※誤字報告がありましたので訂正しました!
バハルス帝国、スレイン法国との境界に位置するリ・エスティーゼ王国の都市、城塞都市エ・ランテル――そこは三重の城壁に囲まれた、城壁都市である。
エ・ランテルにあるとてもきれいとは言えない宿屋に、見かけない男女二人ずつの四人組が入って来た。
男の一人は漆黒の鎧をまとい、背中には立派なグレートソードを二本背負い、真紅のマントが体を覆っていた。
もう一人の男は、青い鎧武者で背中には見事な刀を背負い、黒いマフラーを着けていた。しかし、普通背負うなら柄が上に来るはずだが、逆に下に向いていた。その奇妙な姿を見た冒険者たちは、まるで珍しいものを見るように見ていた。
次に女二人だが、どちらも目を見張る美しさで、ほとんどの冒険者はそっちを見ていた。
一人は黒髪を後ろで結んで、肌は白く、腰には片手剣を携えており、クールな印象を受ける女性。
もう一人は、赤い髪を後ろに左右に分け、三つ編みにし、まるで修道女のような格好をしていたが、背中には聖印を形どったような巨大な聖杖を背負っており、肌は褐色。さきほどの女性と対照的に天真爛漫な元気な印象の女性。
この謎の四人組は宿屋の店主の元に行き
「宿だな。何泊だ?」
「一泊で頼みたい。四人部屋を一ついいかな?」
「無いな。相部屋で一人5銅貨、二人部屋で7銅貨だ」
「・・・では二人部屋を二つ頼みます。合わせて14銅貨ですね。これで。食事は大丈夫です」
「・・・奥行って突き当りの二部屋使いな」
どうも。と去り際に言い、部屋に向かった。すると、道を遮るように足を伸ばしてきた冒険者がいた。そこに、鎧武者が
「失礼、足をどけてもらえますか?このままでは通れません」
そう言うと、足を延ばしてきた冒険者たちのグループが嘲笑った。
「・・では、失礼して」
そう言うとわざとらしく、足を蹴った。
「!!がぁ!!痛ってぇぇぇ!!」
「てめぇ!何しやがる!」
「おや?返事がないのでそこの方の脚ではないと思いました。これは失礼」
「なめやがって!この野郎!」
そう言い殴りかかってきたが、それを手で受け止めた。
「い、いたたたたた!放せ!放してくれ!痛い痛い!!」
「おやおや、殴りかかってきてそれですか。活きがいいだけですね」
そう言うと、鎧武者は殴りかかってきた男を後ろに投げ飛ばした。
「さて、あなたもですか?」
「ひっ!い、いえ!な、仲間が失礼を!」
「いえいえ、わかってくれればいいんですよ」
「あーーーー!!!」
突然、叫びが聞こえた。その叫びのほうへ全員に顔を向けると
「ちょっとちょっと!あんたのおかげで私の大切なポーションが割れちゃったじゃない!!どうしてくれんのよ!!」
と、女冒険者が怒りの形相で鎧武者に突っかかってきた。周りでは、「アイツ終わったな」、「ありゃ死んだわ」と口々に言って
いた。
「貴方のポーション?はて、私が何かしましたか?」
「あんたが投げ飛ばしたアイツが私のテーブルに飛んできてポーションを割っちゃったのよ!」
「それはそれは、すみません。でしたら私のポーションを代わりにあげましょう。これでいいですか?」
そう言いながら赤いポーションを女冒険者に渡し、場は収まった。
「店主、お騒がせしました」
「あ、ああ。構わねぇよ」
そう言って、四人組は部屋に向かった。
部屋につくと
「・・・ゾルディオ様。よろしかったのですか?」
「ナーベさん、ここでの私は「ザムシャー」と呼んでください。それと、様は無しです」
「そうっすよー、ナーちゃん。ちゃんとやらなきゃダメっすよー!ですよね?モモンさん」
「ああ、そこは慣れないと、これから厳しくなるな」
「し、失礼いたしました。ザムシャーさ――ん」
「・・・少し危ないですがいいでしょう。それで、なんですか?」
「はい、あのようなゴミ虫にポーションを渡してしまわれてもよかったのでしょうか?」
「・・・ナーベさん、ここにいる間は人間をゴミ虫と呼ぶのは駄目ですよ。我々は友好的に接しなくてはいけません。そうしなければこれからの計画に支障をきたす場合もあります」
「も、申し訳ございません!!」
そう、この計画は結構重要なのだ。なぜ俺たちが冒険者になりすましているかと言うと・・・
~二日前~
「え?冒険者になろう?」
「はい!なりましょう!」
なぜアインズさんがなぜ急になろうと言い出したかというと
「ずっと支配者ロールは疲れがたまります!疲労は感じませんが。たまには息抜きとして羽を伸ばしたいです!」
とのことだ。だがこの件に関しては俺も
「いいですね!俺も冒険者になってみたかったんですよ!」
「では早速アルベドとデミウルゴスを説得しに行きましょう!」
と言うことになり、俺たちはアルベドとデミウルゴスを何とか説得し、冒険者になったのだ。説得の内容は、冒険者になりこの世界の資金集めと、後に冒険者としての名声をそっくりそのままアインズに向けることを目的に活動をする、というものだった。
説得は成功したが、せめてお供を連れて行ってほしいとのことだった。
その点に関しては、こちらも承知でいた。そのため、事前に共にする者を決めていた。連れていくのはプレアデスのナーベラル、ルプスレギナの二人を連れていくことにした。理由としては、ナーベラルは魔法詠唱者として、ルプスレギナはクレリックとして、違和感のない冒険者チームを作るためであった。そのことをナーベラルとルプスレギナの二人に聞いてみたところ
「え!?冒険者として一緒に同行しろですか!?喜んでお供させてもらいます!!」
「同じく喜んで同行させてもらいます!!」
「そうか、ならすぐに出発をする」
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で、今に至る。
冒険者になったはいいが、あまりにも夢のない職業だなー。もっとこう、まだ見ぬ地を探しに行くとか、ないのかね。
「私の失態をこの命で償いを・・・」
「いいですよ、これから慣らしていきましょう。それと、自分から命を絶とうということは絶対にしてはいけません。でなければ、私は弐式炎雷さんに顔向けできません。せっかくもらった命なんですから粗末にしてはいけません。いいですね?」
その言葉を聞き、ナーベは口を押さえ涙を流した。
「は、はい・・・申し訳ございません・・・!ゾルディオ様のお気持ちも考えず・・・私・・・」
「な、泣かないでください。私は怒ってるわけではないのですから。ね?」
「は・・い・・・」
・・・なんだこのしんみりとした空気は。いや、俺がやったみたいなもんだけどさ。く、空気が重い・・・。
気づけば、ルプスレギナも涙流してるし!アインズさん!ヘルプ!・・あ!今、目そらした!くっそー!落ち着け!ここは冷静に
「え、えーっと、た、確かポーションを渡した理由ですね?それは、あそこで面倒ごとを増やしたくないのと、迷惑をかけてしまった以上謝罪は普通です。それに、どうやら大切にしていたポーションを私は割ってしまった。大切なものを壊されて怒らない者はいません。私でも怒ります。それに、あちらは私達よりも上の冒険者、後輩として顔を立ててあげましょう」
「なるほど。流石はゾルディオ様、恐れ入ります」
「ナーベさん?」
「ザ、ザムシャーさん」
「はい、よくできました」
その後、俺とアインズさんはナーベラルとルプスレギナにこれからの行動方針を語った。だが、これからの行動に必ずと言っていいほどの必要なものが完全に足りなかった。それは、この世界の通貨だ。あまりにも不足しているため、俺たちは明日、組合を訪れることにした。ちょっとした会議が終わった後、俺とモモンさんは共同墓地の確認をし、ナーベラルとルプスレギナは定時連絡をし冒険者になって初の1日を終えた。
ゾルディオ「そういえばさっきアウラとコキュートスから連絡が入りまして、エレキングとガタノゾーア、ケットル星人が帰還したみたいです」
アインズ「ということは、ゾルディオさんが創造する怪獣と星人はどちらも三日程度で帰還するということですね」
ゾルディオ「そういうことになりますね」