※誤字報告がありましたので、訂正しました！
「フッ！」
アインズは右手の大剣をゾルディオに向け縦に大きく振り、左手で続けて真横に振った。
「よっと」
それをゾルディオは全て紙一重で避けた。
「ハア！」
アインズはそのまま両手の大剣を振り、攻撃を続けた。
「あらよっと」
だが、アインズの攻撃は一向に当たらず、それどころかただ避けているだけのゾルディオにペースを乱されていた。
（なんで当たらないんだ！？）
アインズがそう思いながらも、大剣を振っていると
「隙だらけですよ」
「！？」
ゾルディオが一瞬にしてアインズの懐の入り込み、
「そら！」
刀の柄の先端をアインズの腹部に叩きこんだ。
「ぐっ！」
その衝撃にアインズは体をくの字に曲げた。
「もう一撃！」
ゾルディオは続けざまに刀の峰を使い、アインズの肩に攻撃を加えた。
「くっ！」
アインズはゾルディオの攻撃に多少怯んだが、持ち堪えながら大剣を振り下しながらゾルディオから距離を取った。
だが、振り下ろされた大剣はゾルディオには当たらなかった。
「はぁ・・はぁ・・」
「うーん、狙いはいいんですけど動きがまだまだ固いですね。もっと大きく動いてみてはどうですか？あとは、大剣の長所を生かしたりとかですかねぇ」
「なるほど・・・ではそれを踏まえてもう一度」
そう言うと、アインズはゾルディオに向かって跳び、そのまま落下の勢いを利用し両手の大剣を振り下ろした。
「おお」
ゾルディオはその攻撃を後ろに下がることで躱した。アインズが振り下ろした大剣は周囲に砂塵巻き上げ、アインズの姿は一時的に隠れた。
「・・・！」
すると、突然砂塵の中からアインズが持っていた大剣の１本がゾルディオに向かって回転しながら飛んできた。ゾルディオは難なく横に剣をかわすとアインズが姿を現し、ゾルディオに両手で構えた大剣を横に振り追撃した。
「いい攻撃ですね」
そう言いながら、ゾルディオは刀を使い攻撃を防いだ。だが、ゾルディオは体勢が悪いせいか、大剣を受け止めたがそのまま吹き飛ばされ、壁に激突した。
アインズはゾルディオが仕掛けてくることを警戒し、地面に刺さった大剣を引き抜いた。そして、ゾルディオの姿を確認しようと壁に目を向けるがそこには
「・・・！」
ゾルディオの姿はなく、ただ壁にへこみができているだけであった。
アインズは周囲を見渡すが、ゾルディオの姿はどこにもなかった。すると、
「いいですね。動きがさっきよりも良くなりましたよ」
どこからともなくゾルディオの声が聞こえた。
「！どこだ！」
「そう焦らずとも、今出ますよ」
そう言った次の瞬間
「！？」
「さあ、いきますよ」
闘技場には、
アインズを囲むように
「！？ゾルディオ様が・・・８人？」
「これはどういうこと・・・？」
アインズとゾルディオの戦いを見ていた２人も、アインズと同様にその光景に驚いていた。
だが、アインズはすぐに冷静になり
「・・・まさか、その姿でもソレが使えるとは思いませんでしたよ」
「実は、自分も驚いてます。今回が初なんですよ、これをこの姿で使ったの。もしかしたら、と思いやってみました」
「はぁ、ゾルディオさんはスパルタだな。これは骨が折れそうだ」
「まあ、実際に折れたらまずいですけど」
「ふっ、そうですね・・・はぁ！」
アインズの声を合図に、再び戦いが始まった。
戦いは数時間にも及んだ。
始めは勢いのあったアインズだったが、やはり数が増えたことにより徐々に勢いがなくなり、ゾルディオの優位となった。
アインズは地面に足をつき、大剣で体を支えていた。
「はぁ・・・やはり強いですね、ゾルディオさんは。冒険者の姿でもこれほどの力があるとは」
「・・私から見れば、多少レベルが落ち、手加減したとはいえ８人いた私の分身を、前衛の戦いに慣れていない魔法詠唱者が剣で３人も倒したことに驚きですよ」
「それは・・・喜んでいいんですか？」
「いいと思いますよ。本職は魔法詠唱者なのにここまでやったので」
「ははっ、じゃあそうさせてもらいます」
「では、キリがいいので今回はここまでにしましょう」
そう言い、ゾルディオは分身を消し一人に戻した。そして、ゾルディオはアインズに近づき手を伸ばし
「お疲れさまでした」
「お疲れさまでした」
アインズはゾルディオの手を取り、立ち上がった。それと同時に、観戦していた二人が近づき
「アインズ様！お怪我はありませんか？」
アルベドはオロオロしながら
「ご無事でありんすか？」
「ああ、大丈夫だ。ゾルディオさんが手加減してくれたからな」
「はぁ、良かったです。私はもう心配で心配で・・・」
「アルベドは心配のし過ぎでありんす。ゾルディオ様がアインズ様に大ケガをさせるはずがないでありんす」
アルベドとは対照的に、シャルティアは自慢気な表情で言った。
「そうと分かっていても、心配になるものなのよ」
「ははは、アルベドはアインズさんが好きですからね。心配するのも無理は無いでしょう」
ゾルディオがそう言うと、アルベドは顔を赤らめて
「そ、そんな、あ、愛してるなんて・・・」
「誰もそんなこと言っていないでありんす！どうゆう耳してるんでありんすか！」
「まあまあ、そう怒らずに。可愛い顔が台無しですよ？」
「ぐぬぬぬ～」
ゾルディオがシャルティアをなだめ場は収まったが、シャルティアは悔しそうな顔でアルベドを睨みつけていた。一方アルベドは
「ああ、どうしましょう・・・」
いまだに自分の世界に入ってシャルティアには気づいていなかった。
「あ、あーお前たち。そろそろいいか？」
「！私としたことが、つい取り乱してしまいました。申し訳ございません」
「よい、許す。ではお前たちに訊く。先の戦いを見て、私にアドバイスをしてくれ」
「はい、では私からさせていただきます。ですがその前に、アインズ様は戦っている間、どこを見ていましたか？」
「ん？どこって・・・相手の体だろう」
「そうですね。アインズ様は戦う相手の体を見て戦っていました。ですが、それでは相手の一部分しか動きが分かりません。前衛で戦うには、相手全体を見て、次はどう行動すべきかを考えながら戦うのがよろしいかと思います。アインズ様は少々次に自分がどう動くかの考えに集中しすぎているかと思われます」
「な、なるほど。ではシャルティアはどうだ？」
「そうでありんすね・・・言いたいことはアルベドにほとんど言われんしたから、あまり多く言えないでありんすけど、強いて言うなら戦いの最中にゾルディオ様が仰ったことと同じように、使う武器の特徴を生かして戦いをいかに自分のペースに持ってこさせるかがポイントになると思うでありんす」
「ふむ・・・なるほどな。お前たちの意見は十分役立った。今後、それらを意識してみよう。今日は私の鍛錬に付き合ってくれて、感謝する」
そうアインズが言うとアルベドとシャルティアは頭を下げ
「私めにもったいなきお言葉です」
「アインズ様のお役に立てて光栄でありんす」
「うむ。ゾルディオさんも今日はありがとうございます。今後も鍛錬の時はお願いします」
「こちらこそ」
鍛錬後
シャルティア「あ、そういえば。ゾルディオ様、アインズ様との訓練でお見せになられた、あの数が増えるのは一体なんでありんすか？」
ゾルディオ「ああ、あれですか。あれは《影分身》というニンジャの職業のスキルです」
シャルティア「ゾルディオ様の職業はどれも個性的で素晴らしいでありんす！」
ゾルディオ「ありがとうございます」
アルベド（アインズ様に訓練とはいえダメージを与えるなど・・・）
ゾルディオ「・・・」