中?聞いたわよ、魔王が来るんですって?」

 

 浴衣を着た女性陣がお風呂から出てきた。どうやら白夜叉から入浴中に今回のことを説明されていたようだ。

 

「おぉ、これはなかなかいい眺めだ。そうは思わないかお前ら?」

「はい?」

「ん~?」

「黒ウサギやお嬢様の薄い布の上からでもわかる二の腕から乳房にかけての豊かな発育は扇情的だがスレンダーながらも健康的な素肌の春日部やレティシアの髪から滴る水が鎖骨のラインを流れ落ちる様は視線を自然に慎ましい胸の方へと誘導するその結果、はだけた浴衣から覗く上気した桃色の肌をさらに際立たせるのは確定的に―――――」

 

 スパァーン‼︎

 

 速攻ツッコミが入る。

 もちろん耳まで紅潮させた飛鳥と、ウサ耳まで紅潮させた黒ウサギのものである。

 

 

「変態しかいないのこのコミュニティは⁉︎」

「白夜叉様も十六夜さんもみんなみんなお馬鹿様ですッ‼︎」

「ま、まぁ二人とも落ち着いて」

 

 慌てて宥めるレティシアと無関心な耀である。黒ウサギの言いようだと白夜叉にも同じようなことを言われたのだろう。その白夜叉は同好の士を得たように十六夜と握手をしている。

 

「でも、十六夜の言わんとすることはわからないでもないよ。

 しっとり濡れた肌と浴衣の色香は確かにあし、何よりみんな美人さんだからね」

「なんか、あなたに言われると素直に喜べないわね」

「え?なんで?」(←宝塚でも十二分に通用しそうな女顔)

 

 飛鳥の言葉の真意が本気でわからん、少なくとも女なら一発で性別がバレるのに。

 

「・・・君も大変ですね」

「・・・はい」

 

 一方は組織の主力が問題児

 一方は組織のトップが最大の問題児

 そんなむなしい哀愁を分かち合う二人を見て、俺はほのかに同情する。

 まぁ、ジンの気苦労を和らげてやる気は一切ないけどね。

 

――――――――――――――――

 

 その後、レティシアと女性店員を除いた一同は白夜叉の私室に集まっていた。

 

「それでは皆の者よ。第一回、黒ウサギの衣装をエロ可愛くする会議を」

「始めません」

「始めます!」

「始めませんっ!」

 

 白夜叉に悪ノリする十六夜。速攻で断じる黒ウサギ。

 

「ま、冗談はさておき・・・・・・黒ウサギには明日の決勝で審判を務めてもらいたい」

「あやや。それはまた突然ですね?」

「うむ。おんしらが起こした騒ぎで“月の兎”が来ていると公になっての。明日のギフトゲームで見られる、と期待が高まっているらしい。“箱庭の貴族”が来臨したという噂が出た以上、出さぬわけにもいくまい。黒ウサギには正式に審判・進行役を依頼したい。別途で金銭も用意しよう」

 

 なるほど、と一同で頷く。

 

「分かりました。そういう事情ならば、是非ともやらせて下さい」

「よろしく頼む。・・・・・・それで、明日の衣装は例のシースルーのビスチェスカートを」

「着ません」

「着ます」

「断固着ません!! あーもう、いい加減にしてください十六夜さん!!」

 

 茶々を入れる十六夜。ウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。

 それまで無関心だった耀は、思い出した様に白夜叉に向き直る。

 

「白夜叉、私達が明日戦う相手はどんなコミュニティ?」

「すまんが、それは教えられん。主催者がそれを語るのはフェアでなかろう? 教えてやれるのはコミュニティの名前までだ」

 

 パチンと指を鳴らす白夜叉。

 全員の目の前に、明日のギフトゲームの内容を記した羊皮紙が現れた。その羊皮紙を見て、十六夜が物騒に笑う。

 

「へえ? “ウィル・オ・ウィスプ”に、“ラッテンフェンガー”か。明日の敵は、幽霊とハーメルンの笛吹きか?」

 

 え?と飛鳥が声を上げる。

 しかしそれは、黒ウサギと白夜叉の驚嘆の声にかき消された。

 

「ハ、ハーメルンの笛吹きですか!?」

「おい、小僧。どういう事だ。詳しく話せ」

 

 剣呑さすらを感じる白夜叉の厳しい声に、十六夜は目を瞬かせる。それだけ二人の驚き様は尋常ではなかった。

 

「おんし等は知らぬだろうが・・・・・・“ハーメルンの笛吹き”とは、とある魔王の下部コミュニティだったものの名だ」

 

 場の緊張感が一気に高まる。全員が白夜叉を注視する中、白夜叉と黒ウサギは説明を続けた。

 

「魔王のコミュニティの名は“幻想魔導書群(グリムグリモワール)”。全ニ○○編に及ぶ魔書から悪魔を呼び出した驚異の召喚士が総ていたコミュニティだ」

「その魔王は既にこの世を去っています。・・・しかし十六夜さんは“ラッテンフェンガー”が”ハーメルンの笛吹き”だと言いました。童話の類はあまり詳しくありませんし、万が一に備えご教授して欲しいのです」

 

 黒ウサギの緊張した顔は、もしも魔王が現れた時のことを警戒してのものだろう。

 十六夜はしばし考えた後、悪戯を思いついたようにジンの頭をガシッと掴んだ。

 

「なるほど、状況はよくわかった。そういうことなら、ここは我らが御チビ様にご説明願おうか」

「え?あ、はい」

 

 一同の視線がジンに集まる。ジンも承諾したものの、突然に話題を振られて顔を強張らせる。

 十六夜が何やらジンに耳打ちしている。

 ジンはコホン、と一度咳払いし、居住まいを正し、ゆっくりと話し始めた。

 

「“ラッテンフェンガー”というのは、ドイツ語の意味で『ネズミ取りの男』を示します。このネズミ捕りの男とはグリム童話の魔書にある。”ハーメルンの笛吹”を指す隠語です。『ハーメルンの笛吹き』の舞台となったハーメルンの街には、こんな碑文が残されています。

 

~ 一ニ八四年 ヨハネとパウロの年 六月ニ六日

 

あらゆる色で着飾った笛吹き男に一三○人のハーメルン生まれの子供らが誘い出され、丘の近くの処刑場で姿を消した~

 

 この碑文を基に作られたのが、”ハーメルンの笛吹”の名で綴られる物語の原型です」

 

「ふむ。ではその隠語がなぜにネズミ捕りの男なのだ?」

「グリム童話の道化師が、ネズミを操る道化師だったとされているからです」

「ネズミを、操る・・・!?」

 

 ジンの言葉に、飛鳥が息を呑んだ。

 驚きの篭ったその姿に、何かあったのかとも思うが今聞くべきではないだろう。

 

「ふーむ。”ネズミ捕り道化(ラッテンフェンガー)”と”ハーメルンの笛吹き”か・・・・となると、滅んだ魔王の残党が火龍誕生祭に忍んでおる可能性が高くなってきたのう」

 

 

「いずれにせよ、“ラッテンフェンガー”には警戒した方が良さそうだな。無論、打てる手は既に打ってあるが」

「ほう? どんな手を打ったんだ?」

 

 俺がが尋ねると、白夜叉は無言で宙に手をかざした。すると、そこに一枚のギアスロールが現れる。

 

『~ 火龍誕生祭 ~

 

・参加に際する諸事項欄

 

一、一般参加は舞台区画内・自由区画内でコミュニティ間のギフトゲーム開催を禁ず。

        

二、"主催者権限"を所持する参加者は、祭典のホストの許可無く入る事を禁ず。

 

三、祭典区画内で参加者の"主催者権限"の使用を禁ず。

 

四、祭典区域にある舞台区画・自由区画に参加者以外の侵入を禁ず。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

                      “サウザンドアイズ”印

                        “サラマンドラ”印』

 

「この様に、私の主催者権限を用いて祭典の参加ルールに条件を加えさせて貰った」

「”参加者以外はゲーム内に入れない”、”特例を除き参加者は主催者権限を使用できない”。確かにこのルールなら魔王が襲ってきても”主催者権限”を使うのは不可能ですね」

「うむ。押さえる所は押さえたはずだ」

 

 ふむ・・・・ま、()()()()()()()()だな。あとは、向こうさんがどう動くかだな。

 俺は話半分にし、計画を練っていった。

 

 

 

 

 




ダメだ。どうしても茶々丸が空気になる。

完璧な使用人の立ち振る舞いをするから、人の斜め後ろから自然とフレームアウトしやがって画面(描写)に入らない。
マジでどーしよ

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