怪獣と骸骨の異世界蹂躙物語   作:きょろりん

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狙われた村


53話 観察

「あ、始まった」

 

そう俺は蜥蜴人の村の上空で呑気につぶやいた。

何故なら、俺の今回の仕事はアインズさんが蜥蜴人たちに盛大な宣戦布告(脅し)をしている間、上空で村を監視&周囲の警戒というものだ。

玉座の間では「一緒に行く」と言ったが、それはあくまでここに一緒に来るというもの。アインズさんと一緒に蜥蜴人たちに宣戦布告(脅し)をしに来たわけじゃない。

というのも、守護者全員及びナザリックの戦力が総動員するのは今回が初であり、十分に周囲を警戒せねばならない。そのため、今回はニグレド、パンドラズ・アクターの警戒網にプラスして、俺が現地で監視をしているわけだ。

 

「それにしても、こうしてみるとうちのリーダーすげぇ魔王感だなww流石はモモンガさんだw」

 

ちなみに、監視しているのはもちろん俺だけじゃない。俺の他に「超古代竜 メルバ」、「破滅魔人 ブリッツブロッツ」が

 

上空で警戒している。二体とも上位怪獣であり、不測の事態になろうとも対処は可能だ。

 

「・・・お、もう終わったか。案外早い・・・いや、こんなもんか。村は戦いが始まる前から敗戦濃厚。完璧だな。よし!メルバ!ブリッツブロッツ!私はアインズさんと合流します。あなたたちはコキュートスの戦闘が終わるまで、ここで監視をしていてください。終わり次第、迎えに来ます」

 

そう言うと、メルバは軽く会釈を、ブリッツブロッツはまるで騎士のようにお辞儀をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

宣戦布告(脅し)を終えたアインズ達は、そのままナザリックには戻らずアウラが建設している要塞へと転移した。ヴィクティムはアインズの指示によりナザリックに戻った。ヴィクティムを見送り、アインズ達は要塞の中に入っていった。

その要塞を見て、アウラを除く他の者たちは驚いた。

要塞の中はまるで高級ホテルのロビーのような豪華なものであった。そして部屋の一室に入ると、そこはナザリックの円卓(ラウンドテーブル)を忠実に再現された部屋であった。

 

「おお!素晴らしいぞアウラ!まさかここまでとはな!」

 

ほぼ完成の要塞に、アインズは興奮し喜んだ。褒められたアウラは照れながら、

 

「いえ!これもゾルディオ様のおかげです!ゾルディオ様がお貸しくださった怪獣たちや、いただいたカプセル怪獣たちのおかげで作業がはかどりました!」

 

「ですが、私の怪獣たちに的確な指示を出して、ここまで完成させたのはアウラのおかげです」

 

「うむ。私の予測ではまだ建設中だと思っていたが、アウラは私の予測を超えた素晴らしい働きをしてくれた」

 

そう言い、アインズとゾルディオはアウラの頭を撫でた。

 

「え、えへへ///」

 

アウラは顔を真っ赤にしながらも、嬉しそうにしていた。

 

「ぐぬぬ・・・」

 

「うぅぅ・・・」

 

その様子を見ていたアルベドとシャルティアが、羨ましそうにしているのを感じ、二人はすぐに手を放した。

 

「それで・・・一つ質問なのだが・・・あの椅子はなんなんだ?」

 

そう言いアインズはその完璧な円卓に中に一つ、違和感のある椅子を指さした。

その椅子はすべて骨でできており、明らかにアインズに合わせて作られたものであった。

 

「そちらの椅子は簡素ではありますが、玉座をご用意させていただきました」

 

そう自信満々に後ろから質問に答えたのは、デミウルゴスであった。

 

「あー、ちなみに何の骨でできているのだ?」

 

鷲獅子(グリフォン)飛竜(ワイバーン)といった様々な動物の骨です」

 

「・・・・・そうか」

 

 

(助けてくださいゾルディオさん!)

 

(アインズさん・・・仕方ないですよ)

 

(椅子の一部に絶対人間の骨混ざってますよ!血や肉がついていないだけまだいいですけど、あれに座るの結構根性いりますよ!?俺も骨ですけど!)

 

(部下が上司のために一生懸命に作った賜物だからでしょう・・・デミウルゴスの好意、受け止めてあげてください)

 

(そんな・・・)

 

 

アインズは《伝言(メッセージ)》でゾルディオに救援を求めたが、助けてもらえず、覚悟を決め椅子に座った。

 

「どうでしょうか、アインズ様」

 

「あ、ああ。わ、悪くない出来だ。今後はここに置き、私が来た時に座るとしよう」

 

「ありがたきお言葉です」

 

デミウルゴスは満足そうにお辞儀をした。

 

「そ、そうだ。私だけというのもあれだ。暇があればゾルディオさんにも作ってあげてくれないか?」

 

「え!?ちょ―――」

 

「畏まりました!是非とも作らせていただきます!」

 

デミウルゴスの気合の入った声に、ゾルディオは断る勇気がなく

 

「え、ええ。頼みました・・・」

 

そう言って、ゾルディオは諦めたように肩を落とした。

 

「ふっ、では本題に入ろうか。蜥蜴人たちはいい具合に驚いたか?」

 

「はぁ・・・私が上空から見ていましたが、いい具合を通り越して完璧に驚いていましたよ」

 

「ゾルディオ様の仰る通りかと」

 

「それはよかった。では作戦の第一段階は成功だな」

 

そう言うと、アインズはほぅと息を吐いた。

 

その後、《天地改変(ザ・クリエイション)》の効果範囲の計測、警戒網の確認、シャルティアに世界級(ワールド)アイテムを使用した者たちに対する疑問、冒険者モモンの名声について、他の国について(後半の三つに関してはほとんどアルベドとデミウルゴスの深読みスキルの賜物)を話した。

 

「――さて、蜥蜴人たちには充分に時間を与えたのだ。余計な動きをしていないか見ようじゃないか」

 

そう言い、アインズは遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を使用し観察を始めた。蜥蜴人の村は、まるで祭りの前日のように全員がせわしなく動き回っていた。どれも戦争の準備のために走り回っていたが、今から相手をするのがコキュートスではその行動はすべてただの悪あがきにしかならない。そう守護者が口々に呟いていた。

だが、その中で今回アインズが観察をする目当ての蜥蜴人がいなかった。

 

「?あの魔法の武器を持った奴と、白く小柄な奴がいないな・・・」

 

「確か、魔法の武器を持っているのがザリュース、でしたか?」

 

「ええ。確かそうでしたね」

 

「うーん・・家の中はどうでしょう?」

 

「なるほど」

 

通常、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)は物体の中までは見ることができない。しかし

 

「デミウルゴス。『無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴアサック)』を持ってきてくれ」

 

「畏まりました」

 

デミウルゴスは一礼し、テーブルの隅に置かれている背負い袋をアインズに渡した。アインズはその袋から、一枚の巻物(スクロール)を取り出し、魔法を発動させた。

その魔法は、不可視かつ非実体の感覚機関の作成というものだった。つまり、壁を貫通し見ることができる魔法である。しかし、魔法による障壁がある場合は侵入することはできない。

これを遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)と連結させることにより、アインズの見ている景色を他の者に見せる。

 

「まずはこの家だな」

 

適当に選んだ家の中を覗いてみると、家の中は暗く明かりがさしていない状態であった。そんな中に、二人の蜥蜴人がいた。

黒い蜥蜴人は白い蜥蜴人の尻尾を持ち上げ、組み伏せる形で上に乗っていた。

その姿を見たアインズは何をしているのかわからなかった。一方、ゾルディオはすぐに分かったのか顔を伏せた。

数秒してアインズも理解し、無言で感覚器官を外に向けた。

 

「・・・」

 

アインズは頭を抱えた。そして、部屋の空気は一気に氷のように冷たいものへと変わっていた。

 

 

(・・・ゾルディオさん)

 

(・・・・・)

 

(あの・・・ゾルディオさん?)

 

(・・・なんですか)

 

(空気・・・変えてください)

 

(・・・無理でしょう)

 

(なんとかしてください!凄い気まずいですよ!)

 

(そりゃそうでしょう!家族団らんで見ていた映画に、突然ラブシーンが出て来たくらいの気まずさですよ!?どう乗り越えろと!?しかも大人だけならまだしも、アウラやマーレもいるんですよ!?もう完全にお手上げですよ!)

 

(ぐぅぅ・・・まさかこんなことになるとは・・・・)

 

 

そうやって《伝言(メッセージ)》でこの場をどうすべきかを二人で話し合っていると、

 

「なんと不快な奴らだ!これからコキュートスが攻め込むというのに!」

 

「そ、そうよそうよ!」

 

「え、えっとぉ・・・」

 

「デ、デミウルゴスの言う通りでありんす!なんて奴ら!」

 

「・・・シャルティア。そんなに羨ましそうな顔をされても説得力がないですよ」

 

「ああ、羨ましい・・・」

 

守護者たちが口々に不満を言った。そのおかげか、少しは空気が変わったことにアインズとゾルディオは安堵した。

そんな守護者たちをアインズは手で制し

 

「・・・仕方あるまい。これから死ぬ運命なのだ。大して変わらん」

 

「ええ。それに、これは生物として少しでも子孫を残そうというもの。大目に見ようではありませんか」

 

そう言うと、他の守護者は連動するかのように

 

「そうですね。仕方のないことです」

 

「えっと・・・そ、そうよそうよ?」

 

「あ、あのぉ・・・えっと・・・」

 

「全くその通りでありんす」

 

「羨ましい・・・」

 

「「お前たちもう黙れ(りなさい)」」

 

そう二人がは持って言うと、守護者たちは口を閉じた。

 

 

(一応は何とかなりましたけど・・・アウラとマーレどうしましょう?)

 

(どうしましょうって・・・どうしましょう?)

 

(率直に教えるわけにも・・・いきませんよね)

 

(・・・訊かれえたら答えるようにしましょう)

 

(つまり、訊かれない限りはこのとこは追及させないと)

 

(そのほうが賢明でしょう。もしぶくぶく茶釜さんにこのことがバレればどうなるか・・・)

 

(・・・考えたくもないですね)

 

(そうでしょう・・・なのでこのことは・・・)

 

(はい。そうしましょう・・・)

 

 

アインズとゾルディオは、何事もなかったように

 

「もし警戒網に引っかかった場合は、この場にいる全員で向かう。異論はないな?

 

アインズに異論を唱える者は、誰一人としていなかった。

 

「・・・後は上映時間になったら、コキュートスの戦闘をじっくりと見ようじゃないか」

 


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