怪獣と骸骨の異世界蹂躙物語   作:きょろりん

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シャルティアを捜せ

※誤字報告がありましたので、訂正しました!毎回申し訳ございません!


36話 困惑

「お帰りなさいませ、アインズ様、ゾルディオ様」

 

俺とアインズさんはアルベドから《伝言》を聞き、急遽ナザリックへ戻ってきた。《伝言》の内容は、

 

 

 

シャルティアが反旗を翻した。

 

 

 

シャルティアが反旗を翻した?何かの間違いだろ?俺はそう思っていた。もちろんアインズさんも同じ考えだ。だけど、アルベドが嘘をつくとも思えなかった。

俺たちは困惑しつつも玉座の間に向かい、マスターソースを開き確認した。

そこにはNPCたちの名前が白い文字でずらりと並んでいた。その中で、一つだけ赤い文字が混じっていた。それはシャルティアの名前だった。

 

「これが反旗を翻した証拠、と言うわけか」

 

「はい」

 

「・・死亡ではないのですか?」

 

「恐れながら、死亡の際には文字が消えて一時的に空欄になります」

 

「・・・ですよね」

 

確かに、ユグドラシルだとこの表示は第三者による精神支配による結果、一時的に敵対行動をとったNPCの名前表記だ。

 

「ですがシャルティアはアンデッド。精神支配は効かないのでは?」

 

「私も同じことを考えていました。しかし、我々はこの世界のことをよく理解していない。もしかすると、アンデッドでも有効な精神支配の魔法が存在するやもしれません」

 

「・・・確かにそうですね」

 

アインズさんの言う通りだ。俺たちはまだこの世界のことをよく知らない。俺たちの知らない魔法や、能力があったとしても不思議ではない・・・うん?待てよ・・・・・

 

「そういえば一緒に同行させた者たちはどうしました?」

 

「吸血鬼の花嫁二体は滅びました」

 

「・・・そうですか。ですが、まだ生きている可能性があるものがいます」

 

「?それは誰ですか?」

 

アルベドが困惑した様子で聞いてきた。

 

「実はシャルティアの護衛に吸血鬼の花嫁だけでは少々力不足と考え、私の創造した上位星人を護衛兼補佐役として渡したのです」

 

「ゾルディオ様がご創造なさった者を?」

 

「はい。メフィラス星人と言い、レベルは80と守護者には届きませんが実力、頭の良さは確かです」

 

「アインズ様はこのことを?」

 

「ああ、知っていた。それに、私としてもそのほうがうまくいくと思ったのでな」

 

「そうでしたか・・・」

 

「それで、メフィラスは?」

 

「残念ながら分かりかねます。生存しているのか死亡しているのか・・・」

 

「そうですか・・・わかりました」

 

メフィラスほどのやつがやられるとは思えないけど、シャルティアがやられたなら納得は行く。

 

「そこで、私は至急討伐隊を編成されることを進言いたします」

 

まぁ、そうなるよな。でもそれは・・

 

「それは少々早計だ、アルベド。まずは何故シャルティアが反旗を翻したのか。それを確認する必要がある」

 

「自分もアインズさんの言う通りだと思います。討伐するかはその後に」

 

「・・至高の御方々はやはりお優しい方々です。ですが、どんな理由があろうと至高の御方々に敵意を向ける存在に慈悲を見せる必要はないと思います」

 

「それは違いますよ。私とアインズさんは、何故シャルティアが反逆したのか。それを知りたいのですよ」

 

そう。これがもしシャルティア以外にもあり得るなら、早急に対処方法を見つけ出さなければならない。今後も同じことが起こらないという保証もないわけだし。後顧の憂いとなるものは断っておかなければ・・・

 

「まずはシャルティアの居場所を掴む。アルベド、お前の姉のもとへ向かうぞ」

 

(アインズさん、マジですか)

 

(マジです)

 

(・・・さて、ここらで自分は冒険者のほうに戻り――)

 

(逃がしませんよ!俺だってあんまり行きたくないんですから!)

 

・・・正直、行くのが躊躇われるけど行くしかないか。

 

 

 

 

 

アインズ、ゾルディオ、アルベドの三人は地下第5階層へ向かった。途中、アインズさんがアルベドに冷気遮断のマントを貸したり、喜んだアルベドが飛び跳ね天井に激突したりと、なんやかんやありながら進んだ。

 

「ここだな」

 

「ですね」

 

「アルベド、人形を」

 

「はい」

 

そうアインズさんが言うと、アルベドは壁から出てきた人形をアインズさんに渡した。

 

「・・・本当に気持ち悪いな」

 

「仕方ないですよ」

 

その人形は、赤ん坊のカリカチェアで目が大きくて正直気持ち悪い。

アインズさんはその人形を受け取り、扉を開けた。部屋には無数の赤ん坊の泣き声が響き渡っていた。

その部屋に長い黒髪の女が、部屋の中央の揺りかごを静かに揺らしていた。

 

「そろそろかな?」

 

「そう思われます。ご注意ください」

 

その会話を合図に、女は揺りかごの中の赤ん坊の姿をした人形を取り出し

 

「ちがうちがうちがうちがちがう」

 

まるで何かの呪いかのように同じ言葉を繰り返しながら人形を壁に叩き付けた。

 

「わたしのこわたしのわたしのこわたしのこわたしのこぉぉぉぉおお!」

 

女が取り乱し、歯をガチガチとかみ合う音が響き、それを合図に鳴き声が強まりだした。すると、部屋の至る所から10レベル後半のモンスター、腐肉赤子(キャリオンベイビー)が姿を現した。

 

「タブラさんもこれほどの数のモンスターを配備するとは・・・どれだけ金をかけたんだ」

 

「そういう人ですからね。恐怖やホラーが大好きな方でしたし、ここはかなり拘ってましたね」

 

俺とアインズさんが感心している間に、女は巨大な鋏を取り出し

 

「おまえたちおまえたちおまえてちおまえたちおまえたち、こどもをこどもをこどもをこどもをさらったなさらったなさらったなさらったなぁぁぁあああああ!」

 

一直線にこっちに走ってきた。やっぱ怖いな・・・そして、持っている鋏をアインズさんに向かって大きく振りかぶり―――

 

「お前の子供はこれだ」

 

アインズさんが人形を女に突き出すと、女の動きはピタリと止まった。そして、手に持っていた鋏を仕舞い人形を受け取った。

 

「おおおおお!」

 

女は受け取った人形を優しく抱くと、揺りかごに人形を戻した。そして振り返り

 

「これはこれはモモンガ様、それと私の()()()()の妹、ご機嫌よう。そしてご帰還お喜び申し上げます、ゾルディオ様」

 

「久方ぶりだな、ニグレド。お前も・・・・変わらないようで安心したよ」

 

「ありがとうございます、ニグレド。あなたが元気なようで嬉しいですよ」

 

「姉さん、お久しぶりです」

 

ニグレドはアルベドの姉であり、ギルドメンバーのタブラ・スマナグディナさんが設定したNPC。最初見た時は本気でビビったけど、案外なれるものなのかな?それとも本当に怪獣になったからなのかな?

 

「それでモモンガ様、ここへは何を――」

 

「ああ、すまないな。今の私はモモンガではなくアインズ・ウール・ゴウンと名乗っているのだ。だから、これからはアインズと呼んでくれ」

 

「畏まりました、アインズ様。それで・・」

 

「今回はお前に頼みたいことがあって来たのだ。お前の能力を貸してほしい」

 

「私の、ですか?」

 

「ああ、目標はシャルティアだ」

 

「階層守護者を・・・ですか?」

 

「詳しいことは後で教えます。今は・・・」

 

「わかりました。では、開始させていただきます」

 

「お願いね、姉さん」

 

アルベドがそう言うとニグレドは親指を立てて答えた・・・・意外にお茶目だな。

ニグレドが魔法を複数発動させ始めた。するとすぐに

 

「発見しました」

 

「早いですね。流石はアルベドの姉ですね」

 

「恐れ入ります」

 

「では《水晶の画面(クリスタル・モニター)》を」

 

再びニグレドが魔法を発動させると、浮かび上がった水晶の画面に木々の中に一人、真紅の鎧を着た者―――シャルティアが映った。

 

その姿を見た俺たちは驚愕した。シャルティアの姿は、俺と闘技場で戦った時と同じ姿・・・つまり完全に戦闘態勢でいるということ。

まさかスポイトランスを使う事態まで陥っていたなんて・・・

 

「・・・すぐにシャルティアの下に向かうぞ。ゾルディオさんもいいですね」

 

「もちろんです」

 

「お、お待ちください!シャルティアが武装している以上、即座の戦闘が予想されます。御身を守るものたちを―――」

 

「そんな暇はない。それにゾルディオさんも一緒なのだ。問題は――」

 

(アインズ様)

 

「なんだナーベラル。今はそれどころじゃ――」

 

「待ってください、アインズさん」

 

「どうしました?」

 

「私たちは前回、エントマからの《伝言》を後回しにしたせいでこのような事になってしまいました。きっとナーベラルも緊急事態だからこそアインズさんに直接《伝言》で連絡をしたのではないですか?」

 

「・・・確かにそうですね。すみません、少々苛立っていたようです。ありがとうございます、ゾルディオさん」

 

「いえいえ、これくらい構いません」

 

「・・すまない、ナーベラル。連絡を聞こう」

 

 

 

「・・さて、アインズさんがナーベラルと話している間に、ニグレド」

 

「はい」

 

「実はもう一つ頼みたいことがあるのですが」

 

「なんでしょうか?」

 

「シャルティアの周りに知性を持った生物を捜すことは出来ますか?」

 

「可能でございますが・・・」

 

「頼みます」

 

そう言うと疑惑を抱きながらもニグレドは魔法を発動させ捜索を始めた。そして、数分もかからずに

 

「見つけました」

 

ニグレドがそう言い、画面に映ったのは――

 

 

 

 

両腕のない瀕死のメフィラス星人だった。

 

 

 

 

「!?生きてましたか!」

 

「ゾルディオ様、あの者は?」

 

「彼は私が創造したシャルティアの護衛です。あの状態では恐らく能力も使えないのでしょう。もし使えたら私に《伝言》を使って連絡を取るはずですから」

 

「ゾルディオさん、こっちも終わりました」

 

「ナーベラルはなんの連絡でしたか?」

 

「どうやら冒険者組合の者が呼んでいるみたいです。なにやら吸血鬼が関わっているようです」

 

「吸血鬼・・・シャルティアのことでしょうか?」

 

「それは行ってみないことにはわからないみたいです」

 

「そうですか・・・」

 

このタイミングで吸血鬼に関係することで呼び出されるということは、恐らくはシャルティアの件でほとんど確定だと思うけど・・・でも今は一刻を争う。どうすれば・・・

俺がそう考えているとアインズさんは水晶に映し出された映像を見た。

 

「・・・どうやら、メフィラス星人は生きていたみたいですね」

 

「はい。恐らく、彼が何か知っていることでしょう」

 

そう言うと、アインズさんは少し悩むように手を顎に当てて

 

「・・では、こうしましょう。私は冒険者組合のほうに行き話を聞いてきます。ゾルディオさんは守護者を連れてメフィラス星人のほうに向かってください。その後に合流して、シャルティアの下に向かいましょう」

 

「分かりました」

 




アインズ「はぁ、やっぱり怖い」
ゾルディオ「同感です」
アインズ「まぁ・・・あの時程の恐怖を感じませんでしたけど」
ゾルディオ「全くですね」
アインズ(俺の恐怖はあんたにだよ・・・)

ユグドラシルでタブラ・スマナグディナが新キャラを作ったから見てくれと誘われ、ギルドメンバーは全員悲鳴を上げたが、その中でもゾルディオは一番大きな悲鳴を上げながら《超越進化》し《トリリオンメテオ》を何度も無差別に周囲に放った事件があった・・・


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