怪獣と骸骨の異世界蹂躙物語   作:きょろりん

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仲間達の想い

※誤字報告がありましたので、訂正しました!


44話 仲間

ゾルディオがメフィラス星人たちのもとへ向かうと、そこには跪き敬意を表しているメフィラス星人たちの姿が見えた。

 

「・・ご無事でなによりです、陛下」

 

「ああ・・・周辺の警戒、監視ご苦労。ガンQ、索敵は終了。これよりナザリックに帰還する」

 

「はっ!」

 

そう言い、ゾルディオはアインズに《伝言》を使った。

 

 

(アインズさん)

 

(はい・・・お疲れ様です、ゾルディオさん)

 

(いえ・・・・今からナザリックに直接この姿のままで向かいます)

 

(あ、そうですか。わかりました。それで、移動はどうするんですか?)

 

(それは大丈夫です。ご心配なく)

 

(分かりました。では、お待ちしてます)

 

 

「・・・さて、上位星人創造『ヤプール』」

 

ゾルディオがそう言うと、突然空間に亀裂が入り、まるでガラスを割るように空間を割って一体の星人が出てきた。その星人はすぐにゾルディオに向かって跪いた。

 

「・・お呼びでしょうか、陛下」

 

 

異次元超人 ヤプール

 

その名の通り次元を操る宇宙人。戦闘能力はレベルのわりに低いが、次元を操り自分が有利になる空間を作り出し、その空間に相手を引き込み、自分に有利になるように戦うことができる。さらに、ゾルディオが作り出した怪獣を自分の空間に入れ、いつでも空間から呼び出すことができる。

その他にも魔法が使えないことにより、《転移門(ゲート)》の使用ができなかったが、ヤプールは次元を操り疑似的に《転移門(ゲート)》の代わりとなる《空間移動》を使用できる。

 

 

「ああ、俺たちをナザリックまで《空間移動》で移動させてくれ」

 

「畏まりました。では」

 

ヤプールはそう言うと、鎌状の右手を振った。すると、空間が裂けた。

 

「・・こちらです」

 

 

 

 

 

 

「・・・ゾルディオさんから《伝言》が届いた。今からナザリックに戻るそうだ」

 

「では《転移門(ゲート)》を・・・」

 

「いや、その必要はない。もうすぐ――」

 

アインズがデミウルゴスを止めようとした瞬間、

 

 

ピシッ

 

 

空間にヒビが入った。

 

「え?」

 

ヒビは次第に大きくなり、やがて空間は割れて、中からゾルディオと、その後ろから続くように怪獣と星人たちが歩いて出てきた。その姿はまさしく、あらゆる怪獣・星人の頂点に立つ者の風格があった。

その姿を見た守護者たちは喉を鳴らした。そして、何も言わずにその場で跪こうとした。だが、

 

「そのままで構わん」

 

ゾルディオは止めた。

 

「ご苦労様でした、ゾルディオさん」

 

「いや、俺よりもシャルティアを・・・」

 

「・・分かっています。では、玉座の間に」

 

「ああ・・・」

 

 

 

 

玉座の間に着くと、アインズとゾルディオはリストを開きシャルティアの生死を確認した。

 

シャルティアの名前が書かれていた箇所は空欄となっていた。

 

(すまない、シャルティア。こんな形でしか救えずに・・・俺の不甲斐ないばかりに)

 

ゾルディオは心の中でシャルティアに謝罪をしていた。するとアインズが

 

「これよりシャルティアの復活を行う。アルベドはリストを見ておいてくれ。もし異常があった場合は即座に伝えろ」

 

「畏まりました」

 

「そしてもし、シャルティアの精神支配が解けていなかった場合は・・・」

 

「そのようなことになった時は、僭越ながら私どもで対処させていただきます」

 

デミウルゴスが守護者たちを代表して答えた。その答えに、アウラ、マーレ、コキュートスも同意の様子であった。

 

「陛下、我々も同様に・・・」

 

ゾルディオの後ろに待機していたメフィラス星人も同じようであった。

 

「「お前達・・・」」

 

ゾルディオとアインズがそう呟くとデミウルゴスとアルベドが

 

「至高の御方々の言は尊く、私どもが身を代えてもお守りせねばならないことは重々承知しております。ですが、至高の御身をお守りするのも私どもの役目。これ以上至高の御方々に危険が迫ることは、臣下として相応しくないと判断しました」

 

「シャルティアが再び反逆を起こした場合は、私どもで対処させていただきます。御身はお下がりください」

 

そう言われゾルディオとアインズは顔を見合わせた。

 

「「・・・」」

 

そしてゾルディオが頷き、

 

「・・・わかった。お前たちに任せよう」

 

そう言いながら、部下たちを見据え

 

「ナザリックの者たちよ!我を守れ!」

 

アインズの声が玉座の間に響き渡る中、アインズはスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを掴み、玉座の間の一角に積み上げられている金貨5億枚に向けた。

すると、金貨の山は溶けるかのようにドロドロに変わり、一箇所に集まっていく。集められた金は徐々に人の形に作られ、やがて黄金の輝きはなくなり、次第にシャルティアの姿になった。

 

「アルベド!異常は!?」

 

「ご安心くださいアインズ様。シャルティアの精神支配は解除されています」

 

その言葉を聞き、アインズとゾルディオは安堵に胸をなで下した。そして、二人はシャルティアに近づき、ゾルディオはキングブレスレットを片面が白、反対側が赤色のマント「ウルトラマント」に変え、シャルティアの体に覆わせて抱き起こした。

 

「シャルティア・・・」

 

すると、シャルティアはゆっくりと目をあけた。

 

「んぅ・・・ゾルディオ様?・・・え?」

 

シャルティアは、自分の身に何が起きたかわからない様子でいた。

 

「ゾ・・ゾルディオ様、でありんすか?そのお姿は?」

 

「ああ・・俺だ・・・この姿のことは後で教えてやる・・・・すまない、今回は俺の失態だ・・・本当にすまなかった」

 

「?な、なんのことかさっぱりわかりんせんでありんすが、至高の御方に失態などありえないでありんす!」

 

「それも含めて後で詳しく説明する。だが、今は俺の質問に答えてくれ」

 

「は、はい。なんでもおっしゃって下さいまし」

 

「ああ、お前の覚えている限りでいい。最後の記憶を教えてくれ」

 

「最後の・・・記憶、でありんすか?最後は・・・」

 

話によると、シャルティアはメフィラス星人とともにセバスたちと合流し、馬車で街へ向かうところまでとなっていた。それ以降は全く覚えていないとのことだった。

その話を聞き、ゾルディオは手を顎に当てアインズに《伝言》を送った。

 

 

(アインズさん)

 

(はい)

 

(今からメフィラスに記憶を読み取らせようと思うんですが・・・)

 

(俺も同じことを考えてました)

 

(ですが・・・)

 

(どうしました?)

 

(本人が覚えていないとすると、もしかしたら復活の際に記憶が一部欠落する、ていう設定もある可能性もあるわけですよね)

 

(確かにそうですね・・・NPCを復活させたのはこの世界で今回が初なわけですし、その可能性も無くは無いですね)

 

(その場合はメフィラスでも記憶を読み取ることはできないと思うんですよ)

 

(そうですね・・・記憶そのものが消えてしまったら不可能ですね・・・)

 

(やらせるべきですかね?)

 

(・・・やるだけやったほうがいいと俺は思います。やらないで後悔するよりかはいいですよ)

 

(・・そうですね。では、やらせてみます)

 

 

《伝言》を終え、ゾルディオは抱き起こしている手を放した。シャルティアは名残惜しそうな表情をするが、すぐに表情を戻した。

 

「メフィラス」

 

「はっ!」

 

「シャルティアの記憶を読み取ってくれ」

 

「畏まりました」

 

そう言うとメフィラス星人はシャルティアの頭に手を置いた。

 

「・・・・・駄目です。読み取ることができません」

 

「そうか・・・」

 

 

(アインズさん、駄目みたいです)

 

(そうでしたか・・・そうなるとさっきの考えが正しい事にもなりますが、これだけで結論を出すにはまだ情報が足らないですね)

 

(この件は後で考えましょう)

 

(ですね)

 

(こうなると、シャルティアを支配した奴らの正体がはっきりしないのは厄介ですね)

 

(ええ、今後ナザリックに害を及ぼす可能性がある存在が、チャンスを窺っている可能性は十分にあります)

 

(なるべく早めに処理したいですね)

 

(ですね・・・)

 

(まあ・・・簡単に捻り潰す気はないですがね)

 

(もちろんです。この借りは何万倍にして返しますよ・・・)

 

 

アインズとゾルディオは今回の事件を起こした人間たちに、精神作用無効ですら抑えきれない憤怒を抱くが

 

「――ゾ―ィオ様、ゾルディオ様」

 

「ん?」

 

シャルティアの呼びかけにより冷静を取り戻した。

 

「すまない、少し考え込んでいただけだ。それよりも、何か他に異常はあるか?」

 

そう言うと、シャルティアは顔を触ってみたり、体に異常がないかを調べた。

 

「・・・特に問題はないようでありんす」

 

「そうk」

 

「ゾ、ゾルディオ様!」

 

突然のシャルティアの悲痛な叫びに、ゾルディオたちは身構えた。全員、何かあったのかと心配な表情をした。

 

「ど、どうした!?」

 

 

 

 

 

 

「む、胸が・・無くなっていんす」

 

 

 

 

 

 

「「・・・・・・」」

 

少しの沈黙が玉座の間に訪れ、次第に守護者たちの顔が心配な表情から怒りの表情に変化していった。普段はクールなデミウルゴスでさえ、顔に血管が浮き出るほどであった。

 

「お、お前は・・・今までの自分の状況が分かっているの!」

 

アルベドが普段ナザリックで出したことがないであろう怒りの声を上げ、守護者を、いやこの場のシャルティアを除く者たち全員を代表して怒鳴った。その声にシャルティアはビクッと肩を震わせた。そして、そこからシャルティアは守護者たちから一方的に責められ、ついには涙目になってしまうほどに。

アインズは床に座り込んでしまうほど脱力してしまった。そして、シャルティアを責める守護者たちを見て、アインズはかつての仲間たちが重なって見えた。

その光景にアインズは手を伸ばそうとするが、その手はまるで薄いガラスに止められたかのように止まった。

もし、このまま自分があの中に入れば、皆はアインズに忠義を示すことだろう。だがそれはかつての仲間たちと同じような温もりを感じることはできない。それがアインズにとって一番口惜しいことであった。

そして、アインズが伸ばした手を力なく垂らそうとした時、

 

 

 

 

 

黒く鋭い手がアインズの手をつかんだ。

 

 

 

 

 

「え?」

 

アインズが顔を上げるとそこには、ゾルディオが手をつかんでいた。

 

「ど、どうしました?ゾルd」

 

 

 

 

 

 

「今、アインズさんの目には何が見えていますか?」

 

 

 

 

 

 

「え?な、何って、それは・・・」

 

そう言い、アインズはゾルディオを見上げる。

 

「ゾルディオさんが・・・あ!すみません、また迷惑を・・・」

 

「違いますよ。迷惑なんかじゃないです」

 

ゾルディオにそう言われ、アインズは頭をかしげた。

 

「ですが・・・」

 

「俺は、アインズさんが本当に欲しているものをあげることはできません」

 

「それは・・・」

 

「ですが今のアインズさんにとっての、かつての仲間たちはこの場にはもういないんですかね?」

 

「!」

 

「確かに、もうあの頃のような温もりを感じることはないかもしれません。ですが、ここにはその仲間たちが残していった子供たちがいます」

 

「・・・」

 

「もうかつての仲間たちはここにはいませんが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちにはあの子たちっていう立派な仲間がいます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

アインズは口を開けて驚いた。

 

「ふふっ、もうここまで言えばいいですよね」

 

そう言い、ゾルディオはアインズの手を引っ張り立ち上がらせた。

 

「さあ、行ってください」

 

「え?ええ!?」

 

ゾルディオはそのままアインズの背中を押し、守護者たちのもとへ向かわせた。

 

「!アインズ様もシャルティアに厳しく仰ってください」

 

「ええ、この馬鹿に一発がつんと言ってやってください!」

 

「今回バカリハ強ク厳シイオ言葉ヲ仰ッタホウガ良イカト・・」

 

「シャルティア、至高の御方の大切なお話をよく聞くんだよ?」

 

「で、でも、あんまり・・その、厳しくは、えっと・・・」

 

「・・・ふっふはは、はははははは」

 

アインズが急に笑い出したことにより、守護者たちは唖然としアインズを見つめた。アインズはそんなことを気にせず、心から笑った。その笑いは玉座の間に響き渡った。

 

「いや、すまない。シャルティアの件についてだが・・・」

 

「シャルティアに目立つミスはありません。今回の件は私の判断ミスによって生まれたこと、本当に責められるのは私です。なので、シャルティアに罪はありません。シャルティアは、この言葉をよく覚えておいてください」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

「シャルティアに何が起きたかは、デミウルゴスにお願いします。いいですか?」

 

デミウルゴスは一礼し

 

「お任せください、ゾルディオ様。ところでセバスは一体――」

 

「セバスは囮だ」

 

デミウルゴスの問いに、アインズは無慈悲に答えた。

セバスはシャルティア達と一緒の馬車で動いていたため、もしもシャルティアを支配した者たちが次の狙いに定めるとしたら、ともに移動していたセバスを狙う可能性があるため、セバスはあえて呼び戻すことはしなかった。

そして、アインズはアルベドにセバスの周辺を監視する要員を派遣するように伝えた。セバスは囮とは言え、敵に食いつかせる気は毛頭ない、敵がセバスに近よることを阻止する要員でもあるのだ。

 

「畏まりました。早急に手配します」

 

「うむ。言い方が悪くなるが、シャルティアのおかげでお前たちが万が一死んでも復活することが分かった。だが、これ以上かつての仲間たちが作り出したお前たちを、私とゾルディオさんの手で屠る事だけはさせてくれるな」

 

守護者たちはアインズの言葉に感動し、とっさに顔を伏せた。だが、シャルティアはその言葉で自分が何をしでかしたのか、薄々気が付き、顔を蒼白くさせた。

ゾルディオはそれに気が付き、すぐさまシャルティアの頭を撫でた。

 

「ゾ、ゾルディオ様・・・わ、私は・・・」

 

「いいんですよ。シャルティアは悪くありません。気にすることは無いですよ」

 

そう言い、シャルティアを落ち着かせた。

そんな中、マーレが

 

「ア、アインズ様。あの戦闘を行った森は僕が修復したほうがよろしいでしょうか?」

 

「いや、その必要はない。あれは街の人間たちに、吸血鬼との激しい戦闘によってああなってしまったという証拠としてそのままにして置く。そうすることにより、私の、冒険者モモンとしての強さを知らしめさせる。そうだ。アルベド、ニグンが使っていた魔封じの水晶を傷つけておいてくれ。それと、鍛冶長に壊れた鎧に焼け焦げた跡を付けさせておいてくれ。激戦の戦士のようにな」

 

「畏まりました」

 

「それと、今後ナザリックに害を及ぼさんとする存在が現れる可能性も考慮し、早急にナザリックの強化に入りたい。その一環とし、私のスキルでアンデッドの軍勢を作り出そうと思う。そのための死体をエ・ランテルの墓地から密かに回収する」

 

「そのことですが、アインズ様」

 

「どうした?」

 

「アインズ様のスキルでご創造できるアンデッドは、人間の死体では中位アンデッドの40レベルが最高となります。それ以上のレベルとなりますと、時間経過によってアンデッドは媒介となった死体もろとも消滅してしまいます。そこで、一つご提案が」

 

「言ってみるが良い、アルベド」

 

「はい。人間の死体以外、つまり亜人種の死体を使用するのでございます」

 

「なるほどな・・・それを提案するということは、もうすでに?」

 

「はい。アウラが蜥蜴人(リザードマン)の村落を発見しております。そこを滅ぼしてみてはいかがでしょう」

 

 


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