召喚したらチートだった件   作:uendy

11 / 27
今回戦闘はありません

あと、途中 ネットスラングなどを使った罵詈雑言が出てくることもありますので注意してください。


九話~ ペルセウス

 

 あの後、白夜叉の所に行って、”ペルセウス”のリーダーの所に取り次いでもらおうと思っていたら、本人が居た。

 手間も省けたのだが―――――――

 

 

 

 

 

 ――――驚くほど下種かった。とりあえず、交渉のほうは激怒している黒ウサギに任せてみたが、

 

「―――――以上が”ペルセウス”が私たちに対する無礼を振るったのは以上の内容です。ご理解いただけたでしょうか?」

「う、うむ。”ペルセルス”の所有物・ヴァンパイアが身勝手に暴れたこと。そして捕獲に来た”ペルセウス”の数々の暴挙と暴言。確かに受け取った。謝罪を望むのであれば後日―――」

「結構です。あれだけの暴挙と無礼の数々、我々の怒りはそれだけでは済みません。”ペルセウス”に受けた屈辱は両コミュニティの決闘をもって決着をつけるべきかと」

 

 一般的に考えればそうなんだろうけど、こいつの場合は

 

「”サウザントアイズ”にはその仲介をお願いしたくて参りました。もし”ペルセウス”が拒むようなことがあれば”主催者権限”の名の下に―――」

「いやだ」

 

 そらみたことか。会って早々ゲスイ本性を隠そうともしなかった阿保だ。これくらいのことはやってのけるだろう。

 

「・・・・はい?」

「いやだ。決闘なんて冗談じゃない。それにあの吸血鬼が暴れまわったって証拠があるの?」

「それなら、彼女に聞けば分かることです」

「駄目だね。アイツは一度逃げ出したんだ。口裏を合わせないとも限らないじゃないか。そうだろ?元・お仲間さん?」

 

 なんというか、目的には丁度良いのだがひたすらにウザいな。

 

「それ以前にさ、逃げ出したんじゃなくて実は君達が盗んだんじゃないの?」

「な、何を言うんですか!?そんな証拠が一体どこに」

「事実、君たちの所に居たじゃないか。」

 

 ルイオスの言葉に返す言葉もない黒ウサギ。はぁ、ここまでかな。腹芸の練習も必要そうだ。

 

「それにしてもあの吸血鬼は不憫だねぇ。自分の恩恵を魔王に渡してでも、危ない道を行く仲間を止めに言ったのに仲間たちはあっさりと見捨てやがった!あの女が目を覚ましたらどんな気分だろうねえ?」

「・・・え?」

「ねえ、黒ウサギさん。このままじゃコミュニティの同士として義が立たないんじゃないかな?」

「・・・。どういうことです?」

「ねえ、黒ウサギさん。一つ取り引きをしようよ。吸血鬼を返す代わりに・・・君は僕に一生隷属するんだ」

「なっ、」

「一種の一目惚れってやつ?それに”箱庭の貴族”の拍もほしいし」

 

 掛かったな 阿保め!

 そうとは、気づかぬルイオスが続ける。

 

「何を悩んでいるんだい黒ウサギさん。君ら”月の兎”は仲間の為に煉獄に落ちるのは本望なんだもんなぁ?」

「・・・・っ」

「ねぇ、どうしたの?ウサギは義理とか人情とかそういうのが好きなんだろ?安っぽい命を安っぽい自己犠牲ヨロシクで帝釈天に売り込んだんだろ!? 箱庭に招かれた理由が献身なら、種の本能に従って安い喧嘩を買っちまうのが筋だよな!?ホラどうなんだよ黒ウサギ」

「黙りなs――――」

「おっと、ストップだよ飛鳥」

 

 ギフトを使おうとした飛鳥を止め、俺は下種に問いかける

 

「なぁ”ペルセウス”何故ゲームを受けない。それともまさか”ノーネーム”風情に恐れをなしたのか?」

「はぁ?お前たち程度相手する必要性すらないんだよ。そんな安っぽい挑発に乗るとでも?」

「そうか、そいつは残念だ。安くて十分だと思ったんだが、俺の目利きも落ちたな この程度を計り損なうなんて」

 

 その言葉に眉間に皺を作る下種だが、言った手前堪えているようだ。では、

 

「じゃあ、もう一度問おうか、何故ゲームを受けない?」

「はぁ、さっきも言っただろ?」

「ああ言ったな。だがな俺たちはここに来た時に黒ウサギからこう聞いてんだ『ギフトゲームは箱庭の法そのものだ』ってな。合っているよな、白夜叉?」

 

 俺の問いに怪訝そうな表情をしながらも合意する白夜叉。

 

「そしてお前はさっき『黒ウサギがほしい』と言った。そして黒ウサギは『侮辱を晴らすためのギフトゲーム』を挑んだ。ならなぜ受けない?欲しければギフトゲームで手に入れる、それこそがココのルールだろ?」

「だ・か・らぁ、そんなことしなくても今にもウサギさんは手に入りそうだからやんないって言ってんだろ!」

 

 俺の表情や言い方でかなりイラついているようだ。

 計画通り!

 そうお思いながらも表情には一切出さずに続ける。

 

「すまん白夜叉ちょいと庭先汚しちまうが許してくれ。あとで直すから」

 

 そう言いながら庭先に通じる引き戸を開け放ち、《覇王》でしまい込んだ蚊蜻蛉をたたき出す。

 

「「なっ」」

 

 驚く白夜叉と下種を尻目に続ける。

 

「何故ゲームを受けない七光り(・・・)。同士がこれだけやられているんだ、リーダーとして仇討の一つも必要だろ?」

「っ、おまえっ!こんなことをしてただで済むと――――――

「はぁ、仕方ねえだろ。まさか、偉そうに屋敷に入り込んだくせに侵入者用の罠に引っかかって全滅するなんて誰が予想すんだよ。

 ・・・ククッ、にしても今思い出しただけでも笑えて来るな。まさしく蚊取り線香にやられる羽虫のようだったよ」

――――――それでも!」

 

 ポーカーフェイスを捨て、嘲笑を浮かべる俺に 下種はなおも食って掛かる。

 

「『それでも』? なんだお前もしかして”サウザンドアイズ”が許さない。とか言うつもりか?まだ自分の立場が分かっていないみたいだな」

「いったい何が言いたいっ!?」

「いいか?商人にとって一番大切なものはな”信用”なんだよ。金なんて集められて当たり前なんだからな。だからこそ”サウザンドアイズ”では”ノーネーム”お断りなんだよ”信用”できるものがないからな。

 そんな風にしてまで積み上げてきた”信用”にお前は泥を塗ったんだ。それだけでも白夜叉のような直轄の幹部はお前のための報復なぞしないだろう。

 ましてや、同士のために立ち向かうこともしない腰抜けリーダーならばなおさらだろう?」

 

 俺の嘲りに肩を震わせる下種に、止めを刺す。

 

「どうだった? 有利に話を進めさせてもらっていた(・・・・・・・・・・・)気分は、楽しかったか?俺は愉快だったぜ、そうとは知らずに偉そうに振る舞うお前の道化っぷりはな。

 ま、俺の前に立った時点で負けが確定していたんだ、落ち込む必要はないよ。そんなことすら気づけなかったことには、恥じるべきだけどな」

 

 そう言いながら、肩をポンと軽くたたく。

 

「舐めやがって、くそ”名無し”が・・・・ああだこうだと鬱陶しい・・・いいさ相手してやるよ

 二度と逆らえないぐらい 徹底的に潰してやる。三日後、”ペルセウス”最高難易度のゲームで相手してやるよ」

「こちらのチップは黒ウサギか?」

「・・・それにお前のギフト全てもだ」

「出来たらどうぞ?あと、お宅が捕獲に失敗した吸血鬼、代わりに捕らえてさしあげましょうか?」

「結構だ。お前たちをたたきつぶした後ゆっくりと捕らえるからな」

 

 そういって、帰ろうとする七光りを呼び止める

 

「おい、いくら一応は(・・・)同士とはいえ人様の庭先を汚して帰るなよ。お前んちのゴミ(・・)だろ?」

「っ、覚悟しておけよ。奪いつくして殺してやる」

 

 そう吐き捨てながら、ギフトで蚊蜻蛉どもを飛ばし、帰っていく七光り。

 

 

 

「・・・・・・・クハハハ、いやぁ、これだからプライドだけいっちょ前の七光りはカモりやすいんだ。

 覚えとけよお前ら、ああいった手合いはこうやって乗せて、金蔓にするんだよ」

「どこを金蔓にしているのでしょうか?」

「・・・はぁ、まったくちゃんと聞いとけよ。あいつは自らの勝利時の(・・・・・・・)報酬は決めていったが、敗北時の(・・・・)は決めてないだろ?・・・さて、何を毟ろうか」

 

 あ、自分でもわかる位悪い(良い)笑顔してる。

 そのせいで全員頬をヒクつかせて、唖然としていた。

 

 

 

 

 

 

 零仁は気づいていなかったが、約一名だけ

 (な、何じゃあの蛇すら霞むような狡猾で妖艶な顔は・・・た、たまらん思わず頬が弛んでしまいそうだ)

 と理由でヒクついているだけだったが、それは本人しか知らぬことだった。

 

 

――――――――――――――

 

 

『ギフトゲーム名 -FAIRYTAIL in PERSEUS-

 

・プレイヤー 一覧

 ・逆廻 十六夜

 ・久遠 飛鳥

 ・春日部 耀

 

・”ノーネーム”ゲームマスター ジン=ラッセル

 

・”ペルセウス”ゲームマスター ルイオス=ペルセウス

 

・クリア条件

 ・ホスト側のゲームマスターを打倒

 

・敗北条件

 ・プレイヤー側ゲームマスターによる降伏

 ・プレイヤー側のゲームマスターの失格

 ・プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合

 

・舞台詳細 ルール

 ・ホスト側ゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない

 ・ホスト側の参加者は最奥に入ってはならない

 ・プレイヤー達はホスト側の(ゲームマス ターを除く)人間に姿を見られてはいけない

 ・失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行できる

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、”ノーネーム”はギフトゲームに参加します。

                                ”ペルセウス”印』

 

 

 宣言された当日、ペルセウスの用意した”契約書類”を見て承諾すると白亜の宮殿の門前に押しやられた。

 改めてルールを眺めている十六夜は内容をかみ砕く。

 

「姿を見られれば失格、か・・・・つまり、ペルセウスを暗殺すれば良いんだな!」

 

 非常に楽しそうで嬉しそうな表情で拳を握りしめ言い放った十六夜に顔を引き攣らせつつジンが答える。

 

「そ、それならルイオスも伝説にならって睡眠中ということになりますが・・・流石にそこまで甘くないと思いますが」

「YES。そのルイオスは最奥で待ち構えているはずデス。それにまずは宮殿の攻略が先でございます。伝説のペルセウスと違い、黒ウサギ達はハデスのギフトを持っておりません。不可視のギフトを持たない黒ウサギ達には綿密な作戦が必要です」

「見つかった者はゲームマスターへの挑戦資格を失ってしまう。同じく私達のゲームマスター―――ジン君が見つかれば、その時点でこちらの負け。中々厳しいゲームね」

 

 飛鳥の呟きに耀も頷く。本来なら、このゲームは最低でも十人単位の多人数で仕掛けるべきだろう。こちらはジンが発見されればゲームオーバーなのに対し、向こうは不可視のギフトまで持っている。状況は一応は(・・・)圧倒的に不利だ。

 

「姿を隠す方法がない以上、俺達は三つの役割に分かれなきゃならない」

「ええ。まず、ジンくんと一緒にゲームマスターを倒す役。次に索敵、姿の見えない敵を感知して迎撃する役。最後に、囮と露払いを失格覚悟でやる役」

「春日部は鼻が利く。耳と目もいい。索敵は任せるぜ」

「ん~、それじゃあ十六夜お前があの七光り〆てこいよ」

「お、良いのかよ?」

「ああ、その方があいつを馬鹿にできる。代わりにコイツをうまく届けてくれ」

 

 そう言って十六夜にあるもの(・・・・)を渡す。

 

「コイツは?」

「今はすごいものとだけ言っといてやる。こいつを使うとあいつは間違いなく豹変する。やるんだったら、初っ端に使え。それ以外なら使うな」

「へぇ?そいつは楽しそうだ」

「となると・・・・最後に残った私が囮と露払いというわけね」

 

 少し不満そうな顔で声を漏らす飛鳥。残念だけど、ルイオス本人に”威光”が通じないのは経験済みだ。かと言って飛鳥には耀の様に敵を察知するギフトやスキルは無い。だから宮殿内で待ち構えている騎士達の目を逸らす役になって貰う方が良い。

 

「まあ、そう残念がるな。飛鳥、俺も露払いするしさ、十六夜になんか埋め合わせもさせようぜ」

「・・それは妙案。十六夜、期待してるから」

「へいへい、少なくともお嬢様と春日部には何か考えとくよ」

「ふん、いいわ。今回は譲ってあげる。ただし負けたら承知しないから」

 

  少し拗ねた口ぶりの飛鳥に、十六夜は頷く。だが黒ウサギはやや神妙な顔で不安を口にした。

 

「黒ウサギは審判役ですのでゲームに参加できませんが・・・注意して下さい。ルイオスさん自身は大した事はありませんが、彼の持つギフトは」

「隷属させた元・魔王」

「あれ、魔王判定でいいのかな?あの星霊」

 

 え? と全員が俺と十六夜の顔を見る。いつもの様に、不敵な笑みを浮かべながら十六夜は先を続けた。

 

 

「あぁ、もしペルセウスの神話どおりならゴーゴンの生首がこの世界にあるのは不自然になる。あれは戦いの女神・アテネに献上されている筈だからな。にも関わらずやつらは石化のギフトを使うことが出来ている・・・・もし俺の考えが正しいのなら奴の首にぶら下がってるのはおそらく”アルゴルの悪魔”だろ」

「・・・・アルゴルの悪魔?」

 

 話しが分からない飛鳥たちは顔を見合わせて小首をかしげる。

 

「十六夜さん・・・まさか、箱庭の星々の秘密に・・・・?」

 

 信じられないものを見る様な目をした黒ウサギに、十六夜は自慢げに笑った。

 

「まあな。このまえ星を見上げた時に推測して、ルイオスを見た時にほぼ確信した。あとは大急ぎでアルゴルの星を観測して、答えを固めたってところなんだが、やっぱりお前は気づいてたんだな」

「あ~、俺の場合は神話、さらにはそれらを構成する天文学や民俗学まで知っとく必要があったからな。ペルセウスについても一通り知ってたってだけだがな」

 

 そんな俺たちの会話を聞き、黒ウサギは含み笑いを滲ませ、十六夜に問う。

 

「もしかして、十六夜さんってば、意外に知能派でございます?」

「何を今さら。俺は生粋の知能派だぞ。何だったらこの門手も使わずに開けてやるよ」

「・・・・・・・・・参考までに、方法をお聞きしても?」

 

 やや冷ややかな目で黒ウサギが見つめる。

 十六夜はそれに応えるかのようにヤハハ、と笑って門の前に立ち、

 

「そんなもん――――――――こうやって開けるに決まってんだろ(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 轟音と共に宮殿の門を蹴り上げた十六夜だった。

 

 

―――――――――――――――――

 

 白亜の宮殿は五階建ての造りとなっており、最上階こそが今回の”最奥”であり、そこまで行くのには最低でも一つは階段を死守しておく必要があるのだが。

 正面の階段前広場は異様な光景が広がっていた。

 

 一面の氷の世界に一本だけ生える水樹とその枝に乗る男女、それ以外のものは、絵画や調度品そして侵入者を撃退に来た騎士たち(・・・・・・・・・・・・・)も皆須らく凍り付いていた。

 

「・・・・寒い」

「お~耀も終わったか、こっちに来いよ。温かい紅茶とクッキーがあr―――――」

「―――頂く」

 

 十六夜とジンを届け終え、合流してきた耀がクッキーと聞いて即座に零仁の隣に腰掛ける。

 反対側にいた飛鳥が毛布に包まり、苦笑しながら声をかける。

 

「相変わらず早いわね。あ、零仁君私もお替りもらえる?」

「ああ、スマンが自分で注いでくれ。こいつの治療が先だ」

「え?」

「・・・・・やっぱりバレてた?」

「バレたというか、端から見てたというか・・だが、動きが多少ぎこちないからどっちにしろわかるよ。ほら座り方変えろ、反対側の脇腹だろう」

 

 そう言いながら、『治癒』の呪文を唱え、治療の開始をする零仁に耀が問いかける。

 

「こういう場合はどうすればいいの?」

 

 最近零仁はこのように耀から状況の対処法を聞かれる時があった。

 

「そうだな、守ることは3つかな。

 まず、第一に決して相手にダメージを悟られぬことだな。良いのもらった時、まぁピンチの時は笑っとくのもいい手だな」

「そんなんでいいの?」

「逆に聞くが、良いの喰らわせた相手が笑っていたらどう思うよ?奥の手がありそうとか警戒すんだろ?それが狙いだよ。

 で、第二が激しい動きは避けることだ。無駄な動作はそれだけで体力や傷の悪化に繋がる」

「最後は?」

「自分がどんな精神状態であろうとも、攻撃の威力を相手を倒しうる必要最小限のものにとどめ、体力を温存することだな・・・・・よし、もういいぞ」

 

 そうやって解答を済ましながら、治療も完了させた零仁は耀に紅茶を手渡しながら訪ねた。

 

「そういえば、入ってきて寒いって言ってたけど毛布使うか?」

「じゃあもらう、それにしてもコレどうしたの?」

「あん?初めは水樹と飛鳥の力で水攻めにしようと思ってたんだけど、思ったよりあいつらが粘っちゃってさ。・・・・・・途中で鬱陶しくなってまとめて氷漬けにした」

「本当にびっくりしたわ。零仁君いきなりこの部屋すべて氷漬けにしちゃうんだもの。あの人たちも殺しちゃったと思ったわ」

「そんなミスはしない。ちゃんと一瞬で凍らせてコールドスリープ状態にしてるよ」

 

 そうやって、紅茶を嗜む零仁に飛鳥が疑問を問いかけた

 

「そういえば、あなたゲーム前に十六夜君に何か渡していたみたいだけど、あれは?」

「ん?ああ、あれか。あれはな―――――――」

 

 

―――――――――――――――――――

 

 耀に送り届けられた十六夜とジンが階段を上がって扉を開けると、そこは天井の無い広場だった。

 

「十六夜さん、ジン坊ちゃん・・・・!」

 

 最上階で待っていた黒ウサギは、自分達の姿を見ると安堵の溜息を漏らす。

 眼前のコロセウムの客席を見ると、最上部に玉座が置かれていた。そこに腰かけていたルイオスは、自分達を見ると不満そうに鼻を鳴らす。

 

「―――ふん。ホントに使えない部下達だ。今回の件が済んだら、纏めて粛清するか」

 

 ルイオスは溜息をつきながら、玉座から立ち上がった。

 

「ともあれ、ようこそ白亜の宮殿・最上階へ。ゲームマスターとしてお相手しましょう。・・・・・・あれ、このセリフ言うのはじめてかも」

 

 今まではそうとう部下が優秀だったから此処までたどり着ける奴はいなかったらしい。

突然の決闘でさえなければおそらくもっと苦戦させられていただろう。

 

「ま、万全の状態では無い決闘だ。勘弁してやれって」

「フン、”名無し”風情を僕の前に来させた時点で重罪さ」

 

 それだけ言って再び空に舞い上がり、首にかかったチョーカーを外し、付属している装飾を掲げた。

 

「ありえないが僕の敗北はそのまま”ペルセウス”の敗北になる。そこまでリスクを負うような決闘じゃないだろ?」

 

 掲げた装飾が光を発する。

 星の光にも似たその光は強弱をつけながらその封印を解いていく。

 光が強くなった瞬間、咄嗟にジンを背後に庇い臨戦態勢をとる。

 

「目覚めろ――――”アルゴールの魔王”!!」

 

 

褐色の光があたり一面を包み込み、聞こえてきたのは

 

「ra・・・・Ra、GEEEEEEEEYAAAAAAAaaaaaaaaaaa!!」

 

 人の言語どころか、もはや獣の叫びですらない。

 冒頭は歌うような声だが、その後は脳を揺さぶるような不協和音。

 全身に拘束具と捕縛耀のベルトを巻いた女性とは思えない乱れた灰色の髪。

 ベルトを引き千切り、半身の仰け反らせて絶叫を上げる女。

 

「な、なんて絶叫を」

「避けろ黒ウサギ!」

 

 グイッと手を引っ張れば上空から落ちてくる巨大な岩塊。

 岩塊は空に存在する雲であり、それが石化して落ちてきたのだろう。

 黒ウサギを庇いつつ、後ろに庇っている御チビに問いかける。

 

「いやぁ、それにしても空も飛べない人間って不便だよね。―――――――落ちてくる雲も避けられないなんて」

「く、雲ですって・・・・・!?」

「今頃、君らのお仲間も石になっている頃さ。・・・・そういえば、あれだけモノを言っていた奴は来てすらいないなんて、腰抜けもいいところだよね」

 

 そう言って笑うルイオスに十六夜が宝石を投げ渡す。

 

「そいつからの餞別だ。受け取んな」

 

 投げ渡された宝石から声が聞こえてくる。

 

『 『腰抜けもいいところだよね』とかそんな当たり障りのないことで爆笑してるとこ悪いんだけどさ。・・・・・ブーメランとして自分に超刺さってるんですけどーwwwwwww  プギャーm9(^Д^)』

 

 見事な声マネと共に罵倒されるルイオス。

 しかし、声は止まらない

 

『て言うか、そんな腰抜けにあれだけ言われて出てきた言葉が『くそ”名無し”が』と『殺してやる』の二つくらいってボキャブラリー貧困過ぎて笑えるんですけど~wwww

 お?お?くやしそうだね~悔しかったら出てこいよ。あっゲーム中は引きこもりじゃないとダメなんでしたね。自宅警備員お疲れ様ですwwwww ――――――

 

 「『ハン、どうせ外で石になってるんだ』」

 

かな?当たってたよね?当たって無いはずがないよね~お前みたいな七光りのボンボンが自分で戦うわけないよね~どうせ、開幕『目覚めろ――――”アルゴールの魔王”!!』とかやったんだろ?見え見えですよwwww』

 

 ルイオスのセリフの所だけものの見事な声マネをやっているだけに余計腹が立つ零仁の声。

 

『あ、ちなむにコレ録音なんでお前の行動なんて読み読みですよwwww

 マジレスするけど、”ゴーゴンの威光”ってその光線を遮るか、屈折させれば石化しないんだから、それをどちらの方法でも実行できる俺が石になってるわけないじゃないか。NDK?NDK?もう一回道化扱いされるってどんな気持ち?

 いや~俺って一度もそんな間抜け曝したかと無いからさ~気持わっかんないんだよね~www原稿三枚分にまとめて提出してくんない?

 と言うわけで戦闘ガンバっ』

 

 ボンっと宝石はハジけ、中から三枚の原稿用紙がルイオスの手元に落ちてくる。

 その時、ジン・黒ウサギ・十六夜の三人は確かに聞いた。

 ―――ブチッという何かが切れる音を そして、彼では見ることは叶わないだろうという爽やかな笑顔と共に青筋を額に付けた(・・・・・・・・)ルイオスだった。

 

 

 




と言うわけで完全に罵倒回(?)でしたが、
いや~思ったより文字数が(苦笑)ホントは6000ちょいで収まるかなと思っていたのですが、ダメでした。想定の三倍は下種かったんで罵倒が止まりませんでした。

では、また次回に

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。