~玉座の間~
「皆、集まったな」
ここ玉座の間ではナザリックにいるほとんどのNPCがそろっている。守護者(第4、第8の守護者除いて)にセバスにプレアデスたち。さらに一般メイドもそろっている。その他に各階層にいたであろうNPCたちもだ。今思うとかなりいるな。これから俺が帰ってきたことをここにいるNPC全員に伝える集会が始まろうとしている。
NPCたちは何事かという感じでここに集まってるみたいだ。そりゃそうだろ。急に呼ばれたんだから。
「皆を集めたのは他でもない、報告せねばならないことがあるからだ」
モモンガさんの一言で玉座は少しざわめいている。皆から緊張感が漂っている。
「報告の内容は皆に喜びを与えるものだ」
多少ざわめきはあるが緊張感は少し和らいだようだ。ま、悪い知らせよりはいいもんな。
おっと、メッセージが・・・。あとはタイミングよく登場するだけだな。
「このナザリックにゾルディオさんが帰還された」
その言葉の後すぐに俺は扉を開け、玉座の間に入った。俺が入ったと同時にNPCたちの視線が一斉に降りかかる。やべ、緊張する。皆の表情が驚愕だったり、喜びのあまり泣き出す者もいる。だが皆一様に騒ぐことはなかった。騒いでは失礼だと思ったんだろうな。
そんなことを思いながら俺はゆっくり歩きながら、まっすぐにモモンガさんがいる玉座の前まで行った。モモンガさんに一礼をして、ふりむき・・
「ナザリック末席、ゾルディオ。ここに帰還した」
そう言うと歓声が巻き起こった。誰もが帰りを待ちわびていたようだ。嫌な顔をする者が誰もいないことに俺は心の中で安堵した。実はかなり心配だった。
歓迎してくれないと思っていたからだ。鳴りやまぬ歓声を止めようとモモンガさんが手を上げようとしたが、俺が先に止めた。
「皆、歓声ありがとう。ナザリックを離れた者にここまで歓迎してくれて、私は感謝します」
「ゾルディオさんがなぜナザリックを離れたか皆も気になるだろう。ゾルディオさんがその理由を話してくれる。皆、心して聞け」
そうモモンガさんが言うと一気に静寂に変わった。なんかすげぇな。普通ここまで一気に静かになんないっしょ。それにこういうところで話すの得意じゃないんだけどな。
「私がナザリックを離れた理由。それは」
その瞬間に唾をのむ音が聞こえたような気がする。
「私の母星が侵略されたという情報が入ったからだ」
このことを言った瞬間、NPCたちは驚きと怒り、殺気を露わにしていた。特に守護者やプレアデスたち。めっちゃコエェ!!
「その連絡が入り私は至急母星に向かった。そこでは私の同族が無残に殺され侵略されていく真っ最中だった。まさか侵略者である私が逆に侵略されるなど、まさに失態だった。
だがその侵略者も私と同等、いやそれ以上だった。私はそいつらと長い間戦い、ついにやつらを一人残さず殲滅した。
だが戦いが終わった時、私の同族は全滅。私は一人残ったのだ。戦いが終わった私はナザリックに向かった。それで今に至るというわけだ」
話が終わった後、NPCたちの怒りはなくなったが代わりに悲しみの表情でいた。
『ゾルディオさん!それ嘘じゃないんですか!本当のこと話して下さいって―』
『いやこれ本当なんですよ。実家から連絡がありまして、帰ってこいって』
『えぇー!本当なんですか!?』
『メンバーたちには仕事が増えたと言いましたけど、本当は身内が亡くなりまして・・』
『あっ・・・すみません・・』
『いえ、いいんですよ。それでそのまま葬式を終えたら本当に仕事が増えていまして。そのせいでずっとログインできなかったんです』
『そうだったんですか・・』
『モモンガさんには・・本当に申し訳ないことをしました』
『いいんですよ、それにこうしてまた会えたんですから』
『モモンガさん・・・』
ありがとうございます・・。そう心の中で言った。
「私の勝手な判断で皆を心配させ、迷惑をかけてしまい申し訳ありません」
「いまのゾルディオさんがナザリックを離れた理由を聞いたうえでお前たちに問う。ゾルディオさんの帰還に異を唱えるものはいるか。いればこの場で挙手してくれ」
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ゾルディオ様がナザリックを離れた理由が母星に侵略者が現れるとは!!その愚者共には地獄すら生ぬるい!!この手で葬りたいと思った者はナザリックにはいないはずがない!
しかし、その愚者共がゾルディオ様と同等かそれ以上では我々では手が出せない。出したところで返り討ちにあってしまうでしょう。自分の弱さを私は恥じた。もっと力があれば!
デミウルゴスは自分の弱さに怒り、そして涙した。至高の御方のお力になれないことに。守護者達もその侵略者に怒り、そして悔しく思い、自分の弱さに涙していた。
「いまのゾルディオさんがナザリックを離れた理由を聞いたうえでお前たちに問う。ゾルディオさんの帰還に異を唱えるものはいるか。いればこの場で挙手してくれ」
そのような輩がいた場合私は躊躇なく殺します。たとえ守護者であろうと・・・
「・・・無いようだな」
「ありがとうございます。そして今一度お礼を言わせてください。ナザリックを・・モモンガさんを守り続けてくれてありがとうございます。今、この場所があるのはあなたたちが守っていくれたおかげです。本当にありがとうございます」
同じことを言われたとしても・・その言葉は深く心にしみる。先ほど同じように聞いていた守護者はもちろん、プレアデスも、他の部下たちも感動し涙している。
「そしてここに宣言します。ここを・・ナザリックを・・・私の母星と同じようにはしないと!どんなに攻め込まれようと!!私はここを!!いえ、あなたたちを最後まで守ると!!私と同じ過ちは繰り返させないと!!そして二度とナザリックを去らないと!!ここに宣言します!!」
ああ・・・これは・・・どんな攻撃よりも響く。私は思わず涙を流してしまいました。アウラとマーレは声に出して泣いてしまい、セバスでさえ涙を流してしまっている。
私はそっとハンケチで目元を拭った。今、玉座の間が優しさと感動に包まれている。
「・・各員!ゾルディオさんに恥じぬよう、一層忠義に励め!」
玉座の間に大歓声が響き渡った。
至高の御方々に恥じぬ働きをお見せせねば。
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「はぁーーーーー・・・」
「お疲れ様でした、ゾルディオさん」
「あ、モモンガさん。おつかれーっす」
「いやぁ、すごかったですね。」
「話してるこっちとしてはマジ緊張しましたけどね・・」
「いや、聞いてるこっちも緊張しちゃいましたよ」
「まさかあそこまで泣くとは・・・」
「本当に・・・驚きですよ・・」
「少し悪いようにしちゃったかと思っちゃいましたよ」
「まあそう思いますよね。あそこまでいったら・・」
「ははは・・・はぁ」
「ま、無事終わってよかったですね」
「ですねー」
モモンガ「ゾルディオさん、元の世界に未練は・・・」
ゾルディオ「ありませんよ?」
モモンガ「即答!?」