怪獣と骸骨の異世界蹂躙物語   作:きょろりん

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心の大掃除

※誤字報告がありましたので、訂正しました!


47話 涙はこれで拭いとけ

昼食を済ませ、腹を満たした俺はある場所へ向かっていた。

それは――

 

 

 

(はぁ、まったくいつまでいるんだ・・・)

 

そう思ったのは、茸生物(マイコニド)のナザリックの副料理長だ。普段はその名の通り、食堂で副料理長として腕を振るっている彼は、第9階層の部屋の一つであるバーで曜日と時間によってマスターをしている。

そんな彼の今の悩み、それは

 

「ゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴ、ゲフー。次ぃ!」

 

このやけ酒をしている女、シャルティアがバーに居座っていることである。

 

(自分から誘ったとはいえ、これは失敗したな・・・はぁ、ここはデミウルゴス様やコキュートス様のようなダンディで、雰囲気を分かっておられる方々が来られ、お酒を楽しむ場。こんなふうにゴクゴクと味も楽しまずに飲む場ではない!はぁ、どうせなら至高の御方が来てくれれば・・・)

その時、

 

 

カランコロン

 

 

バーの扉を開ける音が聞こえ、副料理長は入ってきた者を見た。

 

「!!」

 

「開いていますかな?マスター」

 

入店したのはゾルディオであった。

 

「開いています!どうぞこちらへ!」

 

(なんてことだ!まさか本当に来て下さるなんて!これは腕を存分に振るわねば!)

 

「ありがとうございます」

 

そう言い、ゾルディオはシャルティアの隣に座った。だが、シャルティアはそのことに気付かず、テーブルに突っ伏していた。

 

「何をお飲みになりますか?」

 

「ふむ・・・では、マスターのおすすめを」

 

「畏まりました・・・あの、そのマスターと言うのは・・」

 

「おや?駄目でしたか?」

 

「いえ!ありがたいお言葉でございます!」

 

「でしたら、これからもマスターと呼ばせてもらいますよ」

 

「はい!」

 

と、話しているうちに副料理長は色鮮やかなカクテルを出した。

 

「これはまた美しいですね。では・・・・・うん、流石はマスター。いい仕事をしています」

 

「ありがとうございます」

 

(ああ、生まれてよかった・・・私は今自分の存在意義を実感している・・・)

 

「さて・・・・こちらのお嬢さんはどうしたのですかな?」

 

「それが、仰ってくださらないので・・・」

 

「なるほど・・・では、こちらのお嬢さんにスッキリするものを」

 

「畏まりました」

 

そう頼むと、副料理長は青い色のカクテルを作りシャルティアに出した。

 

「シャルティア、どうしたのですか?」

 

「どうもこうもないって・・・私の、私のせいで・・うぅ・・・」

 

シャルティアはまだ気づいていないのか、突っ伏したまま答えた。

 

「ま、とりあえずこれを飲んで」

 

「うぅ・・・ん?って、えええええ!?ゾ、ゾルディオ様!?」

 

頭を上げ、自分に話しかけてくる者の顔を見てシャルティアは驚きのあまり叫んでしまった。

そして、シャルティアは次第に自分が至高の御方に見せてしまった醜態に気付き、顔を真っ赤にした。

 

「シャルティア。ここは大声を上げる場ではありません。静かにお酒を飲み、雰囲気を楽しむ場です」

 

「も、申し訳ございません!御方に気付かず、お恥ずかしいところをお見せして・・・」

 

「いいんですよ。誰だってそういうときはあります。ですが、ここですることではないですね。今後、気を付けてください」

 

「は、はい・・・そ、それでゾルディオ様はどうしてここへ?」

 

「その前に、まずはこれを」

 

そう言い、ゾルディオは先ほど作ってもらったカクテルをシャルティアに差し出した。

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

「どうですか?」

 

「・・とても爽やかでありんす。さっきまでの気分が嘘のように変わりんした」

 

「それは良かった」

 

「それで・・・」

 

「私は貴方を探していた、のですがこのバーに一度来てみたくてね。それで、来てみたら丁度よくシャルティアがいた、と」

 

「わ、私で、ありんすか?」

 

「ええ。これから、アインズさんの戦闘訓練をするので付き合ってはくれないかと」

 

「あ、アインズ様の、せ、戦闘訓練!?そ、それにわ、私を!?」

 

「シャルティア、声を小さく」

 

「も、申し訳ございません。ですが、なぜアインズ様が戦闘訓練をなさるのでありんすか?」

 

「実は、魔法詠唱者としてのアインズさんの訓練ではなく、冒険者モモンとしての戦闘訓練なんです」

 

「冒険者、でありんすか?」

 

「はい。アインズさんは魔法詠唱者で後方支援が主な戦闘スタイルなんですが、冒険者では前衛になり、前衛としての戦い方がよくわかっていないのです」

 

「それで・・・私が?」

 

「はい。シャルティアは前衛の超攻撃型。その戦い方はアインズさんの戦闘の参考になると思いましてね。それと同様に武器の扱い方もレクチャーしてもらえればと思いまして。あ、もちろん私も参加します。どうですか?」

 

「・・・お誘い、とても嬉しいんでありんすが、私なんかでは力不足かと思いんす」

 

「それは何故?」

 

と、ゾルディオが訊くとシャルティアは目に涙を浮かべ

 

「わ、私は、守護者でありながら、し、至高の御方々に、刃を向けたでありんす。そ、そんな愚かな私に、至高の御方に何かを教えるなどと、そんなこt」

 

 

 

 

 

「情けないですね」

 

 

 

 

 

「え?」

 

ゾルディオの予想外の言葉にシャルティアはハトが豆鉄砲でも食らったような顔になった。

 

「それでも守護者最強なんですか?私と戦ったあなたは、そんな弱弱しい女性ではなかった」

 

「で、ですが!」

 

「ですがもへちまもありません。あれは本当のあなたではない。洗脳され操られていたのだから、仕方のないことです。それに、あれは私の失態だと言ったはず。私に恥をかかせるのですか?」

 

「い、いえ!そのようなつもりは!」

 

「でしたら、もう気負う必要はありません。大丈夫です。貴方の強さも、武器の扱いも本物です。私が自信をもって保証しましょう。なので、来てもらえますか?」

 

そう言い、ゾルディオはシャルティアに手を差し伸べた。すると、シャルティアは涙を流しながら

 

「うぅ、あ、ありがとう、ございます。っ本当に、本当に・・うぅ・・・」

 

「シャルティアは涙もろいですね。さ、ハンカチを・・・」

 

しばらくして、シャルティアは泣き止み

 

「みっともないところをお見せしました。申し訳ございません」

 

「いいですよ。さて、では行きましょうか」

 

「はい」

 

ゾルディオはシャルティアを連れて、バーを出た。

 

「・・マスター、今日はありがとうございました。また、来ますね。今度は、デミウルゴスとコキュートスを連れてきます」

 

「はい。心よりお待ちしております」

 

 




ゾルディオ(アインズさん)
アインズ(あ、ゾルディオさん。準備できましたか?)
ゾルディオ(はい、ばっちりです。そっちはどうですか?)
アインズ(だ、大丈夫です。問題ないです)
ゾルディオ(?そうですか。あ、訓練にシャルティア連れて行くので)
アインズ(え!?)
ゾルディオ(何か問題ありましたか?)
アインズ(い、いえ、無いには無いんですが・・・この話をしたらアルベドも参加したいって言って・・・)
ゾルディオ(あー、まあいいんじゃないですか?大丈夫ですよ)
アインズ(そうですかね?)
ゾルディオ(・・・多分)
アインズ(あはは・・大丈夫かな・・・)

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