幻の姿
※誤字報告がありましたので、訂正しました!
「さあ、第二ラウンドと行こうか・・・」
「くっ!」
シャルティアはツインソードをゾルディオに投げつけた。それと同時にエインヘリヤルもゾルディオに向かっていった。
「・・・」
ツインソードはゾルディオの目の前で方向転換し、後ろに飛んで行った。
そして前からはエインヘリヤル、後ろからはツインソードの挟み撃ちとなった。
(ふふふ、これで・・・)
シャルティアは余裕の表情でいた。だが、
「・・・策が甘いな、シャルティア」
「え?」
ゾルディオは手から赤く鋭い爪を伸ばした。そして、
「ふん!」
後ろからくるツインソードを赤い爪《カイザーベリアルクロー》で砕き、エインヘリヤルを一刺しにした。
すると、白く光り輝いていたエインヘリヤルの体は次第に赤黒く染まっていった。そしてエインヘリヤルはまるで砂のように消えていった。
「!?」
「こんなものか?」
(なるほどね。分身とかそういうのは洗脳できないのか・・・)
「あのお姿は・・・」
ナザリックでは守護者たちが再び驚きの表情でいた。
「・・・とうとう出たか」
「アインズ様・・・ゾルディオ様の・・あのお姿は一体・・・・」
「あれはユグドラシル内ではゾルディオさんにのみ使えるスキルでな、いわば幻の姿だ」
「幻の・・・姿・・・・」
「どうした?この程度か?」
「そんな・・エインヘリヤルが・・・」
シャルティアはエインヘリヤルが一撃で消えたことに驚きを隠せずにいた。
「今度はこっちから行くぞ・・・」
そう言い、ゾルディオはシャルティアに向かって大きくジャンプしながらパンチを繰り出した。
「!ふっ!」
シャルティアは回避し、スポイトランスで反撃をする。だが、
「はっ!」
「!?」
ゾルディオはスポイトランスを片手で受け止め、そして
「おら!」
そのままシャルティアをスポイトランスごと地面に叩き付けた。
「ぐはっ!」
「そら!」
ゾルディオは続けて踏みつけるが、シャルティアは飛行し避けた。
「《不浄衝撃盾》!」
シャルティアは空中で体勢を整え《不浄衝撃盾》を放つ。
「ふん!」
ゾルディオは両手を交差し衝撃を凌いだ。シャルティアは追撃するようにスポイトランスを向けて飛んできた。
「そらぁ!」
ゾルディオはシャルティアに向けて腕を横に振った。すると、腕から三日月状の斬撃《カイザーベリアルリッパー》を放った。
「ぐふっ!」
シャルティアは斬撃をもろに受け、体から血が吹き上がった。だが、時間が戻るように吹き上がった血は体に吸収され、斬られた傷は元通りに無くなった。
「ようやくそのスキルを使ったか」
「・・流石に今のは効きましたから」
そう言ってシャルティアは地面に降りた。
「シャルティア、俺をこの姿にした礼だ。俺の持つブレスレットの中で最強の武器を見せてやる」
そう言うとゾルディオは「べリアルマント」を外し、キングブレスレットに触れた。するとブレスレットは、黒い金棒状の武器「ギガバトルナイザー」に変化した。ゾルディオはギガバトルナイザーを構え、
「・・・いくぞ」
シャルティアに向かった。
「ぜあああ!」
ゾルディオはギガバトルナイザーを振るい、攻撃するがシャルティアは飛行しながら後ろに躱し、ゾルディオから距離を取ろうとした。だが、
「そこだ!」
ゾルディオはギガバトルナイザーの先端をシャルティアに向けた。すると、ギガバトルナイザーから光り輝く光弾《べリアルショット》が発射された。
「なに!?」
シャルティアは突然のことで回避ができずランスで防御する。だが光弾は物凄い爆発が起き、シャルティアを吹き飛ばした。
「ああぁぁ!」
あまりの衝撃に受け身を取ることのできないシャルティアは、地面に再び落とされた。
「隙だらけだ!」
立ち上がろうとしているシャルティアに向かって、今度は先端から青い稲妻《べリアルジェノサンダー》が放たれた。
ゾルディオの容赦ない攻撃により、シャルティアはダメージを受け瀕死状態であった。
「はぁ・・はぁ・・」
シャルティアは2回目の《時間逆行》を使用し、ダメージを戻した。
(なんて強烈な攻撃・・・あれがゾルディオ様最強の武器、その名は伊達じゃない。このままだと・・・・こうなったら・・・)
シャルティアはよろよろと立ち上がり
「《眷属招来》!」
再び無数の眷属を呼び出した。
(今更そんなの出して何をする気だ?)
シャルティアの行動にゾルディオが疑問に思っていると
「《清浄投擲槍》!」
シャルティアは最後の《清浄投擲槍》を放った。そして、
「《石壁》!」
続けて石の壁を作り、シャルティアは姿を隠した。
「時間稼ぎのつもりか!」
そう言うと、ゾルディオはギガバトルナイザーを高速で回し《清浄投擲槍》を打ち消した。その後《石壁》に向かって《べリアルショット》を放ち、壁を破壊した。
するとそこには、
「!?なんだと!?」
シャルティアの姿はなく、眷属だけがいた。
(どういうことだ?飛べばバレるし、何より『ストーカー』の職業スキルではシャルティアは目の前に必ずいる・・・・・ん?)
ゾルディオがその眷属たちをよく見ていると、眷属たちは次々と消えて行っていることに気付いた。
(・・・まさか、《透明化》を使いながらスポイトランスで自分の眷属を攻撃し、回復しているのか?だとしたら、すでにかなり回復しているな・・・フレンドリィファイアが解禁されているこの世界ならではだな。なるほど、よく考えたな・・・・だが)
「俺には通用しねぇぞ!シャルティア!」
そう言いながら、ゾルディオは上空にギガバトルナイザーを向けた。すると、突然空にブラックホールが発生した。
眷属たちはブラックホールの吸引力に耐えられず、次々と吸い込まれていく。
「くぅぅぅぅ・・・」
その中に姿を現したシャルティアが、必死に吸い込まれないように抵抗していた。しかし、
「はっ!」
ゾルディオは《カイザーベリアルリッパー》を放ち、シャルティアは回避したがブラックホールに吸い込まれた。
吸い込まれたシャルティアは場所を確認するために周りを見た。だが、周りは真っ暗な闇が広がっているだけだ。出口も何もない。
すると、突如シャルティアの周りに複数の光が見えた。それは、先ほどゾルディオが放った光線、《べリアルジェノサンダー》であった。
シャルティアは回避をしようとするが、体を動かすことができなかった。まるで金縛りにあったかのように。
次第に光はシャルティアに集まってった。そして、四方八方からシャルティアは《べリアルジェノサンダー》を受けた。
「きゃああああああああ!!」
その威力は絶大であり、ランスで回復していたシャルティアのHPを瀕死にまで削った。
やがて闇は消え、黒焦げとなったシャルティアはもとの場所に落とされた。
「がっ・・ああ・・ああああ・・」
「よお、まだ生きてるか。流石だな」
シャルティアは最後の《時間逆行》を使用し、体を戻した。
「はぁ・・はぁ・・はぁ・・」
「これですべて使い切ったか・・・次でトドメだ」
そう言い、ゾルディオはギガバトルナイザーをブレスレットに戻し、マントを付けた。
「わ・・私は・・・まだ、負けない・・・」
ふらふらになりながらもスポイトランスを握りしめ、ゾルディオに立ち向かおうとする。
「今・・・終わりにしてやる」
ゾルディオの右手に赤黒いエネルギーが集まっていき、そのまま両手をゆっくり十字に交差し、右掌をシャルティアに向けた。
すると、右手に集められたエネルギーが光線となり放たれた。
MPもスキルも使い切ったシャルティアは、負けを認めるように《デスシウム光線》を受け、暗黒のエネルギーがシャルティアを包み込んだ。
光線により体が崩れていき、朦朧とする意識の中シャルティアは最後の力を振り絞り声を出した。
「・・・あぁ、ナザリックよ万歳。至高の御方々こそ最強の存在。そして・・・」
(申し訳ございません・・・ゾルディオ様・・・・・)
シャルティアは涙を流し、完全に消滅した。
「・・・クソが」
そう呟き、ゾルディオは光線を撃ち終えた。光線を放った射線上は跡形もなくなり、地面は抉られ燃え盛っていた。
その光景を背に、ゾルディオはメフィラス星人たちのもとに戻っていった。