英雄誕生
「ンフィーレアがどこにもおらん!!」
そう叫びながら戻ってきたリイジーに、死体を一箇所の並べていたアインズは冷静に
「物が荒らされた形跡もなし、家の中にはあんたの孫はおらず、代わりにゾンビがいた。こうなると、もともとンフィーレアを攫うことが目的だったんだろう」
「そ・・そんな・・・」
「さっき死体を調べたら、こんなものが見つかった」
そう言いながらニニャが座っていた場所を指さした。そこには血文字が書かれていた。
「これは・・地下水道・・2-8・・・・もしや!ンフィーレアを攫ったやつはそこに!」
「いえ、その可能性は低いでしょう。相手がわざわざこのように居場所を明確に表すものを残すとは考えにくいですし、仮にニニャさんが書いたとしても、相手はそこまでの情報を与えたのか・・・」
「どちらにせよ、こちらに来てくださいと言っているようなもの、都合が良すぎる」
そうゾルディオとアインズが冷静に答えると、リイジーは皺だらけ顔をさらに皺を作りながら
「・・そういえば、この者たちは?」
「組合の前でも言いましたが、私たちとともにお孫さんを警護した冒険者です」
「・・そなたらの友人ではないのか?」
「そうではない・・ただ今回共にしただけの存在だ。それよりも、このことを冒険者に依頼したらどうだ?」
「・・なに?」
「まさに冒険者にうってつけだろ?そして幸運だな。今、お前の目の前にはこの街で最高の冒険者チームがいる。どうだ?私たちを雇わないか?依頼するのならば受けよう。ただし・・・今回の件はかなり高くなるがな」
そう言われ、リイジーは少し悩むそぶりを見せ、決心したように
「・・確かに、あの森の賢王を従えているお主らなら・・・・・よし!お主らを雇おう!それで、報酬はいかほどに?」
「報酬は・・・お前の全てだ」
「な!なんと!?・・お主らは悪魔か?」
「もしそれが本当だとして何か問題でも?お前は孫を助けたいんだろ?だとしたら、答えは一つ」
「・・・・そうじゃな。お主らが何者だろうと構わん!孫を!ンフィーレアを救ってくれ!」
「契約成立だな。ではこれより私たちはンフィーレアの居場所を探るのだが、この街の地図をあるなら貸してくれ」
そう言い、地図を受け取り、リイジーを部屋の外に出した。これからするのは、見られては困るからだ。
アインズはナーベラルに多数の
「・・わかりました。ここにいるみたいです」
そう言い、ナーベラルは地図を指した。
「確かここは・・」
「墓地ですね」
「ということはやはり、地下下水道は偽装か。では次に、《
ナーベラルは再び
その中に、一人だけ見知った顔の人物が立っていた。ンフィーレアだ。
「確定だな。そしてこの辺りにプレートがあるな」
「どうしますか?」
「そうだな・・ンフィーレアを救出すると同時にこの事件を解決させる。もちろん、目撃者を作ってな。そうすれば、モモンの名声も上がり、私たちの名も広まるだろう」
そう言いながら、アインズは部屋の外にいたリイジーを呼び戻し
「私たちはこれから墓地に向かい、あんたの孫を救出してくる」
「なに!?地下水道では!?」
「それは相手の偽装だ。本命は墓地だ。さらに、墓地にはアンデッドの軍勢のおまけつきだ。その数は、数千を超えている」
「なんと!?」
「そう驚くな。私たちはこれからその中を突破する。だが、アンデッドがあふれ出る可能性がある。そこであんたにはこのことを多くの人に広め、外に出るアンデッドを押しとどめて欲しい。もし、アンデッドがあふれ出てきたら・・・・厄介だぞ?」
「・・わかった。それは任せてもらおう」
「では、話はおしまいだ。時間がないので早速向かう」
「ま、待て!お主、アンデッドの軍勢を突破する手段があるのか!?」
「決まっている・・・・ここにあるだろ」
そう言いながらアインズは背中のグレートソードを指差した。
「な、なんて数だ!?このままだとエ・ランテルが!」
そう衛兵が叫ぶ。エ・ランテルの墓地にはアンデッドが広がっていた。それも百どころではない。その数はざっと千は超えているだろう。そのアンデッドたちがエ・ランテルの門に一直線で向かってきていた。それを墓地を見回る衛兵が異変に気付き、門の中にいる衛兵たちに知らせ今に至る。門の外はすでにアンデッドであふれかえり、一歩でも門の外に出たらあっという間に餌食になってしまうだろう。アンデッドたちは少しずつ門を上り、エ・ランテルに侵入しようとしていた。それをなんとか衛兵だけで食い止めていたが次第に押され、そろそろ限界を迎えようとしていた。
その時、後ろから三人の冒険者と一匹の大きな魔獣に乗った一人の冒険者が門に向かってきていた。
「ここは危険だ!早く離れろ!」
そう叫んだ衛兵はすぐにプレートを確認した。銅だ。小さく希望を抱いていたが、それはすぐに砕かれた。どうあがいても銅の冒険者がこの場を打開する手段はない。そう、絶望しかけていた。だが、その冒険者たちはさっきの言葉を聞いていなかったように、門に近づいてきた。
「あんた達、さっさと離れろって――」
「ナーベ、剣を」
そう言うと、一人の黒髪の美女が
「皆さん、後ろに注意を。危ないですよ?」
そう、南方の鎧をした青い戦士が言い、振り向くとそこには門よりも大きいアンデッド『
「う、うわぁあああああ!!」
そう衛兵が絶叫し、逃げようとした時、
「フン!」
剣を
逃げ出そうとした衛兵は何が起きたか一瞬理解できずにいた。そこに追い打ちをかけるように
「おい、門を開けろ」
その言葉で衛兵たちは一気に正気に戻った。
「な、なにを馬鹿なことを!!そんなことをしたら!!」
「どうなると?この私、冒険者モモンに関係などない。だが・・・どうしても開けたくないのなら仕方ない。こちらから行かせてもらう」
そう言い、全身鎧の戦士はもう一本の剣を抜き、四メートルもある門を飛び越えた。
「では、失礼」
それに続くかのように青い戦士も同じように飛び越え、後ろにいた美女二人はふわりと飛び上がり、後を追った。
「ああ!置いていかないで欲しいでござるよー!それがしも向かうでござる!」
そう言いながら、巨大な魔獣も後を追った。すると衛兵が仲間の衛兵に
「お、おい。聞こえるか?」
「な、何がだ?」
「さっきまであんなに聞こえてたアンデッドの声が・・・・無くなったぞ」
そう言われ耳を澄ました。すると確かにさっきまで聞こえていたうめき声が無くなっていた。代わりに聞こえるのは、戦闘音だけだった。
「嘘だろ・・・・あの戦士二人はあれだけいたアンデッドを相手にして、進んでいるのか?」
「確かモモンとか言ってたな・・・もはやあれは銅の冒険者じゃない・・・・あれこそが噂に聞くアダマンタイト級なのか?」
衛兵たちが門の外を見ると、そこには先ほどまで動いていたアンデッドが倒れていた。それはまるで道標のように繋がっていた。
「・・・俺たちは・・・・今、伝説を目にしたのかもしれない。漆黒の戦士・・・・・いや、漆黒の英雄だ・・・・」
アインズ(ゾルディオさん、無事に飛び越えられてよかったですね)
ゾルディオ(ですね。あそこでもし飛び越えられなかったら恥ずかしいですよね・・・ってそれはアインズさんもでしょ)
アインズ(いやぁ、内心めっちゃ怖かったですよ。あんなことやったことないですから)
ゾルディオ(いや、普通無いですよ)
アインズ(もし飛び超えた際に足ぶつけて、空中で転んだらどうしようとか考えてたんですよ)
ゾルディオ(あー、地味にありそうですねー)
アインズ(次からはなるべく気を付けましょう。いくら格好つけても、失敗したら元も子もないですから)
ゾルディオ(ですね)