怪獣と骸骨の異世界蹂躙物語   作:きょろりん

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禁じられた力

※誤字報告がありましたので訂正しました!


30話 ハンデ

 

 

二重最強化(ツインマキシマイズマジック)・電気球(・エレクトロ・スフィア)

 

 

 

魔法を発動させ、両手に巨大な電気の球を発生させたナーベラルはカジット達に向け、その電気の球を投げた。

着弾した瞬間、激しい電撃が広範囲に渡り飛散させた。ナーベラルの魔法を食らったローブの男たちは全員地面に倒れ、プスプスと音を立てながら焼けたにおいを出していた。その中で、一人だけ立っている人物がいた。カジットだ。

 

「素直に今の一撃で死んでればいいものを・・・下等生物(クズ蟲)が」

 

「意外に頑丈っすね~。《電撃属性無効化(エネルギーイミユニティ・エレクトリシティ)》でも発動させてたんすかね?」

 

「・・・・・まさか第三位階まで使う馬鹿者がいるとはな」

 

その一言にナーベラルは眉間に皺を寄せた。

 

「な!?下等生物(クズ蟲)ごときが私を馬鹿だと!?」

 

「当たり前だろう!儂の完璧な計画を邪魔しようというのだからな!しかも相手が自分よりも強者と分からん愚か者め!見よ!この負のエネルギーを十分蓄えた、至高の宝珠の力を見るがよい!」

 

そう言って、カジットは手に持った珠を空に掲げた。

 

その瞬間、上空から翼をはためかせる音が聞こえてきた。その音は、ナーベラルたちの真上からだんだん近づいてくるようだった。

 

 

 

 

 

 

『上に注意しておけ』

 

 

 

 

 

 

そのアインズの言葉を思い出し、二人はその場からすぐさま離れた。すると、さっきまでいた場所に一体の巨大な(ドラゴン)が舞い降りた。

 

「チッ・・・・」

 

「ああ・・・これっすか」

 

その現れた竜を見て、ナーベラルは舌打ちをしながら顔に苛立ちが浮かんだ。それとは違い、ルプスレギナは納得するような表情を浮かべ、すぐに面倒くさそうな表情になった。

その(ドラゴン)はいくつもの人骨からできた巨大な竜――――骨の竜(スケリトル・ドラゴン)と呼ばれるものだった。

 

「ふはははははは!こいつは魔法に絶対の耐性を持つ骨の竜(スケリトル・ドラゴン)!!魔法詠唱者(マジックキャスター)にとっては最大の強敵だ!!」

 

骨の竜には今のナーベラルとルプスレギナで通じる魔法は無い。つまり・・

 

「ならば殴り殺す」

 

「今はそれくらいっすねー」

 

そう言いながら、ナーベラルは剣を鞘に入れたまま紐で縛りつけ、ルプスレギナは背中に担いでいた聖杖を手に取り構えた。

そしてそのまま二人は骨の竜(スケリトル・ドラゴン)に飛びかかり

 

 

 

 

ドゴッと重い音が響き、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)は攻撃を食らった箇所の骨をまき散らしながら横に倒れた。

 

 

 

 

「な!?」

 

その光景を見てカジットは驚愕した。普通、魔法詠唱者(マジックキャスター)は魔法の研究に追われ、さらに前線に出ることはないので、筋力は一般人とさほど変わらない。だが、目の前の美女二人は、3メートルはある巨体をいとも簡単に吹き飛ばした。

 

「お、お主らは何者だ!?ミスリル・・・・・いや、オリハルコンか!」

 

カジットは驚愕しているが、ナーベラルとルプスレギナは余裕の表情で

 

「あれあれ?この銅のプレートがみえないっすかねー?ナーちゃん」

 

「仕方ないわ、ルプー。下等生物(ノミ虫)ごときの視力じゃ見えないのよ」

 

「き、貴様ら!」

 

苦労して二か月にも渡る大儀式を行い、生み出した骨の竜(スケリトル・ドラゴン)がいとも簡単に負けてしまうのか。そう思い、カジットは憤怒の表情で

 

「やらせはせん!やらせはせんぞ!《負の光線(レイ・オブネガティブ・エナジー)》!」

 

そう言い、カジットは手から黒い光を骨の竜(スケリトル・ドラゴン)に放った。すると、さっきの二人の攻撃で砕けた部分が見る見るうちに癒えた。

 

「・・絶対の魔法耐性のわりに魔法で回復するなんてね」

 

「ほんとせこいっすね~」

 

二人の挑発を受け流し、カジットはさらに骨の竜(スケリトル・ドラゴン)を強化魔法で強化していった。

 

「こっちもやるっすよー」

 

すると二人も同じように防御魔法を自分たちにかけた。

 

「あの二人相手に一体の骨の竜では分が悪い・・・仕方ない。見よ!死の宝珠の力を!」

 

そう言い珠を掲げた。すると突然地面が揺れ始め、亀裂が走った。そこから

 

「二体目・・・」

 

二体目の骨の竜(スケリトル・ドラゴン)が現れた。

 

「ふん!お主らのおかげで溜めていた負のエネルギーがなくなってしまったわ!だが、お主らを殺し、街に被害を出せば多少は元が取れるだろう!」

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、疲れちゃったなー私」

 

戦闘が始まって数分がたった。アインズが振るう剣はいまだかすり傷すらもクレマンティーヌに与えておらず、クレマンティーヌは一撃たりとも攻撃せず、回避にばかりしていた。

 

「確かにー、すごい身体能力だと思うよー。そりゃ自慢したくもなるよねー、でも――――アホかお前。お前のはただ力任せに剣を振り回しているだけなんだよ。戦士なめてんのか?ああん?」

 

「ならば攻撃してこい。さっきから回避ばかりで一撃も攻撃してこないところを見ると、私の一撃が当たるのが怖いのかな?それとも、ただの時間稼ぎなのかな?」

 

アインズが挑発すると、クレマンティーヌは腰に下げている四本ある刺突武器『スティレット』の一本を取り出した。両者が互いに再び睨み合い、踏み出そうとした時、突然大地が揺れた。それと同時に、ナーベラルたちが戦闘を行っている方向から大きな地響きの音が周囲に響いた。その方向にアインズとゾルディオが目を向けると、そこには骨でできた竜

 

「・・・・・骨の竜(スケリトル・ドラゴン)ですか」

 

「せいかーい、その通り。よく知ってるねぇ」

 

「あれが、魔法詠唱者(マジックキャスター)では絶対に勝てない根拠という奴か」

 

「そういうこと。いまさら後悔しても遅いよ?」

 

そう言い、クレマンティーヌは不敵な笑みを浮かべた。確かにこの世界の魔法詠唱者(マジックキャスター)では歯が立たないだろう存在だ。そして、今のナーベラルたちでも苦戦するだろう。

そう考えているアインズにクレマンティーヌは一瞬で懐に入った。その接近に気付いたアインズは、すぐさま剣を縦に振るった。その一撃は懐に入ったクレマンティーヌに確実に直撃するものだった。たとえ受け止めたとしても、女のクレマンティーヌには無理だろう。アインズの一撃はそれぐらい重いものだった。

 

 

 

 

だが、その一撃をクレマンティーヌは受け止め、逆にアインズの剣を弾いた。そして、アインズが後退するよりも早く、鋭い突きが襲った。

 

 

 

 

その突きは金属同士が削れる嫌な音を出しながら、肩に命中した。アインズはすぐさま真横に剣を振るった。すると、クレマンティーヌはすかさず後ろに大きく跳び、躱した。

 

「・・・・武技ですか」

 

ゾルディオはそう言いながら、面白いものを見たように言った。武技――ユグドラシルにはない戦士専用の魔法みたいなものだ。恐らく今の武技は剣の防御と威力無効化だろう、とアインズとゾルディオは直感でそう思った。

 

「かったいなー、その鎧何でできてるの?」

 

アインズは先ほどの攻撃を受けた部位をさすった。そこは大きな傷自体はないが、へこみができていた。特に魔法を付与していない鎧だが、レベル100の魔法詠唱者が作った鎧だ。レベルに比例して防御力は高くなっているはず。この世界では、恐らく一番固い鎧ともなるだろう。

その鎧に、小さいながらもへこみを作ったクレマンティーヌの一撃は、それほど重いものということが分かる。

 

「まいっか。次は防御の薄いところを突けばいいんだしー。でもぉ、ちょっとずつ削って身動き取れなくなったところをぉ、苛めてあげようと思ったのになー」

 

その一言を聞き、アインズとゾルディオはクレマンティーヌの戦士としての技量に少しの敬意を感じた。肩を突いたのは単なる偶然ではなく、わざとであるということに。

魔法詠唱者のアインズは剣の技術や経験は浅い。それゆえ、ただ剣を振り、敵にダメージを与えることに専念してしまう。だが、剣の腕が自分よりも上の者と戦うときは、以降の戦闘の流れを計算しながら戦う必要がある。

 

(この一戦は勉強になるな・・・・)

 

「そんじゃいきますよー」

 

そう言いながらクレマンティーヌは、まるでクラウチングスタートのような姿勢を取った。アインズも剣を構えた。

その瞬間、クレマンティーヌはまるで矢のように一直線に踏み込んできた。そのスピードは、アインズの動体視力でも捉えきれないほどの速さだった。ゾルディオでさえもやっと追いつけるほどだった。

一瞬で間合いに入ってきたクレマンティーヌに対して、アインズは右手の剣を振り下ろした。だが、

 

 

「《不落要塞》」

 

 

先ほどと同じ武技を発動し剣を弾いた。だが、この結果はアインズの想定内だった。今の攻撃は前回と同じ威力ではなく、あえて力を抑えたものだ。そして、そのまま左の剣を全で振るった。一度は弾かれたが、二度は無理と思ったからだ。しかし

 

 

「《流水加速》」

 

 

クレマンティーヌは二つ目の武技を発動した。その瞬間、クレマンティーヌの行動速度が上がった。アインズの振った剣は、またもや当たらず回避された。そしてそのまま、クレマンティーヌは手に持っているスティレットで、アインズのヘルムの隙間、スリットを狙った。

アインズはすかさず頭を振り回避した。しかし、クレマンティーヌはスティレットを再び構えなおし、同じくスリットめがけ突いてきた。

 

「チッ!」

 

アインズの剣の振りよりも、一直線に突くクレマンティーヌのほうが肉体の性能差を考えても早く、二回目の突きは外すことなくスリットに命中した。

 

「あれ?」

 

「クソッ!」

 

アインズはヘルムに手を当てながら、大きく後退した。クレマンティーヌは追撃をせず、スティレットの先端を不思議そうに眺めていた。だが、すぐさま笑って

 

「もうハンデとか言ってないでさー二人でやったら?このままじゃ、こっちのお仲間死んじゃうよぉ?それにしても、今のどうやったの?完璧に直撃だったじゃーん。武技でも使ったの?」

 

「やれやれ、この戦いは勉強になるな。武技の存在、そしてただ武器を振るうだけでなく、全身を使ってバランスよく戦う重要性」

 

「・・・は?何言ってんのあんた。そんなの常識じゃん。本当に戦士失格ね。あとこっちの質問に答えて欲しいんだけどねー。防御系の武技かな」

 

「いや、私は本当に勉強不足だったな。後でザムシャーさんに教えてもらったほうがいいかもな」

 

「私でよければいつでもいいですよ。でも、剣の扱いに関しては難しいですが」

 

「では、今度機会があったら頼みますね。さて、時間も押し迫っていることだ。そろそろ遊びは終わりにしよう」

 

クレマンティーヌの質問を完全に無視し、アインズは声を張り上げ

 

 

 

 

 

「ナーベラル・ガンマ!ルプスレギナ・ベータ!ナザリックが威を示せ!」

 

 

 

 

 

そう言い、アインズは両手に持っていた剣を地面に落とし、両手を差し出し手招くように

 

「さあ、決死の覚悟でかかって来い!」

 

 

 


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