怪獣と骸骨の異世界蹂躙物語   作:きょろりん

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君を想う力

※誤字の報告がありましたので訂正しました!


24話 カルネ村再び

俺たちは起きてすぐカルネ村に向かった。カルネ村までの道中、これといって特にモンスターとの遭遇はなく、難なくカルネ村が目視できるところまできた。だが、そこでンフィーレアさんが

 

「あれ?カルネ村にあんな頑丈そうな柵あったかな?」

 

「どうしました?」

 

「あ、いえ、前まではあんな柵はなかったので・・・」

 

「そうですか・・・気になりますね。では、ナーベに不可視化の魔法を使用しながら、飛行の魔法を使用し村を確認させますか?」

 

「お願いします」

 

「分かりました。ではナーベ、やってくれ」

 

「はっ」

 

ナーベラルは返事をするとすぐにアインズさんの言った通りに確認を行った。

 

 

少ししてナーベラルが帰ってきた。

 

「特に異常はありません。村人も普通に歩いていました。少し先には畑で作業している姿も確認できました」

 

「ご苦労、ナーベ。大丈夫みたいです」

 

その言葉で安心したンフィーレアさんは、再び馬車を進めた。すると

 

「ん?」

 

「どうしました?」

 

「いや・・・気のせいかな?」

 

ルクルットさんが何かを感じたみたいだった。俺も同じ方向を見るが特に何か動いた様子もなかった。気にせずに歩みを進めていくとまわりの麦穂が揺れ、小さい何かが出てきた。

 

「な!?」

 

それは武装をした子鬼(ゴブリン)の集団だった。馬車を中心に包囲された。

 

「武装を解除してもらえませんかねぇ?」

 

一人のリーダーらしき子鬼(ゴブリン)が言ってきた。こいつらは昨日遭遇した子鬼(ゴブリン)とは違い、訓練されたような動きをしており、一体一体が戦士のような風格を漂わせていた。

 

だが、この子鬼(ゴブリン)達の正体に気づいたアインズさんと俺は余裕の態度でいた。それは、最初にこの村を助けた際に村の娘の確か・・エンリ?だったかな、その娘が呼んだものと分かったからだ。

つまり、彼らはエンリの命令で動いているため、こちらから危害を加えない限り、向こうも攻撃しないとわかっていた。まあ、そのことを知らないナーベラルとルプスレギナは殺気を送りながら戦闘準備をしていたが、俺とアインズさんで止めさせた。

 

「それと、後ろのほうの鎧を着ている二人は特に武装を解除してほしい。こっちの兄さんたちは強いが怖くはねぇ。だが・・・あんたらはちーっとばかしやべぇ匂いがするんでな。そこの姉さん方もな。うちの姐さんが来るまで待ってて欲しいんすよ」

 

「姐さんっていうのは誰だ!そいつがカルネ村を占拠したのか!」

 

ンフィーレアさんの剣幕に子鬼(ゴブリン)たちが訝しげなものがはっきりと分かった。そこで俺は

 

「ンフィーレアさん、落ち着いて下さい。彼らからは明確な敵意を感じません。下手に動かなければ攻撃されることはないでしょう。それにナーベさんの話だと村に占拠されたような痕跡は無いようですし、ここは冷静に、その姐さんという方が来るまで待ちましょう」

 

「・・・すみません」

 

そう言うと、少し落ち着いて冷静を取り戻したようだ。まさか、あそこまで感情が高ぶるとは・・・ンフィーレアさんにとってこの村に何かあるのかな?そう考えていると

 

「・・・なんか違う気がすんな」

 

「ああ、俺たちは姐さんの村が、帝国の格好をした騎士に襲われたからその警戒をしているだけなんだけどな」

 

「村が襲われたって・・・彼女は無事なのか!?」

 

ンフィーレアさんがまた興奮しだした。・・・彼女って誰だよ。その時、村から一人の村娘が出てきた、彼女は子鬼(ゴブリン)を従えていた。とすると彼女は・・・

 

「エンリ!」

 

「ンフィー!」

 

・・どうやら知り合いだったようだ。お互いの誤解が解かれ、俺たちはカルネ村に入ることができた。

 

 

 

ンフィーレアとエンリがこの村で何があったか聞いている間、『ユグドラシル』の全員は村を一望できる丘に来ていた。

 

「・・・ほう」

 

「・・なかなかやりますね」

 

「そうっすか?」

 

「そのようには見えませんが・・」

 

俺たちが見ていたのは子鬼(ゴブリン)が村人に弓の使い方を教えているところだ。その教えを嫌な顔をして受ける村人は一人としていなかった。

そんな姿を見て俺とアインズさんは感心していた。それは

 

「ナーベとルプーにはそう見えるかもしれないが、あそこにいるのは十日程前までは武器すら持ったことのない者たちの集まりだ」

 

「それが子供を、家族を殺され、二度と同じ悲劇は繰り返させないと、次同じことがあったら今度は返り討ちにしてやる、そういう感情がなしている業を称賛しないはずがありません」

 

そう。称賛すべきはその憎悪だ。

 

「も、申し訳ありません」

 

「か、考えがいたらなかったっす」

 

「良い、お前たちがそこまで考える必要もない。それに、実際彼らの技術に称賛することはないしな」

 

とそんな会話をしているとンフィーレアさんが物凄い勢いでこっちに来た。

 

「どうしました?何かありましたか?」

 

「はぁ・・はぁ・・い、いえ、そうではないんですが・・・一つ、お伺いしたいことが・・」

 

なんなんだろう?ンフィーレアさんは呼吸を整えて言い出した。

 

「あの・・ザムシャーさんとモモンさんは、ゾルディオさんとアインズ・ウール・ゴウンさんなんですか?」

 

・・・はい?一瞬思考が停止した。なぜばれた?この子には何も言ってないが・・・

そう考えながら、この事実を肯定することができない俺とアインズさんは無言でいた。すると

 

「やっぱりそうでしたか!ゾルディオさん、ゴウンさん、この村を救ってくださりありがとうございます!そしてエンリを救ってくださり、ありがとうございます!」

 

「・・違います、私たちは・・・」

 

「いえ、いいんです。何かわけがあって正体を隠されているのでしょう。でも、一言お礼を言いたくて・・・僕の好きな人を助けてくれてありがとうございました」

 

おお、青春だねぇ。若いっていいなぁ・・・俺もまだ20代前半だが。そしてあきらめたかのようにアインズさんが

 

「はぁ・・・顔を上げたまえ」

 

「はい。それとゴウンさん、僕はあなた方に隠していたことがあるんです」

 

俺はとっさにこの場に出してはいけない殺気じみたものを感じた。それは、ナーベラルとルプスレギナだ。警戒する気持ちはわかるが少しは抑えろよ。このままだと何かやらかしそうだったので俺は

 

「ナーベさん、ルプーさん。この場は一旦私とモモンさだけにしてもらえますか?モモンさんと私は大丈夫ですから」

 

そう言うと二人はしぶしぶこの場を離れた。といってもそんな遠くにいかず話が聞こえない程度の距離までだった。

 

「実は・・・」

 

ンフィーレアさんの話はこうだった。宿屋で赤いポーションを渡した女が、ンフィーレアさんの店に来て鑑定を頼んだらしい。だが、そのポーションはこの世界では作れないとされる、伝説のポーションらしい。それで、そのポーションをくれた人物にあって、こっそりポーションの作り方を知ろうとしていたわけだ。

 

まさか、俺が渡したやつでこんなことになるなんてな・・・完全に失態だった。軽い気持ちで渡したのがいけなかったな・・・。

そう落ち込んでいると

 

 

(そう落ち込まないでください、結果的に注意人物のことを知れましたし、この世界のポーション事情も知れたんですから、一石二鳥ですよ)

 

(ですかね・・・)

 

(そうですよ!じゃないと俺たち知れずにいましたよ)

 

(・・・じゃあ、そういうことにします)

 

 

「本当にすみませんでした!」

 

そう言い、頭を下げるンフィーレアさん。だが、

 

「謝る必要はないですよ」

 

「・・え?」

 

「貴方はコネクションを作ろうとした。それのどこに謝る必要がありますか?でしょ、モモンさん」

 

「ええ。私達もコネクションは普通に作りますし」

 

「・・・心が広いんですね」

 

「・・それで、ポーションの作り方を仮に教わったとして、貴方は何をするんですか?」

 

その問いに何故かキョトンとするンフィーレアさん。あれ?まさか考えてなかった?

 

「・・そんなこと考えていませんでした。僕は純粋にポーションの秘密を知りたかっただけですし、あくまで知識欲の一環としてでした・・・」

 

「君のおばあさんは?」

 

「たぶん同じ考えかと・・」

 

俺はその答えに思わず

 

「ふふっ・・・はっはっはっはっ!」

 

突然笑い出した俺に、驚く二人。それもそうだ、急に笑い出したんだからな。でも、笑わずにいられなかった。

 

「いやぁすみません、急に笑って。別にンフィーレアさんたちを馬鹿にしたわけではないですよ?ただ、普通は金儲けとか悪用するものですが、貴方は違う答えを出しましたのでつい・・・」

 

「は、はぁ」

 

「それで、ポーションの件ですが別に大丈夫ですよ。悪用するならともかく、その気がないのでしたらこちらからは何も言いません」

 

「・・やっぱり凄いですね。エンリが・・憧れる・・・・だけの・・・・」

 

憧れのまなざしを向けられ、久しぶりに照れくさくなり話を戻す。

 

「それで、私たちの正体を知っているのは貴方だけですか?」

 

「はい。そうだと思います」

 

「なら良かった・・・今私たちは一介の冒険者です。それを忘れないようにしてくれればいいですよ」

 

「はい、わかりました。では、あと一時間したら薬草を取りに森に向かいます。その前に、森についての説明をしますのでもう少ししたら僕のところに来てください」

 

俺たちは返事を返し、ナーベラルとルプスレギナを呼び戻し、ンフィーレアさんの下に向かった。

 

 




ンフィーレア(エンリに聞いてた通りの紳士的な方だなぁ・・・エンリはあんな感じが好みなのかな?)
ゾルディオ(面白い子だなぁ・・)

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