怪獣と骸骨の異世界蹂躙物語   作:きょろりん

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ひとりぼっちの賢王

※誤字報告がありましたので訂正しました!


26話 森の賢王

「・・・こいつはまずいな」

 

ルクルットは聞き耳を立てて言った。その意味は森の中を走り回っている獣がいるということだ。

 

「森の賢王ですか?」

 

「わかんねぇ、だがかなりでかいやつが蛇行しながらも一直線にこっちに向かってきやがる。・・・もう少しでこっちに来る」

 

「撤退しよう。モモンさん、ここは任せてもいいですか?」

 

「ええ、任せてください。もともとこちらはそのつもりでしたので」

 

「頼みました。私たちはンフィーレアさんを守りながら森の出口まで向かいます」

 

「そちらも頼みましたよ」

 

そう言い、ンフィーレアを連れて『漆黒の剣』は急いで来た道を引き返した。

 

「・・・よし、ではこちらは待つか」

 

そう言うと、アインズはグレートソードを抜き、俺は刀の柄に手を添えた。

 

「―来たみたいですね」

 

ゾルディオの視線の先には木の後ろで隠れている大きな影がいた。アインズがナーベラルとルプスレギナを守るように前に出た瞬間、空気がしなったような音がし、アインズは瞬時にグレートソードで防御に入った。すると、金属音が森に響き渡った。

 

(・・さっきの感触、音からして明らかに金属の物。さらに、攻撃範囲は20m程の中距離・・・・厄介だな)

 

「それがしの初撃を完全に防御したこと、見事でござる。その見事な防御に免じて、今回は逃げても追わないでござるが・・・」

 

「愚問だな、獣よ。今の攻撃ぐらい、防御は容易い。それに、そっちこそ一向に姿を見せないな。まさか、私たちの力に恐れた、ただの臆病者なのかな?」

 

アインズが挑発気味に言うと、大きな影は

 

「それがしを臆病者というでござるか!!ではそれがしの姿を見て、恐れ慄くがいいでござる!」

 

そう言い、大きな影は次第にその姿をはっきりと映した。

 

「「・・・・・え?」」

 

「ふっふっふっ・・・それがしの姿を見て、恐怖で震えているでござるか?」

 

こ、これは・・・

 

「ひ、一ついいか・・・」

 

「なんでござるかな?」

 

「お、お前は・・・・・

 

 

 

ジャンガリアンハムスターとかいう種族じゃないか?」

 

 

 

「お主、それがしの種族を知ってるでござるか?」

 

「ま、まあ、というか私と彼は少なからず知っている」

 

俺は頷いた。そりゃそうだ。なんたって・・

 

「お前のようなのを私たちのかつての仲間が飼っていましたからね」

 

そう言うと、ナーベラルとルプスレギナは「「おお・・」」と感嘆の声を上げた。至高の存在の話だからだろうな。

 

「なんと!それがしの他にも同じ種族がいたでござるか!それなら、居場所を教えてほしいでござる。子孫を残さねば生物として失格でござる」

 

・・子孫か。そうなると俺たちはもう生物と失格じゃん。俺は性欲ない上にアレもないし、アインズさんに限っては生物じゃなくなったし・・・少し悲しくなってきたな。

 

「すみません、あなたほど大きくはないので無理かと・・」

 

「そ、そうでござるか・・残念でござる。やはりそれがしはずっと独りでござるか・・・」

 

「す、すみませんね」

 

「いいでござるよ・・・それよりも!さあ!殺し合いの続きをするでござる!」

 

と、さっきまでの落ち込みを切り替え、戦闘モードに入ったようだ。さて、アインズさんは、ってなんかいじけてるよ。

 

「・・森の賢王っていうからさ・・・凄いのかと思ったら・・・・ハムスターかよ・・・はぁ」

 

・・なんかすごいことになってるな。そんなに期待してたのかな?俺はこんなもんと思ってたけど。

 

「・・ハズレだ。完全にハズレだ。期待外れにもほどがある」

 

「さあ!始めるでござるよ!!」

 

アインズさんと対照的にやる気満々のハムスター。見た目は完全にマスコットキャラクターだな。ナザリックのマスコットにいいかもなwwそれか、冒険者チームのマスコット?・・どっちでもいいか。

 

「もう・・止めだ」

 

そう言い、アインズさんは両手に持っていたグレートソードを降ろし、片手を森の賢王に向け

 

「スキル、絶望のオーラ。レベルⅠ」

 

その瞬間、森の賢王は体を震わせお腹を見せるように仰向けに寝た。・・・こうなるとただのハムスターだな。

 

「こ、降参でござるよ~それがしの負けでござる~」

 

降参って言ってるけど実際どうすんだろ?持って帰るのかな?死体にするなら俺の怪獣の素材に欲しいな・・・

 

「殺しちゃうんですか?」

 

そう声が聞こえたほうを見ると、アウラが木の枝に座っていた。

 

「でしたら、皮を剥ぎ取らせてください。いい皮が取れますよ」

 

「そ、そんなぁ~」

 

そう言いながら恐怖に身を震わせる森の賢王。でも、殺すのもなんかもったいない気がするな。アインズさんはどうするか悩んでるみたいだし。と、考えているとアインズさんが

 

「・・私の本当の名はアインズ・ウール・ゴウン。私に忠誠を誓うのなら、私のペットとして生を許そう」

 

「あ、ありがたき幸せでござる!それがしは森の賢王!この身は、アインズ・ウール・ゴウン様に全て捧げるでござる!殿!」

 

・・そう来たか、アインズさんのペットかぁ。なかなか面白いことになったな。

 

そして俺たちは森の賢王を連れて、森の外、ンフィーレアさんたちと合流することにした。

 

 

 

 

「こ、これが・・・」

 

「森の・・」

 

「賢王・・・」

 

「であるか・・・」

 

森の賢王を連れて合流したが、やはり驚かれたか。まあそうだよな。まさか、森の賢王がこんなハムスターだったr

 

「な、なんて強大で立派な魔獣なんだ!」

 

・・はい?

 

「すげぇな・・・これだけの魔獣を支配するとは・・・流石はナーベちゃんとルプーちゃんを連れまわすだけのことはあるな・・」

 

今ナント?

 

「まさに伝説通りであるな!近くにいるだけで力を感じるのである!」

 

「これほどの魔獣に遭遇したら、まず私達だけではすぐに殺されていたでしょう。流石は『ユグドラシル』のみなさん」

 

・・まさかの高評価。ええぇ・・・この世界にハムスターはいないのか。この反応にアインズさんも戸惑っていた。

 

「・・皆さん、この瞳、かわいく見えませんか?」

 

そうアインズさんが尋ねると

 

「ええ!?モモンさんにはこの魔獣の瞳がかわいく見えるのですか!?」

 

アインズさんは頷いてみせた。そしたら、次に俺を見てきた。

なんだ?俺に何を求めているんだ?こいつが強大な魔獣ってことを言って欲しいのか?だが、俺はアインズさんと同じ意見なため、同じく頷いてみせた。

 

「そ、そんな、ザムシャーさんまで・・・いえ、流石はお二人です。私にはとてもそうは思えません。ニニャ、君ならこの瞳をどう見る?」

 

「はい、とても強大な力を持ち合わせ、なおかつ英知を感じさせます。・・とても可愛くは見えませんね」

 

・・まあだろうよ。そらそうなるはずだわ。あんだけ言ってたらな。おかげでアインズさんすげー困ってるよ。・・・一応確認のため

 

「・・ナーベさん、ルプーさん。どう思いますか?」

 

「そうですね・・強さはともかく、力を感じさせますね」

 

「私も同じ考えっす」

 

・・あー、そうなるか。つまり、この場で、こいつをかわいいと思うのは俺とアインズさんだけと・・・。

 

 

(・・ゾルディオさん)

 

(・・なんでしょう)

 

(この世界にハムスターはいないんでしょうか?)

 

(あの様子を見る限りいないんでしょうね)

 

(俺のセンスがアンデッド寄りになった・・てわけでは)

 

(無いかと・・・)

 

(・・そうですよね)

 

 

ナーベラルとルプスレギナの感想を聞き、少し肩が下がったアインズさんにンフィーレアさんは恐る恐る

 

「あ、あの、モモンさん、森の賢王が森から居なくなった場合、エン・・・村はどうなりますか?」

 

「どうなるんだ?」

 

「そうでござるな・・・森は少し前から勢力のバランスが崩れており、それがしがいてもあの森はもはや安全でないでござるよ」

 

「そ、そんな・・・」

 

事実を突きつけられたンフィーレアさんはショックを受けていた。それに対して、アインズさんは計画通りの様子だ。こうなるようにしていたのか。ンフィーレアさんは、言うか、言わないかを戸惑うように口を開けたり閉じたりしていた。その様子を見て内心、ニヤニヤ笑っているだろうアインズさん。『漆黒の剣』の方たちも必死で考えているようだ。

 

そして、ついに決心するようにンフィーレアさんは

 

「あ、あの!・・ぼ、僕を!チーム『ユグドラシル』に入れてください!」

 

「「はい!?」」

 

おいおい、何言ってんだこの子は。それでどうすんだよ。って思っていたら

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕は・・エンリを、カルネ村を守りたい。ですが、今の僕にそんな力はありません。僕は強くなりたいです!あなたたちのように!どんなことだってします!薬学の知識もありますし、荷物運びだってなんだってやります!だから!お願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ンフィーレアさん、それがあなたの答えですか?」

 

「はい!」

 

アインズさんの問いにまっすぐに答えた。その覚悟、思いに俺達は――

 

 

 

 

 

 

 

「はっ、はははははは!!」「ははははははは!!」

 

 

 

 

 

 

 

大笑いした。だが、それは馬鹿にした笑いではなく、とても爽やかで嫌になるものじゃなかった。

そして、俺とアインズさんはゆっくりと頭を下げた。その至高の御方にふさわしくない行動にナーベラルとルプスレギナは戸惑っていた。だが、構わず頭を下げ

 

「・・笑ったりして申し訳なかった。君の決意を笑ったわけじゃない」

 

「すみません、これで二回目ですね。本当にすみません。ですが、私もあなたの覚悟を笑ったわけではありません」

 

驚きの顔のままのンフィーレアさんにアインズさんは告げた。

 

「それでチームの件だが・・・私たちのチームに入るには条件が二つあってね、君は片方しか満たしていないんだ。すまないな」

 

その答えを聞き、ンフィーレアさんは肩を落とした。そこに俺は

 

「ですが、ご安心を。チームには入れませんが、あなたの覚悟、思いは覚えておきます。それに、村を守る件ですが私が少し力をお貸ししましょう。ですが、もしかしたらあなたの協力も――」

 

「はい!喜んでやらせていただきます!」

 

「ふふっ、そうですか」

 

 

何かを、誰かを守るために強くりたい、か・・・。

 

 

その後、俺たちは森の賢王の力で、薬草を大量に採り、カルネ村に戻った。

 

 




ゾルディオ「すみません、アインズさん。勝手に決めてしまって・・」
アインズ「いいんですよ、ちょうど同じことをしようと思いましたし」
ゾルディオ「そうなんですか?」
アインズ「ええ、彼の決意、いいものを見ました」
ゾルディオ「そうですね・・・本当に。俺は彼、気に入りましたよ」
アインズ「おや?そうなんですか?」
ゾルディオ「はい。彼の覚悟にね・・・」 

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