銀輪蓮廻魂≼⓪≽境東夢方界   作:カイバーマン。

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散々な目に遭ってるお嬢様ですが

ちゃんと本気になれば銀時や霊夢でも苦戦するぐらい強いんだとフォロー挟んでおきます


#65 レミ妙リア

前回のあらすじ

 

新八の姉の志村妙が、銀時達が来る前に主であるレミリアをKOしていた。

 

紅魔館攻略完了である

 

「あら銀さんに霊夢ちゃん、二人共来てたんですか?」

「まあな、幻想郷で妖怪が人外に危害を加えるのはご法度だからよ」

「と言っても私等の役目無くなっちゃけどね」

 

ジト目でそう呟き霊夢は

 

すぐ傍でうずくまっている吸血鬼を見下ろす

 

「主にアンタのせいで、どうしてくれんのよ、主人公の登場までにラスボス倒しちゃって」

「あらそうなの、ごめんなさいね、私ったら弟が攫われたもんだからついカッとなっちゃって」

 

紅魔館の主にいる部屋にて銀時と霊夢を相手に気軽にのほほんと話しかけるのは

 

つい先ほど出会った人間の志村妙。

 

どうやら彼女は銀時達よりも遅れてここへやって来たのにも関わらず

 

たった一人でここに辿り着き、更には人間の身で強力な力を秘めた吸血鬼であるレミリアを征するという末恐ろしい成果を上げて

 

おかげで銀時と霊夢の立つ瀬が無くなってしまったのが現状である。

 

「フッフッフ……よもや人間という下等種族にこの私が遅れを取るとはね……でも安心するのは早いわよ」

 

さっきからずっとうずくまったまま、ちょくちょく嗚咽を漏らしていたレミリアが

 

お妙にビビリつつもまだ心は折れてない様子で頬を引きつらせて無理矢理笑みを浮かべ

 

「私にはこんな事もあろうかととっておきの秘策があるのよ、コレでお前達もおしま……ひ!」

「御託は良いからさっさと新ちゃんのいる場所を吐きなさい」

 

隠された秘策を用意しようとするレミリアだが、それを放す途中で短い悲鳴を上げてビクッと肩を震わせる。

 

目の前でお妙がニコニコしながらポキポキ拳を鳴らし始めたからだ。

 

「私、女の子にこれ以上乱暴な事はしたくないの。だから正直に答えて頂戴、さもないと尻をお猿さんみたいに真っ赤に染め上げるわよ」

「地下でございます! あなた様の弟はここの近くにある階段を下ってすぐにある地下におります!」

「うわぁ、コイツ簡単に吐きやがったわ……ボスのプライドないのかしら」

 

見た目は小さな少女だが実年齢は500歳以上の彼女にとって

 

お尻ぺんぺんなどという恥ずかしい真似をされるくらいならすぐに白状すると言った感じでレミリアは慌てて敬語で新八のいる場所を話してしまった。

 

そんな紅魔館のボスを霊夢は呆れた様子でため息を突く。

 

「紫に二度も喧嘩を売るもんだからてっきり少しは歯ごたえのある相手だと思っていたんだけど……拍子抜けもいいとこね」

「黙れ博麗の巫女! お前にはわからないのよこの女の恐ろしさが! 凄い種族だとか凄い能力だとかそんなんじゃ太刀打ちできないの! 怪物なのよこの女は!」

「それには素直に同意するわ、うん」

 

自分達がここに来る前にレミリアは相当お妙にお灸を据えられていたらしい。

 

心底恐怖している表情で震えながらお妙を指差す彼女に、霊夢が頷きつつ哀れんでいると

 

おもむろにお妙がスッと動き出す。

 

「ありがとね教えてくれて、それじゃあ私は新ちゃんを迎えに行ってくるから。銀さん達は後の事お願いします」

「あ、待って私も行くわ。地下とは言ったけどコイツの言ってる事が全部正しいかどうかわかんないし」

「まあ、可愛らしいボディガードさんですこと」

「いや言っておくけど私とアンタってそんな年変わらないから」

 

すぐに弟の救出に向かおうとするお妙に、霊夢もまた何か嫌な予感を覚えて彼女と共に地下に行く事にした。

 

「そんじゃ私も地下に行くから、ここはアンタ一人に任せるわ」

「あいよ、さっさと連れて帰って来いよ。俺もうここ飽きたから帰りてぇんだよ」

 

最後に言葉を交えて霊夢はお妙と共に地下へ、銀時はここにいるレミリアと共に彼女達を待つ事にするのであった。

 

二人が扉から出て地下へと向かった後、銀時が退屈そうにしながら部屋の中をウロウロと歩き回っていると

 

「クックック……愚かね、私の素晴らしい演技にまんまと騙されたわあの女……」

 

さっきから這いつくばってレミリアがようやく体を起こして立ち上がった。

 

それに気付くと銀時は彼女の方へと振り返る。

 

「なにお前まだ余裕あんの? じゃあ今から俺がサクッと退治しちゃうけど良い?」

「クックック……構わなくてよ、でもさっきあの女にボコボコにされたからちょっと休憩を……イタタタ」

「おい大丈夫かお前? 立つ事もしんどそうじゃねぇか、ちょっとそこ座っとけ」

 

まだお妙にやられたダメージが残っているのか、腰を押さえながら苦い表情を浮かべる彼女に

 

銀時は彼女用に置かれているのであろういかにも館の主が使ってそうな豪華な玉座に座らせる。

 

「で? お前さんなんでまたウチに喧嘩売ろうとしたんだ? 一回紫の奴に負けたクセに、一体どんな心境の変化があったのか教えろ」

「フン、この私に対して尋問でもする気? 身の程をわきまえなさい天然パーマ、一体私を誰だと……」

「早く答えないとさっきの女呼びに行くぞ」

「最近ウチにやってきた新入りに進言されて、それでつい一時のテンションに身を任せてこうなった次第でございます」

 

座ったまま退治する銀時に低い声で軽く脅されると、レミリアはやたらと饒舌になって素直に答えた。

 

それを聞いて銀時は顎に手を当てしばらく考えた後

 

「……それってあのメイドか? 俺達をここまで案内してくれた」

「ええそうよ、ちょっと前ににフラリと現れて私の下僕になったんだけど……仕事が凄く出来る点は素直に評価出来るんだけど、どうも私に対する忠誠心が欠けている所があって……」

「それは俺もすぐにわかった、ありゃあ完全にお前の事ナメてたわ」

 

自分で言うのも辛いと言った感じでメイドの愚痴を漏らすレミリアに銀時もコクリと頷いて周りを見渡す。

 

「今だってお前がピンチなのに、いつの間にかどっか行っちまったしな」

「そうなのよ! あのメイドはいつも私が大変な時に助けてくれないの! アレ絶対Sよ! 生粋のドSよ!」

「そんで、どうしてまたそんなドSメイドにお前はまんまと乗せられてこんな真似しようと思ったんだ? 主なんだろお前、部下の言う事素直に聞いてどうすんだよ」

「えーそれはその……」

 

目を細め静かに追及してくる銀時に、レミリアは両手の人差し指をツンツン合わせながら言いにくそうな表情で

 

「あのメイドが……「お嬢様があの八雲紫を倒す事が出来れば、私も素直にお嬢様に忠誠誓えるんですけどねー」って、泣きながらお風呂掃除してる時に後ろから独り言のように呟いてたから……」

「あーそれでついやってやろうじゃねぇかという心境に……てかちょっと待てオイ、メイドいんのになんで主のお前が風呂掃除してんだ? しかも泣きながら」

「そ、その件については触れないで! 今思い出しただけでも目頭が熱くなるのよ!」

 

そう言ってレミリアは銀時からバット目を逸らして小さな瞳を潤わせながら

 

「いやちょっとささいなイタズラしただけなのよ、日頃やられてる仕返しにと思って、アイツが寝てる隙を見計らって部屋に忍び込もうとしたらあの女とベッドの上でバッチリ目が合って……」

「……それから?」

「それ以上追求しないでぇぇぇぇぇぇぇ!! 油断してたの! 私も油断してたのよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」  

 

怯えた様子で頭を押さえながらふさぎ込む彼女を見て銀時はそっと察している中、レミリアが泣き顔も隠さずに取り乱していると……

 

「敵である相手に向かってなに泣き顔晒して懇願してるんですか、レミリアお嬢様」

「は!」

 

扉の方から突如けだるい表情を浮かべながらレミリアに声をかける人物

 

彼女がすぐにそちらに振り向くと、先程の話から真の黒幕だとわかった、あの銀髪のメイドだった。

 

「そんなみっともない真似するから私もお嬢様に対しては常に厳しくなってしまうんですよ。主なら主らしくもっとカリスマってモンを上げて下さい」

「う、うるさいわね私の下僕のクセに! メイドならメイドらしく主の私をキチンと立てなさいよ!」

「一体どう立てろと言うのです? 八雲紫を倒すと言っておきながら、彼女どころか、その彼女の遣いどころか……」

 

現れた彼女にレミリアは言葉を震わせながらも激しく責め立てようとするも

 

メイドは全く効いてない様子で死んだ魚の様な目をしながら歩み寄って

 

「彼女となんの関係も無い人質の姉にやられてしまうあなたを私は一体どうフォローしてあげればよいのですか? あなたの下僕であるこの無知なメイドに教えて下さいませ」 

「……すみません全面的に私が悪いです、反省してます、私は村の娘に負けた哀れで無様な負け犬です……」

「敗北宣言早過ぎるだろお前! 頑張れよ! そこはもっと頑張れよレミリアお嬢様!」

 

椅子にもたれながらポロポロとスカートに涙を落としながら懺悔するレミリアに

 

流石に一緒にいた銀時も大きな声でツッコミを入れてしまった。

 

「どんだけこのメイドに弱いんだよお前! ちょっとキツく言われたからって負けてんじゃねぇ! 主なら主らしく一喝して黙らせてみろ!」

「む、無理! 絶対無理! だってあの女ここに初めてやった時も! 私の首根っこを掴んだまま「ここで働かせてください、さもないとこの館燃やします」って売り込みと脅しを同時にやってのけた強者なのよ!」

「なにそのバイオレンスな千と千尋の神隠し? つー事はアレか? 主のお前よりもあのメイドの方がずっと強いって事か?」

 

必死な形相を浮かべるレミリアからメイドと会った時の経緯を軽く聞かされて

 

銀時は彼女よりも強い存在がここにいた事を知り、すぐにメイドの方へ振り向く。

 

「おい、テメーより弱いガキを上手く担ぎ上げてウチのカミさんに喧嘩売らせるって、いったいなに企んでやがんだお前」

「なにを企んでるかですって? あなたもしかしてまだ気付いてないの?」

「は?」

 

銀時の質問に対しメイドは呆れた様子で呟くと

 

 

 

 

 

 

 

「……この世界に残された時間の中で、私が彼女に何をしようとしてるのかわかるでしょ?」

「……」

「え?え? な、何どういう事? あのー私何もわからないだけど……の、残された時間って?」

 

彼女の意味深な言葉に対し

 

銀時は黙り込んでジッと彼女を睨み付ける、どうやら彼女の言っている事がわかっている様子らしい。

 

 

しかしレミリアの方はよくわかっておらず、不安そうな表情で彼女達を交互に見つめていた。

 

「も、もしかしてあの八雲紫がキッカケで幻想郷が大変だとかそんじゃないわよね? 私ココ以外住む所ないんだけど……」

「安心して下さいお嬢様、ダンボールの中は意外と暖かいらしいですよ」

「ダンボールに身を包んで暮らせと!? そんなのただのホームレスじゃないの! 絶対に嫌!」

「オメェがホームレスになろうがなるまいがどうでもいい、それよりも……」

 

もしここに住めなくなったら?と不安そうに尋ねるレミリアに対してあっけらかんと回答するメイドに

 

銀時は抗議するレミリアを遮って、自分がメイドの前に出る。

 

「とりあえず今俺が倒さなきゃいけねぇ相手はやっぱりテメェだって事が確信した。オメェが紫に会いに行く前に、俺がここで決着を着ける」

「元よりそのつもりよ、でもあなたが私に勝てるかしら?」

 

珍しく好戦的な姿勢を見せる銀時に対し、メイドは腕を組みながら自信たっぷりの様子でボソリと

 

「昔からあなたに負けた事無いし」

「……場所を変えるぞ、ここじゃちと狭ぇ」

「ええ、それじゃあちょうどいい場所へ案内するわ」

 

彼女の言葉に銀時は眉をひそめながら歩き出すと、彼女が先導して部屋から出ようとする。

 

「それではお嬢様、これからメイドらしく侵入者の排除に勤しみますので、お嬢様はいても邪魔なだけなのでそこで大人しくしていてください」

「ええ!?」

「あばよお嬢様、後でお前にもたっぷりお仕置き食らわしてやるから覚悟しとけ」

「な、なんなのよ、どうしたのよ急に……」

 

全く訳が分からず途方に暮れているレミリアをほっといて、二人は部屋を後にして何処かへ行ってしまった。

 

一人玉座に座ったまま縮こまった様子でレミリアが表情を強張らせながら

 

そんな彼等の背中を静かに見送るしかなかった。

 

 

 

 

 

「とりあえず次の引っ越しの為に素材の良いダンボールでも探そうかしら……」

 

 

 

 

 


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