あと、うp主の中の貨幣価値は
銅貨≒百円
銀貨≒一万
金貨≒百万って感じです
あくまで雰囲気って感じですので悪しからず
「―――――――と言う原理で声を録音した宝石を十六夜に渡していたんだよ。ちなみに中身は
十六夜に渡していた、録音の術式を組み込んだ宝石の説明をする零仁。
サラリと流した零仁の言葉を鵜呑みにして、二人は続ける。
「それだけやるのなら、初めから十六夜君と一緒に行っていれば良かったんじゃないかしら?」
「それは私も気になっていた。なんで零仁はこっちに回ったの?」
「ん~? そりゃ、お前ら。俺たちの基本収入は俺たちと同じ外門の連中とのギフトゲームだろ?
そいつらが、蛇神や星霊を打倒したような奴をゲームに参加させると思うか?自分が負けるとわかってるのに?」
「・・・まさか、あなたそこまで計算して、全部十六夜君に押し付けようと?」
「ま、概ねそんなもんだよ。もう少し付け足すなら、どうせあいつは手加減も自重もせず連戦連勝して出禁喰らうんだから、被害を最小限に抑えたかったって感じかな?」
「そ、それは・・・」
「零仁って遠慮ないよね、いろいろと・・・」
零仁の言葉に、二人が少し引き気味に答える。
「そんなこと言ったって、俺たちの勝ち負けの影響を受けるのは俺たちだけじゃないんだ。多少がめつくても あわてて金策に奔走するよりはずっとマシだろ?」
そのような会話を繰り広げていると少々異変が起き出した。
まだ凍りきっていない壁や天井から
「!? こ、これは?」
「!・・・・・」
慌てて交戦体勢を整える二人だが、
「
零仁が一睨みと共に言い放ったその覇気だけで逃げ帰ってしまった。
「い、いまのは?」
「今のは”アルゴールの魔王”の力の一端だろう。
アルゴル、というのはペルセウス座の恒星の名前だ。ちょうどペルセウスが持つゴーゴンの首にあたる位置にあるから、石化のギフトを持つ怪物になるのだろう。そして、ゴーゴンには魔物を生み出したという伝承も存在するから、その辺から力を持ってきてこの宮殿を魔物化したんだろうさ」
「・・・じゃあ、なんでそれが収まったの?」
「・・・・・・・・聞きたい?」
「「いえ、結構(です)」よ」
零仁の意味深な間に二人は耳をふさぐことを選択したようだ。
好奇心は猫をも殺すという、その選択の正しさを物語った諺だろう。
だが、事態はまたもや急変する。
今度は地震と、轟音が鳴り響き、一階の天井が罅割れ落ちてきた。
「キャっ!!・・・・あれ?私たち埋まって無い?
「・・・・・・・・・・まだ生きてるね」
「安心しろ二人とも。水樹の周りにはすでに結界張ってあるから。それよりこれ、十六夜の仕業だな ったくめんどくさがって宮殿ごと壊しやがったな」
そう言いながら瓦礫を吹き飛ばし、三人が外に出ると案の定 瓦礫の上に腰掛けて、余裕たっぷりでルイオスとアルゴールの魔王を見下ろす十六夜の姿があった。
「おいこら、十六夜。テメェ下の構造ぐらいわかってるだろ、上からぶっ壊してんじゃねえよ」
「ん?おうやっぱり生きてたか。それよりもお前のせいだろ、そんなことになってんのは なんだあの罵倒は御蔭であのボンボンは豹変して暴れまわるし、その姿を見て俺は戦闘中に呼吸困難になりかけたんだぞ」
「だから言ってたろ?豹変するって」
「あんな完璧に、罵倒がハマるとは考えもしてねーよ」
「んじゃ、お前のミスだ」
そんな風に冗談を言い合う二人。しかし、飛鳥と耀は少し事情が違った。
何故なら、自分たちが居たであろう部屋以外 すべて石化してしまっているのだから、この状況に混乱していても仕方がないだろう。
「そんなことより、あの罵倒は何なのですかー!!おかげで黒ウサギたちは大変な目に―――――」
「ちょ、ちょっと零仁君、これは一体どういうことなの!?」
「いや、ゴーゴンで一番有名な石化の力でこのゲーム盤全部を石に変えたんだろ?」
「ああ、そういうことだな」
「・・・じゃあなんで、私たちは石になって無いの?」
「俺が結界で石化を防いだから。とりあえず落ち着け二人とも」
混乱して、黒ウサギを撥ね退ける二人を落ち着けるべく、零仁は種明かしを行った。
しかし、悠長に話している場合ではなかった。
「このクソ”名無し”共がちょうどいいぶち殺してやるっ!!!」
ルイオスがはちきれんばかりの怒気と共に宮殿の瓦礫から魔物を生み出し、外の零仁たち3人に襲い掛からせる。
「―――――――失せろ、と言ったはずだぞ?」
「「「なっ」」」
またもや、一睨みで魔物を引込めさせる零仁の姿に ルイオスだけではなく、ジンと黒ウサギも一緒になって唖然としていた。
「・・・・・ったくその程度で逃げるなら掛かってくんな。
にしても、やっぱり十六夜。お前なんかしたろ、俺だけじゃなく二人にも矛先が向いたのはおかしいからな」
「いや?ただ、お前の罵倒で怒り狂ってるボンボンを見て爆笑してただけだが・・・あと、
「ありゃ、ほんとに何もしてないのな」
「「いや、間違いなくソレ(でしょうが!!)」でございますよ。おバカ様!!」
飛鳥と黒ウサギが同時にツッコむ。
え?という表情になる十六夜と零仁にそれぞれ、黒ウサギと飛鳥がなおも問いただす。
「ねぇ、零仁君。貴方”軽く”って言っていたわよね?軽くっていったいどんな軽さならあんなになるのかしら?」
「十六夜さんもですよ!あれは”軽く”ではなく”ぞんざい”と言うのですよ!!」
しかし、それまで悔しげに顔を歪めていたルイオスは―――――――スッと真顔に戻り、極め付けに凶悪な笑顔になり、
「もういい。いくら、お前が石化を防げてもこの戦いに勝てばいいんだ、終わらせろアルゴール!」
―――――――石化のギフトを解放した。
褐色の光が十六夜たちを飲み込まんと迫る中、十六夜と零仁だけは一切慌てていなかった。
零仁は即座に黒ウサギと飛鳥を保護して十六夜に言う。
「あれくらい自分でどうにかしろよ」
「――――――・・・・カッ。ゲームマスターが今更狡いことしてんじゃねぇ!!」
――――――――――褐色の光を踏み砕いた。
・・・・比喩のしようがない。アルゴールの放つ褐色の光は十六夜の一撃にによって、ガラス細工のごとく砕け散った。
「馬鹿なっ!?」
「せ、”星霊”のギフトを破壊した!?」
「あ、あり得ません! あれほどの身体能力を持ちながら、ギフトを無効化するなんて!!」
逆廻十六夜は自らの肉体に”天地を砕く恩恵”と”恩恵を砕く力”が両立している。それこそがあの白夜叉ですら”ありえない”と結論付けた訳。
「さあ、続けようぜゲームマスター。”星霊”の力はそんなもんじゃないだろ?」
「残念ながら、それ以上は無いと思います。拘束具をつけられていた時点で気付くべきでした・・・・・ルイオス様は星霊を制御するには未熟なのでしょう」
途端、ルイオスの瞳に憤怒の炎が燃え上がる。黒ウサギを射殺さんばかりに睨んでいるが・・・・・・・・・否定の声は上がらなかった。
「―――八ッ、所詮は七光りのボンボン。長所が破られたら、呆気ないな」
「十六夜、アレお前が決めて良いぞ」
心底から失望したと十六夜は溜め息をつき――――――――零仁の言葉にすぐに凶悪な笑みを浮かべた。
「ああ、そうだ。ここで負けたら、お前達の旗印がどうなるだろうな?」
「な、何?お前たちの目的はあの吸血鬼じゃなかったのか?」
「そんなのは後でも出来るだろ。そんな事より旗印を盾に、即・もう一度ゲームを申し込む。そうだな・・・・・次は名前を貰おうか」
サァッと音を立てて、ルイオスの顔から血の気が引いた。しかし十六夜は容赦なく先を続ける。
「その二つを手に入れた後、”ペルセウス”を徹底的に貶めてやる。お前達が泣こうが喚こうが、どうしようも無いくらいに徹底的に、だ。どうなるか分かるよな?」
そうなれば、”ペルセウス”は壊滅だ。それどころか、彼らと同じく”ノーネーム”まで堕ちていくだろう。その事に思い当たったのか、ルイオスは震えた声を上げた。
「や、やめろ・・・・・・!」
「そうか、嫌か。なら――――――方法は一つしかないよな?」
十六夜は拳を構えて、挑発する様に手招きした。
「命を賭けろよ。ひょっとしたら、俺に届くかもしれないぜ? さて―――――始めようか。ペルセウス!」
従う部下は全て石と化し、頼りの星霊は虫の息。そんな絶望的な状況に立たされ、ルイオスは覚悟を決めて叫ぶ。
「負けられない―――――お前達なんかに、負けてたまるかあぁぁぁっ!!」
かくしてペルセウスの末裔は敗北を覚悟しながら、星霊殺しの鎌・ハルペーを振りかぶって、十六夜へと駆け出した――――――。
―――――――――――――――――――――
「「「じゃあ、これからよろしくメイドさん」」」
「え?」
「え?」
「・・・え?」
「ほう?」
“ノーネーム”へと所有権が移ったレティシアに、帰宅早々三人がそんなことを言い出した。突然の事態に黒ウサギとジンが間抜けた声を出す。
「え? じゃないわよ。今回のゲームで活躍したのは私達四人じゃない。黒ウサギ達はついて来ただけだし」
「うん。私も精一杯の露払いをした」
「つーか、挑戦にこじつけたのは零仁で リーダーをたたきつぶしたのは俺だろ。所有権は3:3:2:2で話はついた!」
「いや、聞いてないな」
「でも、異論はないだろう?」
「まぁ、せやな」
「何言っちゃってございますかこの人達!?」
もはやツッコミが追いつかないどころではない。
完全に混乱している黒ウサギとジン。唯一、当事者のレティシアは冷静なのか天然なのか。
「んっ・・・・ふ、む。そうだな。今回の件で私は皆に恩義を感じている。コミュニティに帰してくれた事にこの上なく感動している。だが親しき仲にも礼儀あり・・・君達が家政婦をしろというのなら喜んでやろうじゃないか」
「レ、レティシア様!?」
かつてないほどに焦っている黒ウサギ。そりゃ尊敬していた先輩をメイドとして扱わなければならないのだから、困惑するのは当然だ。
しかしそんなことは知らないとばかりに嬉々としている飛鳥。それにいつも通りの耀とレティシアに 未だ混乱しているジン。
十六夜は十六夜で、それを楽しそうに笑いながら見ている。
ああ、本当にこいつらは―――――――――
――――――――――
それから三日後
”ノーネーム”本拠にて、召喚された俺たちの歓迎会が開かれた。
今はその歓迎会もお開きになろうかと言う頃、俺は本拠の屋根にて月を見ながら、お気に入りの杯を傾けていた。
え?『未成年じゃないのか?』だと? 気にするな!どうせ酔えんのだ。せめて酒が喉を焼く感触ぐらい楽しませろ。
「こんなところで、月見酒か?主殿」
「・・・・零仁でいいよ、レティシア。下はどうなった?」
「そろそろお開きと言った感じだよ、皆まだ幼いからな」
振り向かずに聞いた俺に、すぐさま返すレティシア
「歓迎会のほうはどうだった?」
「ああ、良かったよ。ここは星がよく見えるようになっているから見応えがあった」
「驚いてはいないのだな」
そう、今回の歓迎会を外で行った理由は、”ペルセウス”が空から旗を降ろすことになったからだ。
比喩ではない。文字通り、先ほどまで空に浮かんでいたペルセウス座はちなって消えてしまっていた。
「・・・・・アルゴルの星が食変光星ではないこと。箱庭の天幕が、星々の光を目視しやすいよう作られていること。この二点から、箱庭の都市は何かしら星に関係するものがあるとは考えていた。そこにコミュニティ・ペルセウス――――ペルセウス座。そして星霊のことを絡ませて考えると、まあある程度の推測はできてた」
「ふむ、零仁はかなり博識なのだな。―――――注ごう」
俺が杯を空にするとレティシアがお酌をしてくれる。
「早々に居なくなっていたから。黒ウサギが心配していたぞ?」
「ありゃ、悪いことをしたな。あの景色を見ながら酒を飲みたくなったから離れたんだけど」
「・・・たしか、零仁は未成年ではなかったか?それにこの酒かなり強いようだが」
「だから、こうやって一人で隠れて飲んでたんだよ。どうせ酔えないんだジュースと変わらん」
「ふふ、なら私も付き合おうか」
そう言って自らのグラスを取り出すレティシアに、酌をしながら訪ねる。
「にしても、黒ウサギも無茶をするな、財政はギリギリなんだろう?」
「―――ありがとう。それでも、君たちをもてなしたかったのだろう。こういう言い方はアレだが、君たちが頼りだぞ。・・・・・・いい味だな」
そう言って、俺に返答し、グラスを傾けるレティシアに一枚の書状を見せる。
「これは?」
「いいから、読んでみろ」
「・・・・・・―――――っ!零仁これは!?」
「何、今日の昼頃白夜叉に呼ばれたときにもらってな。とりあえずだが、金策になるだろう?」
そう、書状に書かれた内容を簡潔にまとめると、
”夜刀神零仁の所属し、ジン=ラッセルの率いる”ノーネーム”は例外として 箱庭・第2105380外門の支店でのみ売り買いを認める”と言ったものだった。
「まさか、双女神の印鑑付きとは恐れ入ったな」
「そういう意味では、”ペルセウス”も存外役立ってくれた。おかげであの迎撃装置を売り込めるようになった。とりあえず一つ金貨3枚で、売り上げの0.2%ってとこだな」
「一つでざっと、銅貨60枚。しかも”サウザンドアイズ”の名で売れるとあれば」
「ああ、俺たちが売るよりよっぽど儲けられる」
どれだけ良質な品を作っても”ノーネーム”では認められない。足元を見られるのがオチだ。だからこそ、ここまでこじつけたのだ。
「さてと、十六夜の奴は”あの星々に俺たちの旗を飾る”と言ってたな。なら俺は、”この箱庭の全てを奪い去る”なんてどうだ?」
「それは何とも豪胆なことだな」
「ああ、難しいのはわかってるだが、野望は大きい方が良いしな。何より
「―――――ふふ、ははははは。ああ、そうかそれは良い 君は私たちを信じるのか。ならば私も応えねばならないな」
そう言って、笑うレティシア
『素晴らしいお考えですマスター』
そうだろう?もちろんおまえにも期待してるぜ?
『はい、お任せください。マイマスター』
レティシアは自らのグラスと俺の杯に酒を注ぎなおすとこういった。
「君の野望に」
『では、マスターの栄光の道に』
「じゃあ、お前たちの信頼に」
そう言って、お互いに酒を飲み干す。
空に瞬く星々と、月明かりが俺たちを照らし出していた。
と言うわけで、一巻終了 次巻から新キャラ出そうかな?
まぁ、まだ未定ってことで
では、また次回